第二章ーパラシュートなしの落下
沐衡の言う通り、人には階級があり、官僚たちには品級があり、浮生門にもそのレベルがある。それぞれは初級、中級、高級、伝説級と神話級だ。
浮生門は世界中にランダムに出現し、人に観測されると扉が開き、さらに門には閉鎖時間のカウントダウンが表示される。
初級浮生門は、二階以上でなければ中に入れず、二階に満たない者は見えない障壁に阻まれて門の外に留められる。
中級浮生門は、三階以上で初めて進入可能だ。内部の環境構造と仕組みは初級と大差ないが、攻略難度は一段階上がる。
高級浮生門は、五階以上の強者のみが進入できる。内部構造は初級・中級とは完全に異なり、もはや一つの完全な世界、異世界と言ってもいい。
高級浮生門の中には広大な世界があり、一般的に複数の国家や様々な人型生物が存在する。時には未来世界が現れることもあり、今の飛行器やエレベーターなどは、未来世界の産物を模倣して作った施設である。
伝説級浮生門は、その名の通り、各世界で何代にもわたって謳われてきた英雄叙事詩の世界だ。なぜか攻略目標の多くは「魔王」と呼ばれる強大な個体の討伐となっている。六階以上でなければ挑戦する資格すらない。
神話級浮生門は、この門の中の世界には文字通りの神級生物と物品が存在する。でも、百年に一度見られるかどうかだ。機会と脅威が共存する。七階以上の偉人でさえ、十分な準備を整える上で、死の覚悟を保って挑まなければならない。
飛行器に向かう途中、徐夜は沐衡の話を聞き終えた。ようやく長い廊下を抜け、飛行器の駐機場に到着した。
徐夜は飛行器を一瞥した。現在、坤星には三種類の飛行器がある。軍用、民用、そして家用だ。今回彼らが乗るのは小型で俊敏に動作できる家用飛行器で、外観は楕円形をしており、真っ白な外殻がさらに卵のように見せる。楕円の両側からそれぞれ長方形のドアが開き、乗り込むことができる。
飛行器内部には五つの座席があり、最前部には主操縦士と副操縦士の席、さらに左後方にはこの飛行器の管理者の席がある。管理者は日常の整備役と案内役を担当し、飛行器が故障時には操縦して救命を試みることはできる。いわばこの小さな機械の保険のような存在だ。後部にはさらに二つの座席があり、家族旅行に使えるようだ。
「沐様、こんにちは。今回この飛行器をごレンタルいただき、ありがとうございます。私は今回の航法士、三階のアマチュアハンターの天水です。よろしくお願いします。」青い制服を着た天水は席から立ち上がり、沐衡に右手を差し出した。
沐衡は握手を交わし、笑顔で答えた。「天水さん、こんにちは。私は沐衡、四階のプロハンターです。こちらは友人の徐夜、二階のアマチュアハンターです。」徐夜は天水に軽く頷き、再び沐衡を見た。
沐衡も徐夜の視線に気付き、振り返って笑いかけると、「まあ、ひとまず座ろうか。後で詳しく説明するから」と言った。そう言うと、沐衡は主操縦士の席に直行し、徐夜を副操縦士の席に誘った。
「飛行器の操作は簡単で、すぐに覚えられる。ちょうどこの機会に操作方法を教えてあげよう。それに、霊力が強ければ強いほど素早く飛べるから、基本的に階級が高い者が操縦するんだ」と沐衡は説明した。
「このボタンが電源で、君と私が同時に3秒間長押しするとアンロックされる。」
「そうそう、その通り。ほら、画面がついたぞ。」徐夜と沐衡が赤いボタンを3秒間押すと、二人の目の前に突然、ホログラムのスクリーンが現れた。このスクリーンからは飛行器の外の全てが見渡せ、前方だけでなく、後方、上方、下方までもが把握できる。まるで飛行器全体が透明になったようだ。
「そしてこのジョイスティックがコントローラーだ。俺のところ、君のところと天水さんのところには一つずつある。三つの回路は独立しているので、一つが故障しても他の二人で操作できる。そして離発着は……」沐衡が簡潔に説明した後、徐夜はすっかりこの飛行器の操作方法を理解した。ゲームでレーシングカーを運転するよりも簡単で扱いやすい!
「さあ、3、2、1、点火!飛べ!」実際には点火などない。飛行器は霊力で駆動するため、環境への影響は一切ない。ただ沐衡がこう叫ぶのが好きなだけだ。こうして、三人は「卵」の中に乗り込み、海佑市の南にある滇池市へと飛び立った。昨日、そこで初級浮生門が観測され、既に大勢の人が向かっているため、乗り場には人がまばらだった。
その途中、沐衡は再び説明を始めた。「我々のような浮生門を探索する者を、世間では『トレジャーハンター』と呼び、全員がハンター公会に所属している。君もだ。以前学校でみんなに登録させただろう? 二階と三階はアマチュアハンター、四階と五階はプロハンター、六階と七階はマスターハンターと呼ばれる。アマチュアハンターは浮生門で得た報酬の5%を公会に納め、プロは10%、マスターは20%だ。これを我々は一般に『狩税』と呼び、公会が徴収した狩税の大半は民生の改善や次世代の育成に使われる。」
「また一部分は我々への補助にも使われる。例えば一般人が飛行器をレンタルすると100ゼン(ゼンはこの世界の通貨です)かかるところ、我々は20ゼンで済む。割引が大きいんだ」と沐衡は言った。
徐夜は頷き、少し情報を処理してから、沐衡に問った。
「あの通天塔って一体……」
「通天塔か。今回の浮生門探索が終わったら行くつもり。その時には君自身の目で確認した方が早い。今のメインのはこの浮生門だ。ところで、なぜ『浮生』と呼ばれるか知ってるか。」
「浮生門の中に小さな世界があり、幻のようで、他人の人生を経験したような気分になるから。」徐夜はそう答えた。
「半分正しい。『浮生』と呼ばれるもう一つの重要な理由がある。それは、中の全てが虚構だが、我々にとっては現実に相違ないだということだ。例えば君が中の世界の原住民を殺したとしても、あの人は真の意味で死んだわけではなく、君のその後の旅で出会わなくなるだけだ。これがその虚構性だ」
沐衡はすこし間をおいてから、話を続けた。
「しかし、我々が中で食べた物、負った傷、そして得た報酬は、全て門の外にそのまま持ち出せる。だから中で我々が死ねば、それは本当の死だ。だが逆に言えば、持ち出した物は自由に使える。だからこそ『浮生』と呼ばれる。まさに『偽りが真となれば真も偽となり、無が有りとなれば有も無となる』だ!」
「なるほど」
徐夜は合点がいった。
......
3時間後、滇池市上空。
滇池市の名高い高原「西南夷」の上空に、巨大な黒い門が開いて浮かんでいた。門の中には白い渦があり、周囲の全てを吸い込むかのようだ。門の外には密集した人々が見物しており、地上に立つ者もいれば、空中に浮かぶ者もいた。六階になると霊力が気体に変わり、人は空を飛べるようになる。これらの六階強者は、各学校の校長やあるいは名家の長老で、生徒や子孫の帰還を待っているのだ。もちろん、ハンター公会の者もおり、一人一人の身分証明を確認し、統計と登録を行っている。
沐衡は飛行器を公会の責任者の傍らに飛ばした。ドアを開けて手を振り、左手の甲に刻まれた数字を見せた。
「拙者は沐衡、50級四階のプロハンターでござる。今回21級二階アマチュアハンターの徐夜を伴い、浮生門に参りぬ!先輩、どうかご通行を!」沐衡はそう叫んだ。
「うむ、確認した。予約リストに確かに君たち二人がいる。身分も合致している。行ってこい。気をつけろ」責任者は小さな板を取り出し、何かを入力すると、進入を許可した。
「行こう、徐夜。飛行器から飛び降りて中に入るんだ。高所恐怖症だなんて言うなよ~。ありがとうございました、天水さん!ええと……一ヶ月後のこの時間に迎えに来てください! 頼みました!」沐衡はそう言い残すと、飛行器から飛び降りた。
「??? パラシュートとかないの? ああ、もういいや、彼の言う通りにしよう。」徐夜はこの高さに全身から冷や汗が出るのを感じたが、それでも沐衡の指示に従い、覚悟を決めて飛び降りた。
「ああああ! 木頭めーーーー!」二人は次々と渦の中に飛び込み、何の障害も受けなかった。外から見れば、ただ渦に二つの波紋が立っただけで、すぐに「平ら」に戻った。