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なんで僕が!?  作者: へたれ度100%
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表情  ※

※これは本編のプラスアルファーの内容です。

 本編だけで十分という方は飛ばしちゃってください。

 

 あとこれは桶狭間視点の物語です。

我が絆同盟には今、10人の生徒がいる(自分も入れて)

そのうちの1人は入学当時、教室の端っこでオロオロとしていて無口で・・・

決して社交的といえる性格ではなかった。


しかしそんな女性は今の今まで、皆と仲良く笑いあってやってきていた。



「こういう最終決戦では必ず誰かが裏切る。・・・それはお決まりのイベントじゃないですか。」



そんな彼女は現在では別人のような言葉を言い続けている。

こんな言葉、聞いててこっちが逆につらくなる。



「お前が本当に望むものはなんだ?」

「・・・」



俺のそんな質問を彼女はただただ無表情で無視した。

無視、というよりは回答できなかったのかもしれない。



ただ・・・

この時の表情はあのときに似ている。

そう・・・俺と目の前の女性が始めて話した日の時と。







初めて話した日、なんていうとずいぶん昔にもきこえるかもしれないが・・・

実際はつい最近でもある。


6月の中間となり、天候もだんだんと暑さを増していく、そんな日々が続いていた日だった。

ほとんど今とかわらない。

・・・何しろ彼女と初めて話したのは、約1週間ほど前なのだから。



そんな日々の頃は、ちょうど十六夜と卯月の間に生徒会からアルファー・・・

通称「引き裂き」なんて呼ばれているものをかけられ、絆同盟を立ち上げようとしていたころだ。



・・・2人の関係を壊してしまったことに心が痛むなか・・・

俺にはもう1つ、心配で心配でならないことがあった!!


それが「勉強」である。



これはもうだいぶ前の話なのだが、中間テストと呼ばれる・・・

まぁ、世の中の学生たちの敵、といえるべきイベントがあった。

そこで俺は見事に全体順位が最下位に等しい順位となってしまった。


・・・自慢できることではないが、中間テストでは・・・

赤点の教科が実は4つもあるんだぜ!!(注:テスト教科は7教科)


残り3つはどうにかセーフラインだった。



が!!

このままではまずい!

というのは確実に見えていることで、下手をすれば来年2年生になれないかもしれない。



・・・ということで、俺は90度方向転換をし・・・

テストより、授業態度で成績を稼ごう!!

という作戦にでることにした。



その日は赤点教科の1つ、「理科総合」から宿題が出ていた。

調べればわかるような簡単な問題のプリントだ。

宿題というのは、授業態度への第一級ともいえるべき柱!!


これはやらねば!!!



と思っていたのだが・・・

学校が終わり、いざ家に帰ってみると・・・



「あれ・・・?」




カバンにしまったはずのプリントちゃんがいない・・・

まさかの脱走か!?



「あのバカが!!(注:自分のことです)」



くそ、何逃げ出してるんだよ、プリント坊主!!



ということで、学校に再びとりにいくはめになってしまったのだ・・・


ちなみにその日は皆との集まりもなく(関ヶ原の都合にて)・・・

早めに家に帰ってこれたのだが・・・

ダラダラとしていて、いざやろうと思えばない!!

という状況だったので、外は真っ暗。




真っ暗な学校とか怖ぇぜ・・・

でも一度いっても見たかったんだ!!


と半分不安を覚えつつも、半分期待あり!

そんな状況。



学校前にまでつくと、正面門から入る・・・

なんてマヌケなことはしない!!

正面門は、2階にある職員室の窓から見えているのだ。



最終下校時間後、校舎内に入るときは職員室にいって、先生たちの許可がいるわけだが・・・

どうせいったら、「お前、宿題をとってきてもやらんだろ」的なノリで先生たちに言われる・もしくは思われる・さらにもしくはそんな目で見られる、というのは目に見えている!!



ただ最終下校後の学校には、例外で生徒会はいて良いことになっているので・・・

セコム、とかそこら辺の警備システムは動いていないはずだ。



すなわ~ち!!

バレないように教室まで進んでプリントを回収する!



ということで、門以外は、フェンスとなっているのだが・・・

そのフェンスをよじ登って、サクッと校舎内に突入だ!!


ガチャリガチャリと音はするものの・・・

今は通行人も通っていなかったし、大丈夫なはずだ!!


その時だった・・・



「・・・何やってるんですか?」

「!?」



驚いて、フェンスをまたぐところ・・・

フェンス上から自分の今さっきまでたっていたところを見てみると・・・



「中島じゃねぇか。」



1年B組の中島がたっていた。


・・・ま、彼女とはあまり話したことはない。

てかない。

まったくない。


そもそもオロオロとしていたし・・・

俺みたいな活発(?)な男子が急に話かけたら怖がりそうなタイプだし・・・



ま、そんなわけで話をしたことはなかった。




「・・・不法侵入ですよ?」

「ハッハッハ、甘いぜ中島。これはだな、不法侵入ではなく列記としたプリント回収のための学校訪問なのだ!!」



な~んて言い訳が通用するわけが・・・



「そうなんですか?」



・・・信じたんだね、これが・・・



「そうだぜ!断じて不法侵入ではない!!」

「・・・でも桶狭間くん、プリント・・・やるんですか?」



・・・カチン!

お前な、何のために俺がこんなに苦労して学校に入ろうとしていると思っているのだ!!

他の人にそういった言葉を言われないようにするためだろうが。



「失礼だな、お前・・・今日の俺は気分がいいからやるの!」

「・・・ごめんなさい。」



その言葉に彼女はただただ頭を下げて謝った。



(うわっ・・・絡みづれぇ~・・・)



これじゃぁ俺が悪いみたいじゃないか!(注:全面的に桶狭間が悪い)

そんなにガチで謝らなくても・・・



「そんなガチで謝るなよ・・・」

「だって「失礼だな」って・・・怒っていますよね?」



俺ってそんなに短期だったのか。

意外な発見だ。

今度ノートにメモっておかねば。



「お前、俺がそんなに短期だと思ってたのか!?」

「・・・ごめんなさい。」



そしてなぜまた謝るし・・・



「今度はなんで謝ってるの・・・?」

「だって「短期だと思ってたのか」って・・・」



うわっ、ダメだこいつ・・・

めちゃくちゃ疲れる・・・



「怒ってないから心配しんな。」

「・・・ごめんなさい。」



・・・誰か、助けてください。

俺が悪いなら、土下座で謝りますから!!



「と・とりあえずその謝るのをなんとかしてくれ。」

「え?」

「謝れると逆に困る。」

「・・・すみません。」



言葉を変えただけじゃねぇか!!

意味ねぇだろうが、バカタレ!!



仕方ない・・・

こういうタイプには、あまりしたくないけど・・・


「今度俺と話すときはなんでもそのすぐ謝る、というのをやめろ。これ命令!命令厳守!!いいな?」

「は・はい・・・」



・・・とりあえずはどうにかなった。

慣れてきたら、命令を外せばOKだろ。



「・・・で、お前、なんでここにいるの?」

「忘れ物です。」

「・・・何の?」

「理科のプリントの。」



これってデジャブ?


って、俺とまるっきり同じじゃねぇか!!



「お前、プリントなんてやるの?」

「やりますよ。やらないといけないものじゃないですか。」



・・・グサリ・・・

聞かなきゃよかった・・・


さっきの仕返し、とか考えた俺が悪かった。



「それで?お前はどうするの?」

「私は正面門から・・・」

「うわっ、ば・バカ!やめろ!!」



そんなことしたら、ついでに俺も見つかるじゃねぇか!



「・・・でもそうしないと学校には・・・」

「よし、お前もフェンスを越せ!!」



・・・言ってからハッとする。

・・・目の前にいるのは女の子です。



「無理ですよ。こんな高いフェンス・・・」



いや、このフェンス、フェンスのなかでは低いほうだから。

しかもプラスチック製だか竹製だかは知らんが、よくしなるから登りやすい!


・・・安物だな。

ダイソーで買い揃えたのだろうか?



「じゃぁ俺が引っ張ってやるから。」

「・・・」



彼女は困り顔をするものの・・・

手を出した。



んなわけで引っ張り上げてフェンスの上へとやってきた。



「じゃ降りるぜ。」



俺はサクッとジャンプで着地をして、見事に校内に侵入・・・

ではなく、訪問達成!


彼女も無事降りて、どうにか校内に入ることが出来た。




さて、学校にいくにはまず裏口からいく必要がある。

職員室の窓の視界に入らないように、通らないといけないから・・・



「え~と・・・こういってあぁいって・・・ブツブツ・・・」

「あの~?」

「ん?」

「その道より、こっちをまっすぐいった道を使えば早いんじゃないですか?」



・・・この道をまっすぐってお前・・・

この道はまっすぐもなにも、木々が生い茂っていて道じゃない上にまっすぐ進んでも木々しかないはずだ。



とはいえ、目の前の女性は超真面目な女性。

・・・嘘はいわないタイプだろう。



「・・・こっちって木々しかないぞ?」

「いえ、こっちから校舎内へ入る裏口へとまわれるんですよ?」

「・・・なんで知ってるの?」



・・・ま、俺の友達の五月蝿い奴らとかならわかるよ、関ヶ原とか。

そこら辺が知ってるなら、頷いてもいいよ。

けどなんでお前がそんなこと知っているんだ?


・・・ハッ!

まさか・・・!



「お前・・・実は隠れおてんばだったりとかする?」

「そ・そんなことないですよ!」



・・・おぉ・・・

本気で返された・・・

やっぱアレか、デリカシーのない質問だったか。



「・・・ごめんなさい。」



始まったよ・・・

なにこの勝手にキレて、勝手に謝る娘。

・・・面倒なんですが?



「謝んなって。てか、今のは全面的に俺が悪いわけだしな。」

「・・・そうですね。」



彼女は頷くと、微笑んだ。


・・・笑うと可愛い。

・・・いつも教室の端っこにいた女性がこんなに可愛いとは・・・

くそ、俺の目もまだまだ節穴だったぜ。



「やりゃぁできるじゃねぇか。」

「・・・え?今のでいいんですか?」



・・・前言撤回していいっすか?

やっぱ面倒っす。



「そう、今のでいいの。お前はな笑うと可愛いんだからもっと積極的にだな・・・」



なんてことをいっていると、彼女は黙って走って先へと進んでしまった。


・・・おいてかれた・・・

人がいいことを言おうとしていたときに。

これではまるで痛い子じゃないか。


やっぱ中島の前で「可愛い」とかはダメなのか。

・・・女性とは難しいものだ。

褒めてもダメ、からかってもダメ・・・

じゃぁどうしろというのだ・・・?


十六夜の苦労が少しわかった気がした。



「・・・ホントに裏口前にでてきちまった・・・」

「私は嘘とかはいわないんですよ?」



まぁ、疑っていたわけではないのだが・・・

やっぱり正直意外だ。



そんなこんなで中島の道案内もあり、無事に校舎内にもぐりこめた・・・

いや、学校訪問だ、訪問!


やはり夜の校舎というのは一味違う。

・・・なんか出てきてもおかしくはない。


薄気味悪く長く細い廊下。

目の前には暗闇しか広がっていない。

非常口のライトの緑色がより不気味にあたりを照らしている。



「や・やっぱ帰ります・・・」



ってここまできてこの女は何をいってるんだか・・・


俺は彼女の手首をガッツシつかんだ。



「な・何するんです?」

「ま、ここまできたら進むしかないべ。」

「イヤです!」

「俺の辞書に撤退と後退と不可能という言葉はない。」



・・・なんてことは言うものの、彼女は帰ろうと必死こいて俺の手を離そうとしている。

・・・これってなんか俺、悪役じゃね?

他人からみたら最悪なイメージがつく気がしてならない。

ま、悪役でも華麗にこなす、それが天才としての役割なのだがな、フハハハハ!



「イヤです、帰らせてください!」



仕方ない、こうなったら最終手段。




「俺を1人にしないでくれ・・・俺も怖いんだから。」



・・・半分本音でもあったりして。

・・・ま、予想以上のスケールとでもいいましょうか?

学校って怖いね、マジで。

音楽室と理科室は避けて通りたいのだが、B組の教室に行くには両方ともあるというふざけたオチ。



「え?桶狭間くんも怖いんですか?・・・男の子なのに。」



グサリッ!

・・・こいつはさっきから心に刺さるような言葉をたびたびと発するな。



「男でも怖いものは怖いんだ。」

「意外です、桶狭間くんにも怖いものがあったんですね。」

「人を鉄でできてるみたいに言わないでくれるか?」



てか、中島のなかの俺の人物像というのはどうなっているのだろうか?

少し気になったりする。



「大体俺にだって怖いものはいくらでもある、勉強とか数学とか理科とか。」

「・・・全部勉学関連・・・」



・・・ま、馬鹿ですから。

そっち方面なら任せてくれってことなんだな。



「あと強いて言えば親父が怖かったかな。」

「・・・お父さんですか?」

「そうそう、でも尊敬できるいい親父だった。」



ぶっちゃければ親父がいたからこの高校に入学できた、といっても過言ではないわけだしな。



「羨ましいです。」

「・・・え?」

「・・・」



なんか気まずい空気になったんですが・・・

世に言うシリアスというものか。

いや、俺の場合シリアスというよりシリアルだろ。



「・・・さて、じゃぁ行きましょうか、教室に。」



おぉ!!

・・・これで助かる。



「サンキューな。」

「いえいえ、私もとりにいかないといけないものもありますし。」



そういって歩き出そうとした。

・・・とっ、その前に!!



「これこれ!!」

「え?」


ポケットからあるものを取り出した。

それは家からもってきた小型の懐中電灯だ。

スイッチ式というタイプなので、節電もできるんだぜ!



「じゃじゃ~ん!懐中電灯~!」



大山のぶ代さん風に。



「・・・地味に上手いです。」



地味にな。

地味に・・・



「・・・なんでそんなものもってきてるんですか?しかもポケットに。」

「余裕があれば夜の学校を探検しようと思ってな。・・・ま、やめることにしたが。」


だって怖ぇ~もん。



「桶狭間くんって意外とかわった人なんですね。」



今度はなんだ・・・

ホント、こいつのなかの俺尾の人物像はどうなってるんだ!?



「ま、元気ぐらいしか取り柄はねぇからな。」



そんなことを話し終わり、廊下を歩き始める。



「あ!」


ん?

彼女は何かを思い出したかのような表情をした。

それから真顔になってこちらに向いた。



「あの、B組内で反生徒会の集まりを作ろうとしてるって本当ですか?」



・・・なぜこいつがそんなことを聞く?

まったく関係のないことじゃないか。



「だとしたらどうするんだ?」

「そのメンツって誰がいるんです?」



そのとき、彼女はまるで今までの彼女ではないみたいなオーラをだしていた。



「・・・」

「・・・どういうメンツなんです?」


追い討ちをかけてくる。

異常に執着してるな。



「・・・」

「・・・」

「・・・な~んてな。」

「え?」



彼女は目を丸くした。



「いくら俺でもそこまで馬鹿じゃない。生徒会を敵にまわしたら学校すら敵にまわすってことなんだぜ?それ、“退学願書”だろ。あいにく俺はまだこの学校にいたいしな。」



生徒会と学校は組んでいる。

つまり生徒会を敵にまわせば学校自体も敵になる。

勝てるわけがないのだ。



「それにそんな集まりなんてねぇ~よ。」



そう、“まだ”な。

・・・ま、嘘は言っていない。


・・・たとえ負ける可能性が高くてもやらなきゃいけないときはある。

・・・それに俺は馬鹿だから、学校と生徒会を敵にまわしても勝つつもりでいるんだな、これが。


他人がみれば、「なんという理想家だ。」「常識が通用しない馬鹿だ。」というだろう。

まったくをもってその通りだ。

自分でも理解できている。

だが理想だろうが馬鹿だろうが、なんと蔑まされても俺はやらかして勝つ気でいる。

何しろ俺が“常識が通用しない大馬鹿理想家”っては俺自身が一番理解できてるからな。



「本当にないんですか?」

「ないよ。」

「本当に?」



そこまでしつこくきいてくるには理由があるんだろうな。

・・・ま、なんとなく想像がつく。

色気で情報を引き出そうなんて、生徒会の連中も頭が悪い証拠だな。



「そうですか。ならいいんです。」



なんてことを言っているうちに教室へとついた。

のだが・・・



「鍵がかかってますね。」



鍵は当然ながら職員室にある。

だが俺は何が何でも行かないぞ!!


通常のドアの上には小さなスライド式の長方形の扉がある。

おそらく空気の入れ替えのためだろう。



「これはあいてるかな?」



と背伸びをして手をついて横にスライドさせてみると、案の定扉は開いた。




「ここからいけそうだな。」

「・・・本気でいってます?」

「俺はいつでも本気だぜ。」



中にさえ入れれば、内側からなら教室の後ろ側のドアなら開けることが出来る。

ただ入るまでが大変そうなのだが・・・

ま、俺の辞書には「不可能」の言葉なんてないわけだしな。



「やめといたほうがいいと思いますよ?いくら桶狭間くんでも無理があります。」

「あのな、そんなのやってみなきゃわからねぇだろ。やる前から諦めてるのは致命的だぜ?」

「・・・」

「諦めなきゃ案外どうとでもなるもんだ。理想は夢を現実化させる、なんてな。」



理想大馬鹿な俺らしい言葉だぜ。

なんてことを俺自身が納得する。



後ろに下がって助走をつけるための距離をあける。

ま、走り高跳びはそれなりに得意だが、今回はよじ登り戦法のほうが利口だろう。



「よし・・・行くぜぇ・・・」



中島は「どう考えても無理だ」という顔をしている。

ま、だいぶ高いし、空気の入れ替え用にしてはでかいが所詮は空気の入れ替え用。

人が入るものではないので、こういう場合には小さい。



「うりゃぁ!!」



俺は走ってジャンプする。

どうにか手が角につき、そこから無理やりよじ登っていく。

下はドアがあって、結構古いもんだから、足があたるとかなり音がする。


・・・あたりには俺らしかいないことを願うしかない。


・・・どうにかよじ登ることはできた。

といっても足場なんてものは当然なく、完全によじのぼったのではない。

角に手はついたままでそのすぐ下にまるで体育座りのような態勢で壁に引っ付いているだけなのだ。

・・・もちろん引っ付いている壁は90度、落ちたら背中からドスンだ。

早くしないと、腕に疲れが溜まってきてしまう。


ここからは鉄棒方式に、先に足を空洞部に入れていって、最後に腕を突き放す感じにする。

一気に勢いをつけていけばなんとかなりそうだが・・・

ミスれば落下、痛い思いが待ち構えている。



(ま、こういうのは慣れてるからな。)



ある程度のリスクを覚悟して一気に行く。



「おりゃぁ!」



そしてどうにか教室内に入ることができたわけだ。

・・・運動能力ってこういうときに役に立つんだな。



強いての失敗をいえば、空洞部を勢いで抜ける際に、勢いをつけすぎて顔面を天井に強打したことぐらいか。

・・・ま、痛いが落下に比べれば安いもんだ。



「おっと・・・後ろの鍵をあけなきゃな。」



外では「信じらんない」と呆れと驚きの二重の表情を重ね合わせて見ている女性がいる。

後ろのドアを開くと、その女性は静かに入ってきた。



「言ったろ?案外どうとでもなるって。」

「・・・ありえません。信じられないです。」



・・・せっかくドアをあけたのにこの言い様。



「あそこでミスをしてれば大怪我だったかもしれないのに・・・危ないことしすぎです!!」



・・・なぜ俺はキレられているのだろうか・・・



「危なくてこっちが見てられませんよ。」

「大丈夫、落ちてもそういうのには慣れてるから。」



ま、痛みには慣れてるからな。

ガキのころからよくやったもんな。


木に登ってて枝が折れて地面に落ちたときが一番痛かったっけ・・・

いや、朝礼台の角に手をついてハンドスプリングで降りようとして、手の付け所を間違ってそのまま地面に落下したときのほうが痛かったか・・・


ま、この程度のことはよくあったから体は丈夫なんだぜ!



「ホント、信じられません。」



彼女はそういうと、ため息をついた。



「さて、とっとと忘れ物を回収しちまおうぜ!!」

「ですね。」



そういってお互い、自らの机の中を探る。



「あったあった・・・」



プリントくんはちゃんと机のなかでお留守番してました☆


俺は自分の忘れ物を回収し終わったが、中島はなにやらまだ何かを探しているようだった。



「見つかったか?」

「どのノートでしたっけ・・・?」



なんだ、プリント以外にノートも忘れていたのか。



「どれどれ・・・」

「って、何してるんですか!!」



彼女は俺がノートにさわるまえにササッと回収してこちらをにらんだ。

・・・見ちゃまずいものだったのか?



「何、見ちゃまずいもんでも書いてあるのか?」

「そ・そういうわけではないですが見たれたくないんです!」



・・・やっぱ追求するのはやめておこう。

ま、とりあえず俺の辞書からは「デリカシー」という言葉も排除決定だな。

また物静かな彼女を怒らせたのだから。



「さて帰るか。」



なんていって階段を下って、廊下に行こうとした瞬間だった。

俺たちのライトとは違うライトが目の前でひかった。



「まずい!!」


俺は咄嗟の判断で後ろにいた中島を吹っ飛ばして階段のほうへと押し戻した。


いやね、前々にさ、十六夜からきいたよ。

「車から卯月を守ろうとしたら逆に弱みを握られた」とかいってたな。

なんでも彼女を押し倒した、とか。


・・・ま、自業自得だな。

車から守るためとはいえ、女性を押し倒した十六夜が悪い!!


・・・と、今の今に至るまで俺はそう思っていたよ。

けどさ・・・

時には、ホント偶然でこうなっちまうこともあるんだな・・・



・・・もうどういう状態かわかるであろうこの態勢。



「ひっ・・・いやぁぁぁぁぁぁ!!」

「ぐほぉっ!」


・・・と上にいた俺は彼女に腹部を思いっきり蹴られて、廊下へと吹き飛ばされた。

その後彼女はササッと階段へと走っていってしまった。


・・・今のは俺が悪いのか?

完全なる誤解だろ・・・

冤罪だ、冤罪。


・・・十六夜の気持ちが少しだけ・・・

というか、かなりわかった気がした。

・・・明日謝っておこう。



・・・なんてことを思っていると当然ながらライトを照らされる。

階段から一気に廊下へとでてきたわけだからな。



「・・・桶狭間?」

「・・・え?」



よく見てみれば、目の前にいるのはB組の生徒会で副会長を務めている川口ではないか。



「よっ、川口。」

「・・・お前、こんな時間に何してるんだ?」

「学校探検!!」

「あのなぁ・・・」



どうやら彼は生徒会として見回り中だったらしい。



「いや~、夜の学校がどんなもんか来て見たくなってな。意外と怖いんだな~。」

「・・・信じられん。」



・・・またその言葉か。

今日何度同じことを言われるのだろうか。


が、さすがに教室に上の扉の部分を使って忍び込んだ・・・

とはいえない。



「・・・職員室での許可は?」


どうせ最終的に確認されて、嘘をついてもバレるんだ。

もうどうにでもなれ。



「もちろんとってない!!」

「・・・だよな。」



彼は深いため息をついた。

呆れ果てている様子だ。



「桶狭間、最終下校後に学校にいるってのがどれだけ問題か理解してるか?」

「わからんが、厳重注意とかか?」

「普通は謹慎処分だ。・・・下手したら3ヶ月とか。」



それって、普段から遅刻とかしてる俺からすれば・・・

授業出席日数が足りなくて、来年も1年生ってことになるじゃん!!



「ま・待て!!見逃してくれ!!」


ま、今更むしが良すぎる話ですよね~。



「・・・幸いお前を見たのは俺しかいない。」


ん?

これはまさかの・・・?



「・・・これに懲りたらもうこんなことするなよ。」



マジか!

見逃してもらえるパターンか!!

案外言ってみるもんだ。

諦めなきゃどうとでもなるってのは本当にどうとでもなっちまうんだな。


・・・川口が良い奴でよかったぜ。



「・・・行け。もう見つかるなよ。」

「あぁ!サンキューな、川口!」


そういって走って行こうとすると・・・



「そういえばなんだか女性の声らしきものがきこえたんだが・・・」

「き・気のせいだ、気のせい!!」

「・・・了解した。」



・・・ま、中島はバレてないなら巻き込む必要はないよな。



そんなこんなで行きにきた道へと引き返していく。

裏口を使って、校舎をでて・・・

中島に教わった道を使って、最初と同じ部分のフェンスを乗り越えて学校をでた。


すると前には中島がたっていた。



「・・・待ってたのか?」

「はい・・・あの、ごめんなさい。」



・・・またその流れかよ・・・

もう疲れたんだが・・・



「咄嗟に蹴っちゃって・・・ごめんなさい。」

「ありゃ俺が全面的に悪いからな。謝る必要はないと思うぜ。」



・・・というか、俺より「偶然」という機会が悪いんだがな、どちらかといえば。



「・・・大丈夫ですか?」

「さっき言ったろ、そういうのには慣れてるって。」

「・・・」



彼女はそれから下を向いた。



「よし、じゃぁこうしよう!」

「え?」

「俺を蹴って悪かったと思うんだったら、まずすぐ謝るのをやめろ!!」



そのときの彼女の顔は非常に不思議そうな困り顔をしていた。

・・・そう、今と同じだ。



「もっと強気に前を見ればいいんだ。たとえばこういう場合は「桶狭間くんが悪いんですから蹴られて当然です!」みたいな言葉をいえるぐらい強気になれ!!」



・・・ま、実際そこまでになられちゃ困るが・・・

そこを目指せという意味でいったのだ。


・・・が、今思うと彼女はいつの間にやら非常に強気になっていた。



「そ・そんなんでいいんですか?」

「そんなんでいいの。」

「わかりました、努力します。」



その後、彼女を家まで送って、俺も帰った。

・・・ま、夜の女性の一人歩きは危険だからな。

我ながらその日初めてデリカシー・・・

というか、紳士的な動きをした、と思った。







何はともあれ、今の彼女の表情はあの日の不思議そうな・・・

少し困ったような顔をしていた表情に非常に似ているものがある。


だがその表情は前と同じで、ただただ困っているわけでも不思議がっているわけでもない。

今ようやく理解できた。


困っている中で、ほんの少し喜んでいるのだ。

・・・こんな状況で絆同盟を裏切ったにもかかわらず、それでも彼女を優先する絆同盟。



その彼女自身の本音に彼女はどこまで気づいているだろうか・・・?


まぁ、いい。

気づいていないのであれば気づかせてやるのが俺の役目だ。



「・・・そうか。」



俺は言葉での答えはなかった質問に頷いた。



・・・彼女を絆同盟から失えば悲しむ奴を俺は自分も少なくても入れて10人知っている。

十六夜、卯月、五月雨、将軍、時津風、川中、俺、関ヶ原、川口・・・

そして中島本人だ。



絆同盟リーダーとして、メンバーを助けるのは当然のこと。

なぁに、今までリーダーらしいことは何一つできていなかったんだ。

せめてここぐらいは俺のリーダーとしての見せ場をつくろう。



・・・俺は絆同盟リーダーとして・・・

彼女を生徒会から取り返す、という意志を再び強めるのだった。



                               「表情」  完

おまけ   飛沫さんの最低★講座!


参加者→十六夜、五月雨、桶狭間、時津風、飛沫、神威、陽炎

被害者→卯月



卯「ガミガミガミガミ!!」


十「サーセン×3」


卯「フン!」


十(・・・やっと終わった・・・)



五「・・・アレはお前が悪い。」


十「いや、僕もわざとじゃなかったんだけど・・・たまたま咲良がいた・・・うん、あの場にいた咲良が悪いんだ!!」


時「サイテーな言い訳だろ、それ。」


十「やっぱり?・・・でもアレはホント、不幸な事故だったんだ。」


桶「いくら転びそうになったからといって、女性には触れていい部分とダメな部分があるだろ。」


十「僕だって好きで触れたわけじゃないよ。」


五「ま、満場一致でお前が悪い、だな。」


十「・・・ま、結局ミスは僕にあるわけだしな。」


飛「お前はそれでいいのか、低脳!!」


十「ん?」


時(うわっ・・・でた・・・)

桶(最悪な事態を前に最悪な野郎がきた・・・)



十「飛沫か。」


飛「お前、主人公なのにそんな弱腰でいいのか、あぁ!?」


十「いや、そういわれても・・・」


飛「だから皆に弱腰主人子って呼ばれてるんだよ、雑兵!」


十「いや、呼ばれてねぇし。」



時「まぁ、落ち着け、カス。」


飛「るっせぇよ、風!」


神威「おっ、なんだなんだ?喧嘩か?喧嘩ならうけてたつぞ?かかってこいやぁ!!」


陽炎「お前まで参加しようとするな、面倒臭い。」


神「話があわないときは拳で語れ!これ、男の流儀だろ。」


陽「いつそんな流儀ができたんだ?」


五「・・・どうしてこうなった・・・」



5分後・・・



十「・・・で?ジャスティスがなんでここにきたの?」


飛「来たのではない、待ち構えていたのだ!」


十「え?」


陽「思えば面倒な作業だった。罠を設置したまで楽だったのだが・・・」


神「卯月を呼ぶので一苦労だったぜ・・・あの場に待たせるのだけでだいぶ大変だったんだからな。」


桶「ん?」


神「しかもその後はお前らが来るまで待機してなきゃいけなかったからな。」


桶「ということは・・・」


十「お前らか、あんな変なところに石ころをおいた奴は!!」


時「そういわれてみれば、ずいぶん不自然なところに石ころが落ちてたな。」


五「マジな話をすると、石ころって“罠設置”の部類に入るのか?」


一同「・・・さぁ~?」


五「・・・」


十「お前らのおかげで僕は大変な目にあったんだぞ!!」


飛「それが目的だったからな。」


十「え?」


飛「すなわち俺たちジャスティスがお前みたいな弱腰を立派な主人公に育ててやろうってわけだ!」


神「こんな作戦を考え付いた俺☆マジ天才!!」


陽(これほど馬鹿な計画は今までになかった・・・)

時(陽炎も苦労が耐えんな・・・こりゃぁ・・・)



飛「どうだ、感謝しやがれ。」


十「お断りします。」


神「なにッ!?」


時「なにっ!?じゃねぇよ。なに「想定外だ!」みたいな表情してるんだよ。」


桶「こればっかりは馬鹿な俺でもこうなるとわかったぜ。」


十「大体僕の弱腰矯正と罠設置、まったく関係のない話だろ。」


神「これだから低脳は・・・」


十「天才気取ってんじゃねぇよ、大マヌケ!」


神「俺の名には“神”という字が入る。すなわち神である以上、俺は天才なのだ!」


桶「またすごい理屈が飛び出したな、おい。」


飛「てか神に謝れよ、“生まれてきてごめんなさい”って。ついでに2回程くたばってこい。」


五「二回死ね!!」


十「はいはい・・・」



十「で?実際どう関係してるんだよ、弱腰と罠設置。」


飛「あれでお前が弱腰だという根拠が証明されたじゃないか。」


十「あのな、あれはなんだかんだで僕が悪いだけであって・・・」


神「ったく、あ~いえばこ~いう・・・」


十「お前らにだけは言われたくない!!」


神「わかったぞ、女には甘い、そういうことか!!」


十「どうしてそういう考えになるんだ?」


桶「ついに十六夜も卯月ちゃんの魅力に気づき始めたのか。」


十「納得してるんじゃねぇよ!」



飛「女にだけ甘い、だと?それは人種差別だろ。」


十(始まったよ、あ~いえばこ~いうシリーズ飛沫ver。)


五「いや、男は実際力があるから女性には優しくしないと。女性を守るってのも男の義務だろjk。」


十「お前誰だよ・・・」


飛「そういった甘い考えが女を図に乗らせるんだよ、アホども。」


神「俺は飛沫ちゃんにも甘いんだぜ?」


時「それが一番問題だろ。・・・間違ってると思ったならリーダーをとめるべきだろ。」


神「安心しろ、俺が一番甘いのは砕川ババアだから。」


桶「何ちゃっかり“実は俺が一番女に甘いです”宣言してるんだよ。」


神「だって怖ぇもん、あの女。」


桶(確実に尻に敷かれるタイプだ・・・)



飛「大体そういう考え方が世の中にあるから、女どもはこっちが何も出来ないと知って図に乗るんだろうが!」


五「女KOEEEEEEEEww」

時(てか、どうやったらそういう考え方ができるんだよ・・・)


飛「そういう奴はな、ぶん殴って力を思い知らせるという・・・」


十(信じられないほどサイテーだ、こいつ・・・)

時「とりあえずお前の目を覚まさせる。だから殴らせろ、カス。」


神「じゃぁ、リーダー様を守るためにお前を殴らせろ、ときっち。」


陽「じゃぁ、良きライバルを守るためにお前を殴らせろ、アホ。」


五「百年戦争になるからやめてくれ・・・」



時「ま、結論をいうともう少し強気で出てもいいんじゃないか、ということでいいんじゃねぇか?」


飛「ま、平たくまとめるとそうなるな。」


神「さすがはリーダーだ、言うことが違う。」


飛「お前にも言ってるんだよ、大マヌケが!!」


神「・・・よし、あとで砕川ババアに喧嘩でも売ってくるか。」


陽「線香の1本くらいは用意しておくか。」


飛「実際卯月はお前がそういった意味で成長してくるのを待っているのかもしれないぞ。」


桶(ないない。)

時(ないだろ。)

五(ねーよw)



飛「主人公として少し成長してみろ。」


十(少し強気で出てもいい・・・か。)


飛「あ、ちょうどあんなところに卯月が!!」


五(でた、おまけ特有の超ご都合主義展開w)


飛「よし、主人公としての成長をあの女に見せて来い!」


十「よっしゃぁ!」


時「・・・陽炎、もう1本線香の用意、できるか?」


陽「承知した。」




十「よっ、咲良。」


卯「あ・・・さっきはその・・・言い過ぎて・・・」


十(お?なんだ、謝るのか・・・僕が悪いのに偉いな。っと、ここは強気だった、強気!!)


卯「・・・ごめん。」


十「は?きこえねぇ~な?」


卯「!」

桶(うわ、サイテーだ・・・)

五(www)

時(飛沫に洗脳された結果がこれか・・・線香の用意はやっぱしておいて正解だったな。)

飛(計画通り!!)

神(なるほど、あ~やって砕川ババアに喧嘩をうるということもできるわけか。メモメモ。)

陽(・・・死んだな。ご愁傷様。)



十「謝るならもっと大きな声でいったらどうだ、ハッハッハ!」


卯「あんたねぇ・・・!」



その後十六夜がいつもより何十倍も大変な目にあったのは言うまでもない・・・



飛「主人公ざまぁwww」




                  「飛沫さんの最低★講座!」 完

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