幻滅
※これは中島視点の物語です
3年上層部も、1年下層部もいなくなったこの学校は妙にしんとしていて不気味だ。
「・・・さて・・・誰もいなくなったことだし・・・いつもじゃ調べられないところに行くか。」
五稜郭さんは懐中電灯をもって言う。
「え?なんで懐中電灯?」
「あ~・・・もうそろそろ消灯時間で学校全体の明かりが消えるからな。」
「・・・え!?」
ちょっ!!
そんなこと、聞いてないですよ!!!
「お前ビビってる?」
隣で鷹村くんが嬉しそうにこちらを眺めてくる。
「び・ビビってません!!」
などと強気ででるが・・・
実際はめっちゃビビってます!!
「・・・一応固まって動いたほうがいいだろうな。」
山崎さんは皆に懐中電灯を渡しながらいった。
もはや軽く探検みたいだ・・・。
・・・ま、夜の学校の怖さは異常だ。
こんなところの探検、誰が好き好んでやるのだろうか・・・。
「まぁ、電気がつかなくなるのは廊下だけだ。部屋はちゃんとつくから安心しろ。」
五稜郭さんはそんなことをいうが・・・
いやいや、途中の行く道が一番怖いんじゃないですか!!
全員に懐中電灯が行き渡った地点で一同は歩き出す。
「・・・うわっ、暗ぇ・・・」
私より前を歩く山崎さんがそんなことを言う。
私からはまだどれぐらい暗いかはわからないが・・・
やめてください、そういうこというの!!!
そんなことを思いつつも出てみると、たしかにそこは暗かった。
しかも非常口のライトや非常ボタンの明かりが妙に眩しく輝いていて不気味だ。
「・・・どこへ向かってるんですか?」
「生徒会本部だ。」
「・・・え?」
行けなかった場所って生徒会本部?
五稜郭さんや山崎さんは幹部なんだから行けるでしょうに。
「あそこの一番奥に会長自身が書いてる資料がある。」
「・・・」
「その資料は歴代の会長しか見れないって決まりなんでな。基本的にいつも3年幹部がそこで誰かが見ないように見張ってるわけだ。」
「・・・んなの昼間に堂々見たら、下手したら首が飛ぶぜ。」
山崎さんは苦笑してそんなことを言う。
それってもしかして・・・
私たち今、めっちゃヤバイことしてるんじゃぁ・・・。
「でも3年が監視してるってことは・・・」
「3年が内容を確認してる可能性があるな。」
「それがわかった地点でもでかいし、もしかしたらそのノートに連中の動きが書いてあるかもしれん。」
「3年幹部たちがこそこそと謎の会議をしてれば、そいつがビンゴの可能性があるっことか。」
鷹村くんが手を顎にあてて難しい顔をしている。
「まずは説得だからな。・・・釜をかけてみるってのも手だろうな。」
「まぁ、めぼしいもんは何も書いていないことを願うのが一番だがな。」
五稜郭さんの言葉にハルさんが苦笑する。
「めぼしいことが書いていなければ帰れますしね。」
「全くだ。このまま平和で終わって欲しいもんだな。」
そんなことを言いつつ、本部会議室へとやってきた。
一応中に人がいるかもしれない。
・・・そんな不安から静かに一同は静かにドアをあけて中へと入る。
「・・・」
すると先頭を歩く五稜郭さんの足がとまった。
「・・・ん?奥にいくんじゃないんですか?」
「シッ。」
五稜郭さんは手で全員に「静かにするように」ということと、「懐中電灯のライトを消せ」という合図をした。
「・・・どうしたんです?」
ハルさんが不安そうな顔をする。
「・・・声が聞こえる。・・・誰かあん中にいるな。」
「・・・それって・・・」
もしかして・・・ホントに会長の代わりに命令を出している3年幹部・・・???
「・・・厳島さんに応援を頼んできます。」
「・・・俺も行ってきます。1人で行動するのは危ないですし。」
ハルさんと鷹村くんがこんなことを言い出す。
「・・・任せた。」
2人は音を立てないように静かに部屋から抜け出していく。
「おい、五稜郭・・・こいつらって・・・」
「・・・わからん・・・が、いざと言う時は・・・」
彼女は飛沫からもらったと思われるガス銃に手をかける。
こんな真顔な五稜郭さんは初めてみた・・・。
基本的にいつも真面目な人だけど、今という今は相当に緊張もしているのだろう。
「・・・マジかよ・・・」
山崎さんも腰にかけてあったガス銃を抜く。
五稜郭さんは目を閉じて銃身を額につけて何かを考えているようだった。
・・・彼らが3年幹部じゃない可能性もある。
いや、むしろ3年幹部は何にもしておらず、将軍のいった「おかしなこと」がそもそも何の問題も発していない可能性もある。
・・・しかしだったら彼らはこんな時間に何をやっているのだろうか・・・。
「・・・いいか、中島。もし撃ち合いになったら一番最初に部屋を抜け出せ。」
「ですが・・・」
「お前は何も持っていないだろう?」
・・・そう言われて思い出した。
この間、紀龍くんにガス銃を預けられた。
・・・ただしそのガス銃はカバンのなか・・・。
つまり情報処理室にある。
・・・今はもっていなかった。
「・・・連中、何か探しもんか?」
山崎さんは中をちょっと覗き込む。
ここからでは暗くて何も見えないが、暗い場所にいて少し時間もたった。
少しずつ目も慣れてくる。
奥の部屋の扉の下から若干のライトの光が出ていることに気づく。
部屋のライトをつけた時よりは少ない量だ。
「連中も最小限にライトを使ってるってこたぁ・・・探しもんみたいだな。」
「・・・連中は何探してんだ?」
「会長に裏切り者の名簿でも書かれて隠された・・・とかですかね?」
「・・・」
「・・・」
私は軽い冗談のつもりでいったのだが・・・
2人は黙り込んでしまう。
そんな中、応援を頼みにいってきた鷹村くんとハルさんが帰ってきた。
「只今戻りました。」
「・・・どうだった?」
「ちゃんとつれてきましたよ・・・」
そういって後ろから現れたのは厳島さん本人だった。
「おい、誰が厳島本人を呼んでこいっていった。ふざけてるのか。」
この緊迫した空気のなかで、五稜郭さんはハルさんにキレ気味にいった。
「すみません。・・・でも応援っていっても今日にいるのって厳島さんと凛動さんぐらいでして・・・」
「・・・それで本人にきてもらったってわけだ。」
鷹村くんが体勢を低くして前へと進んでいく。
「・・・すまない、冷静に考えればそうだったな。・・・八つ当たりだ、忘れてくれ。」
五稜郭さんが謝ると、ハルさんが笑顔で言う。
「缶ジュース1本。」
「・・・ったく・・・はいはい。」
「俺にもジュースつきますよね?」
「つけてやるよ・・・」
「・・・じゃぁ、中島と五稜郭には俺が灼熱アイスをおごってやろう。」
ハルさんの言葉でだいぶ緊迫した空気も和らいだ。
さすがというべきか・・・。
彼らしいやり方だ。
「・・・話は聞いてますが、ホントに彼らが・・・?」
凛動さんは不安そうな顔をする。
「わからねぇ。・・・わからねぇから確かめにいくんだ。」
そういって山崎さんが前へと進みだす。
「・・・まさかホントにこれを生徒会内部の人間に向ける可能性がでてきちゃったとはね・・・」
厳島さんは苦笑いしながら、彼女もガス銃を握り締める。
それに対して凛動さんは竹刀である。
幹部と一部の下層部にはガス銃はまわっているが、まだまだ足りない、ということか・・・。
「・・・よし・・・行くぞ・・・」
「・・・」
五稜郭さんは深呼吸を1回してから、「・・・よし」と気合を入れて歩き始める。
ゆっくりとドアを開くと、正面には2人の姿があった。
暗闇にだいぶ慣れた目に見えるのは、2人は後ろ姿でこちらに気づいていないということである。
1人は後ろ側の様々な資料がある本棚のようなところをあさっている。
もう1人が、あさっている人からもらった資料にライトをあてて見ているように見える。
「・・・」
私たちは静かにそこへと侵入し、彼らの近くへと足を運んでいく。
私も奥へ進もうとすると、前を歩いているハルさんからここで待機しているよう合図をうけた。
おそらく武器をもっていないからだろう。
「・・・そこまでだ。」
やがて小さな部屋に響きすぎるぐらいに、この雰囲気に1つのピリオドをつける声が響いた。
・・・だが予想外だったことは相手が2人だけではなかった、ということだった。
「動くな!!」
「・・・チッ・・・」
気づけば先へ進んでいったこちら側のほうが完全に囲まれてしまっていた。
扉が開いたところから正面しか見えなかった為だ。
部屋に入ったところの角にも人がいたのだ。
おそらく手分けをして探し物をしていたんだろう。
「武器を捨てろ。」
「あぁ?そっちが捨てな、どっちが有利かはみればわかるはずだ。」
前へ進んだ人たちは前しか見ていなかった。
今も後ろから銃を突きつけられていることにはさすがに気づいているだろうが・・・
その銃を向けているのが誰かはわからない。
私から見てもそれは同じだった。
銃を幹部たちに向けている人は背中しか見えない。
一番最初から見えていた2人も背中を向けない為、誰だかわからない状況である。
「・・・お前ら、こんなところで何をしてるんだ?」
「お互い様ですね。」
この声には聞き覚えがあった。
一番前にいる彼はそんなことを言いつつも時間が惜しいのか、銃を向けられているにもかかわらずライトで資料を読みあさり続けている。
おそらく相手は急がないとこちらの援軍が来ると思っているのだろう。
・・・まぁ、こちらはこれで精一杯なのだが。
「こちらが優勢なのは見なくてもわかります。・・・あなた方が先に言うべきじゃないですかね?」
「・・・」
「言えないか。・・・てことはこいつらが・・・」
彼らも誰かを探しているようだが・・・。
それよりも大きな驚きがあった。
今度の声は間違いない。
聞きなれた声だ。
・・・だがなぜ彼らがここに・・・
「・・・」
ここは部屋のライトをつけるべきだが・・・
それには部屋のなかへと進まないといけない。
「お・おい、中島、どこへいく?」
鷹村くんがとめようとする。
「今は中は危険だぞ。」
「ライトをつけてきます。・・・そうすれば勘違いはとけます。」
「・・・勘違い?」
鷹村くんは「?」といった顔をしながらついてくる。
「・・・あった・・・!」
「なに!?」
その頃、なかでは一番前の人がようやく何かを見つけたようだ。
彼の仲間と思われる生徒たちも気になるようだ。
「・・・それをどうするつもりだい?」
「もちろんあなた方の犯行の証拠にします。」
「・・・犯行?」
「おいおい、よく言うぜ。人に罪なすりつけるんじゃねぇよ。」
中は相当まずいところまできている・・・!
できる限り急いでライトのところまで音を立てずに進む。
「・・・動かないでください、それ以上勝手なことをすると撃ちますよ?」
「待て、まだ撃つな。」
ハルさんが銃を相手に向ける。
五稜郭さんがとめているが・・・
だが相手もこちらに銃を向けていた。
「ったく、よくしゃべる悪党だぜ。そんなに撃たれたいのか?」
「相手の挑発に乗るべきじゃありません。ここは銃をおろしてください。」
まずいまずい!!
急がないと!!
そう思って少し焦ったのが運の尽きだった・・・。
体を横においてある椅子にぶつけて倒してしまう。
・・・予想以上に大きな音がした。
一瞬焦った。
相手にバレてしまうのではないか・・・!
だがこれにびっくりしたのは私たちではなく・・・
むしろ部屋の中心でまずい状況となっている者たちだった。
「撃ちます!!」
「野郎!!」
「ま・待て!」
「待ってください!!」
その時、部屋に明かりが灯った。
「・・・な・・・」
周りは全員ポカーン、という状況だった。
それと同時に今まで本気で「裏切り者」だと思って武器を向けていた相手が「まさか彼らだったとは・・・」といった、「今までの緊張はなんだったのか」と言いたげな様子で全員力が抜けてしまっていた。
当然ガス銃はもう人の方向なんて向いていない。
(どうにか間に合った・・・)
私はホッとため息をつく。
「・・・お前ら、ここで何をしてる?」
「それはこっちのセリフですってば。」
今度はだいぶ落ち着いた様子で先ほどと同じような言葉を繰り返していた。
それはそうだ、相手の姿が見えればそうなる・・・
そこにいたのは予想していた3年間部の誰かなどいなかった。
目の前にいたのは1年の下層部の者たちだった。
「お前らは帰ったんじゃねぇのか?」
「ちょっと気になることがありましてね。」
そこの中心にいるのは西本くんだった。
・・・というかよく見れば知ってるメンツばかりだった。
飛沫くんに神威くん、それに陽炎くん。
そして「やっぱり彼か・・・」と思われる人物、紀龍くんもいた。
だがよく見れば3人知らない人が混じっていた。
「ある人に引き裂きを解除するよう頼まれたんで、それを会長にお願いしようとしたんですが・・・」
・・・え?
ある人???
それって私じゃない???
「なんか3年幹部に阻まれて会長にあわせてもらえなかったもんで。」
「・・・」
「3年幹部はどうにもこうにも合わせたくなさそうだったので、“何があるのかな?”と気になって調べてみればこのザマです。」
「俺らは3年幹部が会長を装って命令でもだしてんじゃねぇかと思って調べてたんだ。」
飛沫くんがそんなことを言う。
つまり・・・
「・・・まるっきりオレらと同じじゃねぇか。」
五稜郭さんは拍子抜けしたような様子だ。
「まさか1年の精鋭がこんなに集まってるとはな・・・」
「こっちからすれば2年の首脳がこんなに集まっているとはって感じだがな。」
お互いに苦笑し合う。
「それで・・・さっき、何を見つけたんだ?」
「あ、そうでした。・・・これを見てください。」
そういって探していた資料のなかを開く。
私や鷹村くんもそちらへと行く。
「こいつは3年会計係の・・・」
その資料はまさに会長のノートではなかった。
「3年会計係」のものだった。
「ここを見てください。」
そこには今日の先ほどの総攻撃の内容が細かくぎっしりと書いてあった。
「・・・会計係がなぜ戦闘報告を?」
「・・・」
「・・・こっちです、こっち。」
西本さんが指さしたのはそこから少ししたのところだった。
とても小さな字でぎっしりと書いてある資料だ。
一応一段落あけてあるが、気をつけなければ見落としてしまうところだ。
そこには本来何もないはずの明日の予定が「1つ」だけあった。
「・・・BS会議。」
「・・・なんだ、BS会議って。」
「バランスシートとかか?」
「・・・」
山崎さんが冗談をいうが、さすがにこの雰囲気では効果は薄いようだ・・・
「・・・なんで明日?」
明日は土曜日だ・・・
我々生徒会もいなければ、打連ですらいない。
「・・・誰もいない時にやるコソコソ会議・・・か。こいつは臭うな。」
山崎さんがそんなことを言う。
「生徒総会での予算案を決めるにはまだ早いね・・・」
つまり・・・会計係という役割で装っているが・・・
実際は何か別のことをしている可能性がある、と。
「・・・会長のノートにはなんか書いてなかったか?」
「それがなかったんですよ。」
「・・・なに?よく探したのか?」
「はい。・・・ですが・・・」
「・・・そうか。」
五稜郭さんはガス銃に安全装置をかけて、腰へと戻した。
「つまり・・・明日のBS会議とやらの連中が会長のノートをもってれば・・・」
「・・・ビンゴ、ですかね。」
西本くんはそういってノートをもう一度見返す。
「明日は9時に会議開始のようです。」
「ふむ・・・。」
「・・・我々も参加しますよ。」
「・・・は?」
「やるんでしょう、包囲戦。」
そう西本がいうと、山崎さんは苦笑した。
「ったく、隠し事はできねぇな。」
「ですが彼らが協力してくれれば・・・」
「あぁ、わかってるよ、ハル。」
彼らが協力してくれれば戦力はだいぶ大きくなる。
包囲戦もやりやすくなるのは確実だった。
「・・・計画に参加はお願いするが・・・作戦をやるかはこれからの会議で決定する。」
「はい。」
「・・・ということでお前らもこい。」
「・・・はい?」
山崎さんの言葉に一年一同は「え?」という顔をした・・・。
それから夜に会議が行われた。
3年がいないので、2年が最高責任者の会議である。
この状況で2年幹部は3名のみ。
他にハルさんと凛動さん2名の幹部。
しかしこの会議は下層部の生徒も巻き込んで行われた。
私自身も初めて会議に参加した形となった。
こういった下層部を取り入れての会議はおそらく初めてであろう。
とりあえず会議は比較的サクサクと進んだ。
もはやここまできて、明日の包囲戦の中止を求める声はなかった。
だがその内容については意見がわれた。
確実な証拠がない地点でいきなり包囲をするのはまずい、という意見と、逃げられないように方位をすぐにするべきという意見だ。
たしかにまだ確実な証拠がないので、明日の「BS会議」とやらがホントに私たちが睨んでいるものかとも限らない。
「だが確実な証拠を掴むには彼らと接触する必要がある。その証拠を掴む為に相手が快く調査に協力してくれるとは思えん。数で囲って相手を威嚇し、ムリやりにでも調査する他ない。」
「それで、もしボクたちの間違いだったら?・・・上層部の会議を無理やり中断させたあげくに何も証拠がでてこないで、ボクらの間違いでした、だったらただじゃ済まされないよ。」
「・・・」
沈黙が走る。
どちらの意見も理にかなっている。
「・・・ちょっといいか。」
手をあげたのは飛沫だった。
「なんだ?」
「遊撃作戦の際に使ったトランシーバーを使ってみたらどうだ?」
「なに?」
その計画は大胆なものだった。
まず先遣部隊として会議室殴り込み班にトランシーバーをもたせる。
入る前にトランシーバーをオンにしておき、本部にまで話の内容が届くようにする。
それで証拠のようなものを見つければ、さりげなく相手との会話にだして報告する、というものだった。
「これなら少人数でいけるから上層部の会議を中断させる必要もない。」
2~3人の調査班なら、「気にせず会議を進めてください」でどうにかなる、という考え方だ。
「だがその先遣班はどうする?相手が黒なら脱出は困難、証拠をつかんだ本部から出た本隊の攻撃に巻き込まれる可能性もある。」
「そもそもこちらは数が少ない。・・・確実に捕まるとわかっていて、人数を出すのは気が引けるよ。」
たしかに今はいつものように警備部の主隊がいない。
ジャスティスと警備部の精鋭たち、それにわずかな幹部だけだ。
その人数、全員で14人だ。
うち幹部は後方指揮をとると思われるから、3名抜けることになる。
さらに万が一の際の幹部の護衛として2人抜けるとして・・・。
包囲戦に投入できるのは9人。
うち2~3人も先遣班として出してしまえば、6人しか残らない。
たった6人で包囲戦など不可能な話だ。
数で相手へ威嚇できない以上、相手が本気なら突破してくるだろう。
相手の数は不明だが、規模からいって4~7人程度。
どっちもどっちな結果になる。
「・・・でしたら私が行きましょう。」
そこに名乗り出たのは西本くんだった。
「なら俺も・・・」
「いえ、私だけでいいです。・・・下手に人数をまわしては包囲戦は不可能です。」
西本は1人の生徒の申し出を断って幹部たちのほうをみる。
「それでいいですか?」
「・・・いいのか?」
「私とて昨日まで味方だった生徒とやりあうのは望みません。・・・証拠を探しつつ、交渉をかけてみます。」
「・・・」
「トランシーバーは携帯しますが、私は必ず10分で勝負をつけてきます。・・・それ以降になってもでてこなければ相手が強硬手段に出た、ととってください。」
つまりそれは・・・
西本を見捨てて突撃しろ、ということだった。
「・・・いざという時は強硬手段をとってもらってかまいません。」
「だが・・・」
「信用してください。」
彼は笑って軽く答えるが・・・
信用するって何を信用すればいいのだろうか・・・。
戦いに巻き込まれない方法でもあるのだろうか。
「それと交渉時に逃げられては話になりません。・・・証拠はなくとも、BS会議が行われている会議室の外の廊下に数名待機させておいてもらえると助かります。」
「あぁ・・・そうだな。」
「なら廊下の見張り役は俺らジャスティスが引き受けよう。・・・証拠を掴んだら、警備部の連中がきてくれればいい。」
幹部たちは頷く。
飛沫は一応ジャスティスのメンツ・・・
つまり神威と陽炎にも確認をとっているが、二人とも頷いていた。
「・・・全体の指揮はボクがとるけど、いいかな?」
厳島さんの声に皆は頷く。
「前線での指揮はオレがとるがいいか。」
今度は五稜郭さんの言葉に皆が頷く。
「・・・俺も前線へ行こう。」
「・・・お前は後方だ、バカ野郎。」
山崎さんが前線を志願するも、五稜郭さんにあっさり断られてしまった。
「ちょっ、なんでだ!!」
「お前は2年代表、この集団の最高責任者だ。・・・最高責任者は無責任に前衛にでるもんじゃねぇ。」
「その通りだよ。・・・考えたくないけれど、もし相手の数が異常で前線が崩壊した場合、撤退の命令を皆に出すのはボクでも五稜郭でもない、きみなんだよ。」
「・・・」
「てめぇは黙って後ろで見てろ、サクッと終わらせてきてやるからよ。」
五稜郭さんは苦笑しながら言う。
「・・・中島と鷹村はどうする?」
「俺は警備部とともに前線に参戦します。」
鷹村くんの回答は即答だった。
・・・私はどうしよう。
一応武器はある・・・。
でもアレを人に向けてなんて撃ちたくない・・・。
だけど人数が足りていない・・・。
ホントは行くことが望ましいんだろう。
だけど・・・
そんな迷っている時、ある言葉を思い出す。
(思っただけなんて誰にでも言い訳として言えるんだよ。その分誰にでもできる。口と態度が一致しない奴のことなんざ誰が信用すんだよ)
それは今日の朝、飛沫くんに言われた言葉だ。
・・・二度とあんなこと言わせない・・・!
そう決めたんじゃないのか。
「・・・私も行きます。」
そう思い出せば意外と結論は早かった。
「・・・大丈夫か?」
「もしヤバければ俺ら警備部が守りますよ。」
紀龍くんがそんなことを言う。
「・・・任せたぞ。」
それから実際に相手が攻撃してきた場合などにどう動くか、などを決めていった。
会議は2時間にも及んでしまった。
その後五稜郭さんにシャワーの場所を教えてもらい、シャワーを浴びて寝る用意も万全!
そう思ってみても、時間はもう深夜の12時半だ。
「・・・やれやれ・・・」
うわ~・・・ついノリで「前線にいきます」とか言っちゃったけど・・・
後から思えば後悔の念だけが押し寄せる。
「はぁ・・・」
明日のことを思うとため息無双である。
「お疲れ。」
「あ、紀龍くん。」
やってきたのは紀龍くんだった。
「今回悪ぃな、こっちに参加してもらって。」
「人数が足りなかったんです、仕方ないですよ。」
「それでもお前がこっちにきてくれたのは素直に助かるよ。」
「・・・まさか昨日にあなたから預かったガス銃がこんなところで役にたつかもしれないとは・・・」
「たしかにな。あ、そうそう、これ。」
彼は頷きながらビニール袋をこちらへと出した。
「なんですか、これ。」
「飯だ。・・・会議が終わったあと、学校の前のコンビニで買ってきた。ほら。」
そういって渡されたのはメロンパン。
しかも夜のタイムセールで20円引きの。
「ありがとうございます。え~と、80円ですか・・・」
「いや、いいよこれぐらいおごりで。」
「・・・メロンパン・・・ですか。」
「お前昔からメロンパン好きだったもんな。」
まさかそんなことを覚えているとは・・・。
「・・・などという甘い雰囲気に何の断りもなく突っ込んでくる俺参上。」
前へ立っていたのは警備部の1人と西本くんがたっていた。
知らない人のほうは、おそらく先ほどの知らない人3人のうちの1人だろう。。
「おい、仁井、何が甘い雰囲気だ。」
「い~や、なかなかな雰囲気だったから無視しようかと思ったんだが、俺の原動力“嫉妬”というものがそれを許さなかった。」
・・・ちょっとかわった人ですね・・・
「同じく私も、心の最終兵器“遺憾の意ミサイル”が飛び立ちましたので。」
・・・そして相変わらずの西本くんである。
「仁井はこんな奴だが、一応1年警備部の責任者だからな。」
「・・・てことは・・・」
「俺より偉いってことだな。」
紀龍くんは苦笑しながらパンを食べる。
「ちなみに私は紀龍と同じくヒラです。」
「俺より仕事熱心だけどな。」
紀龍くんはまたもや苦笑しながらパンを食べる。
「ということで紀龍、俺にもパンをおごってくれ。」
「なんでだよ、自分で買え。」
「そこの子にはおごってたじゃん。」
「これは元中の仲だからだ。おめーにはねぇから。」
そういうと彼は残念そうにうなだれる。
「俺は仁井だ、よろしく。」
「よろしくお願いします、中島です。」
「お近づきの印にガムでもいる?」
・・・そういってガムを出す彼。
「どんだけガム好きなんだよ。」
「紀龍と西本、お前らもガムいる?」
「いる。」
「いただきます。」
そういって紀龍くんと西本くんはガムをとる。
「・・・いいんですか?」
「あぁ。」
彼の承諾を得たので私もガムを1つもらう。
・・・いい人だ!!
「しかしお前もよくあんな危ねぇ役に志願したもんだな、西本。」
「・・・もし相手が行動を起こせば全員危ないですよ。」
「そりゃそうだが・・・。」
西本くんはお茶を飲みながら苦笑する。
「ホント、3年幹部もお前みたいな奴ばっかりならなぁ・・・」
仁井くんは愚痴をこぼす。
いや、3年幹部も頑張っていますよ、多分。
「3年幹部の連中は口ばっかりだからな。・・・なんも俺らのことわかってねぇもんな。」
紀龍くんも頷く。
「そう言う意味では2年幹部の連中がまともでよかった。」
「知らねぇのか?生徒会三幹部は相当やべぇ連中だって噂だぞ?」
紀龍くんの話に私も耳を傾ける。
「ヤバイって何がヤバイんですか?」
「才能がありすぎっていうのかな。・・・厳島さんは今回の奇襲総攻撃を考えたし、五稜郭さんは毎回陣頭指揮してるし。」
「え?厳島さんが今回の総攻撃を?」
それは初耳だった。
彼女なら絶対開戦反対だっただろうに。
「元々彼女は開戦大反対だったらしいんだけど、会議でやるって決まっちまってからは攻撃派になったらしくてな。」
「・・・」
「それで3倍の戦力を覆すには奇襲とそれによる混乱に乗じて前進するしかないって考えたらしくてな。」
「二方面作戦の展開を考えたのも厳島さんだったって話ですよね。」
西本くんが言う。
・・・そういえば今回の総攻撃は二方面作戦だと言ってたっけな。
片方が打連へ、そしてもう片方が弱小集団へ攻撃をかけるっていう。
「主に打連攻撃の指揮をしたのが厳島さんで、弱小集団攻撃の指揮をしたのが五稜郭さんだったらしいんだが、両者ともにすげぇ成果をあげたって話だ。」
あげたって話だ・・・って・・・
「紀龍くんも作戦に参加してたんじゃないんですか?」
「あぁ、まぁな。実質戦力を二分化っていっても、その二分化された中で細かく班わけされて動いてたからな。・・・俺がいるときは「押してるなー」程度にしか思ってなかったが、まさかこんなに成果がでるとはな。」
おそらく班単位のグループの配置がよかったのだろう。
それは当然指揮する者がよかった、ということでもある。
「まぁ、今までも2人は何度か手柄をあげてきたわけだが、3年からみればそれがちっとよく見えてないらしくてな。」
「どうしてですか?」
「知らねぇけど、3年のメンツとかだそうだぜ。・・・ま、3年が動かずに2年が活躍する、そりゃぁ3年のメンツは丸つぶれだろうけどな。」
・・・生徒会内部での対立は単純に意見の対立だけじゃなく、そんなことでも対立してるのか・・・。
「で、そこをどうにかしてるのが山崎さんらしい。」
「へぇ・・・」
「山崎さんは1年から3年、どの学年からも人気があるからな。」
・・・そういえばあの人、なぜか人望が厚いのよね・・・。
なんでだろう???
「3年ねぇ・・・。こっちとしてはメンツが丸つぶれになる理由もわかるけどな。・・・何もわかってねぇもん、あいつら。」
仁井くんが再び愚痴る。
相当ムシャクシャすることがあったのだろう。
「・・・あの、なんかあったんですか?」
「いえ、前からずっと思ってるよ。・・・今日も平常運転だったな。」
「・・・といいますと?」
「今回の総攻撃の成功は明らかに作戦がよかった。それは俺からみても確実に言えることだ。だが連中は“反生徒会勢力の生徒より生徒会の生徒のほうが士気があるから勝った”なんて、何の根拠もねぇこといってやがる。」
いや、でも生徒会だって士気は高いでしょうに・・・
「でも生徒会だって士気は高いでしょう?」
「それは表面だけだ。」
「え?」
「幹部たちやジャスティス、警備部の一部の精鋭は士気が高いが、下層部の一般生徒の士気はむしろ低い。」
・・・そんなこと初めて聞いた。
私自身ずっと士気の高い人と一緒にいたから、生徒会すべてがあんなものだと思い込んでしまっていた。
「下層部なんて“なんでこんな危ないことしてまで生徒会を守らないといけないんだ”とか、“学校の治安維持なんざどうでもいい”って考えてる連中がほとんどだ。」
「・・・」
「それにも気づかずに、“一週間戦い抜くことができる”なんざ言ってるんだから笑っちまうよ。」
厳島さんは2日っていってたのに・・・。
3年幹部は1週間っていっているのか・・・。
「それに比べてあっちは“自由”を求めて戦ってる。・・・むしろ連中のほうが士気は高いと思うね。」
「・・・」
「ま、このメンツは士気の高いメンツばかりだ。・・・明日は成功するだろう。」
彼はニッコリ笑ってそう言った。
ご飯を食べ終わって歯磨きをして私は情報処理室に向かった。
そこには未だに計画を緻密に考えている五稜郭さんとハルさん、厳島さんがいた。
「・・・お疲れ様です。」
「おい、お疲れ。」
「・・・まだ寝ないんですか?」
「まぁ、計画の良し悪しによって犠牲が増えたり減ったりするからな。もう少し見直したらねるよ。」
「そうですか・・・」
やっぱり幹部は熱心だなぁ・・・
でも皆が「すごい」という三幹部だが、それは紀龍くんの言うような「才能」だけではないと思う。
・・・こうやって努力してきたんだ・・・
それの結果が出ている、ということでもあるのではないか。
・・・今度このことを紀龍くんに言ってみよう・・・。
そんなことを思いながらもウトウト。
そして気づけば朝になっている。
「・・・?」
時計を見てみれば6時だった。
明るい日差しが廊下の窓からこちらの部屋にもやってきている。
起きてみれば、幹部たちはもう起きて作戦会議を小さな声でしていた。
「・・・お疲れ様です。」
「あぁ、おはよう。」
「・・・いつ起きたんですか?」
「オレらもついさっきだ。」
「こいつ、寝坊しやがったんだぜ。」
「黙れ。」
山崎さんの言葉に五稜郭さんがムッとしている。
・・・これは絆同盟との決戦後に知ったことなのだが・・・
彼らはこの時、寝ていなかったらしい。
なんでも今回の相手は「ガス銃」をもっているから、犠牲を減らす為の作戦についてだいぶ迷ったんだとか。
つまり山崎さんのいう「こいつ、寝坊した」などというのも私に気を遣った嘘だった。
・・・そういう意味で山崎さんが1年から3年まで共通で人気がある理由を、終戦後に知るのだった。
朝ではまず顔を洗う。
水道のところで顔を洗うと、外から変な音が聞こえた。
「・・・ん?」
ちょっと覗いてみると、そこには警備部の男子たちがいた。
私は急いで降りてって彼らに話しかける。
「なにしてるんです?」
「あ、おはよう。・・・今はガス銃の練習っていうのかな。」
「・・・はい?」
「ほら、今日が実戦になる可能性もあるだろ?しかも相手もガス銃をもってるわけだし・・・一応練習をな。」
なるほど・・・
やはり相手も生徒会でガス銃をもっているということはだいぶな脅威らしい。
「ところで中島は余裕だけど大丈夫なのか?」
紀龍くんが意地悪な笑みを浮かべていう。
「・・・撃ったことないですからね。」
「あの木に撃ってみろよ。」
彼が指さしたのはだいぶ太い木だ。
誰がこれを外すというのか。
周りの皆はもっと細い木で練習しているというのに・・・
私だけこれとは舐められたものだ。
「いいですよ!」
絶対あててやる!
思い切って引き金を引く。
「・・・あれ?」
しかし発泡音はしたのに狙ったところに弾の跡はなかった。
「・・・どうしてこうなった。」
「下手すぎだろ。」
私のを見て、周りの警備部の人たちが寄ってくる。
よ・余計なお世話ですよ!!
「おい、紀龍。そんなんじゃ現場じゃ使いもんにならない。・・・ここは一番上手い紀龍が中島に教えてやってはどうだ?」
仁井くんがニヤニヤしながらいう。
「・・・そんなにひどいですか?」
「・・・残念だが中島。これはお前が現場にたっても的が増えるだけにしかならない。」
「ならこの際、中島は囮でいいんじゃないか?」
いつの間にか下に降りてきていた鷹村くんがそんなことを言う。
・・・ひどいです!!
「鷹村、お前は武器もってんのか?」
「いや・・・俺はあいにく手ぶらだ。」
彼は肩をすくめて苦笑する。
「・・・飛沫、余りはねぇのか?」
「あぁ?あるにはあるんだが・・・」
彼は顔を渋める。
「ま、ついてきな。」
そういって彼が校舎へと戻っていく。
彼が戻っていく後を皆も追いかける。
ジャスティスの本拠点であるパソコン室へとつくと、廊下に2人残して中に入る。
しかしすごい警備だ・・・
廊下を歩いているときも常に周りを警戒していた。
それだけここは敵に盗まれたらまずいものがある、ということか。
「ふむ・・・」
飛沫は部屋内に入ると、部屋の角にある大きなカゴの中をのぞきこんでいる。
何が入っているのだろうか・・・
私もそこを覗き込んでみると、そこには大量のガス銃があった。
「・・・こんなにたくさん・・・」
よくこれだけの量をそろえたものだ。
・・・これなら警備部全員にまわりきるのではないだろうか。
「こいつらは不良品だ。」
「・・・え?」
「使ってみて問題が起こったやつ、そもそも問題があったやつとかをここにまとめてるんだ。」
これだけの量が不良品なんて・・・。
つまり今、私がもっているガス銃も貴重なガス銃の1つ、ということか。
「・・・昨日の夜に少し修理したんだが・・・やっぱ動かねぇな。」
「これは今日も1日修理に付き合わされる予感。」
神威くんががっくりとうなだれている。
「しゃぁねぇな・・・紀龍、お前に預けといた鍵。」
「・・・え?マジですか?あそこにあるのは・・・」
「実験品だが、こういうのは実戦で使われるのが結果として一番わかりやすいんだよ。」
そういって彼は紀龍から鍵をうけとると、「ちょっと待ってろ」といって部屋の奥へと進んでいった。
・・・一体何があるのだろうか。
「あの奥には何があるんですか?」
「実験品がたくさん。」
「・・・実験品?」
「ま、このガス銃の強化型みたいなもんだよ。」
「は・はぁ・・・」
強化型って・・・
あれはもう強化する必要のないぐらい強い武器なのでは・・・?
「昨日の総攻撃でガス銃の優位性を確立できたからな。早くもこの拳銃型の後継を構想中って話だな。」
拳銃型ってことは・・・
後継は拳銃ではないのだろうか?
少しすると飛沫くんが戻ってきた。
「な・なんですか、それ!?」
彼が手にもっていたのは拳銃よりもはるかに銃身の長い銃だった。
「 Cal.30 Model1。後継候補のライフル型ガス銃だ。」
モデル1って・・・。
いかにも実験品らしい名前ではある・・・。
しかも無駄に発音いいし・・・。
「おいおい・・・拳銃よりでかくなってるじゃねぇか。」
「なんでも後継はコンパクト化だと思ってんじゃねぇよ。」
飛沫は不機嫌な顔をする。
「取り回し悪そうだし、持ち運べないじゃねぇか。しかも地味に重いし。」
「っていっても狙いやすさは向上してるし、拳銃型よりも遠方からの射撃が可能だ。」
「・・・ってことは・・・」
「拳銃型の射程外から攻撃を加えることができる。」
ちょっ、それはチート!!
「ならそれを全員にまわせば・・・」
「残念なことにModel1はその実験品の1つしか作ってねぇんだわ。・・・もし今日に実戦があって活躍できれば増やそうと思うんだが。」
・・・それって飛沫くんとしては今日の実戦を望んでいる、ということなのだろうか・・・。
「そんなわけでそいつはお前に託したわ。」
「・・・お前がこれ使えばいいだろ?」
「俺らジャスティスは廊下で待機組でね。・・・いくら廊下とはいえ、こんな目立つもんもってたらやる気満々みたいに相手に思われるだろうが。」
・・・実際やる気満々じゃないか・・・。
「遠距離から攻撃可能、か。・・・なら中島、これ使うか?」
「いいえ、遠慮します。」
彼は前線は危険だから、という意味でいったんだろうが・・・
あんな拳銃型よりも重そうなもの、私が使ったところで当たらないだろう。
その後、再びガス銃の特訓に励んだ。
「もうちょっと力を抜いてだな・・・」
「こう・・・ですか・・・?」
「いや、余計に悪くなった。」
・・・とはいえども、いくら練習してもコツが見えてこない。
最初よりいくらかまともにはなったが。
隣の鷹村くんも最初は外しまくりだったのに、いつの間にかめっちゃ上手くなってるし。
「はぁ・・・」
憂鬱なため息をつきつつも、猛特訓を繰り返した。
時間は刻刻と近づいてきていた。
特訓をやめた頃にはだいぶ当たるようになっていた。
「・・・よし、行くか。」
8時半。
皆は会議室へと集まる。
BS会議が始まるのは9時。
あと30分で作戦が開始される。
「・・・」
さすがに皆、緊張しているようだった。
緊張しているときに限って時間はあっという間にすぎる。
「ではいってきます。」
「・・・任せたぞ。」
やがて西本くんとジャスティスの3人が会議室からでてった。
中心の机にはトランシーバーがおいてある。
トランシーバーから西本くんの声が聞こえる。
「もしもーし、きこえていますか?」
「あぁ、バッチリだ。」
「了解です。・・・ではこのままBS会議に突入してきます。」
念のためのテストも完了した。
あとは計画を実行するだけ・・・。
皆はトランシーバーの方向をマジマジと見つめていた。
「・・・」
できれば証拠は見つからないでほしい。
私も祈るような思いでトランシーバーを見つめる。
やがてトランシーバーから会話が聞こえてくる。
「おやおや糟屋さん、あなたもいたんですね。・・・3年幹部のあなたがこんなところでなにしてるんです?」
西本くんはわざと名前をあげて会話している。
「・・・糟屋先輩・・・か。」
山崎さんは少し悲しげな目をしていた。
「そういや糟屋さんは会長との連絡役をしてたな。」
会長とかかわっている幹部の1人、ということか。
「まだ彼らが悪いと決まったわけじゃないですよ。」
「あぁ、そうだな。」
その後に続々とトランシーバーから入ってくる名前。
その度に会議室内はため息の声がきこえる。
その中に片桐さんの名前もあった。
(・・・片桐さん?)
片桐さんといえば昨日、咲良ちゃんと話していた・・・。
彼女は自分で“穏便派”だといっていた。
そんな人が会長を利用して、開戦などするだろうか・・・。
でもたしかに今、片桐さんと・・・。
・・・なぜ穏便派の生徒がこの強硬派グループに・・・?
(きっと聞き間違いだ・・・)
片桐さんがいたとしてもきっとそれは普通の会計会議だ・・・。
そう思うことにした。
トランシーバーから聞こえる情報では相手の数は6人だった。
「・・・飛沫、聞こえるか。」
「あぁ、なんだ?」
「相手は6人だ。」
「了解。」
こちらが得た情報は前線にいるジャスティスにも伝えられている。
・・・もうすぐ8分だ。
時間切れがやってきている。
私は少し心の奥で喜んでいたのかもしれない。
「・・・先輩。」
すると、無線の内容がいきなりかわった。
「実は私、ちょっと気になりましてね。糟屋先輩はいつも会長の代弁をしていましたが、その代弁を会長自身が話しているところを私は見たことがないんですよ。」
「な!?」
トランシーバーから入るその内容に全員が驚く。
「あのバカ、なにやってんだ!!」
「・・・釣るつもり・・・か?」
幹部たちも険しい表情をする。
「それで昨日に本部の奥の資料室に忍び込みましてね。そこにあった資料でこの会議は知ったんですよ。」
・・・ん?
なんで今、会議「は」って言ったのだろうか。
普通に「会議を」といえばいいのに。
別におかしいわけでもないんだが突っかかってしまう。
「・・・お前一人で調べたのか。」
「えぇ、下手に人数がいたら目立ちますし。何よりこれは私自身が気になることでしたしね。」
あっちの様子は相当気まずいのだろう・・・
察しがつく。
「妙だと思いませんか。なんで会計会議なのに、まるで皆から隠れるような時にやってるのか。」
「何が言いたい?」
「会長は元々穏便派だったと聞きます。それが会長になって少しした途端に急に過激になった。・・・今回の開戦もそうですが、これはあなた方がしくんだことではないか、と思いましてね。・・・打連なんて目の上のタンコブでしょう、あなた方からみれば。」
「・・・」
「もしくは会長に打連攻撃を頼みにいったにもかかわらず拒否された。・・・それで会長を傀儡にすることを思いついたんですか?」
もうすぐ9分だ・・・。
彼は「必ず10分ででてくる」といった。
あと1分でこの話は終わるのだろうか。
「会長を傀儡に?・・・バカも休み休み言え。お前の言ってることはただの妄想にすぎない。」
「・・・こっちには証拠もちゃんとあるんですけどね。」
「なに?」
「会長のノート。」
その言葉にまた皆が驚く。
・・・会長のノートは昨日、彼は「なかった」といっていた。
まさか・・・ホントはあったの!?
「依然に会長に“少し見せてくれ”って頼み込みましてね。その際に困り顔で見せてくれましたよ。その時にどこにあるのか、っていうのも覚えといたんですよ。」
あの薄情者ォ・・・!
・・・などという声がどこからか聞こえた気がした。
「会長のノートの4ページ、そこにちゃんとヒントが書いてありましたよ。・・・消し忘れたんですかね?」
「・・・なにを・・・」
「・・・斜め読みってご存知ですか?」
「え?」
「・・・会長はちゃんとノートの字を揃えて書いてたはずです。・・・それは読みやすさのためだけじゃない。誤算でしたね。」
会議室内は静まり返ってしまっている。
全員がトランシーバーに食らいつくようにこの話を聞いていた。
「いくら普通に書いたものは消しても、肝心なところが残っているのでは意味ないですね。」
「・・・バカな。・・・あのページは去年の体育祭のことだったはず・・・俺らは何もしていない時のことだぞ・・・」
糟屋さんのその言葉で全員が立ち上がる。
・・・気のせいか、トランシーバーの奥で西本さんもニヤッと笑ったように感じた。
そう・・・彼は釜をかけたのだ。
「あ~ぁ・・・正直者はバカを見る、この言葉はホントのことだったんですね。」
「なに!?」
「なんであなたが会長のノートの内容を知ってるんですか?」
会議室ではすでに皆が動く準備をしていた。
「飛沫、絶対連中を外にだすな。」
「うぃよっと!・・・面白くなってきたぜ。」
「いいか、オレらが行くまで絶対に会議室内へは突入するなよ!」
五稜郭さんがすでに彼らを逃さないように命令している。
「そ・それは俺も会長にみせてもらって・・・」
「見せてもらえるわけないでしょう・・・。いくら優しい会長でも伝統ぐらいわきまえていますよ。・・・見せてくださいっていったらキレられましたから。」
・・・見せてくれって頼んだことは実話だったんだ・・・。
「さて、会議資料室から盗みさった会長のノートを返してもらいましょうか。」
「・・・なんで俺らが大事なところは消してるとわかった?それに・・・会長が文字を揃えているってことも。」
「・・・会長のノートを会議室から盗むぐらいです。まずい内容は消していて当然と考えたのみ。・・・それでも安心できずにノートを盗んだ、そう考えたまでです。」
「まさかノートを盗んだことが裏目にでるとは・・・。」
糟屋先輩は完全に「してやられた・・・」という様子の声だ。
「会長が文字を揃えてるってのは?」
「それはあの几帳面な会長のことです。・・・やってるんじゃないかなぁ・・・と。・・・こっちは完全に憶測だったんですけどね。」
「なるほど・・・俺はその憶測に騙されたのか。やけに自信有り気にいうから、ホントに見たもんだと思っちまったよ。それもだいぶ前に・・・な。」
そうか・・・。
昨日になかったということは彼らがノートをもっていた、ということだ。
つまり西本くんが単に「昨日みた」といっても、彼らはすでに昨日にもっていたのだから嘘だとバレてしまう。
・・・だからあの時、会議「は」といって、BS会議と会長のノートを知った時間をわけたのか。
彼の緻密な考えに驚く。
「こういうのはやり方が大事なんですよ。」
「なるほどな・・・。立派だ・・・もう少し力の使いどころが違ければ昇進できたかもしれないのにな。」
ちょっとヤバそうになってきましたよ!!
「こっちとてあなた方とはホントは喧嘩したくないんですよ。・・・あなた方が騙されなければどれだけよかったか。」
「・・・昇進したくないか?」
「他人・・・いえ、この組織では仲間ですね。仲間を騙してまで昇進したいとは思いませんね。そんなの、誇りある日本人として恥ずべく行為ですから。」
「・・・誇りある日本人・・・ね。どこまでも日本狂な奴め。」
トランシーバーの向こうではガス銃を向けられる音がした。
会議室では攻撃用の各班にわかれるのも完了した。
「A班、準備よし。」
「B班、準備よし。」
最終確認の段階だ。
・・・あと少しねばって・・・!!
「だがお前一人で何ができる?その誇りあるナンタラのせいで今の地位すら失うってのも空虚な話だよな。」
「ハハハ・・・ま、実際は1人でもなんでもないんですが。」
「なに?」
「こんな時にあってよかった、トランシーバー。」
「なっ!?」
会議室ではすべての班が準備を完了した。
「各自決められたように動くように。」
「はい!!」
全員の威勢ある声が会議室中に響く。
「よし・・・これより“減滅作戦”を始動する!!!」
その瞬間、皆は部屋の外に向かって走り出した。
「誇りある日本人は誇りある仲間とつながっていましたのさ。・・・めでたしめでたし。」
「このッ!!!」
この瞬間、トランシーバーが切れた。
「・・・中島、何やってんだ!!いくぞ!!」
「は・はい!!!」
その時、ちょうどあれから10分だった。
「急げ!!誰一人逃がすな!!」
「はい!!」
廊下を武装した数人が走っていく。
「・・・やっときたか。」
飛沫は「待ちくたびれた」という顔をしていた。
「包囲はすでに完了してる。」
彼らはもう逃げられない・・・!
「あれから西本は?」
「でてこねぇな。・・・多分たてこもってんだろうな。」
「包囲されてもう逃げられないことぐらいわかってるはずだ。・・・大人しく降参してくれると助かるんだがな。」
「・・・へっ、どうやらあっちはやる気のようですぜ。」
神威は警備部の生徒がもってきた椅子を台にして中を見ている。
この学校の教室の壁は基本的に普通の壁だが・・・
一番上だけ横長の小さなスライド式のガラス窓になっている。
おそらく空気の入れ替え用なのだろう。
「連中、正面攻撃に備えて机のバリケードつくってますね。」
それから彼は指をさす。
「・・・野郎ォ・・・西本を真ん中にしてやがる。」
ここでムリに強行突入すれば相手の反撃で損害が出る上に、西本も被害にあう可能性がある。
「・・・山崎、聞こえたか。」
「あぁ。」
「・・・攻撃開始の許可をくれ。」
「ご・五稜郭さん!!」
五稜郭さんをとめないと!!
彼女は今、作戦を開始しようとしている・・・
だがそれでは西本が危険だ・・・。
「・・・中島、あいつはこうなることをわかっててあえて1人でいったんだ。あいつの意見は尊重するべきだ。」
「・・・」
それはそうだけど・・・
「あいつらは会議の時に信用しろといった。」
「・・・え?」
「・・・俺はあいつにも“口と態度が一致しない奴なんか誰が信用するんだ”っていったことがある。」
・・・その言葉は以前に彼にかけられた言葉だった。
「いつも口ばっかりの奴だが、珍しく口と態度が一致してんだ。・・・信用してやれ。」
彼の言葉に渋々頷く。
「攻撃を許可する。」
山崎さんからのこの言葉で全員頷く。
「・・・A班、B班、聞こえるか。」
「はい。」
「攻撃許可がでた。」
「了解。」
トランシーバーがきれた瞬間、部屋の内部ですごい音が響き始めた。
攻撃が始まったのだ。
この減滅作戦はA~D班による構成で行われるものだった。
A班、B班は先ほど説明した、教室の壁の上にあるスライド式のガラス窓から攻撃を加える。
これはA班とB班で攻撃位置を分担し、正面を除く、3方向から攻撃するようにしてあった。
ただし固定砲台は狙われるので、少し撃ったらすぐに場所を変えること、というのが絶対条件である。
そして五稜郭さん率いるC班とD班が扉をあけ、正面から攻撃を加える。
・・・これによって全部で4方向から攻撃を受けることになる。
C班は最終的に相手の混乱をつき教室に突撃する班、D班が援護射撃を行い、C班の突入を助ける役となっていた。
「A班とB班はあくまで台の上にのっての攻撃だ。精度が著しく悪い。・・・つまりこの争いで犠牲が多くなるか少なくていけるかは正面から攻撃を行う我々にかかっている。いいな?」
「はい!!」
皆の返事で五稜郭は頷く。
「扉をあけるぞ・・・」
そういって扉をあけた瞬間、ガス銃の弾がこちらに一斉にとんでくる。
A班、B班の攻撃は沈黙していた。
「タイミングがズレたか・・・」
陽炎が相手の陣地を見つめつついう。
「くそ・・・これじゃ手も足も出ん・・・」
「この引きこもりニートどもが。」
飛沫や五稜郭は各自隙を見つけて攻撃をし返しているが、膠着状態のままだった。
「A班、B班、射撃要請!」
すると一斉にA班とB班の攻撃がはじまった。
やはり精度は低いとはいえ、相手方にこれは効くらしい。
相当焦っているのが目に見える。
「今だ、オレらもA班、B班に負けるな。」
C班、D班の攻撃もここぞとばかりに集中する。
「・・・こちらA班、一人負傷。」
「くっ・・・」
ついにこちらに犠牲がでてしまった・・・。
だが今度はこちらの弾が相手にあたった。
相手は前線で撃ちまくっていた者の一人で、足を引き摺りながら机のバリケードの後ろへと隠れた。
あの様子だと当たったのは足のようだ。
あてたのは鷹村くんだった。
「・・・射撃を続けてください。その間に俺がこのモデル1で狙いを定め、抵抗人数を減らしていきます。」
「あぁ、任せたぞ。」
しだいにこちらが押していく。
形勢は最初は相手にあったが、徐々にこちらに傾いてきたようだ。
だが次なる問題も生じる。
「・・・弾がねぇ。」
口を開いたのは鷹村くんだった。
「Model1がなけりゃ正確な狙い撃ちは不可能だ。」
今、抵抗を続けているのは3人。
・・・最初に比べてだいぶまともにはなかったが・・・
「いってぇ・・・」
そう言っている間に相手からの正面攻撃が再び苛烈化している。
警備部のもう1人が負傷した。
「・・・しゃぁない。A班、B班、切り返し頼む。」
「・・・切り返し?」
「お前らも見てないで撃て。弾は撃ち尽くしても構わない。」
そういって彼女は竹刀を持つ。
え?ちょっ・・・
ホントに突撃するの!?
次第に会議室に煙がこもりはじめる。
「・・・あれは・・・」
「煙玉だ。これで相手の視界は奪った。」
おそらくA班とB班の「切り返し」とやらだろう。
たしかに相手はこちらが見えないだろう。
だが・・・あの・・・こっちも見えないんですが。
「・・・よし、お前らちゃんとついてこいよ。」
五稜郭さんはあの煙のたりこもる部屋を見つめながらいう。
いやいや・・・嘘でしょ!?
ホントにやるの!?
「僕は五稜郭さんの後ならどこまででもついていきますにゃん。」
・・・うわっ、こっちもこっちでやる気満々だし・・・
「D班、援護任せたぞ。」
D班とはいわゆるジャスティスである。
「はいよっと。」
ジャスティスが一斉射撃を開始する。
・・・かなりテキトーである。
何しろ煙で何もみえない。
「・・・お願いですから私たちを撃たないでくださいね。」
「できたらな。」
なんてつれない返事。
・・・頼りにしてますよ?
「よし、突撃!!」
五稜郭さんが先陣をきって煙しか見えない会議室に突っ込んでいく。
それに私たちもついていく。
・・・その後のことはよく覚えていない。
気づいたら終わっていた、というのが正しいのかもしれない。
私たちが突撃した後、私たちは一気に相手のバリケードの前まで進んで相手を制圧した・・・らしい。
・・・覚えていない。
その後、相手だった6人は当然捕まったが・・・
どうもおかしい。
「・・・」
3年幹部2人、2年3人に1年1人。
学年はバラバラだし、なにより「リーダー格」がいないのだ。
たしかに3年幹部など大物も混じってはいるが・・・
彼らは所詮は烏合の衆だった。
彼らをまとめていたリーダーがいたはずだ。
「・・・なにか話しました?」
「ダメだ、うんともすんとも言わん。連中に舌はついてるのか?」
取り調べをしてもダンマリ、という形である。
裏で誰かがまだ糸をひいている、ということなのだろうか。
「・・・見たところ金ヶ崎の部下がやたらに多いね、」
2年3名と1年1名、計4名は金ヶ崎の部下だった。
そういえば彼は以前に「いずれひっくり返る場なら、盛大に自分からひっくり返してもいいかも」みたいなことをいっていた。
そういった観点からも金ヶ崎が重要人物、という形になっている。
「・・・」
そして何より驚いたのは・・・やはり3年幹部は糟屋さんと片桐さんだった。
・・・正直これを知って私は思ってしまった。
私たちははめられたのではないか、と。
糟屋さんはともかく、片桐さんは戦火を拡大したい三年幹部たちからみれば邪魔な存在であっただろう。
・・・彼らは“消された”のではないだろうか。
そしてその“消す”作業の口実、または道具として私たちは利用されたのではないか・・・。
利用されたのは私やジャスティス、そして2年幹部たちだけでなく、もしかしたら今回の犯行グループでさえもそうなのかもしれない。
つまり・・・黒幕は別にいる・・・
この「減滅作戦」は生徒会の強硬派を潰すはずが、いつの間にか誰かに利用され、強硬派の穏便派を潰すために利用されてしまったのではないか。
・・・そんなふうに感じて仕方ないのだ。
いずれにせよ、糟屋さんと片桐さんの生徒会追放はもはや確実なものとなった。
その日の午後、実際に2人の永久追放が決定し、ただちに実行された。
それに対し、金ヶ崎の部下に関しては「やめさせると戦力消費が激しすぎる」という意見から一応生徒会には残れるようになったらしい。
とはいえ、ガス銃は取り上げられ、しかもそんな状態で最前線に突っ込ませる、いわば「捨て駒」役をやらせるのだとか。
・・・あんまり笑えない。
・・・ここは情報処理室・・・
「痛ぇ・・・」
「・・・ったく無茶して突撃なんざするから。」
「しょうがねぇだろ、あの場合、連中をみすみす逃すわけにはいかなかったんだからよ。」
腕を抑えていたのは五稜郭さんだった。
あの突撃で腕を撃たれたらしい。
「嫌なもんだな・・・同士討ちってのは。ホントに。タチが悪い。」
「・・・えぇ。」
なんか後味も悪い。
すると扉が開く。
「・・・お疲れ様、2年諸君。今日は大変だったみたいだな。」
やってきたのは賤ヶ岳さんだった。
今回の件で3年からも裏切り者がでてしまった為、緊急で3年が全員呼び出されたのだ。
「・・・あんたはこれからもっと大変だろうよ。」
「・・・金ヶ崎の件か?」
「あぁ。」
金ヶ崎が今のポジションまであがってきて、部下をもてるようになったのは賤ヶ岳のお気に入りだったからでもある。
つまり賤ヶ岳が彼を昇進させてきたのだ。
・・・そしてこのザマである。
「・・・だがこれは2年から裏切り者を出したという意味で2年にも責任はあるんじゃないか。」
・・・それをいってしまえば3年からも2人でているわけで・・・。
「まぁ・・仮に彼が黒幕でなくても、彼の部下から出ている以上、責任者として責任をとらせねばならないのは必然だが。」
そう彼は言うと「今日はお疲れ」とだけ言い残して部屋をでていった。
その後金ヶ崎さん自身もある意味覚悟を決めていたらしいが・・・
一応「捨て駒」のリーダーとしての地位は保てたようだ。
しかし賤ヶ岳さんがその班に部下を1人送った、とか。
・・・その1人も気の毒な話だ。
「・・・金ヶ崎が怪しい?・・・3年からでてる地点で賤ヶ岳さん・・・あんたも怪しいんだよ。」
山崎さんは小声でボソッといった。
だが賤ヶ岳さんが黒幕ということはまずないだろう。
彼は天王山会長を誰よりも信頼している人物だ。
しかし事実3年からも離反者がでている以上、彼がまとめることができたメンツではある。
むしろ彼しかまとめられないメンツだ。
・・・今思えば、黒幕が賤ヶ岳さんだと断定してしまえばどれだけよかったか。
その日の午後、耳を疑いたくなるような事件がおこる
パソコン室からガス銃が大量に盗まれた。
「・・・鍵を使われていた以上、内部の人間の可能性がある」
と飛沫はいっていた。
後にこれらの武器は情報処理部の調査で打連へと流れた、という結論に至った。
盗まれたガス銃は拳銃型50丁に、ライフル型5丁とのことだ。
・・・ライフル型は減滅作戦でその威力を証明されたのでちょうど量産に入っていたところのようだ。
拳銃型50丁に関しては半分はまだ修理が終わっていないために使えない代物だという。
・・・だが逆にいえば25丁も健全なガス銃が打連に流れてしまった。
これは今までのように楽に打連を叩くことができなくなったことをしめしていた。
打連へ武器を渡した裏切り者はおそらく黒幕と同一人物なのではないだろうか。
仲間がやられた腹いせに渡した、とも考えられる。
だが、だとしたら3年幹部、特に賤ヶ岳さんは黒幕として除外されることになる。
・・・彼らは打連に勝つことを何よりの目標としていた。
・・・むしろなんで私は今まで「3年幹部」だけを限定して怪しいと思っていたのだろうか・・・?
3年幹部の協力は必要かもしれないが、利用されているだけの可能性だってあった。
そしてムリに3年幹部を悪役にしようとした結果、このザマである・・・。
さらに今回の件では賤ヶ岳さんや金ヶ崎さんが疑われている。
・・・彼らも実ははめられているのではないのだろうか。
片桐さんの件をみると、怪しい人こそ気の毒に見えてくる。
・・・もう誰もが怪しく、そして誰もが気の毒に思えてきた。
・・・そして凶報はさらに続いた。
会長を縛り付けていた裏切り者は先の減滅作戦で壊滅したはずなのに・・・
その後も会長の強硬姿勢はかわらなかった。
これはまだ生徒会内にて裏切り者の残党がいて、黒幕も健全である、ということをしめしていた。
「・・・私たちがしてきたことってなんだったんだろう・・・」
結局あんなに必死になったのに何一つかわらなかった。
・・・むしろ暗躍したといってもおかしくない。
黒幕は誰か、とかも検討がつかない。
・・・考えるのも面倒になってきた。
こうしてこの長い2日間は終わったのだった。
「減滅」 完
おまけ 1日に2つ更新?
十「・・・1日に・・・2話更新・・・だと!?」
五「今気づいたけどこのうp主バカだろwww」
飛「今更かよwwwどう考えてもバカだろw」
卯「まぁ、待ちなさいよ。これには事情というのがあるのよ。」
神「筆者に媚うんなwww」
卯「違うわよ。・・・筆者はね、“最近更新してなかったから夏休みまでに更新するぞ!”って意気込んでたのよ。」
神「夏休み?とっくに学校始まってるんですが。」
五「※大学は9月20日まで」
神「なん・・・だと!?」
飛「え?このチンパン、大学生だったの?www人の子だったの?wwwww」
五稜「これは盛大にBANされる予感・・・。」
西「友愛ですね、わかります。」
卯「筆者はね、大学の課題をやらずにこっちをやってたのよ。」
五「いや、大学の課題しろよwww」
飛「やっぱ筆者バカだわw」
西「学生の本業は勉学ですよ・・・?優先順位間違ってるでしょう。」
五稜「これだからゆとりは・・・。」
卯「筆者は“せっかくやるんだから、頑張ろう!!”って気合入れていたのよ!」
五「そしてこのザマである。」
卯「元々は1話にまとめるつもりだったんだけど、あまりに長くなりすぎたらしいから2話にしたらしいわ。」
五「てかそこまで長くなることがまず問題だろ。」
神「これを1話にまとめてたら総統閣下キレさせてた。」
飛「気合入れすぎなんだよ、バカ野郎。いつもとの温度差ありすぎだろうが!」
神「いつもこのうp主は何かズレてるよな。」
五稜「それはお前も人のことを言えないけどな。」
飛「てか今更だけど1日に2話も更新して見る奴いるのかよ。」
卯「2話あわせるとかなりの量ですものね。」
十「でも1日に2話更新とか、昔を思い出すな。昔は1日1話更新だったのにな。」
卯「あの時はとりあえず更新することに重点をおいてたからね。」
飛「そして無計画に進めてきた結果、このザマである。」
五「・・・このザマ?」
飛「本来恋愛小説のくせに、いつまでたっても外伝もどきから戻ってこない恋愛。」
紀「無駄に長くグダグダな展開。」
十「そういうなよ。更新が少なくなった分、きっと今度は計画をちゃんと立ててるよ!!」
五「いや、残念だが1日に2話更新する地点で何も考えていないように思われ(ry 」
飛「チンパンすぎるwww」
十「・・・でも1日に2話更新とか過去になかっただろ。昔は1日1話更新が基本だったし。」
飛「それでまた半年とか更新しないんだろ。なんなんだよ、この筆者。」
卯「それに関してはさすがに反省してるみたいよ?」
神「いや、半年更新しなかったことをネタにしてる地点で絶対反省してねぇだろ。」
十「そもそも筆者の反省はあてにならないからな。」
後「反省(笑)」
西「例えるなら政治家の“国民のため”という言葉ぐらいあてになりませんからね。」
十「・・・とりあえずそういうことも見越してやっぱり1日1話更新で、今日と明日に更新するべきだったね。」
卯「せめて1日でも稼ぐって・・・?」
飛「半年休んでるやつにとって1日とかものの数に入らねぇよw」
五「ある意味廃人。」
十「そもそも筆者は作ったらすぐに更新したい!って人だから。ためおきなんてまずムリな話だよ。」
飛「このチンパンは我慢ということを知らんのか。」
五「知らないからこういう形になってるわけで(ry 」
飛「てかいつになったら“長くしすぎる”ってのを克服するんだよ、この筆者。」
卯「克服するどころか、今回は2話になったっていう。」
飛「悪化してるじゃねぇか!」
五「いや、マジレスすると一言一言がすべて伏線だから。」
神「ねーよwww」
飛「というかどう考えてもムリだろw」
神「でもマジでそんなのがあればガチで神作品だなw」
卯「でも残念ながらこの小説では考えられないわね。」
十「たしかに。でもこの作品なら昔にはっといた伏線を当の筆者本人が忘れてることならあるぞ。」
卯「えばれないわよ!!」
五「伏せたままの伏線とか、ある意味完全体を目指してるな。」
十「しかし・・・生徒会視点からみると、だいぶ面倒なことになってるね。」
五「会長の命令が“幹部でとまってすぐ解ける”状態だからな。」
飛「なにドヤ顔してんだ?ぜんぜん上手くねぇよ。」
五「マジレスすると黒幕は五稜郭さん。」
五稜「マジか。」
飛「・・・ホントのことをここで書くわけねーだろ。」
五「・・・と見せかけてホントかもしれないぜ?それで“プギャー!最初から犯人明かしてたのに間違えるとかwwwww乙wwwwww”って筆者に言われるオチ付き。」
飛「・・・筆者ならありえる。うぜー。」
五「本編でも“一番やりたくない人”とかいって太鼓判押してたしな。・・・一番やりたくない人にやらせて読者に“マジか!”って思わされる為の戦法!」
飛「・・・」
五「それに五稜郭さんは開戦派だし、情報処理部だから情報資料の変更も可能。わざと資料にBS会議と書いて、そこに邪魔な連中を誘導して消去した、と。」
神「筋書きとしては悪くないな。」
飛「いや、でもそれをいったら悪いが西本も怪しいだろ。」
西「マジですか。」
飛「お前が一人で交渉しにいった間はトランシーバーで会話しか入ってきてない。それにトランシーバーをきれば相手との交渉も可能だろ?」
神「いや、冷静に考えろ!・・・まずこの筆者にそんな壮大なオチを用意できると思うか?」
飛「あっ・・・」
神「ここは安定のクソ展開で、絆同盟からいとひいてる奴を出させる、だ!」
卯「くそ展開いうな。」
五「だがそれはありえるな。・・・よし、乗った!それに100万ジンバブエドル。」
卯「・・・それ、あんた本編でも言ってたわよね?同じネタは二度は通用しないわよ?」
五「じゃぁ・・・スワップ協定をなくした状況のウォン!!」
西「・・・なるほど~。」
卯「そこ、なに無駄に感動してるのよ!!」
十「というか、絆同盟と生徒会でつながってるのって現在進行形の視点者なんですが。」
飛「じゃぁ中島が黒幕ということで。」
神「いや、それはないだろwww絆同盟からなら、五月雨とか結構ありえそう。」
五「裏切るお!!(^ω^)」
神「そうやってふざけてる奴が黒幕だったりするのはもう鉄板なんだよ!!」
飛「いや、ここは卯月が黒幕だろ。」
十「え?ヒロイン黒幕!?」
五稜「それはたしかに衝撃展開すぎるな。」
紀「いや、そこまで行くとホントに“驚き”しか狙ってない、くそ展開だろ。」
五「でもそれはそれで面白い希ガスw」
飛「・・・生徒会を潰すためにわざと引き裂きを裏金で学校から出させて・・・」
十「なんという自演。」
五「でもたしかに裏金の話はあったな・・・」
十「なんて性格の悪いヒロインだ!!」
飛「最低だな。」
卯「ちょっと!!ホントにやってるみたいに言わないでよ!」
飛「てかある意味、真の敵は筆者だろ。」
西「本部の罠ですね、わかります。」
時津「聞こえないぞ、繰り返せ。」
神「だが真にクソ展開は結局金ヶ崎であるっていう展開だろ。」
飛「何のために引っ張ったんだwwwwって話になるもんな。」
神「もっとくそ展開はここでいきなり外来生物に襲われて・・・」
西「さ・サンダー!!」
五「あ、俺わかっちゃった・・・」
卯「・・・珍しくまともな反応ね。」
飛「ま、聞くだけ聞いてやるよ。」
五「黒幕はまだ筆者は考えていない!!これが正解だ!!」
一同「あ~・・・」
神「謎の納得。」
飛「とりあえずフラグはつくりました。でも回収の方法考えてません。ノリだけでここまで進めてみました。・・・なんかありえそうで怖いんだが。」
神「というか、それが今までの筆者だったわけで(ry 」
卯「なんて無責任な。・・・そんなんだから自分ではっといた伏線も忘れるのよ。」
五「マジレスすると、絆同盟と生徒会との決着の付け方はマジで決まってない!w」
神「おいおい・・・どうするんだよ、それwww」
卯「知らない。・・・ま、なんとかなるでしょ。」
十「今までもその“なんとかなる”でつないできたわけだしね。」
飛「どんだけ瀬戸際歩いてんだよw」
卯「無計画とは常に瀬戸際で冒険することなのよ!」
飛「なんもかっこよくねぇし。」
卯「まぁ、今日はこんなところかしらね。」
十「うん、今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!!」
完
~今回の感想~
お疲れ様です。
今回はおまけで書いたように1話にしようと思ったのですが長くなりすぎたので2話にしました。
相変わらず文量は減らせず・・・(涙
いやね、私だって文量は減らしたいんですよ!(必死)
だって書く量が多いのは大変じゃないですか!!
本編は今回は真面目な話ばっかりでしたね・・・
ふざけたいお!!(^ω^)
ま、そのためのおまけなんですけどねwww
でも本編でもふざけたいお!!(^ω^三^ω^)
わりとガチで絆同盟と生徒会の決着は決まってません(苦笑
今どうしようか検討中です。
・・・え?黒幕?
き・決まってますよ・・・ハハハッ!決まってるに決まってるじゃないですか!!
誰か?
黒幕は厳島ですよwwwww
反戦派から一気に攻撃派に転じてますし、賤ヶ岳いわく3年と西本、それに彼女で何かをやろうとしていたみたいですし、さらにそういった面で3年とも人脈がつながってますし、彼女はそもそも単独行動も多いですし、今回の件についても最初調べることについて反対していましたし。
・・・信じるか信じないかはあなた次第wwww
まぁ、真面目な話をすると犯人はヤスなんですけどねwww
今回はこの辺で。
今回もここまで読んでいただきホントにありがとうございます(ペコリ
これからもよろしくお願いします。