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なんで僕が!?  作者: へたれ度100%
49/79

追求 教

※学年主任視点の物語です

俺が始めて教えることになった高校は「青凛」高校だった。

まぁ、レベルでいうなら、「5B」ぐらいか・・・

普通レベルである。



俺は社会化の教師として、生徒たちに勉学を教える。

希望した「社会科」の教師として生徒たちに勉学を教えつつ、日本人としての「誇り」を教える。

それを主な目的として、「青凛」高校へやってきた。


ここがはじめての仕事先。


初めてということで、なんだか体に無駄な力が入ってしまう。


俺は自ら2年所属の教師となった。

それも、毎年2年のみを教える教師。


皆は俺のことを「変わり者」と呼んでいた。

まぁ、この歳で「教師」をやりはじめた地点で変わり者なのは自覚しているが・・・

そこではない。


本来教師というものは、1つの学年についたら3年間ずっと指導するらしい。

正確には、3学年は、全部色分けされていて・・・

最初についた色の学年を指導するというものである。


が、俺はそうではなく、2年のみ。

すなわち「色」にとらわれないスタイルをとった。


校長や教頭からは、「3年間指導してきた生徒たちの卒業式に参加すると感動するし、しっかりとした彼らをみると遣ってきた甲斐があるなぁ・・・と実感するぞ」

みたいな感じの言葉を言われたが・・・

俺はそんなことはどうでもいい。


俺の目的は「生徒を無事卒業させること」ではない。

「日本人としての誇り」をもってもらうことである。

すなわち、「卒業」するのが当たり前。

当たり前のことを目標にするということは、それはすでに目標とは呼ばない。

だから「色」担当などというスタイルはとらなかった。



・・・なぜ2年だけをとったかというと・・・

2年生には「日本史Ⅰ」というものがある。


基本日本史Ⅰというのは、「ペリー来航」あたりからスタートし、現代にまで至る歴史である。

すなわち、「縄文」とか「弥生」とか、面倒なのは教えずにすむ。

そして、その範囲には当然、「日清・日露・第1次世界大戦」を越え、さらには「第二次世界大戦・太平洋戦争」という重要なポイントが入っている。

俺が一番教えたいところが、しっかりと入っているのだ。



だから、俺はサクッと進み、「太平洋戦争」に重点を置いた授業を行うことにした。


「太平洋戦争」というのはやはり「戦争」であり・・・

男子にとっては、「軍事」系は好きな人も多いだろう。

とすると、親しみやすいかもしれない。


となれば、より授業ははかどる。

良いことづくしである。





だが・・・

そう口で言えるほど現実はあまくはなかった。

周囲の反応が非常に悪かったのだ。



俺は当然ながら教師としての仕事などしたことがない。

今、生徒たちに教えていて、「教える」ということがどれだけ大変かを理解する。



「え~、すなわち真珠湾攻撃とマレー沖海戦にて、日本海軍は「大寒巨砲主義」の考え方を覆し、空母中心の戦い方を世界に広めたわけです。すなわち・・・」

「おい、死ぬ死ぬ!ティガレックス、マジで強すぎだって!」

「ねぇ、昨日のテレビみた?」

「誰か、明日カラオケいこうぜ~!」



人が熱心に教えているというのに、生徒たちは聞く耳をもたない。

あるものは後ろを向き、ある者はゲーム・携帯をし、ある者は友達とのおしゃべりに夢中になっている。


俺からすれば、そんなことは「休み時間」にするのが当たり前。

それをなぜ授業中にするのかが理解不能だった。



「きみたち!もう少し「礼儀」というものを知りなさい。」


俺が注意しないと静かにならない。

最悪注意してもうるさいときもある。



「きみたちは日本人でしょう。日本人は昔から「礼儀正しい」民族だといわれています。」

「また始まったよ・・・」

「マジ、ウザくない?」

「ウザいよね~・・・マジ、とっとと授業進めろって感じ?」



小声でひそひそと生徒たちがそんな話をする。

小声だろうがなんだろうが、聞こえてしまうのだからしかたない。


うるさいときには毎回、「日本人らしく」と教えているが・・・

一向に良くならない。

それどころか悪くなっている。



言いたい放題に言う。

やりたい放題に行う。


今までどれだけ手の抜いた指導をされてきたかがよくわかる。

所詮は「国家公務員」。

給料は安定しているし、辞めさせられるリスクも少ない上・・・

企業と違って、何か特別な手柄を立てる理由もなければ、「年功序列制」なので、時間を稼げばより給料がもらえる。


つまり、我々「大人」からすれば、「生徒」が授業を理解しようがしまいが生徒の自由。

もっといえば、どうだっていい。


ただ教えていれば教師というのは儲かる仕事なのである。

注意をすれば、生徒たちは反発してくる。

注意しなくても、儲かる。

だったら、面倒事は起こさず、やってしまえば自分は大丈夫。


そんな考え方の教師がいたのかもしれない。

「教師」としての仕事を忘れ、ただ「金」にだけ目がいっている愚か者たちが・・・





だが、俺は違う。

正直「金」なんて、今の半分だっていいぐらいである。


俺は・・・教師として、生徒たちに大切なことを教えたくてこの仕事をしているわけであって・・・

儲かりたいわけではない。

だから、俺は注意をして、生徒たちに呼びかける。


なのに・・・

なぜだ・・・

どうして理解してくれない!




「教師」という仕事は俺が思っている以上にハードなものだった。




うまくいかない理由は自分の教え方にある。

毎回毎回、自らの授業を見直し、工夫して、より良い方向へとしている


また自らも勉強をつみ、より正確で・・・

よりわかりやすい教え方・・・


知識・教えるための技術・理解しやすいための方法・・・

多くのことを、深夜まで自らで研究し続けた。



が・・・

それでも結果はかわらなかった。

どんなに創意工夫して、皆が惹かれやすいような授業にしても・・・

聞く耳をもっていないのだから、意味がない。


そんなで2年、「青凛」高校で社会科を教えるが・・・

何一つわかってもらえなかった。



教師になり3年目。

俺は54歳となり、退職まであと6年となった。

残り6年で・・・

どう教えればわかってもらえるか導き出さなければならない。

まだ2年しかたっていないが、それでも2年という大きな時間をかけたのにもかかわらず、一向に進まない問題をどう解決しろというのだろうか・・・


俺は絶望の淵へと落ちかける。



そんなとき・・・

1本の電話がきた。

この電話が自分の運命をかえた。




「え?霧島第3高校?」



霧島第3高校。

わが国トップレベルの文型高校。


俺はそんな高校へ転勤することとなった。

まぁ、簡単にいえば「移動」である。



「えぇ・・・はい・・・」



なんでも教育委員会からの授業の評判がよかったとか・・・


そういえば前々に教育委員会がきていたな・・・

授業に夢中であまり気にしてなかったが・・・



「わかりました。」



俺は電話をきった。

一応「承諾」したという返事をした。

何しろまだ6年残っている。

いろんな高校へいって経験をつむのも悪くない。


「人生は何事も経験」である。





教師3年目と4月・・・

俺は「霧島第3高校」へとやってきた。


正直「青凛高校」の生徒たちに俺の本当に教えたかったことを理解してもらえなかったのは心惜しい。

だが・・・

ここだって同じ日本。

単に舞台がかわっただけだ。



「私がこの高校の校長です。」


とりあえず自己紹介を行う。


ん?

校長の隣にいるのは・・・



「よぅ、久々だな。」



懐かしい顔である。




「ん?彼を知っているのかね?」



校長は首をかしげた。



「知ってるも何も、大学の親友ですよ。」



大学のときは、こいつや他の仲間とともに、盛り上がったものだ。

ホントに懐かしい。


そんな大学のときの大親友の顔は、忘れたくても忘れられないものである。

もう最近は「同窓会」というものもなくなり、丸っきり友とはあわなくなっていた。


だから久々の再会に胸が躍る。



「そうなのかね?・・・なるほど。」



話をきけば彼は今、教活主任という学校のNo,3の立場にいるそうだ。

ずいぶんと親友は偉くなったもんだ。

今や、校長・教頭の次に偉い立場にいるのだから・・・


なんとなく、「差をつけられたな・・・」

という劣等感を感じた。




「これからよろしくな。」


彼はゆっくりと手を出した。


それに俺は頷き、握手をかわした。

何一つ親友はかわっていない。


そしてこの握手は「共に頑張っていこう」という誓いのようにも俺は感じた。





大学の親友との出会い。

それは新たな道を作ってくれた。



事項紹介が終わってからゆっくりと彼と話す。

今までのこと。

なぜ教師になったのかも・・・すべて。



「なるほどな・・・お前、大変だったんだな。」

「あぁ・・・だが、どれだけ尽くしても生徒たちはわかってくれない。・・・どうすればいいと思う?」

「ふむ・・・」



この質問にはさすがの親友も少し考えたようだ。



「ならいっそ、うちの学年主任になったらどうだ?」

「・・・は?」


予想外の言葉に、反応が一歩出遅れてしまう。

学年主任といえば・・・この学校のNo,4の地位である。



「お前は歳でいうとうちではかなり上だ。誰も文句はいわない。」

「お・俺が!?教師の経験の少ない俺がか?」

「あぁ。」



彼は迷うことなく頷く。


おいおい!

俺はまだ教師になって間もないのに・・・

それは荷が重過ぎるぜ。



「現に今、みんなやろうとしてないし・・・むしろやってもらえると助かる。」


それって・・・

単にやらせたいだけなんじゃないのか?



「学年主任ならいくら生徒たちでもいうことをきく。しかもうちの高校は特にな。」

「・・・なんで?」



「うちの高校は特に」という言葉が引っかかった。



「あれ?知らなかったのか?この高校・・・帝国主義を貫いてるんだよ。」

「え!?」



またまた予想外な言葉に今度は反応スピードが急激に早まってしまった。



「て・帝国主義って、あの帝国主義か?」

「多分そうだろうな。」

「大日本帝国が行ってきた、あの帝国主義か?」

「あぁ。そうだ。」


嘘だろ・・・

まだそんな高校があったなんて・・・



「ただ本来の帝国主義とは少し違う。うちの場合は上からの命令は絶対服従、それだけだ。」



つまり・・・

上下関係をはっきりさせている。


それは上下関係についてしっかり教えさせることということであり・・・

日本人の礼儀につながってくる。


やはり帝国主義は俺の理想とつながる。

すなわち、帝国主義は俺の理想だ。


霧島第3高校・・・

なんて素晴らしい高校なんだ。



「まぁ、ここ最近その帝国主義も弱体化してるがな。うちの高校の伝統らしいから、良いのやら悪いのやら・・・」


せっかく・・・

神が恵んでくださったこの機会をぼうに振るものか!


これは神が俺に与えた最後の試練であり、チャンスだ。

ピンチはチャンスとなる。



「わかった。学年主任を引き受けよう。」

「本当か?」

「あぁ。だが・・・そのかわりに俺の考えも手伝ってほしい。」

「いいだろう。大学のときの借りもあるしな。」



親友はそういって頷いた。



俺はその後、これからのこの高校についてのことの理想をいった。



「それ・・・マジでやるつもりか?」

「あぁ。」



その理想。

それはこの高校を帝国主義バリバリの高校にすること。

そうすれば日本人としての誇りを叩き込むことができる。


となれば、帝国主義のしたで育ったこの学校を卒業した生徒たちは皆、優秀なはずだ。

優秀で誇りをもった生徒たちを世間にだしていくことは、今の腐敗した世間を少しでも作り変える動力となる。


ましてこの高校は我が国トップクラスの文型高校。

この高校から卒業していった生徒たちは、活躍するに決まっている。


そうして、堕落しきったこの「亡国」を根元から作り変えていく。

1年で約250人。

6年で1500人。


1500人というのは、あまりにこの国全体からすると少ない。

だが、この帝国主義制は俺が退職したあとも続くのだとしたら・・・

より多く・・・

年が重なるごとに、「誇り」をもった若者も増えていくだろう。


それだけ卒業させられれば、未来の日本は世界から「新興衰退国」などという不名誉な名前で呼ばれることもなくなるだろう。




そのために・・・

俺の教師人生残り6年すべてを賭ける!

この6年を経て、この高校をより素晴らしく作り変えてやる!!



俺は新たなスタート地点へと立った。

これから新たな始まるんだ、俺の教師としての第2幕が。


俺はこの新たなスタート地点からの新たな戦いを目の前に、また力むのだった。




                                       「追求」 完



更新がだいぶ遅れてしまい、申し訳ありませんでした。


ここのところ、大会続きとテスト・・・

それに体育祭が雪崩れのように続いてきてしまったため・・・

なかなか更新できませんでした(泣


これからできるだけ更新できるように努めていきますので、よろしくお願いします!

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