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あたしの知らないお母さん2

 お母さんはあたしのいることになんか気付かないで、その鏡に向かって話し続けた。どうやら今書いている小説の展開について話しているらしい。そっか、悩んだ時には他人に話を聞いてもらうと落ち着くこと多いもんね。それなら直接あたしに言ってくれればお付き合いするのに……だけどあたしは、続くおかあさんの台詞に完全にフリーズしてしまっていた。

「ねぇ、マナちゃんはどう動きたい?」

お母さんは鏡の中のあたしにそう話しかけた。


 マナちゃん……あたしじゃなくてお母さんはマナちゃんに話しかけているんだ! あたしは『マナちゃん』という一言で、お母さんがあたしの写真をわざわざ鏡に映して話しかけている理由が解かった。


『マナちゃん』それはあたしの双子の姉の愛実まなみ。とは言ってもちゃんと生まれてきた訳ではなく、医学的には『バニシングツイン』というらしく、まだ妊娠3カ月の頃、一人流れて行ってしまったのだという。バニシングツインは圧倒的に一卵性双生児が多いというので、普段から名づけの大好きなお母さんは、生まれて来られなかった姉にまでちゃんと名前をつけていた。


 あたしが愛実のことを知っているのは、お母さんがブログ時代にそのことを短編小説で発表していたから。お母さんは発表時に、

「どうしてもこれだけは書きたいの。メグちゃんのことが出てくるから、了解だけ欲しい」

と言ったので、他のは読まないけどそれだけは読んだのだ。あたしはその時、

「本名の野江恵実で出てるわけじゃないから別に構わない」

と答えたんだけど、その話の一文に

『私は鏡の中の愛実(もちろん、小説中は彼女にもご丁寧に違う名前を付けていたけど)に呼びかける』

とあった。お母さんは鏡に映るあたしの姿に、一卵性双生児だろうから生きていればそっくりに育っているであろう愛実の姿を重ねているのだ。


                                                                                               あたしは、複雑だった。そりゃ、他人だと著作権の問題とかあるし、結局は自問自答しているだけなんだろうけど、何だかあたしにはそれが愛実があたしからお母さんを取り上げようとしてるような気がしてしまったからだ。


そして、あたしはその少し後、お母さんが「青木賞」受賞作家と言う事であの有名な対談番組に出演した時に、

「愛実は今、私の小説の中で役者をしてるんです。結構お茶目さんなんですよ」

と真顔で言った言った時、その台詞に胸がきりきり痛んだ。

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