7-2 目薬
しかし、彼との距離が近いところで私がムキになって手を大きく振ってしまったからか、虫が彼の頭付近を飛んでいこうとしたとき彼の顔を見ると彼が私をうっすら睨んでいる気がした。いや、睨んでいるというよりジトッと見ているんだから察しろといった様子だ。ついさっきまで、彼のことを見ていたはずなのに目薬のことなんかさっぱり忘れていた私は、後から彼が目薬をさそうとしていたのを邪魔していたことにやっと気づいた。
「……ごめん、どうぞ差しててください。私はここでじっとしています。」
「……はい、じっとしていてください」
二人は互いに向かいの席についた。
彼は再び目薬をさそうと左手で左目を開け、右手で目薬を持ち、親指で目薬の容器を押し始めた。
そのとき、彼の左腕にちょうど先ほどの虫が止まってしまった。
蚊だった。
私の右手はいつの間にかそこへ向かっていた。ふと気づいた時には、初めに私が彼の腕を手で叩いた時の音、次に目薬から水滴が数粒たれ一粒はしっかり目に入ったかもしれないがほとんど無意味に顔に落ちてしまった瞬間、そして彼が再び私を見つめ何をしてくれたんだとでも言いたげな顔が私の頭にスローモーションで映し出された。
最後までお読みいただきありがとうございます!
今回は珍しく旦那が怒りっぽいですね。怒り方は人によって全く異なるので予め怒り方の種類とその対処法一覧みたいなものがあればいいのにと思ったりします。
あとがきまでお読み頂きありがとうございました!




