0、雨降りの空(1)
空がきれいだなぁ。
他人事みたいに呟き、虚空を掴んだ。
遠くには、自ら作り出した"偽り"の雨が降っている。
本来、自分を守るために作りだした他とは異なる魔術。
ぱさぱさに乾いた唇を噛む。何かをこらえるかの様に。
そう、あの雨は僕のかわりのつもりなのだ。
だったら、かわりなんだったら、僕の何もかも、全部背負ってくれればいいのに。
そしたら、どうなるんだろう。
何が残るんだろう。
"本物"の雨が降りだした。
僕の作り出す雨よりも、きれいなのに。
風の吹き抜ける大地に、突然雨が降りはじめた。
空が泣いてるみたいな、寂しそうな雨。
訓練中の学生達が、迷惑そうに空を見上げる。
もともと雨の降らないこの地域に雨を与えてくれたという遠い昔の誰かについての話を思い出す。
きっと戦っても凄かったんだろうな。勇気も信頼も無い私とは、違うんだろう。
知らない人を羨む。
ずっと遠くで雨が振り出した。自然の雨。
別な誰かがいる所に降りはじめた雨を、その誰かはどんな思いで見てるんだろう。
あの雨は、私達が見ている雨ほど、きれいではないんだろうな。
結構前に自分で書いていたものを微妙に変えて書いてみました。3かいめぐらいで動きだしますので気長におねがいします。
ありがとうございました。