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お母さんと隆一1

 お母さんは早いペースで次々と作品を発表していった。テレビのコメンテーターは週一しかないし、パートを辞めた今、執筆にかけられる時間は格段に多くなっているのは事実なんだけど、その空いた時間のほとんどをお母さんはパソコンの前で過ごしているのだ。相変わらず、愛実と会話しながら。


お母さんの中では愛実はちゃんと生きている、私とそっくりな顔で。それがあたしを不機嫌にさせていた。

「メグミ、そんな顔するなよ。俺といて楽しくない?」

隆一があたしの頭をぽんぽん叩きながら言った。

「何で?」

「最近メグミいつでも心ここにあらずじゃん。もしかして俺との結婚止めるってんじゃないだろうな。」

 ついこの間、あたしは隆一にプロポーズされてOKした。でも、あたしはパソコンとばかり会話しているお母さんにそれを言う事が出来ない。

「ああ、それ隆一のせいじゃないよ。お母さんがね……」

「お母さん、反対してるのか」

お母さんと言うと隆一は凄く不安そうになった。

 隆一は老舗和菓子屋「竹林堂」の4代目。今の時代、中卒はなんだろうってとりあえず高校だけは行かせてもらえたけど、その後は先代や先々代について修行の毎日。

 でも、そんな敷かれているレールを走ることにほんの少し反発しているのだろうか。隆一は〇〇検定とかいうのをいくつも受けている。あたしとも漢検で知り合った。

 隆一はたぶん、お母さんが昔ながらの職人の世界に嫁がせることを渋っているとでも思っているのだ。

「ううん……まだ言ってないけど、あの人は反対なんかしないよ」

 そう、あたしが学生の頃からR指定なんかどこ吹く風でBLだってなんのそのだったお母さんは、煽りこそしても反対は絶対にしないと思う。ただでさえ、

「おとうさんが激怒して隆ちゃん(いつの間にか娘の彼氏をそんな風に呼ぶ人だし)殺しかねないから、デキ婚状態だけはカンベンしてね」

と、コンちゃん持たせようとする奴だから。まったく……あたしにそれを隆一に渡せって言う?!

「言えないんだ。すんなりと『おめでとう』って言ってもらえるだろうけど、それが……」

あの家からあたしがいなくなったって、愛実がいるからおかあさんはちっとも悲しくないだろう、それが悔しい。

「何だよ、それ。俺よか親の方が良いって訳? それかなりショックな発言だぞ。ま、メグミ一人っ子だしな。出てったら親を放って行くみたいな気分になるのはあるんだろうけどさ」

「違う、そんなんじゃない!」

気付きたくなかった自分の一番イヤなとこ。愛実という双子の姉がいると言われた時からずっと持っていた――それでもあたしがお母さんの一番でいたいっていう気持ち――今のお母さんの態度は、それをすごく感じさせちゃうのだ。

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