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もう農作業はしなくてもよい。日当たりのよい部屋を与えよう。綺麗な服を与えよう。肌を磨かせよう、甘いものを用意しよう。今までの働きに応じた金を渡そう、好きなだけ休息を取ればよい。
……そんなことは求めてない!私はただ、還りたいだけ!
*
どうしたらいいんだろう。望みが消えてなくなってしまった。
還りたい。その一心で今まで頑張ってきたのに、それが叶わないのだとわかってしまった。なら何のために、頑張ってきたのだろう?六年……人生の六年間。考え方によっては、短い時間かもしれない。でも。
家族とか、友達とか、彼氏とか。大切なひとと過ごすはずだった六年間が無駄に終わってしまって、思い描いてた将来の夢とか、幸せな未来とか、全部どこか彼方に飛んでってしまって、こんな罪滅ぼしされても、もう何とも思えない。怒りも哀しみも、何だか遠い。
どうしたらいいのかわからない。農地を開墾してた時は、自分は男だと思い込むくらい必死になってた。今更女になっていいと言われても、きっともう無理だと思う。だって、ふっと、気付いてしまった。
いつからだろう?生理が来てないのは。
……六年もあったら、彼氏なんてもう次の彼女を作ってる。同じ年頃のひとはみんな就職して、早い子は子どもだって産んでる。私がいたからどうにか成り立ってた家族は、もうバラバラになってしまっただろうか。ピノは元気かな、もう大分年をとっていたから、死んでしまったかもしれない。思い出す、あのふわふわした体。そうだ、どれくらい、動物に触れてない?植物ばかり。私は本当は動物が一番好きだったのに。
とりとめなく考えながら、私はまた眠りの世界に、旅立った。