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なんで僕が!?  作者: へたれ度100%
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過程

※中島視点の物語です


 また後書きでは今回は生徒会側の人物を整理してみました。

「とりあえずお前は先に体育館に戻ってろ。」


生徒会の紀龍の攻撃にあい、壁の角が塵となって飛び散っていくなか、1つの言葉が優しく響いた。



「え?でも・・・」


私はその優しい言葉に、ついつい戸惑ってしまう。


「いいから。ここは引き受けるから。」

「でもホントに再び皆は私を信用してくれるでしょうか・・・?」

「大丈夫だって。あいつらを信用しろ。」



彼の言葉は時々力強く、時々心強く、時々優しい。


・・・私はフッとあることを思う。

“言葉”というのは七色変化、多くの感情を表せる人間特有のモノで・・・

そして形には見えないモノだけど、とても暖かいモノなのだと。





今までに私自身が発してきた言葉は冷たい言葉ばかり。

口先だけで頷き、言われるがままに行動して、感情がついていかずに表面上の笑みを見せる。


だけど彼らと出会って、共に行動して私のなかで何かがかわった・・・

ホッと暖かい感じが伝わり、それは流れるように膨らんでいった。


彼らと出会い、私は私の中で何がかわったのだろうか・・・




彼らと出会う前・・・

依然の私は自分のなかの殻にこもってしまっていた。


「おいッ!!酒もってこい!!」


私の家族は母と父、それに私の3人家族だった。


だけど父はお世辞にも尊敬できる人物といえるような人ではなかった。

言葉と力の暴力で、何もできない無力な母と私を脅す。

毎日毎日働きにもいかず、酒を飲み明かす。

たばこがきれれば再び人にあたり、暴力はとどまることを知らない。



「華癒輝、ごめんね・・・」



そして母はまだ子供であった私が父に殴られ、涙を流すとただただ謝るのだった。

母は何も悪くないというのに。

それは私の最大の不満点だった。


そして私が9歳のとき、父は散々自由なことをしておいて・・・

私と母の前から姿を消したのだ。

いつものように父の友達と酒を飲み交わす、といって出かけたきり帰ってこなかった。


それは言ってはいけないことなのかもしれないが、ある意味幸せなことだったのかもしれない。

けどまだそのとき私は小学3年生。

親離れ、なんてものはまったくなく、どちらかといえばむしろ真逆で親に甘えていたかった時期だ。

暴力的で私の一番の恐怖の源であった父がいなくなった安心感と、あんな父親でも父親、父親に会えなくなってしまった孤独感。

2つの真逆の心境が混ざり合っていた。

どちらにせよ、私には早すぎる複雑な心境の訪れだった。




恐怖の根源だった父はいなくなったものの、その後遺症のようなものは深く残った。

幼少時代からの父の影響もあり、私は完全な男性恐怖症へと陥っていた。

私のなかで、「男性に逆らえば殴られる」という一種の反射的反応がついてしまったのだろうか・・・

自分では“皆が父のようではない”とわかっていても、どうしても近寄りがたかった。

・・・もっといえば怖かった。


小学3年生のとき、教室で男子と男子の喧嘩が起こった。

小学校低学年の喧嘩だけど・・・

男子2人は必死で相手を倒そうと殴りかかっていた。

その光景が父とかぶる。

それがまた私の男性恐怖症を一気に急速させた。



毎日毎日学校へいっても、教室の端っこで怯える日々。

ずば抜けて人とのコミュニケーション能力が上手いわけでもない私は年を追うごとにどんどん孤立化していった。



それでも学校へは休まずに毎日登校した。

母の“毎日行っていればきっといつかいいことがある”という言葉を信じて行き続けた。

だけどそんな神様頼りの幸運探しなど当てになるわけがなく、結局は何も出来ずに月日は去っていった。



中学になると、世に言う“いじめっ子”というのも増え始め、からかわれることも多くなった。

皆が小学生のときはまだ無邪気さがあったものの、中学になれば人見知りも大きくなってくる。

助けてくれるような人もいなくなる。


私の通っていた中学、音島中学は言っちゃ悪いが最低なところだった。

表向きには平和でのんびりとした中学。

どこにでもあるようなありふれた中学のようだった。

だが裏では、放課後や誰もいない教室など、教師や他生徒から見えないところでは不良たちが“ヲタク狩り”と称して内気な人たちに暴力を振るうのだ。



小学校では仲の良かった友達も皆、私立中学へと行ってしまい、私は1人、孤立化してしまっていた。

孤立化した生徒を大勢の生徒が囲み、からかって笑いをとる。


私以外にもからかわれる生徒は多くいた。

何度かとめに入ろうともしたけど、とめに入ったら私もよりからかわれるようになる。

それが怖くて、やっぱり何もできなかった。




そんなつまらない軽薄な毎日がすぎていたある日のことだった。

2年生になって早々私はからかわれていた・・・


正直2年生のクラスわけは最悪だった。

学年の“いじめっ子”たちがかなり多くいたからだ。


その日も移動教室で多くの生徒たちが抜けた後のことだった。

私も移動していたものの、ふとノートを忘れたことに気づき教室に戻った。

そこで囲まれ、からかわれた。



「根暗ちゃんは今日は何してるのかな~?」

「アハハ、どうせボォ~っとしてるだけじゃね?」

「てかこんなにいわれて言い返さないとかホントは喜んでんじゃない?」



正直このままこんな状況が続けば、男性恐怖症どころか人間不信になりそうな勢いだった。

そんな時だった・・・



「は?何大勢で1人を囲んでるわけ?楽しいの?楽しいなら、知り合いの信頼できる医者を紹介してあげてもいいわよ?」



私の後ろには1人の女性がたっていた。



「・・・」



とっても綺麗な人だ。

女性である私ですら見入ってしまうのだ、男子からみたらそれはきっと相当なものなのだろう。



「なにあんた?少しモテるからって調子のってるの?」

「あら、嫉妬?ごめんね、可愛くて。私、あんたらにすべての面で勝ってるものね。顔も、知識も・・・性格も。」

「なんですって!!」



“性格”という言葉にわざと重点をおいた言葉に私を囲んでいたうちの1人の女性が怒りをあらわにした。

だけども、彼女は動じもしない。

まるで一時代先を歩いているような、興味を示していないような目をしていた。



「うるさいなぁ・・・あんた、見てるだけで吐き気がするのに性格まで“おえー”なの?」

「ぐっ。言わせておけば・・・!」



そしていじめっ子のうちの1人は彼女に殴りかかった。

彼女は避けもせず、まるでわざと当たったかのようにクリーンヒットした。


だが事態は速攻で収集された。

そのとき、ちょうど先生が教室から入ってきていたのだ。



「何をしている!!」

「先生、いきなり殴られました・・・」

「なっ、ちょっと!」

「先生も見たでしょ?・・・ひどい・・・」



彼女は殴られた頬をさすりながら、少し涙目になって先生に訴えた。

後に知ったことなのだが、これは前々から彼女が仕組んだことだったらしい。

先生に何か頼みごとをしていた、とか。

つまり先生が教室にやってくる時間帯を計算して、行った行為だった。

結果彼女は殴られたときの倍のダメージを相手に与えて終わらせたのだ。



「・・・あんた、あんなに言われて悔しくないわけ?」



いじめっ子たちが彼女の恐ろしさを知って距離をおくように逃げていくと、彼女は私の前にきていった。



「・・・悔しいけど、私は何もできないもの。」

「はぁ・・・“為さざるなり、能わざるに非ざるなり”って言葉知ってる?」

「・・・え?」


彼女はにっこりと微笑むと、人差し指をたてて説明する。



「孟子の言葉でね、簡単にいえば“自分の限界を決め付けるな”ってことよ。」

「・・・」

「できないっていうのはあんたが勝手に思い込んでるだけであってホントはできるかもよ?」



あのいじめっ子たちに言い返したところで・・・

いったい何ができるのだろうか・・・?



「私と組んであのカスどもをギャフンと言わせない?そういうの好きだし結構上手いのよ、私。」



彼女は自信満々に言うが・・・



「無理よ。私はあなたみたいに強くないもの。」

「そんなのこれから強くなればいいじゃない。大体あんた、見た目はなかなかなんだからその根暗さをどうにかすれば結構いけるわよ、真面目に。」


それはお世辞なのかもしれない。

この場で浮かんだテキトーな言葉なのかもしれない。


けれども私は人からこんなこといわれたことなかったし・・・

毎日毎日“根暗ちゃん”とののしられてきた。

だからこの可能性染みた言葉がすごく嬉しかった。



「今のは絶対信じていいって!この私が保証するんだもの、間違ってるわけないわ。」


彼女は再度自信満々に言い切る。

たいした自信だ、と関心もさせられる。



「それに個人的にも頬を殴られた恨みがあるし・・・」

「・・・それはさっき先生が・・・」

「は?こんなんじゃ終わらせないわよ?徹底的に叩いてやるんだから。相手は徹底的にぶっ潰す!!」



彼女は美人で、可愛くて・・・

そして何より前向きで、女性でありながら力強く、近くにいて心強かった。



「・・・じゃぁ、その前に友達になってくれる?」

「友達?そんなの甘いわよ。友達なんて雑魚よ、雑魚。雑魚の極みよ。」

「・・・え?」



私はさっきから彼女の回答に驚かされるばかりだ。

友達がほとんどいない当時の私からすれば、友達が雑魚、なんて信じられなかった。



「目指すは親友よ。私の名前は卯月咲良。よろしく。」



これが中学で私と卯月咲良との出会いあった。






それからというもの、私の中学生活は一変した。

彼女にはもともと多くの男子生徒の友達がいた。

また彼女は度々私のように誰にも目のつかないところでいじめられている生徒を助け出した。

彼女とかかわっていくうちに、いつのまにか私のまわりにはたくさんの友達がいた。



人数が多ければいじめられることも少なくなり・・・

私も、そして友達たちもつかの間の普通の生徒としての中学生活ができるようになっていた。



そして私は自らの男性恐怖症と向き合うときがやってきた。



「・・・」



私たちと時々話す、誰にでも優しいクラスの中心人物の男子生徒・・・

今では見る影もなくなってしまったが・・・

紀龍、という名前の男子のことが気になり始めた。


・・・とはいえども、まだ2~3度しか話したことはない。

しかも私には男性恐怖症があるので、なんというか、余所余所しくしか話せていなかった。

ただそんな余所余所しく話す私にも彼は優しく微笑んでくれた。


そしていつの間にやら彼のことが気になり始めていた。



「・・・これってもしかして・・・?」

「そうね、春よ、春。おめでとう。」



卯月さんは遠まわしにそれが恋だということを教えてくれた。

彼女には一応大体のことは説明してあるから、彼女自身も驚いていたのだろう。

最初は目が点になっていた。


だが一番驚いているのは多分自分自身だ。

まさか私が男子生徒を好きになるなんて・・・



「ねぇ・・・どうすればいいと思う?」

「コクれば?」

「なッ!?いきなりッ!?」

「冗談よ、冗談。最初は距離を詰めることから始めなきゃね。ある程度普通に話せるようになってきたらメアドでも交換して、さらに距離を縮められたらコクる、そんなところかしら、大体の流れは。」



彼女はそういうと、私を助けてくれたときのようににっこりと微笑んだ。



「私も出来る限り力になるわ。頑張って!」

「う・うん・・・」



最初はホントに不安だった。

どうやって話そうか、何を話せばいいのか・・・

男子とのかかわりがまったくなかった私には、わからないことだらけだった。

だけどそれもこれも全部卯月さんが相談にのってくれて解決していった。


卯月さんにはこれで2度助けられたことになる。

私の中で、卯月さんの存在感がより巨大化していく。




それからというもの、物事は順調に進んでいった。

彼の多くことも知ることができたし・・・

何より嬉しかったのは、気づけば私は彼と普通に話せるようになっていた。

最初こそは緊張したり悩んだけど、こうして普通に話せるようになったことが自分のなかでは何よりも嬉しくて、男性恐怖症という自分のなかで超えられない壁を卯月さんのおかげで超えることもできた。


ちなみに彼は陸上部に所属しているらしく、毎日毎日放課後に走りこんでいた。

その姿がとても格好良かった。

その姿を見て、私の恋のスピードはより加速した。



そして私はついに告白することを決意した。

最終下校時間の15分前となり、あたりも薄暗くなり始めていた。

グランドは寂しいほどに人がいない。

ジャージから制服に着替えた生徒たちは疲れた様子を見せつつも、校門を出て行く。


私は朝礼台の前で待っていた。

・・・メールで「部活が終わったら朝礼台前にきてほしい」とメールを送っただけで返信もきていない。

だから残り15分で彼は来てくれるのだろうか、そんな不安が頭のなかでよぎる。



少しすると後ろから足音がきこえた。

その足音は徐々に大きくなっていく。



「ごめん、遅くなった・・・」


後ろを振り向けば、彼がたっていた。



「そんな。きてくれてありがとう。」

「いやいや、そんな感謝されるようなことはしてないって。」


彼は苦笑しながら困り顔で謙遜する。



「あ、そうだ。それで話って?」

「あ、うん・・・え~とね・・・」



ま、よくあるシチュエーションという奴だ。

というかこのシチュエーションでなぜわからないのだろうか・・・?

察しの良い人なら速攻でわかるだろうに。


なんてことは思うものの、呼び出しておいて時間をかけさせるわけにもいかない。

ここは思い切っていこう!


そう自分に思い切りをきかせ、大きく息を吸って覚悟を決めてから言いたいことを話す。



「あの・・・好きです!付き合ってください!!」



・・・あまりにベタな告白で自分でも面白みがないな、と感じてしまう。

だけど告白の言葉ぐらいは卯月さんにも頼らずに自分で決めたかった。

自分なりの告白の仕方となったのだ、これはこれでいいのではないか・・・

そう思っている。


「・・・」



言い切った後の緊張感が胸を押しつぶしそうになる。

私はただただ願うばかりだ、成功してくれますように、と。



「・・・ふ~・・・」



それから彼は息をはいて深呼吸してから口を開いた。



「ごめんな。」



・・・結果はダメだった。



今までに何度となくののしられてきて、それでも耐えてきて・・・

精神面は意外と強い、と自分のなかで思ってきたけれど・・・

さすがにこれはダメージが大きいらしい。


彼が去った後、最終下校残り5分だというのにもかかわらず・・・

私は力が抜け切って座り込んでしまった。

それは告白し終えて緊張がとけてのものでもあったし、失敗した悲しみからのものでもあった。

私にとっての初恋は苦すぎた。


・・・気づくと目の前に手を差し伸べられていた。



「・・・最終下校残り3分前よ?うちのクソティーチャーに見っかったら大変よ?」

「・・・卯月さん・・・」



きっと彼女は影で見守っていてくれていたのだろう・・・

“今日は用事があるから早く帰る”といった数時間前の彼女はどこへやら。



「なにしけた顔してんのよ?まだ1回目じゃない。1回がダメなら連打で攻略するのみよッ!!」



・・・やっぱり彼女は強い。

私にはそんな強さはない。



「卯月さんは好きな人とかいるの?」

「前にホントに好きだった人がいたんだけど・・・ま、最近はポイポイ量産型製作中って感じかな?」

「・・・」



なぜ彼女は好きでもない男子と付き合うのだろうか・・・

そこに関してはホントによくわからない。



「でも私はあんたが羨ましい。」

「・・・え?」

「私は多分、もう2度と男子を心から好きになることはないと思うから。」


その言葉はとても暗くて、寂しくて、冷たかった。



「・・・なんで?」

「私の中での男子はウザいし醜い生き物、利用するだけの存在になっちゃったから。」

「・・・」

「だからそうやって本気で恋について悩めるのが羨ましい。」



彼女はそういうと、少し困り顔をしてから再び話し出す。



「このことは誰にも言わないでよ?じぃやにすらいってないんだから。」

「・・・」

「ほら、たって。また明日、彼をおとす作戦でも一緒に考えましょう?」



彼女は再び手をさし伸ばした。

私はその手をとり、ようやく立ち上がった。




それからというもの、卯月さんと対策を考えたりして・・・

恋は実らなかったけど、とても楽しい日々をすごせていた。


だけど、そんな楽しい日々もそう長くは続かなかった。

私たちを救い出してくれた卯月咲良にはたくさんの友達がいたけど、それと同時に多くの“敵”もいた。



その代表格が“第3同盟”通称「夜戦」と、“第5同盟”だった。



卯月咲良は私たちのような内気な生徒には優しかったが、普通の男子生徒とは恋愛関係を持ちつつも、実際は利用している、という形のほうが大きかった。


彼女はやっぱり美人だし・・・

そんな悪い噂がたっても、それでも男性は付き合っていく。

そして切り捨てられる。

まさに彼女の言葉通り、「ポイポイ量産型」だ。


そんな日々が続きすぎたせいか、卯月咲良のまわりはいつしか敵だらけにもなっていたのだ。



“夜戦”と“第5同盟”は同一規模の大きさの同盟で、他の同盟よりも人数が多く・・・

対卯月同盟のツートップとなっていた。


それでもどちらか片方のグループなら人数はそこまででもなく、あまり相手側の行動もなく、あったとしても言葉による警告程度しかしてこなかった。

彼らの同盟は存在することで、卯月咲良に対し圧力をかける、というのが本来のあり方だったのかもしれない。



ところがある日、その2つの同盟が手を組んだ。

・・・いや、正確には「合併」というのが一番伝わりやすい言葉だろうか。

夜戦が第5同盟に合流し、人数は倍増した。



それからというもの、彼女の敵の動きは凄まじく進化した。

より攻撃的に、より積極的に動くようになった。




そしてそれは寒い冬のこと、ある事態が起こった。


音島中学では冬になると教室の端に1台ストーブがつく。

私たちは体育の授業が終わると、寒い外から教室に戻ってきて、いつものようにストーブの前にいって温まる。



「うぅ~、寒いね~・・・」

「なんでこんなに寒いんだろうね、冬って・・・地球温暖化とか絶対嘘でしょ・・・」



そんなたわいもない冗談話をしていると、鐘がなり、教師も入ってくる。



「お前ら座れ~、授業やるぞ。」



皆が席に戻り、一息ついたとき・・・

教室の後ろのドアが開いた。

これもいつものことだった。

今では“咲良ちゃん”と呼ぶにまで発展した仲の親友、卯月咲良が教室に戻ってきたのだ。


彼女はいつも少し遅めに教室に戻ってくる。

それは体育後の教科がダルイので、わざと少し遅れてくるのだ。



(今日は早いなぁ・・・)



そんなことを思って後ろを振り向くと・・・

そこにはこの極寒の冬のなか、水浸しとなった咲良ちゃんがたっていた。



「なっ!?」

「なにあれ・・・?」



皆も驚きを隠せないようで、ざわつく。



「おい、卯月。何があった?」



教師が確認すると、彼女は無言で水の雫を歩くたびに落としながらストーブの前へと行く。



「・・・寒い・・・」



彼女はガタガタと震えながらハンカチで水滴を拭く。

それから授業は一時中断され、咲良ちゃんは先生につれられていった。



どうやらこうなった原因は“第5同盟”にあるようだった。

正確には第3同盟「夜戦」のメンツらしいが。


第5同盟の「河越かわごえ 城武しろたけ」を中心とする元「夜戦」のメンバー数名が彼女に水風船を投げつけた、とのことだった。

しかも1つや2つではなく、大量に。

夏になら水風船なんて可愛いものだが、今は冬なだけあり、性質が悪すぎる。


・・・私自身もある程度は咲良ちゃんの恋愛の仕方については疑問もあったが・・・

いや、正直男子との恋愛関係に関してはいくら親友であっても、若干引き気味でもあった。

利用しては切り捨て男子と喧嘩になっても強気でいる咲良ちゃんをみて、「場慣れしているな」とも思ったし、「荒れている」と感じたりすることもあった。

付き合いが長くなればなるほど、その疑問は大きくもなっていた。


だが、だからといってそこまでやる必要があるのだろうか・・・?

第5同盟は人数が増えたことにより、進化の歯止めがきかない状況へと陥っていたのかもしれない。



「ま、自業自得だよね。」

「いいんじゃない?もともとサイテーな奴だったんだし。」

「いい薬よね。」


クラスの女子の一部からもそのような声がした。

私はそのような言葉をきいて非常に不愉快な気持ちとなった。


彼女がいないところでは散々いえるくせに、目の前になってみればいえないような連中が咲良ちゃんの何がわかる。


たしかに私自身も彼女の恋愛関係に関しては疑問をもっていたけど・・・

それでも私を救ってくれていろいろ手伝ってくれた大親友なのだ。


だけど・・・

いつまでたっても弱い私はこの場においても何にもいうことができなかった。

そのとき初めて自分の弱さに「恥ずかしい」と思う感情が芽生え、同時に何もいえないことが、いつも助けられてきた咲良ちゃんを守ることができない無力さが「悔しい」と感じるようになった。



「てか河越の奴、マジでやったのか!」

「これで利用された男子たちもだいぶスカッとしただろうよ。河越グッジョブ!」



休み時間、廊下を歩けばその話題で持ちきりとなっていた。

男子生徒のほとんどは河越たちの起こした行動を高く評価しているようだった。



「何がグッジョブだよ?やり方は最低じゃねぇか。第5同盟内でそんな行動されちゃたまったもんじゃねぇぜ。」



すると珍しく反対意見がでていたので、そちらを見てみれば・・・

そこには度々咲良ちゃんの動きに突っかかってくる第5同盟の副リーダー、時津風が機嫌悪そうな顔をしていた。



「だけどよ、これは男子生徒のほとんどはスカッとしただろうし、彼女も学んだろう?いいことじゃないか?」

「その言葉を本気で言ってるんだったら病院行って来い。あくまでこれは俺の意見だが、皆がなんと言おうと俺は気に食わねぇ。」



彼も賛成していると思っていただけに、彼の言葉が意外だったりもする。



「まぁまぁ、そのことはさっきちゃんといって河越も反省してたじゃねぇか。」



その様子から時津風はおそらく河越に怒ったのだろうか・・・?

よくはわからないが、第5同盟の副リーダーは副リーダーで大変なようだった。



しかしながら河越称賛はとどまることを知らなかった。

咲良ちゃん自身がこの様子をみて、どう思うかは別として私自身は非常に不愉快で不愉快でたまらなかった。


だけどもそれでも私は何にもすることができなかった・・・

弱い自分がどこまでも惨めだった。



そしてその自分の弱さはまた新しい考えを生み出した。


・・・散々彼女に頼って、彼女に救われて・・・

でも逆の立場になれば逃げの姿勢。

・・・こんなのが親友といえるのだろうか・・・?

彼女の親友だ、と皆に胸を張って堂々といえるのだろうか・・・?

・・・いえるわけがない。



そう思うと、なぜだろうか・・・

散々助けてもらって何も出来なかった申し訳なさなのだろうか・・・

自然と彼女と一定の距離をおくように私はなっていた。


そのまま彼女との溝は広まり続けた。

結果、高校生になった頃には過去のことはなかったかのような状況にまで後退してしまった・・・


結局中学生の私は最後の最後まで臆病で何も出来ない私だった。

そして最後の最後まで自分自身のそんなところを嫌って終わった。




こうして何もかもが中途半端となった中学時代は終わり・・・

私は高校生となり、4月にこの高校・・・

霧島第3高校に入学したのだった。



                          「過程」  完

前書きにも書いたとおりです。

なので、今回はおまけはなしです(すみません・・・)

生徒会の生徒をまとめてみました。

まとめというか、紹介・・・?


実は生徒会側の生徒の数は絆同盟のメンツの数を優に越してしまっているんですよ。ですので・・・

あれ?こいつ誰だっけ?w

ということにもなってしまう可能性が高いと思いましたので、こういう形をとってみました。

ちなみに今回は「その1」です。



生徒会生徒整理集その1


“会長”

天王山 薫(女性)・・・現在の生徒会の会長。非常に気が強く、基本は命令口調。先輩方が作り上げた生徒会の権力の座を守りきるため、獅子奮迅。



“副会長”

|ー賤ヶ岳(男性)・・・3年副会長。元治安維持部のC班、D班を指揮可能。とにかく会議などでは皮肉が多いが、その皮肉も時に内容の弱みを抑えたものが多いため、そして何より3年副会長という権力があるため、誰もが彼の皮肉染みた言葉を無視できない。

|ー山崎(弟)(男性)・・・2年副会長。次期生徒会長候補でもある。厳島のかわりに警備部を指揮することとなる。川口が非常に信頼する生徒。・・・中二病な一面も。アイスが大好物で、特に第3高校購買部の「灼熱アイス」を溺愛している。

|-川口(男性)・・・元1年副会長。権力ばかりを優先する今の生徒会についていけなくなり、離脱。その後絆同盟へ。決戦時は、天王山説得のため本部会議室へと向かう。




“警備部”・・・元々生徒会の指揮可能部のなかでは規模が大きいほうだが、闇討ち時から大多数が警備部へと移動させられ、生徒会のほとんどが警備部となっている。


厳島(女性)・・・警備部最高責任者。生徒会の動きに反対するため、内部では煙たがられている。誰にでも優しく、差別などが大嫌い。背が低い。1人称は「ボク」。また趣味でバイオリン、という趣味をもっていたりもする。けいおん部の副部長でもある。

|ー砕川(女性)・・・厳島の権力が山崎に一時的に移ったときも、厳島についていた、厳島を尊敬し続けている者の1人。お嬢様風(?)なしゃべり方が特徴的?甘いものに目がない。

|ー凛動(女性)・・・砕川と同様、厳島を尊敬する者の1人。厳島から与えられた仕事を確実にこなすが、時にはやりすぎることも。本来はあまりしゃべらないのだが、本編ではしゃべりまくっているという罠。何事にも動じないようにも見えるが、実は「お化け」や「怖い話」などが大の苦手らしい。



仁井(男性)・・・1年責任者。闇討ち時に陽炎とともにB組教室へ乗り込み、時津風と対峙するが敗北、決戦時は生徒会の動きに反対する厳島に呆れ果て、山崎についていくものの体育館で自らが間違っていたことに気づき、全校生徒を守る体勢をとる。紀龍・西本と仲がよく、彼もまた学年主任の授業が好きで彼を尊敬している。彼はガムが好きで授業中にもよくかんでいて注意を受けている一面も(本人曰く「ずっと食べていてもなくならないからお得感がする」らしい)。ただし学年主任の授業は「ガムは集中するのに良い」ということで許可されていて、そういった面でも彼は学年主任の授業が好きらしい。




“ジャスティス”・・・元々は3名チーム。その後決戦時には元治安維持部を編入。


ヒマツ・飛沫(男性)・・・日本人の母とアメリカ人の父でのハーフ。容赦・躊躇なしで、やるのであれば徹底的に、というタイプ。勝つということに異常にこだわる。実は中間テスト学年1位の天才で、学校の看板男と呼ばれるほどのイケメン。・・・性格がよければ完璧だった残念なイケメン。

|ー鴨居 神威(男性)・・・飛沫を誰よりも理解している男性で、誰よりも尊敬し、敬愛している。砕川と付き合っている。男性と話をつけるには拳が一番、という考え方をしている。

|ー陽炎(男性)・・・ライバルを大切にする剣道部のエース。1年にして関東大会出場。闇討ち時では治安維持部を指揮することとなるが、時津風と川中を前に大敗。その後生徒会を辞め、飛沫と敵対する時津風や川中を守る、という道に進む。


紀龍(男性)・・・元警備部の一員で、治安維持部へ。そのため元治安維持部A班班長でもある。限度、というものを知らず時には過激な暴言などを連発することがある。


西本(男性)・・・元警備部の一員で、元治安維持部B班班長。常に冷静さを保っているが、それは本人自身が意識して行っていることらしい。紀龍と話が合いつつも、彼の問題発言に時々呆れされられている。決戦時は教師説得のため職員室に向かったのだが・・・?



その1ではこれぐらいにしておきます。

こうしてみるとまだ完全ではありませんが、かなり人数が多いですよね。

これだけ多いと多様性もあるので、今後もだしていきたいと考えていたりw


とりあえず今回はここで終了です。

今回も読んでいただきありがとうございました(ペコリ




~今回の反省~


・・・本編今回は鍵カッコ少なすぎだろw

“字ばっかじゃね~か、馬鹿野郎w”って感じですよね・・・

・・・次回は鍵カッコを増やすように努力します・・・orz


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