あなたが好き
その人に出会ったのはバイト先だった
高校生だった僕は
たちまち年上の彼女に恋をした
真剣に仕事をするあなたの横顔が好き
からかうと上目遣いで悔しがるあなたが好き
話しかけるとにこにこしながら聞いてくれるあなたが好き
隣で仕事をするあなたが好き
僕はあなたの隣にいる時間が幸せ
彼女には恋人がいた
だからこの時間だけでいい
この時間が一番幸せ
それから十年後
偶然再会した旅先
僕の心は再熱した
だってここはホテル
彼女は用事で一人で来ているらしい
僕はカフェに誘った
「久しぶり」「元気?」
会話する彼女を見つめる
昔の想いが蘇る
あの言葉を
聞こうか聞くまいか
何度も葛藤した
聞かずにいけるか
紳士に聞くか
僕は聞いた
「今、しあわせ?」
彼女は答える
「うん、しあわせ。」
「そっか、じゃあ仕方ない。」
彼女は一瞬止まり
やがてクスクスと笑った
昔も 僕はそうやって身を引いたんだ
僕は彼女が好きなんだ