③
そして村長が教えてくれました。私たち泡沫の一族の役目を。私のやるべきことを。
「驚かせてすまんのぉ、じゃが、これも必要なことなんじゃ。
許しておくれ、シエルちゃん」
「いえ、教えてください! 私、やりたいです!お父さんはあれだし、、、 お母さんが大事にしていたもの、私も大事にしたいんです!」
迷いはありませんでした。不思議なことに、私はこれが私のすべきことなのだと理解していたのです。
「泡沫の一族の始まりは500年ほど前になるかのぉ。
先の人魔戦争でヒト族は窮地に立たされ、人々は皆疲弊しておった。
そんな我々を憐んでくださったのが、女神ユーノー様じゃった」
「人魔戦争、、、」
御伽噺でしか聞いたことのなかった話に、私は驚きました。
「今の魔族はヒト族との共存を大々的に掲げ、そんな過去なぞ微塵も感じさせてはおらんがの、事実、ヒト族は魔族との戦いに大敗し、疲弊していたのじゃ」
「そんな折、ユーノー様はご自身の眷属様である人魚様を遣わし、我々に癒しの力を与えてくださった。
それがあの安寧の泉なのじゃ」
「そして、その癒しの力は本来、人魔戦争によって傷ついたヒト族の傷が癒えれば終わる予定だったのじゃよ」
「え、でも、、、」
「そうじゃ、その力は今も継承されている。
それはの、人魚様とヒト族のある男が、互いに惹かれ合い、恋に落ち、そして一緒になりたいとユーノー様に懇願したことで状況は変わったのじゃ」
「人魚様とヒト族の、、、恋?」
「うむ。あまりに2人が泣いて願うものじゃから、ユーノー様がお認めになられての。
ユーノー様は慈愛の女神様、愛する2人を引き裂くことなぞできんかったんじゃよ。
そしての、お2人の間に生まれたお子こそが、泡沫の一族の始まりなのじゃ」
村長の話は10歳の私にはあまりにも難しく、当時は全てを理解できたわけではありませんでした。
しかしこれだけはわかりました。本能的に気付かされたのかもしれません。
「え、では私は、、、ユーノー様の眷属様。人魚様の血を引いている、、、のですか?」
「そうじゃ。
代々泡沫の一族は、一番最初に生まれた女児のみがその力を受け継ぐと言われておる。
そしてその秘密は、自分の子にその役目を引き継ぐときに初めて語っても良いという制約が付いているのじゃ。
それまでは家族であっても、決して言ってはいけないんじゃよ」
「そしてまた、自分の伴侶にもお役目を引き継ぐときに初めて語ることを許されるのじゃ」
「だからお父さんは、、、」
「そう、あやつは知らんのじゃ。
この泡沫の一族の役目を。
そして、この先も知ることは許されんのじゃ、、、
申し訳ないがのぉ、、、」
「そんな、、、お父さん、、、」
「これも運命。
受け入れるしかないんじゃよ、、、」
「泡沫の一族」、「女神ユーノー様の眷属様の子孫」なんとも現実離れした話に、10歳の私にはとてもじゃありませんが、理解することができません。
しかし、村長のお話を疑っているわけでもありませんでした。皆さんがいつも親身に私たちを見守ってくれていたのを知っているからです。
それに、先ほどの光景、、、あれはもう、真実と認めざるを得ない光景でした。




