不運 ※
前半は日常。
中盤は、今後の足場つくり。
後半は学年主任の授業。
後半の後半に、帰り道での出来事。
となっています。
正直後半はだいぶグダッてますが・・・
というか、戦争そのものについてのほうが多いですね・・・
あと、今回は長めです。
これは僕がまだ卯月咲良に告白されて少ししてからの話。
正確にいうならば・・・
僕がボディーガードの役目を我ながら立派に果たし・・・
大企業の娘である彼女だからこその苦悩を知ったあの日から・・・
・・・どれほどだろうか?
まぁ、それなりにたった日の時の話。
ちなみにそれからさらに少しすると、「不知火」に会って・・・
一時期弱みの握られることとなる、「ある出来事」が起こってしまう・・・
・・・その「ある出来事」に関しては、僕は感謝される立場だと思うのだが・・・
なぜ弱みを握られなければならない!?
と抗議したいものである。
僕の名前は十六夜 星矢。
約1ヶ月前・・・
我が国トップクラスの文型高校「霧島第3高校」へ入学した。
この高校は楽しい。
いい奴らもたくさんいる。
現在の問題といえば、卯月咲良という人物にしつこく追われている・・・
ということだ。
まったく・・・
自分でいうのも何なのだが、こんな何もできない・・・
いいところなんてどこにもなさそうな僕のどこが良いのだろうか・・・
まぁ、そんな僕も、ついこの間には・・・
自ら「より追われる」ようになりそうな言葉を発してしまった。
「僕の前では素でいていい」
的な感じの言葉をいった。
おかげで毎日毎日、朝っぱらから「待ち伏せ」にあい・・・
挙句に、とことん侮辱される日々で、僕の精神もどうにかなってしまいそうである。
そんな中、さらに精神がどうにかなってしまいそうな行事があった。
「中間テスト」である。
昨日に全体順位が配られた。
あれはショックを通り越すほどの激動が体中にほとばしったな・・・
どんな日の夜にも、必ず朝は来る。
なんて言葉があるわけで・・・
現在も、何事もなかったかのように空を見上げつつ、こうして歩いている。
が!!
実は今日も今日で恐ろしい。
というのは、「球技大会」があるからである。
この高校はやけに球技大会が多い。
テストが終わった後には必ずあるようだ・・・
思い出してみれば、入学してからある程度したら、「クラスの皆と団結を深める」とかいうやつで、すでに1回球技大会を行っているのだ。
まぁ、フツーの男子から見れば、これほどに楽しいことはないだろう。
勉強しなくていいし、運動もできる。
が!
僕は運動音痴・・・
しかも、球技に関してはレベルが違う。
だから僕にとってはうれしくもなんともない大会である・・・
むしろ「敵」である。
ちなみに勉強しなくてもいい、といってもそれは午前中だけの話。
午後はフツーに通常通りの授業が待ち構えている。
しっかし、今日は晴天だ。
それだけがホントにありがたく、心にゆとりをくれるのだ。
ホントにいいことだ。
すると、急に肩に手をおかれた。
急なことだったので思わず体をビクッと震えさせてしまった。
「貴様、どこ向いて歩いている!!」
「す・すみませ・・・」
やべぇ・・・
通行人の邪魔をしてしまったか・・・
そう思い、後ろを振り向くと・・・
現在の問題・・・「卯月咲良」がたっていた。
「なんだ・・・お前か。」
「この私をスルーして歩こうなぞ100万年早い!!」
「100万年も待ってたら、ミイラ化しちまうだろうが・・・」
彼女はあの言葉を僕がいってから、毎日僕を待つようになった。
「待ち伏せ」ともいえる。
「これは言葉の綾だ。そんなこともわからないなんてさすがは社会のクズ。」
社会のクズって・・・
まぁ、このように毎日、朝っぱらからこうして侮辱をうける日々。
「はいはい・・・おはよう。」
「ん。」
・・・朝の挨拶は、一日の始まり!!
それをこいつは・・・
「ん」のわずか1読みで終えてしまった・・・
もはや「単語」ですら成り立っていない気がするぞ・・・
「そういえば昨日のへこみ具合からずいぶん一変したじゃないか。」
それを思い出させるなよ・・・
「どうせお前のことだ。200位ぐらいだったんじゃないか?」
この学校の1学年には、約200人。
簡単にいうと、ビリ・・・ということだ。
まぁ、ビリではないが、ほぼそれに近いものである。
「救いようのない馬鹿というのはまさにお前のことを言うんだな。」
「・・・そういうお前はどうなんだよ?」
すると、彼女はこちらを向いて、笑みを浮かべる。
「学年全体で2位。」
「・・・」
どこの天才だ?
・・・ってここか。
「だが、私の上に1人いるというのが気に食わん!!」
それは天才だからいえる発言である。
「で?お前は?」
うっ・・・
だが人のをきいたら答えるのが常識。
というか、礼儀!!
ここはもうヤケだ!
「188位だよ。」
「・・・」
卯月の僕を見る目が、なんだか汚らわしいものを見ているような目になった。
こうなりゃ点数も公開してやる!
「ハハッ、僕の点数はな、すごいんだぞ!!」
「・・・」
「国語83点、数学A3点、数学Ⅰ7点、地理99点、理科13点、英語21点!!」
いやぁ~、やっぱ数学がヤバかったなぁ・・・
「ひとつ聞いていいか?」
「あぁ。」
「・・・地理はネタか?それとも事実か?」
やっぱり誰でもそういうよねぇ・・・
親もそうだったもん。
もちろん事実である。
「事実だよ・・・」
「貴様か!!」
すると、今度はいきなりキレはじめた・・・
もうなんなんだよ・・・
「何が?」
「私は98点で地理が2位だったんだ。」
「あ、そう。そりゃ残念だったね。」
と素っ気ないことをいうが・・・
実際は心の奥底で万歳をしている自分がいる。
何しろ、全体順位2位のやつに1つでも勝てた教科があったのだから。
「何が「あ、そう」だ!くそ~、こんな社会のクズに負けてしまうなんて・・・」
その本気っぽいのやめてほしいな・・・
ものすごく悔やんでいるように見える。
・・・そんなに僕って社会のクズなのだろうか?
「おのれ!!この屈辱一生忘れん!!次は絶対に勝つ!!!」
「はいはい・・・人に指を指すな。」
「うるさい!細かい!!ウザイ!!!」
朝から侮辱てんこ盛りありがと~ございます。
・・・そろそろ僕も慣れてきたのだろうか・・・
「で?なんで数学はそんなにできないんだ?」
あぁ・・・
僕が一番気にしているところを・・・
「数学なんてただ計算するだけだろ?」
くそ~、天才発言連発だな・・・
でも、僕はその「ただ計算する」ことができないんだけどね・・・
「計算しても、間違えるんだから仕方ないだろう?」
「それが俗にいう「馬鹿」ってやつだな。」
「うるせぇ!!」
まぁ、自分が馬鹿なのを今更否定する気もないが・・・
「しかし、お前も勇気あるよな?」
「え?」
「今日という日は、お前は的にしかならないというのに・・・」
球技大会のことか。
できることならサボりたかったよ・・・
けど、あの馬鹿親父が・・・
「じゃぁ、俺の小説のネタを一緒に考えようじゃないか♪」
とかいってくるもんだから、急いで家をでてきた。
ぶっちゃけ親父とのネタ考えは「超」がつくほどつまらない。
しかも後半からは「メイド」という単語しか言わなくなるし・・・
どちらかというと、学校、という意味できたわけだが・・・
やはり親父とネタ考えのほうがよかったかも・・・
と今更になって思い始めてきた。
「もう家に帰りたくなってきたよ・・・」
「なら帰ればいいんじゃないか?ぶっちゃけお前がいても役に立たないし。」
くそ~・・・
いいたい放題だなぁ・・・
ここは反撃である。
「そういうお前はどうなんだよ?」
「私?そんなの決まってるじゃない。」
お!!
こいつ、運動神経いいのか!
これはうまく説得して守ってもらおうか・・・
まぁ、よくよく考えてみればものすご~く情けないことである。
「猫かぶって、男子を盾にする。」
えぇ~!?!?
そっちかよ・・・
ちなみに今回の種目はドッヂボール。
・・・前回もそうだった。
僕としては、つらい思い出しか・・・
そして、男女合同で、クラス対抗で行うのがうちの学校のルールである。
「・・・お前、サイテーだな・・・」
「いや、勝手に男子が盾になってくれるんだ。」
「それはお前が頼んだからだろ・・・」
というか、自ら頼みもしないのに盾になるやつなんて、いるのだろうか?
「え~?私、わかんな~い。十六夜くんにも、守ってほしいな☆」
「・・・」
そんな猫かぶり、僕には通用しないぞ!!
「ま、お前を盾にしても、土壇場で逃げそうだから使えそうもない・・・か。」
「人を使えるか使えないかで判断すんな。」
まったく・・・
人を機械みたいにいって・・・
「わかってないな!!戦争では常に使えるか使えないか!!雑魚が所詮群がっても、ボスには勝てないんだよ!」
その前に戦争にボスなんているのか?
しかしながら、仮に僕並みの運動能力のやつが100人集まっても・・・
戦車一台にすら勝てない気がする。
「それは戦争だろ?日本には関係ない。」
知ってるか、卯月?
日本には「平和主義」というものがあるんだ!
「今日も平和ボケぶりは快調だな。」
「平和で何が悪い!!」
いやいや、つくづく日本に生まれてきてよかったと思う・・・
中東とかで生まれてきたら、運動神経のない僕は一瞬で即死だろう・・・
まったく、恐ろしいことだ。
「いや、私がいいたいことは、平和ボケするあまりに・・・平和であるということに感謝することを忘れないように、ということだ。」
おぉ・・・
珍しくまともなことをいっている・・・
いつからこんなマジは話になったのだろうか・・・
「そうだな。平和っていうのは、常に犠牲がともなって成り立ってるんだよな・・・」
いわばアメリカを中心とする国々が・・・
平和維持活動をしていなければ、平和など成り立たない。
日本の平和だって・・・
「日米安全保障条約」によって、守られいるようなものであり・・・
米軍がいなくなれば、自衛隊だけで守っていかなければならない。
・・・となると、かなり厳しいものである。
米軍がいなくなれば、中国や北朝鮮などが攻撃してこない・・・
と、確信をもっていえはしない。
そう思うと米軍には感謝しなければならない。
「その通りだ。」
「米軍には感謝しないとな。」
そういうと、彼女はムッとした。
・・・地雷踏んじまっただろうか・・・
「・・・私は米国は嫌いだ。」
・・・うわぁ~・・・
いきなり、ぶっちゃけたな・・・
しかもよりによって世界の中心国家を・・・
「米軍は戦争になるとやりたい放題だ。」
まぁ・・・
その意見については一部納得できるようなできないような・・・
「戦争や紛争に劣化ウラン兵器を投入したり、関係のない民間人の町にまでミサイル攻撃したり・・・」
まぁ、それをいうなら・・・
ベトナムもひどかったな・・・
太平洋戦争でも、非戦闘員への無差別攻撃の禁止や大量殺戮兵器の使用は禁止(ハーグ(陸戦)条約)、となっているのに、大空襲を実行したり、核を落としたり。
「正直、そこまでして勝ちたいか?って思うな。」
「まぁ、戦争そのものがあまりいい行動ではないからね。でもさ・・・」
「ん?」
実際、米国がいなければ日本のここまでの安定した平和なんてものはありえないわけだ。
それに・・・
米国だって、そんなに戦争がしたいわけでもないと思うぞ。
「北朝鮮はすぐ核、核っていうけどさ、米国は持ってるだけで「落とすぞ!!」とかそういう脅しをしないじゃん。」
「・・・」
「それに米国にずっと頼りっぱなしの日本をちゃんと支えてくれてるし。」
そんな米国のやさしさに全僕が泣いた。
「米国はそういう意味で犠牲を出しながらも、平和について貢献してくれている素晴らしい国だと僕は思うよ。」
「・・・」
彼女は「納得いかん」という顔をしている。
まぁ、別に納得してくれなくてもいい。
これが僕の意見だし。
しかし、この空気はさすがに怖いので、新たな会話を始めることにした。
「・・・そういえば、お前は普段何をしてるんだ?」
「う~ん・・・」
話をさりげなくかえたことには気づいてないようだ・・・
「昨日は電化製品屋にいったな。」
「へぇ~。」
意外である。
金持ち・・・
しかも大企業の娘となれば、誰かに買い物をまかせるかと思ったが・・・
自らが行くなんて・・・
「なんとなく気分転換をしたくてな。家にいても暇なだけだし。」
たしかに、急に気分転換をしたい・・・
と思うことはある。
「いやぁ~、やはり庶民の電化製品屋は違うな。」
いやぁ~、やはりバ金持ちの発言は一味・・・
というか、十味ぐらい違うな・・・
「PCをみてきたんだが・・・」
・・・なんでパソコンっていわないのだろうか・・・
「あ~、パーソナルコンピュータな。」
「え!?」
彼女は、なんだか知らんがびっくりしているようだ。
・・・驚く要素なんてあっただろうか・・・
「PCってパーソナルコンピュータという意味だったのか!?」
・・・ふざけているのだろうか・・・
常識の上をいく常識中の常識だぞ・・・
「そうだけど・・・知らなかったの?」
「し・知ってたさ!!ちょ・ちょっと、お前みたいな凡人がこれの正式な意味を知っていたのが意外だっただけだ。」
・・・悪かったな、凡人で。
まぁ、否定はしないし、できないけど。
・・・というか・・・
僕じゃなくても誰でも知ってるし・・・
「で?話の続きは?」
「そのパートナルコンピュータ・・・」
「パーソナルね。」
訂正すると、ギロリと卯月はこちらをにらんだ。
・・・やっぱり知らなかったのだろうか?
・・・いや、さすがにそれはないよな。
「パーソナルコンピュータがどうしたんだ?」
「いや、昨日いった電化製品屋だと最高でも数十万のパーソナルコンピュータしかなかったんだ。」
なぜパソコンと略さないのだろうか・・・
でもって、数十万というのは金額のことだろう・・・
が!!
・・・フツーに考えて、数十万しかなくていいんじゃないのか?
「数十万でフツーだろ。」
「はぁ・・・これだから庶民は・・・」
はいはい、どうせ庶民ですよ・・・
バ金持ちにはついていけませんよ・・・
「フツーに考えてパーソナルコンピュータは数百万のを使うだろ・・・」
馬鹿か・・・こいつは・・・
そんなもん買ったら、パソコンだけで破産するわ!
「使わねぇ~よ・・・」
「なんでだ?」
いやいや・・・
そんな真顔で返されても困るんだが・・・
「高いから。」
「いや、数十万のは安すぎだろ。」
わかった、まとめよう!!
金持ちと僕たちフツーの人とのお金の価値の違いだ!!
僕たちにとって1万円というのは相当高価だが・・・
こいつにとっては紙切れも同然なのだろう・・・
・・・そういう意味では羨ましいな。
なんてどうでもいい話をしつつ、皆との集合場所にいった。
挨拶を軽くかわし、道を歩く。
「で?桶狭間はどうだったんだ?昨日のテスト。」
「フッ、よくぞきいてくれた。」
なんだ?
自信があるのだろうか・・・
関ヶ原がよく「馬鹿」といっているし・・・
普段の行いから、どう見ても「馬鹿」としか見えないのだが・・・
実は頭がよかったのだろうか。
「全体順位192位!!」
・・・僕より下がいた・・・
「お前なぁ・・・」
「下から数えたほうが断然早いというこの素晴らしさ!!」
僕には、その開き直りに素晴らしさを感じるよ・・・
「関ヶ原は?」
「75位だっぺ。」
ま、妥当な位置にいるな。
僕もこれぐらいにいたいな・・・
「五月雨は?」
「フッ、128位です。」
立ち止まって、手で前髪をはらい、歯をキリッと見せて、少し微笑み言う。
「かっこつけんな・・・」
かっこつけていう台詞じゃねぇし・・・
順位もそこまでよくないし・・・
ま、僕ほどではないが。
しかし、さわやかなのは認めてやる。
だがこいつにしては珍しいな・・・
中学のときはかなり上にいたのに・・・
「お前・・・手抜いたろ?」
「超ガチだし!!!」
おい!!
さっきまでのさわやかさはどこへいった!!
「将軍は?」
「203位。」
「・・・は?」
それは冗談だよな?
この学年は203人しかいないぞ?
でもって将軍は授業中は不真面目だけど、超できる人だぞ?
なのに・・・
ビリなんてないよな?
「それ・・・なんか新しいネタ?」
「いや、マジで。」
お・桶狭間より下がいたぁ~!!!
「いや、夜遅くまで大東亜興亡史をやりすぎて眠かったから寝た。そしたら全部0点。」
何も書かずに寝たということか・・・
・・・というか、単なる馬鹿だ・・・
ま、たしかに大東亜興亡史は決着がつけにくいというのはわかるが・・・
「そういうお前は何位なんだよ?」
「僕?僕は・・・188位だよ。」
「ぬぉ~!!負けたぁ~!!」
「・・・レベルの低い争いだっぺ。」
関ヶ原が呆れている。
・・・ま、お前は75位だからな・・・
レベルを超えて、世界が・・・次元が違うからな。
「ちなみに卯月さんは順位いくだっぺ?」
「ん?2位。」
・・・空気が死んだ。
空気殉職おめでと!!
さて、学校につくとサクッと朝学活的なものを終わらせ・・・
皆は早々とグランドにでていった。
そして今はこうしてグランドのど真ん中で立たされている。
まぁ、開会式というものだ。
「本日は天候もよく・・・」
現在は校長の挨拶なのだが・・・
いや、まわりはまったくきいていない。
真面目にきいてるのは、先生方と生徒会の連中ぐらいである。
「おい、十六夜?きいてっか?」
そんな僕もちゃっかりと五月雨とくっちゃべっている。
「え?あ~、え~と、何の話だっけ?」
「お前がふってきた話だろ・・・」
「そうだっけ?」
にわとりは3歩歩くと、記憶を忘れるらしい。
・・・僕もその程度の脳しかないのかもしれない。
「だから、今年の連合境川祭り、どうするって話。」
毎年、この町と隣町と合同で、大きな祭りがある。
まぁ、2つの町が協力するのだから、非常に規模の大きな祭りである。
どこで行うかというと・・・
うちの町と隣町の境である「境川」。
まぁ、そのまんまの川名だ。
この川がかなり大きいもんだから、よく釣りとかしに僕も時々家族といったりする。
その川の沿岸部で行うわけだ。
今年は昨年よりも、さらに規模が大きくなるらしく、まだまだ祭りまであるというのにこうして会話にでるぐらいである。
「う~ん・・・まぁ、始まるのは夏休みに入ってすぐだから、まだ時間があるからね・・・」
「今年も西地区にいくだろ?」
まぁ、この祭りは毎年規模が大きいので、地区わけされている。
その中で「西地区」は僕や五月雨にとっては必見の場所である。
簡単にいえば、「アニメ」とかそっち系の行事である。
だからそっち系の人たちがたくさんくるわけで・・・
どっちをみても、同志!!
ということになるわけだ。
「今年も「連合東方楽団」でるかね?」
「連合東方楽団」というのは、西地区の見所の1つでもある。
祭りには、カラオケセットみたいなものが毎回あるわけで・・・
皆がそこで歌って、盛り上がる、というのも1つの醍醐味なのだが・・・
この楽団は、「楽団」というだけあり、自らで音楽をかなで歌う。
しかもボーカルがうまいのなんのって。
ちなみに歌うのは「東方」と名前が入っているように、「東方Project」の曲である。
五月雨はこの西地区で、「連合東方楽団」が気に入っているようだ。
まぁ、僕や五月雨からすれば憧れである。
「毎年でてるからね。今年もあるでしょ。」
「でないと、全俺が泣くぞ。」
「はいはい・・・」
いい歳した男が祭りで号泣されても困る。
・・・今年も五月雨のため、「連合東方楽団」よ、でてくれ!!
・・・とか思いつつ、僕も実際はすごく楽しみでならないのだが。
なんて思ったり話したりすると、皆がいきなり立ち上がった。
どうやら開会式が終了したようだ。
これから20分、クラス内練習が行える。
クラスを2つにわけて、練習することになった。
「うっしゃ~、んじゃいくぞ~。」
桶狭間がボールをゆっくり投げる。
あれじゃ練習にならないだろ。
・・・相手は、桶狭間と関が原。
それに五月雨まであちらである。
まぁ、唯一の救いは、卯月もあちらだということだ。
おかげでまわりが静かなので、ありがたい。
「将軍・・・どうする?あっち強くネ?」
「戦略をねれば、必ず勝てる。」
さすがは将軍!!
「で、その戦略って?」
「ない。」
「じゃ、意味ないじゃん!!」
なんていっていると、こちらにボールがくる。
「うわぁ~!」
「おい、逃げんなよ・・・」
桶狭間がいうが・・・
「だから、ホントに僕、球技はダメなんだって!!」
「やれやれ・・・」
と桶狭間がため息をつく。
「将軍・・・なんとかしてくれよ・・・」
「まぁ、ボールがきたらとる。こなければとらない。」
そりゃ当たり前だ・・・
なんていってると、またこっちにボールが!!
すると、将軍がバシッといい音をたてながらも、とった。
「おぉ~!!将軍、いいぞ~!」
桶狭間がはしゃいでいる。
・・・元気だな、おい!
僕はすでにクタクタなのだが・・・
将軍が投げた球が、桶狭間にあたり、ボールがバウンドしていく。
「はい、桶狭間、アウト~!!」
「ぬぉぉぉぉぉぉ!!!ミスったぁぁぁぁぁぁ!!!」
「余所見してるからそうなんだぞ?」
と将軍。
たしかにあいつ、余裕満々で、余所見してたもんな・・・
・・・馬鹿だな、あいつ。
さて、相手の陣営では、転がっていたボールを卯月がとったようだ。
ボールととると、卯月がニヤリ。
・・・嫌な予感。
「えい!!」
なんて猫かぶりをしているが・・・
なんか、ボール早いんですけど!!!
そしてその弾丸ボールは僕に向け、急速接近中!!
「とぉ!!」
今度はかろやかにボールをかわす。
すると、後ろの外野でまたまた余所見をしている桶狭間の顔面にボールが直撃した。
「ゴフッ!!」
やっぱこいつ・・・馬鹿だ・・・
「って、やっとボールが俺のところにきたぜ!!」
と桶狭間。
「おい、桶狭間。パ~ス。」
「何、俺がボールをつかんだんだ!!ここは一気に相手をあてて・・・」
「パ~ス。」
なかにいる連中がパスを求めているが・・・
どうにもこうにも桶狭間はボールを投げたい模様。
「いや、ここは俺が!」
「パスだっつってんだろうが、ボケ狭間!!」
「なにッ!?」
なんか仲間割れしてるし・・・
「くそぉ~、こうなったら!!」
すると、桶狭間が投げを構える。
「とぉ!!」
お!!
桶狭間のボールは高く飛翔して、なかの味方にとどく。
えらいぞ、桶狭間!!
さて、それから13分後ぐらいだろうか・・・
こちらの陣営が明らかに負け越している。
まぁ、あっちに強い人がいすぎなのだ。
しかも、僕は僕で、卯月がボールをもつと、必ず僕を狙ってくるから、逃げるのに必死だし・・・
そして現在もボールは卯月の手の中。
(チョロチョロと憎たらしいやつめ・・・)
卯月咲良はそんなことを思いつつ、また投げる。
「・・・あ・・・」
これはかわせない!!
オワタ・・・
そう思ったときである・・・
バシッという音がした。
もちろん僕に当たってはいない。
「・・・ったく、卯月さんよ、十六夜ばっか狙うのは可哀想じゃねぇか。」
「時津風!!」
よく見てみれば彼は片手で卯月のボールをキャッチしたようだ。
・・・さっきまで、ずっと逃げてたくせに・・・
めちゃくちゃ得意なんじゃないか・・・
「なんでそんなに得意なのに、逃げてたんだよ?」
「いや、疲れそうだからねぇ・・・」
いやいや、逃げてるほうが疲れるだろ・・・
「ま、これだけの人数となっちゃ、俺も少し真面目にやんないとまずいかなぁ、って思ってな。」
「最初から真面目にやれよ・・・」
僕なんて最初っから真面目に回避行動だぞ!!
「ごもっとも!」
そういうと、ボールを投げる体制をとる。
(相手の主力は関が原・・・か。)
ここは主力を削って、楽するのが得策・・・
なんて思っている時津風。
すでに勝利する気はないようである。
「うら・・・やべ!」
すると、ボールがすっぽ抜けたのか、的外れな方向に・・・
だが、スピードはかなり速い。
あの方向だと、女子たちがかたまっている方向に・・・
女子たちが一斉に逃げるが・・・
どうなのだろうか?
(やべぇ・・・俺、サイテー野郎だな・・・)
なんて自分のミスに苦笑しかできない時津風。
しかし、不幸中の幸いで、誰がみてもすっぽ抜けだったので・・・
わざとだとは思われていそうにもない。
すると、バシッという音が響いた。
「・・・貴様・・・」
「・・・よりによってお前かよ・・・」
時津風はため息をもらす。
「この私を狙うとはいい度胸だな。」
「わざとじゃないんだけどねぇ?」
ちなみに「この私」というのは・・・
川中水旋である。
というか・・・
川中は時津風の見事なすっぽ抜けを見ていなかったのだろうか・・・
僕はつくづく疑問である。
「この借り・・・返させてもらうぞ!!」
そういって、川中は投げた。
いやいや・・・
女性とは思えないほど驚異的なスピードなんですが・・・
「んなの、いらねぇって!」
そういって、時津風もそれを右手のみでとる。
「怖ぇ怖ぇ・・・」
なんて時津風が苦笑している。
・・・が、苦笑しているのは時津風だけである。
まわりの皆は川中のボールの驚異的速さにポカーンとなっている。
それと同時にそんなボールを片手のみでキャッチした時津風にもそうとう驚いているようだ。
「ま、いらねぇもんは返品するとするか・・・」
といって、ボールを投げる。
今度はちゃんと関が原に向かって。
「うわっ・・・とっ、とっ、とっ・・・」
関が原はボールを落としそうで、どうにかキャッチした。
「危ねぇ~だっぺ。いくぞ!!」
今度は関が原が・・・
なんて感じで、まず最初の20分という恐怖の時間は終わった。
「相手はA組か・・・」
まず1回戦の相手はA組のようだ。
この球技大会にはAリーグ、Bリーグの2つがある。
A・Bはちょうど全体を2つにわっている。
AにはA~D組まで。
BにはE~H組まででわけてある。
ともに生き残り1チームをだし・・・
生き残りと生き残りで勝負させ、1位を決めるわけだ。
さて、それからだいぶたち・・・
なぜかB組は生き残ってしまっている。
現在は審判をしているわけだが・・・
審判をやっているのは一部で、僕は暇なわけだ。
「お、十六夜。暇か?」
すると、時津風に声をかけられる。
「え?あ、うん。」
「じゃ、俺らも暇だし、Bリーグでも見に行くか?」
後ろには川口。
「ん?川口、生徒会の仕事はいいの?」
「あぁ。今は他のやつらがやってるから。」
「そっか。じゃぁ、行こうか。」
「おう!」
なんていいながら、Bリーグの近くまで歩いていく。
まぁ、ぶっちゃけ1つのグランドを2つにわけてやっているため、ここからでも見えるには見えるのだが・・・
やっぱし、近くで見たほうがいいだろう。
「そういや川中は?」
「あぁ?なんだ、十六夜?川中が気になるのか?」
なんて意地悪な笑みをうかべて、時津風は言う。
「ま、川中は見た目はそれなりに可愛いからな。」
「違ぇ~よ・・・」
なんか勝手に勘違いされてるし・・・
「お前ら、いつも一緒にいるからな。今日はいないのかと思ってな?」
(俺は第5同盟の時以外は、つき合わされてるだけなんだけどねぇ・・・)
なんて時津風は苦笑する。
「姐さんなら、今は審判だぞ?」
「あ、そうなの?」
ほとんど任せてしまっているからな・・・
なんか申し訳ない。
「さて・・・ついたぞ。」
「今はE組とH組が戦ってるみたいだな。」
今、1人の背の高い男性がボールを投げた。
とんでもなく早いスピードのボールである。
それをE組側の男がフツーにとった。
「へぇ~?相変わらずやるじゃねぇか、陽炎。」
E組の男は陽炎というらしい。
・・・どこかで聞いたことあるような名前だが・・・
まぁ、いいか。
「そういう神威、お前もやるじゃないか。」
もう片方の男は「神威」というらしい。
「神威・・・すげぇ名前だな?」
時津風が言う。
「神威・・・生徒会警備部の1人だ。」
「へぇ?もう生徒会のことは全部把握してるかい?」
「大体はな。」
「ま、あの様子じゃ運動神経よさそうだもんな。警備部向けだな。」
彼は神威という男を見ながら言う。
「あいつはバスケが得意なんだ。」
「なるほどねぇ~・・・さすがは1年生徒会副会長、よくご存知だ。」
時津風は軽く拍手する。
「そうでもないさ。」
それに川口が少し苦笑する。
そんな会話をきいていると、いつの間にやらH組の神威とは違う男がボールをもっている。
よく見てみれば彼、とんでもなくイケメンである。
整った髪が風になびく。
それだけで軽い威圧感をだしている。
「うらっ!!」
彼が投げた。
彼が狙うのは、陽炎という男・・・ではなかった。
彼のボールは陽炎を大きく横切り、おそらく僕のように球技が得意ではない男女がかたまっている地域にいく。
彼のボールは神威という男の投げたボールよりもさらに速い。
あんなのまともに当たったらものすごく痛いだろう・・・
球技が苦手な男女はかわすことですら一苦労である。
なのに、彼の攻撃はまったく容赦がなかった。
見る見るうちに、苦手と思われる男女が外野へといく。
あたった場所を押さえながら・・・
「・・・あの男は?」
「ヒマツ・飛沫。彼ももともとは生徒会警備部だ。」
「飛沫」・・・
聞いたことあるな。
たしかうちの学校の看板男だっけ?
ま、たしかにイケメンだが。
「中間テスト学年全体順位1位、運動神経抜群、それにイケメンときた。学校が看板にするにはもってこいの男だな。」
あいつか・・・
朝っぱらから卯月に愚痴らされたやつの正体は・・・
「陽炎と、神威、それに飛沫で1つの警備部のチームだった。」
そりゃぁ、ものすごく強そうな連中だな・・・
「だった?」
「あぁ。今は生徒会内で「ジャスティス」って呼ばれてる、別のチームさ。」
「正義」・・・か。
「リーダーは飛沫。まぁ、天王山会長お墨付きの1年生だな。」
「・・・お墨付き・・・ねぇ?」
「お気に入りなのさ。」
つまり、エリートなわけだ・・・
「もともとは警備部の1チームだったんだが、強すぎてな・・・それが会長の目にとまって、会長に気に入られて格上げされて、独立した1つのチームになったわけだ。」
「・・・」
「ま、それも飛沫が陽炎と神威を誘って、生徒会に入れて警備部の1チームとなったって話だけどな。」
ということは・・・
本来は陽炎と神威という男は生徒会じゃなかった・・・ということか。
「なんでジャスティスなんて名前で呼ばれてるんだ?」
「さぁね?あいつらがそう名乗ってるからじゃないか?」
あれが正義とは到底思えないのだが・・・
「今じゃジャスティスはとんでもなく権利を与えられてるからな。あんま敵にはしないほうがいいと思うぞ?」
「する予定はねぇよ。・・・ただ、あの飛沫とかいう男のやり方が気に食わねぇだけだ。」
時津風は目を細めた。
再びグランドに目を向けてみると・・・
なんだか言い争いがおきている。
神威と飛沫が言い争っているようだ。
「そんな汚ねぇやり方で勝ってうれしいか?」
「はぁ?あのなぁ、世の中勝つか負けるか・・・勝てりゃ、それでいいんだよ。」
どうやら神威という男はまともなようである。
「男なら正々堂々正面から勝負だろ。チマチマ、セコいやり方で戦ってるんじゃねぇ・・・ジャスティスの名折れだぜ。」
「ジャスティスのリーダーはこの俺だ。名折れかどうかは俺が決める。」
なんだか険悪なムードになってるし・・・
ま、今川口から説明されたから僕たちはわかるが・・・
フツーの人には「ジャスティスの名折れ」なんていわれても、わからないだろうな・・・
「そのやり方が気に食わねぇっていってんだ。」
「だから勝てりゃそれでいいっつってんだろ?」
なんか非常に仲が悪そうである・・・
「いつもは仲がいいんだけどな、あいつら。」
川口が言う。
・・・到底そうは思えない状況である。
「はぁ・・・こちらとしては正面勝負じゃなくてもかまわないぞ?実際そういうのもありだしな。」
陽炎は呆れつつ、言う。
「ほら・・・な?陽炎がそういってるんだからいいんだろ?」
「・・・すまない、陽炎。」
神威は陽炎に頭を軽く下げつつも、飛沫をにらむ。
「だとしても、苦手なやつらを狙うなら軽く投げてやれよ。」
「やつらはかわすのだけはうまいからな。いかに速いボールを投げるかが鉄則となる。」
「・・・」
「つまりスピードを落とせば勝率が下がる。勝率を下げるわけにはいかないんでな。」
そういうと、再び飛沫がボールを投げて、試合が再開された。
その後、勝負は続けられたが、E組の惨敗で、生き残ったのは陽炎と他4人程度だけだった。
「完全なる我が勝利。」
「・・・胸糞悪ぃな、チクショウが。」
あの様子からして、なんとなく陽炎と神威が「正義」と呼ばれるのはわかったが・・・
やはり飛沫という男にはどこに「正義」があるのだろうか・・・わからない。
「さて・・・いくか。」
「ん?」
「次は決勝だぜ?」
ということは・・・
今のやつらと戦うのか・・・
僕、思いっきり的じゃん・・・
さて、決勝戦ということもあり・・・
全体のど真ん中で行われることとなった。
「・・・」
相手は神威と飛沫・・・
その2人だけだが、とんでもなく恐ろしい。
「飛沫さん、がんばってください!!」
「おぅ!任せとけ、紀龍。」
審判である男が飛沫にいった。
応援した男は「紀龍」という名前らしい。
「なぁ、審判って応援してよかったんだっけ?」
「いいわけねぇだろうが・・・」
桶狭間は呆れている。
「ったく、モトチューのやつとしてこっちが恥ずかしくなってくるぜ。」
「へぇ?あいつ、お前と同じ中学なのか?」
「あぁ。」
時津風は呆れ顔で頷いた。
そんなことをいっていると、始まりのホイッスルが鳴った。
ちなみに相手ボールから。
いきなりこちらにものすごい速さのボールがやってくる。
「うわっ!!」
僕の目の前の友が当たった。
「痛ててて・・・」
「・・・大丈夫?」
「あぁ。」
実際大丈夫そうでもない。
ボールを食らった右肩をグッとおさえているからだ。
彼は右肩をおさえつつ、がいやへと向かった。
冗談じゃない・・・
あんなの、絶対食らってたまるか!!
だが状況は最悪な方向へと向かっていく。
飛沫により苦手なやつが減らされていくなか・・・
神威により前衛も今はズタボロとなっているため、飛沫が狙いやすくなっているからだ。
最初の練習以外では大活躍していた桶狭間と関ヶ原も現在は外野。
残りは時津風と川中だけである。
ちなみに後衛はというと、僕と他5人しかいない。
卯月も残っているが、さすがにこの状況ではいつもの余裕はなさそうである。
そしてまたしても飛沫の弾丸ボールが僕の横をスレスレで飛んでいく。
「怖ぇ~・・・」
そんなことを小声でいっていると、卯月が近づいてきた。
「・・・あなた、当たりなさいよ。」
「・・・はい?」
ちょ!
いきなり何を言うんだ!!
あんな怖いの、自ら当たれるわけないだろうが!!
「ただでさえ役にたってないんだから、当たってこちらにボールを残させるという作業で少しでも役に立ちなさいよ。」
そんなの絶対に嫌だ!!
「んなこといったって・・・」
って、またボールきてるし!!
「や~ん、十六夜く~ん、助けて~☆」
と、卯月は僕の後ろにたち、腰あたりに手を巻きつける。
「ちょっ!!動けないから!!」
ヤバイってそれは!!
「やめろって・・・ぁ・・・」
気づいたらボールは目の前・・・
オワタ。
「ガハッ!!」
その後、結局なかで生き残ったのは、時津風、川中、卯月、中島のみとなり、H組に見事に敗北した。
・・・卯月め・・・
覚えてろよ・・・
さて、球技大会も無事・・・
ではないが、とりあえず終了して、昼飯をたべて、現在は数学の授業となっている。
ま、午前の疲れがあるのか、ほとんどは睡魔のなかへ旅立っている。
僕もだいぶ眠いが、ここで寝たら授業態度まで落としてしまう!!
そうなれば本気で成績に「1」がついて、進学できなくなってしまう!!
それだけは防がねば!!
という気合の思いでおきている。
授業をうけていると・・・
紙がまわってきた。
「ん?」
卯月からである。
・・・運が良いのか、悪いのか、僕の席は卯月の隣に位置しているため・・・
あっさりと紙がくる。
とりあえずグチャグチャになった紙を広めてみると・・・
「暇だ。なんとかしろ。」
と書いてある。
・・・んなこといったって、なんとかしてほしいのはこっちの台詞である。
ぶっちゃけ、眠いし、意味わからないしで、暇すぎて何もいえない。
が!
とりあえず「授業に集中しろ」とでも書いておこう。
そう書いて卯月に渡す。
それをみた卯月はすぐさまにこちらをにらんだ・・・
おいおい・・・授業中なんですけどー?
なんて思っている、またまた紙が。
「死ね、腐れ、くたばれ、のたれ死ね、焼けろ、(以下省略 」
とまぁ、思いつくばかりの暴言が書いてある。
うん、これは一種の才能なのではないか?
ここまで短時間にこれだけの暴言を思いつけるなんて・・・
ある意味すごい。
・・・と・とりあえず「ごめん」とでも書いておくか・・・
後が怖いし・・・
書き終えて、彼女に紙を渡そうとすると・・・
「先生!!さっきから十六夜くんが紙を渡してくるんですけど~!」
えぇ~!?
そんなのありぃ~!?
「お、ついに十六夜も本気になったか?」
「というか、ムッツリーニからオープンになったんじゃね?」
くそ~・・・
言いたい放題いいやがって~・・・
ちなみに、ムッツリーニじゃなくて、ムッソリーニだ!!
彼がそんなことをきいたら処刑されるぞ・・・・
「なに~!?」
先生がこちらにやってきて、紙を取り上げ、内容を確認する。
「・・・」
先生は目を細めた。
先生、悪いのはそいつです!!
わかってください!!
「先生、十六夜くんが私に暴言をたくさん書いてきて・・・」
おい、ちょっと待て!!
いつ僕がお前に暴言など書いた!?
「これはひどいな・・・」
って、信じるな~!!
「十六夜、あとで職員室にきなさい。」
「は・はい・・・」
無実の罪だ・・・
冤罪だ・・・
卯月のほうを見ると、フッと微笑む。
くそ~、さっきの「暇だ」というのの反応が悪かったことに対しての報復か・・・
・・・ダメージでかすぎだろ・・・
その後、授業が少し早めに終わり、僕は職員室へ連行。
ひどい目にあった。
どうにか休み時間には帰ってこられた、という状況である。
「くそ~・・・今日は最悪だ・・・」
そんなことを一人で愚痴りつつ、教室でダラダラと寝ようとしていると・・・
授業開始の鐘が鳴る。
「早ッ!!」
え~と・・・
次の授業は・・・
「日本史A」である。
・・・あの授業か・・・
うちのクラスの一部の男子からは非常に評判がいい。
が!!
正直、今の状況であの戦争美化授業は苦しいな・・・
鐘が鳴り終わると、学年主任は入ってきた。
学年主任ともう1人入ってきた。
生徒である。
「じゃぁ、ここはこういうわけですね。」
「そういうことだな。」
あの様子だと、彼もまた学年主任の授業に心をうたれているようである。
「じゃぁ、失礼します。」
「あぁ、授業に遅れるなよ、仁井。」
彼は「仁井」というらしい。
あの様子・・・ホントに学年主任の授業が好きなようだ。
「はい、号令。」
「気をつけ。礼。」
「お願いします。」
なんて昔ながらのやり方である。
懐かしき小中学校を思い出す。
さて、授業が始まり、少しすると・・・
「・・・長篠・・・お前、またか・・・」
最近、将軍に当てられることが多い。
まぁ、前に教室から出ていっちまったからなぁ・・・
「お前、これをきいてたか?」
「・・・」
だが、彼はこれを完全に無視で携帯をしている。
「おい!!いい加減にしろ!!」
まぁ、さすがの先生もキレるわな・・・
「はぁ・・・」
彼は一息ため息をつくと、静かにしゃべりだした。
「毎回思うんですが・・・センセーの授業って戦争美化につながりません?」
あ~・・・
ついにいっちまったか・・・
「なにぃ~!?」
「ま、たしかに先生の授業は日本に有利すぎる話が多すぎますね~。」
なんて時津風が言う。
(馬鹿が・・・)
その時津風の行動を見て、川中が目を細める。
「戦争というのは、フツーはどちらも悪いんじゃないの?」
五月雨も参戦していく。
あ~ぁ・・・
結構彼の授業に不満がある奴らもいたんだな・・・
(こいつら・・・反抗するつもりか・・・)
学年主任は、前の高校(青凛高校)のことを心の奥底で思い出す。
「皆さん、戦争はどちらが悪い、という意見もあります。たしかにそれは当たっているかもしれません。」
お・・・
今回の学年主任は聞き分けがいいじゃないか・・・
なんて目上の人に、超上から目線で見ている僕がいる・・・
ヤダヤダ・・・
「ですが、どちらかというとそれは喧嘩を売ってきたほうが悪いのです。」
「俺は先に手を出したほうが悪いと思うけどねぇ?」
時津風は腕を組みながら、椅子に深く腰掛けて言う。
「太平洋戦争前の日本は、戦争をしなければやっていけなかったのです。」
そういうと・・・
黒板に書き始める。
ローマ字・・・
「ABC」・・・
「ABCD包囲網」か。
僕のその予測は当たった。
「このローマ字は何を示しているか、わかりますか?」
「アメリカ、イギリス、中華民国、オランダ。」
あまり発言しない僕が珍しく発言したことで、学年主任は驚いているようだった。
ま、このあたりは2chで極めたからね・・・
「そうです、これらの国が日本に石油輸出を禁止したのです。それにより日本には石油がなくなり・・・」
前々もその話、きいた気がするぞ・・・
「現に、GHQで有名なマッカーサーも・・・「(日本には)石油もゴムもない。そんな国が輸出をとめられたら、どんな小国でも戦争に踏み出す」と評価しています。」
たしかにそうだが・・・
だが、ABCD包囲網の原因は日本の「満州事変」や「支那事変(日中戦争)」「南部仏印進駐」・・・
そして「日独伊三国同盟」が原因でもある。
「でも先生、もとはといえば満州事変や支那事変、南部仏印進駐が原因じゃないですか?」
なに、僕も言いたいことはたくさんある。
・・・たまには積極的に攻めてみる、というのも悪くはない。
そもそも日本は本当に「大東亜共栄圏」を実行するつもりだったのだろうか?
見方によっては、単に東南アジアの石油が欲しかっただけ・・・
という考え方もできる。
それにホントにアジアを救いたかったのであれば、なぜ「日独伊三国軍事同盟」を組んだのだろうか・・・
疑問が残る。
「満州や支那は日本と中国の問題であり、関係のないアメリカが国際法を無視し中国を支援していたのは事実です。」
というか、日本が一方的に・・・という可能性もあるんだけどね。
「それに南部仏印進駐はフランスがドイツに負けて、日本がフランス政権と交渉して進攻しました。」
たしかにフランスの政権と交渉して、この地域に進駐を承諾させたのだが・・・
これによって、日本軍がイギリス・アメリカなどの植民地のすぐ手前まできてしまったから、さらに警戒を強化するんだよな・・・
結果が「ABCD包囲網」・・・と。
「それにあそこは日本軍はとっておかなければならない重要拠点でした。」
日本軍が進駐したあたりは、たしか日中戦争でのアメリカ・イギリスの中国への軍事支援のルートになってたからな。
「じゃぁ、仮に日本が「大東亜共栄圏」と実施しようとしていたとして、なぜ日独伊三国同盟を結ぶ必要があったのでしょう?」
「むっ・・・」
この質問に学年主任は少しだけ戸惑った。
「それは当時のナチス・ドイツが技術的に進んでいたからだ。」
たしかに進んでいたが・・・
果たしてホントにそうなのだろうか?
そのころにはもうドイツは連戦連勝。
電撃作戦を行っていた。
日本はヨーロッパをも支配するため、ドイツ・イタリアと手を組んだ、という見方のほうが根強い。
「まぁ、どちらにせよ、列強諸国からすれば日本は邪魔な存在だったのは事実です。」
むしろ、脅威だと思うけど・・・
あの時代は軍事力がすべてをものわたっていた時代。
そもそもの始まりは「アヘン戦争」で「アジアで無敵」「眠れる獅子」と恐れられた中国がイギリスに大敗してしまい・・・
列強諸国に、アジア人は背が低いし、中国も雑魚だった。
だからアジア人は弱い。
という偏見を持たせてしまった。
だから次から次へと植民地化されていった。
しかし、「太平天国」「アロー戦争」「インド大反乱」のような事件も続けて起こり・・・
英仏はこれらをおせるのに必死。
米は南北戦争でドンパチやっていたため、日本までは力で抑えることはしなかった。
そんな中、どんどん日本は強くなっていき・・・
アジアで唯一列強諸国と対等な軍事力をもつに至るまでになった。
この国させ潰せばアジアは列強諸国のものとなる。
となれば、潰すしかない。
だんだんと日本が邪魔な存在になっていく。
・・・その結果がワシントン軍縮会議である。
米・英・日で保有できる船の割合は「5:5:3」
日本は自国防衛のため、日本も「5」にするべきと主張したが聞き入れられなかった。
これは米国の日英同盟破棄のための策略・・・という読み方もできなくはない。
この会議にはフランス、イタリアも参加していたが・・・
2カ国は聞き入れなかった。
そしてその後、さきほどふれた石油輸出禁止。
さらにハル・ノート。
「日本は列強諸国との戦争をさけるために何度も和平交渉をしようとしたが連合国は聞き入れなかったのも事実です。」
で、ハル・ノート。
「ハルノート」。
すなわち帝国崩壊書。
これを認めれば、国そのものが滅びることとなった。
だから認めるわけにはいかなかった。
「じゃぁ、南京での大虐殺はどう判断するんです?」
「南京にはいろんな説がありますが・・・一説にはなかったというものもあります。」
南京事件の3ヵ月後に人口が増えた・・・って話か。
大虐殺のあとに人口が増えるわけがない・・・というのはたしかにきいたことがあるが・・・
たしかその説によれば・・・
虐殺を証明する写真がなく、発表されているものについてはいずれもその問題点が指摘されているらしい。
他にもいろいろあったらしいが・・・正直そこまでは覚えていない。
だが、これは所詮日本人が言っていること。
日本人によって都合の良い方向に導いているようにしか見えない。
「それが言われるのであれば・・・」
学年主任は黒板にまた字を書き始めた。
「・・・通州・・・」
黒板に大きく「通州事件」と書いた。
「これだって適用されるはずです。どういう事件かというと・・・」
簡単にいえば、これも虐殺だ。
だがこれは歴史の影に消えようとしている事件である。
ん?
・・・まずい!!
学年主任はなんでもまっすぐいうから・・・
また中島とかが耳をふさがなければならなくなる!!
「先生、それは伏せておくべきです。」
そのとき、五月雨の声がした。
「五月雨か・・・」
学年主任は目を細める。
「これも虐殺が起きた。・・・それでいいじゃないですか?」
「・・・」
五月雨は学年主任をにらみながらにいう。
僕もそれ以上いうことはあまり良いことだとは思わない。
この状況を理解したのだろうか・・・
あきらめて、次の言葉を発した。
「・・・きみは十六夜くんだよね?」
「はい。」
もう2ヶ月もたっているのに、「だよね?」・・・か。
それほど僕は目だっていなかったんだなぁ・・・と実感する。
「きみはこの分野に詳しそうだな。」
「・・・」
「ならそんなきみにきこう。」
何をきくのだろうか・・・
まぁ、あまりいい質問ではなさそうである。
「十六夜くんは日本とアメリカはどっちが悪かったと思う?」
やはり想像した通りの質問。
・・・いい質問ではない。
「どっちも。」
だが、僕はそんな答えにくい質問に即答で答えた。
「なんでそう思う?」
学年主任は学年主任の教え方を否定する者の意見をいわせ、それを1つずつ正確に叩いていくつもりか。
・・・いわば見せしめ。
その見せしめの役に僕が選ばれちゃうなんて・・・
ホント、僕って運がないなぁ~・・・
だけど、そう簡単に見せしめになってたまるか!!
あっちがそのつもりなら、こちらも攻めにくい答え方をしてやる。
「日本には日本の正義がありましたし、アメリカにはアメリカの正義がありましたから。」
日本は日本で「満州事変」やらなにやらをすき放題やったし・・・
アメリカはアメリカで「石油輸出禁止」などで日本を戦争へ追い込んだ。
結局どっちもどっちじゃないのだろうか?
「それに結局、戦争というおろかな行為に進んでしまいましたし。」
「俺はアメリカのほうが悪いと思う。」
そりゃそうだろうな・・・
学年主任は根っからの戦争美化派だからな。
「戦争の開戦についてはおいといて・・・東京大空襲や原爆投下についてはハーグ陸戦条約に違反するからだ。」
たしかに・・・
そこは確実に頷けるところである。
ハーグ陸戦条約とは、非戦闘員・一般人への無差別攻撃の禁止。
および、大量殺戮兵器の使用を禁じた条約である・・・
のだが・・・
米軍はそれを華麗にスルーし・・・
東京大空襲を主とする、B-29スーパーフォートレスによる、非戦闘員・一般人への無差別攻撃を実施した。
また、あまり知られていないが、米軍は潜水艦による通商破壊も実施し、多数の一般人が犠牲になった。
さらには、広島・長崎には、原子爆弾・・・大量殺戮兵器を投下した。
これは明らかに違法行為である。
「戦争後半は、ジュネーヴ条約に違反する行為を多々行っている。」
「・・・それは日本も同じですよ?」
ジュネーヴ条約・・・
捕虜に対する条約。
まぁ、簡単にいえば、捕虜を殺すことを禁じたものだ。
「そして、戦後の一方的な軍事裁判。」
日本やドイツばかりが裁かれたもの。
日本やドイツが行ったことばかりが問題視され・・・
連合軍の戦争違反についてはまったくふれられなかったものである。
しかも、敗戦国の戦犯者は無理やり死刑になった者も多く存在する。
・・・日本は自決した人も多いが・・・
「それにきみは戦争をおろかな行為といったが、本当にそうだろうか?」
人と人が殺しあうことに・・・
暴力と暴力で戦いあう幼稚な行動に・・・
「おろか」以外、どのような言葉がうかぶというのだろうか?
「先の大戦で日本が動かなければ日本も植民地となっていた。」
実際、米軍の基地はありますけどね・・・
「日本がアジアを解放したのだ。」
「それは違います。」
「なに?」
日本がアジアの解放に直接貢献したのではない。
日本の行動により、アジア人でも列強諸国に勝てると証明したことで、アジアの人々に勇気を与えただけだ。
まぁ、場所によっては戦争後、残存日本軍勢力もアジア解放運動に参加したところもあるが。
「アジアが解放されたのは、その国々の頑張りにあります。日本は勇気を与えただけです。」
「それでもその足場は日本が作り上げた。それは間接的に日本がアジアを独立させたといっても過言ではない。」
どこまでも日本を正当化したがる男だ。
冷静に考えれば、戦争をした国すべてが悪いというのに・・・
「で?結局センセーは何が言いたいの?」
将軍が言う。
「私は過去の日本が素晴らしい行いをしたと・・・」
「でもよく負けてよかった、っていいますよ?」
たしかに。
ま、もし勝っていたら、いまだに徴兵令があって・・・
毎日血を吐くまで訓練させられて・・・
なお、「贅沢は敵だ!!」という日本になっていた。
そして、次はいつ、どこで戦争をするか・・・
常におびえていないといけない日本になっていた。
「今はアメリカに守ってもらって平和なんです。・・・センセーは戦争を体験した人じゃないんですから、もう過去のことなんていいじゃないですか。」
過去を悔やむより、未来を生きろ・・・
ってか?
「米国が日本と日米安全保障条約を結んだのは、日本をアジア攻撃の最前線基地にするためだ。決して守ることそのものが米国の目的ではない。」
まだ言うか・・・
ホントにこの人は米国批判が好きだな・・・
「現に朝鮮戦争も、ベトナムも、湾岸も、イラクも、日本からだって攻撃機が発進している。」
ま、たしかにそれはそうなんだけど・・・
「それに米軍機による墜落や、米軍兵による事件など、日本市民が安全に暮らせる要素は増えてはいない。」
「だからそのために今、沖縄では移行案があるんでしょう?」
時津風が呆れ顔で言う。
時津風も学年主任の批判ごっこに痺れをきらしたようである。
「でも、今、政治混乱してるからねぇ・・・」
「大体さぁ・・・」
なんて今度は政治の話になっている。
だが過去のことよりはよっぽどいいだろう。
・・・まぁ、いくら僕たちが話し合っても意味はないだろうが・・・
(生徒たちが・・・自らで話し合い、考えを主張している?・・・たまにはこういう授業もいいか。)
学年主任は学年主任で勝手に納得して、静かに教室からでていく。
「でもさぁ、ラプターって格好良くない?」
おい!!
いつ、政治から軍事になったんだ!?
「あれは強いだろ。」
将軍はすべてが大戦略で判断・・・か。
たしかに強いが。
ステルスだし、攻撃力・機動力も申し分ないし・・・
「航空自衛隊にも入ってくれれば日本陣営でも進めやすくなるのにな・・・」
たしかに・・・
というか、F-22が航空自衛隊に入るって話、なかったっけ?
まぁ、結局無理だったんだけど。
そりゃそうだよな・・・
F-22は米軍の軍事力の結晶。
劣化版も250億というとんでもない金額だし・・・
F-15の2倍の金額とはびっくりだぜ・・・
「でも将軍!今、日本でも日本国産ステルス機を開発してるんだぞ!!」
「そうなのか?」
「あぁ!名づけて、心神、というプロジェクトだ。」
まぁ、僕が名づけたわけじゃないけど。
正確にいえば「防衛省 技術開発本部」が研究中の航空自衛隊独自のステルス機開発計画のことである。
FX(次期主力戦闘機)の対象になるかもしれない・・・とか。
F-4ファントムの後続機になる予定で・・・
性能は、鳥より小さく・・・虫より大きく、レーダーにうつるらしい。
たしかフランス防衛装備庁の施設でステルス性能の計測をしたんだっけか?
あと、ジェット噴射の向きを変える機能のあるから機動性にも優れている・・・とか。
「でもさ、僕としては日本に正規空母をいれてほしいかな・・・」
「たしかにそれもあるな。」
「ひゅうが」型のような、言ってみれば小型ヘリ搭載空母も作っちゃったんだし・・・
ま、いろいろと苦情もきそうだけど。
なんていつしか学年主任がいなくなってからどうでもいい話をして、授業が終わった。
ホームルームになる前に時津風がやってきた。
「しかし・・・お前、太平洋戦争に詳しいんだな。」
「あぁ、バッチシ2chで鍛えたぜ!!」
「ハハハ・・・」
彼は苦笑している。
「まったく、お前ら、めをつけられても知らんぞ。」
川中が呆れ顔でやってくる。
「いいじゃねぇかよ・・・なかなか面白かったしな。学年主任のあんな顔なんて、なかなか見られないぜ?」
時津風・・・
お前、地味に性格悪くないか?
「・・・ん?雨、ふってきたな・・・」
「え!?」
ホントだ・・・
外を見てみれば、雨がふっている。
午前はあんなに晴れていたのに・・・
とりあえず折りたたみ傘をもってきておいてよかった・・・
とホッとする。
「午前中に球技大会でよかったな。」
なんて桶狭間がいう。
僕は球技大会は午後からでよかったよ・・・
「・・・とにかく時津風。今後、あのような行動、ひかえてもらおう?」
「なんで?」
「わからんのか?」
川中は時津風はにらむ。
(第5同盟か・・・めをつけられて、先生の機嫌を損ねればつぶされるってか?・・・やれやれ・・・)
「俺にももう少し自由がほしいぜ・・・」
なんて時津風が苦笑する。
が、僕には何をいっているのか、さっぱりである。
「・・・」
川中はなぜか不機嫌な顔をして、いってしまった。
「怖い怖い・・・」
時津風は苦笑しながらにいう。
すると、桐山先生が入ってきた。
「うらぁ~、座れ~。ホームルームやんぞ~。」
それからホームルームを終えて・・・
家に帰るため、階段を下っていく。
行きは皆と一緒だが、帰りは皆別々の方向なため、個人で帰るのだ。
さて、下駄箱につくと・・・
外にでる扉の前で、外をジッと見つめている女性が1人。
「・・・あいつ、何やってんだ?」
卯月咲良である。
あいつ・・・
もしかして傘をもってこなかったのだろうか。
まぁ、急な雨だったしな。
「よっ、傘ないのか?」
「・・・あぁ。」
珍しく困り顔をしている。
「職員室で借りてくれば?」
「そんな恥ずかしい真似できるか!」
こいつの恥ずかしいの基準は何なのだろうか・・・
よくわからん。
「じゃぁ・・・一緒に入るか?」
なんてわれながら下手な笑いをして言う。
「・・・そうする。」
・・・冗談のつもりだったのだが・・・
こいつのことだから、「ふざけるな!」的なノリになって、「じゃぁ傘、借りにいけよ」っていうはずだったのに・・・
あ~、こういうことするから追われるんだなぁ・・・
なんてことを自覚して、少し反省する。
「・・・というか!」
「ん?」
「お前が職員室に傘を借りにいって、私にその傘をよこせばいいんじゃないか!」
なんじゃそりゃぁ~!?
「嫌なこった!!」
なぜそんな面倒なことしなければならない!!
「いいからその傘を渡せ!!」
「あ、そう。なら僕、もう帰るから。」
「わっ、ちょ、ちょっと待て!!」
われながら嫌なやつだ・・・
そう実感する。
「・・・わかった・・・ごめん。」
「・・・」
ついに僕の耳もイカレてしまったか・・・
こいつが今、「ごめん」といった気がしたのだが・・・
「・・・ごめん、もう一回いって。聞こえなかった。」
「なんでもない!!ほら、とっとといれろ!!」
そんなんで家に向かう。
というか・・・
なんでまわりに誰もいないんだ?
この状況・・・
さすがにまずいだろ・・・
「・・・もう少し離れないか?」
「そしたら雨にぬれる。」
「・・・」
はぁ・・・とため息を1つこぼす。
「そんなに嫌なら、お前が出れば?」
「お断りします!!」
こいつ、どこまでも僕を外にだしたいんだな・・・
「・・・今日、お前、なかなか詳しかったじゃないか。」
この気まずい空気に話をふってきたのは卯月のほうだった。
「あぁ、2ch知識もたまには役にたつからな。」
「げっ・・・」
なんでひくんだ?
2chってそんなにダメか?
「2ch・・・って・・・」
だが卯月は完全にひいている。
「なんだ?2ch、嫌いなのか?」
「というか・・・キモいだろ。」
いや、キモくないし。
というか、どこがキモいのやら・・・
「どこがキモいんだよ?」
「「萌え~」とか、「○○は俺の嫁」とか・・・」
・・・それは場所によってだろ・・・
てか、なんでそんなこと知ってるんだし・・・
「あのねぇ、太平洋戦争でどうして「俺の嫁」がでてくるんだ?」
「ん?東條英機は俺の嫁・・・みたいな。」
いや、東條英機、男だし・・・
というか、いらんし、そんな嫁。
「あ、チハたん?」
なぜチハたんを知っているのだ!?
ちなみにチハたんというのは、「九七式中戦車」のことで太平洋戦争時の陸軍の戦車の別名である。
本来は「チハ」なのだが・・・
いつからか後ろに「たん」もつくようになった。
「なんでお前・・・そんなこと知ってるの?」
「昔のつくした彼氏が・・・そういう人だったから。」
そんな人ってどんな人だよ・・・
「しかし意外だな。」
「なにが?」
「どうして私を誘った?」
そりゃぁお前が困ってそうだったからだろうが・・・
「今日はお前に散々嫌がらせをしたというのに・・・」
あ~!!
そういえばそうだ!!
「たしかにそうだな。・・・でるか?」
「断る!!!」
ま、そりゃそうだよな・・・
「知らん振りしていけばよかったのに・・・どうして誘ったんだ?」
お前が困ってそうだったから・・・
なんていえば、また追いかけられる原因が増えそうで怖い。
「なんとなく目に入ったから。」
と微笑みながら言うことにした。
(その微笑みは・・・反則だ・・・)
ちなみに卯月咲良には、ボディーガードのときとピアノと時のような感じに見えていた。
・・・明らかに逆効果である。
さて、家についた。
「あ、お前、ちょっとそこで待ってろよ。」
(仕方ない・・・ここで雨宿りしていくか・・・)
卯月はそんなことを思っていた。
なかに入れるわけにはいかない。
親に勘違いされたくないからである。
だから玄関の外のところで雨宿りさせている。
とりあえず荷物を置いて、傘を取り出す。
折りたたみではなく、ちゃんとした傘だ。
外にでると、意外にも卯月は待っていた。
「ほら、これ。」
「・・・え?」
僕が彼女に傘を差し出したことに彼女は目を丸くしていた。
「これ、我が家の貴重なまともな傘なんだから、ちゃんと今度学校で返せよ?」
「・・・いいの?」
「あぁ。」
「そう・・・じゃぁ、遠慮なく借りる。」
そういって、僕から傘を受け取り、その傘をさす。
それから少しだけとまった。
「?」
「・・・」
「・・・どうしたんだ?」
「なんでもない。」
そういうと、また歩き出した。
変なやつめ。
「じゃ、また明日な。」
「ん。」
最後も「ん」の一単語・・・
とも認められない返事なんだな・・・
彼女が歩いていくのを確認すると、僕は家に入った。
今日はあいつのせいでだいぶ疲れた・・・
というか、疲れが尋常ない。
もう寝るしかない!!
その後、僕はベットへと直行した。
「せっかくこの私が「ありがと」って感謝してやったのに!!・・・クズが。」
卯月は文句をブツブツといいながら、1人、逆方向の家にかえるのだった。
「不運」 完
やはりだいぶ後半がグダッてしまいました・・・
「※」をつけた以上、ゆるくいきたかったのですが、学年主任がいるとどうもマジになっちゃいますね・・・
今回も・そしてこれからもよろしくお願いします




