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プロローグ 『BEFORE』

Change results の改訂版です。

少しだけ、描写が増えたり誤字を直したりしました。若干ストーリーが変わっているところがあります。

プロローグ 『BEFORE』


二〇XX年 一月二八日 一三時二○分 ???


 今日は風が強い、このC地区で唯一のビルのてっぺんから一つの学校を見下ろす。確か名前はC地区第三高校だったかな? ついに本格的に動き出す時が来た。

「うまくやってくれるかな? 期待してるからね」

まぁ、うまくやってくれないと困る。最初から計画が破綻してしまってはこの数年間が無駄になってしまう。

――さぁ、始めよう。


*    *     *


一月二八日 一三時二五分 C地区 第三高校一年二組


 現代社会の授業は聞かない、何故かというと現代社会なんて関係ない人はやらなくていいと思うからだ。まぁ、他の授業も聞いてないけど。娯楽とは無縁の教室で授業を受けるのだから嫌になるのは当たり前だ、しかしそんな俺の気持ちを考えない連中もいる。具体的には五時間目であるのを理由にして昼休みのテンションのまま授業を受けている連中のことだ、うるさくて困る。

こういう時によく思う――自分は周りとは違う、俺には他の連中が持っていない特徴が二つある。特徴その一、俺は天然パーマであり地毛が明るい茶色であること。その二、俺は素晴らしい暗記力を持っている。なんでも一度読んだら忘れない、忘れたい時はすぐに忘れることが出来る。

こんな高校生は他にはいないだろう、少なくともこの地区内にはいない。俺が暮らしているこのC地区には三つの高校がある。第一高校と第二高校、俺が通う第三高校だ。私立高校というものが昔はあったらしいが、今は三つの公立高校だけで学力はどの高校も変わらない。だから受験の際は一番近いこの学校を迷わず選ぶことができた。

「――くん……桜庭(さくらば)くん……桜庭くん‼」

 ボーっとしていたら急に名前を呼ばれた。ざわざわしていた雰囲気が一転して静まり返る、こういう空気も面倒くさくて心底嫌いだ。

俺のことを呼んだのは榊原(さかきばら)先生のようだ、訝しげに俺を見ている。

「何ですか、榊原先生」 

「ゲーム理論についての話をしていたのですが……聞いていましたか?」

 もちろん聞いてなかった、しかしゲーム理論とはいかにも現代の社会を表している気がするが学校でやるような話なのだろうか、ゲームの話なんて学校にふさわしくない。

ゲームの攻略法を話していても、そうでは無くてもそんな言葉なんて知らない。もしかしたら俺の思っているゲームとは全く違うものかも知れない。

「いや、全く聞いてなかったです」

「桜庭くん……あなたはいつもボーッとしていますが、ちゃんと寝ていないのですか?」

いえ、ちゃんと寝てますとも……現代社会に限らずほとんどの授業中にバッチリと。でも、体育や美術の時間には寝れないのが難点だ。もとより、今回の現代社会の授業では寝てなかったが。

あー、質問に答えるのが面倒臭くなってきた、この先生は話が長いから苦手だ。授業も周りの態度もつまらないし気に入らない、保健室にでも行くか。

「あ、そうなんですよ。最近寝不足で困っていて、ちょっと保健室行って寝てきます」

「あっ、ちょっと桜庭くん!」

 後ろから先生の呼び声とクラスメートの自分に対する嫌みが聞こえたが無視だ、相手にしていると体力を使う。こういう時は保健室で休むに限る。

周りからは怠け者とよく言われる、勉強については苦労をしたことが無いから無意識のうちに怠けてしまっているのか俺には分からない。

何か面白い物はないかと探してみたが何も無い。学校の廊下といえばポスターなどが貼ってありそうなものだが、この学校は何一つ貼られていない。そんなつまらない廊下を歩き続け保健室に辿り着いた。

「失礼しまーす、一年二組の桜庭心(しん)です」

 不思議なことに保健室には誰もいない。この学校は保健の先生が毎日三人いて全員が出張に出ることは無いようにしている、出張が無い先生は生徒が全員下校してから帰っている筈だ。

この状況は一体――

「随分とダルそうな顔してるなぁ、桜庭くん! 大丈夫かい?」

「うわっ⁉」

 聞き慣れない声が背後からした、振り向くと見知らぬ男が立っている。俺の名前を知っているが、見た感じ新しい保健の先生ではない。

「い、いつから……それよりどちら様ですか?」 

「まぁ気にしないでよ、俺は善本(よしもと)。見ての通り怪しい者じゃないよ。」

随分と間延びした話し方だ、無理をしているようにも見える。

金髪で耳に十字架のピアスをしている怪しい中年――善本は刃物のようなものを両手に持っている。何故、校門に入る前に捕まらなかったのか疑問だ。善本は、微笑みながら刃物を俺に向けてきた。

「とりあえず、さよならかな」 

「ちょっ!」

逃げようと思った時には遅かった、腹の辺りが熱くなる。自分の体を見ると、刃物が刺さり、ワイシャツは血の赤に染まっている。脳が認識を始めたのか、痛みは遅れてやってきた。

「いってぇぇぇぇぇ、あぁぁぁぁぐ!」

「まずは、一人目だ。所詮子どもなどこんなものだろう」

 善本は微笑みながら保健室を出ていく。痛みが強すぎて他の感覚が麻痺しているのか、何もできない。どうやら俺は授業をサボった代償に死ぬらしい、今日の現代社会はそれほど重要なものだったようだ。

「保健室になんか……来なければ良かった。死にたくない」

 俺は保健室に行く前に戻りたいと思った、保健室には来ないでちゃんと授業を受けようと思った。今更後悔したところで遅い、口を動かすのが精一杯だ。

だんだんと視界が狭くなっていく、もうすぐ目の前が見えなくなる。

 目の前が暗くなった、その瞬間に名前を呼ばれた。

「――くん……桜庭くん……桜庭くん‼」

「えっ?」





俺は――教室に居た。











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