7-3 目薬
彼は驚いて数滴落とし私を少し見つめた後、ゆっくりまばたきをした。二、三度目を開けるたびに私のことを呆れたような、まだ怒っているような顔で見つめてくる。
うん、ごめん。いや、でも虫がいたんだよ。蚊だったんだよ。某ダークファンタジー系の漫画じゃないけど、駆逐したかったんだよ。目の前の蚊だけだけどね。
そんなこんなで言い訳…ではなく、ちゃんとした理由を考えていると、左目の周りについた水滴を拭いている彼から言われた。
「さっきから変な動きしてるから、何となく虫がいたのはわかってたけど俺の腕に当てるのはやめてくれない?」
いかにも嫌そうにしている気持ちが込められているが、たぶんこれでも抑えてくれてる気がする。はじめに見たあの呆れ顔?の時に言われていたらさらに怒ってそうだったから。安心するのは良くないが、とてもではない怒りで少し安心した。
「ごめん、腕に蚊がいたから」
「え、吸われてた?」
「いや、私がずっとどこかに止まったら叩こうと準備してたから大丈夫だと思う」
「なら良かった…じゃなくて、もう片方の目薬差したいんだけどまた目以外にもたくさん水滴がつくのは嫌だから先に虫潰すの手伝うよ。それとももう潰した?」
「いや、まだ。」
「どこいったかわかる?」
彼が言った瞬間、今度は彼の手寄りの右腕にとまった。
「あ、今右腕に―」
言い切る前に彼も気づいたらしく彼が左手を即座に動かして潰した。私より殺気がある気がした。怖ぇ。
彼はその蚊をみてスッキリしたのか目薬の蓋を開けっ放しにして手を洗いにいった。
それから戻ってきたとき「やっとだ…!」と心底うれしそうにして席に着き始めた。
彼は準備をして差した。と思ったら今回は嬉しすぎて力んだのか、再び周りにもついてしまった。
どっちにしろ目じゃないとこにも垂れてんじゃん。
少し笑って言った。
「結局、他のとこにもついちゃってるよ」
「自分で周りにつけるのと、自分以外の要因でつけるのとは違うんだよ」
彼は恥ずかしさを紛らわせてそんなことを言った後、右目のあたりを拭く。
なるほど、と私は彼のことをまた1つ知った。
最後までお読み頂きありがとうございます!
自分で自分に思うことと、それを人に言われるのは違う気がします。褒められるのは嬉しくても、自身で認識している欠点を指摘されるのは別ですが。
最後までお読み頂きありがとうございました!




