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なんで僕が!?  作者: へたれ度100%
45/79

幕開

学校についた。

今日は・・・いつもよりかなり早い。


ガラッと教室をあけると・・・

本来はこの時間なら誰もいないはずのクラスメイトたちが集まっている。



「うぃ~ッス。」

「遅いじゃねぇかよ・・・」


なんて「B組同盟」とやらの連中がいう。



「こっちにはこっちの理由があるんだよ。」


それは説明してもらいたいものだな、桶狭間。

どう言い訳をするか見物だ。


だが・・・

今はそんな時間潰しをする暇はない。



「さぁ・・・「乱舞」始動といきますか!!」



作戦名「乱舞」。

まぁ、どう躓いても対処法はある。


今日で絆同盟の戦いの勝敗が決まる。

各員、一層奮闘せよ。

一騎当千の覚悟をもってあたれ。


という意味で「乱舞」という名をつけた。

形態がいくつまであるかも不明。

だが確実にいえることは・・・

今、絆同盟の敗北へのタイムリミットは刻々と迫っているということだけだ。



「よし・・・いくか!」



向かう先は・・・

当然!

「職員室」!!




「・・・」



廊下を1組分の人数・・・

B組、総勢36名で歩く。


職員室の前につくと、幸いなことにまだ警備部はいない。

朝早いせいだろう。



「・・・いくぞ。」


こういうのはスタートが肝心だ。

今回は、交渉だ。

相手を怒らせないように、礼儀正しく・・・



「うらぁ!!」



どん!

という音が響く。

桶狭間が思いっきり職員室のドアをひたいたのだ。



えぇ~!?

ば・馬鹿野郎!!

なんてことを!!




「!?」


先生たちはみな、目を丸くする。



「よぅ、先公ども、目あけてっか?」

「なんだ、お前らは!?」



先生たちが混乱しているなか、さりげなくB組全員が職員室内に入っている。



「彼らはB組ですね・・・桐山先生のところの・・・」

「桐山先生。彼らを追い返してください。」



先生たちがいうが・・・

桐山は静かに自分の席でコーヒーを飲んでいた。



「桐山先生!!」

「・・・はぁ・・・」



一息のため息をつくと、席を立ち上がり先生たちのもとへいく。



「人の話も聞かずに追い返すのはどうかと思いますよ?」

「彼らが何を言いたいかはわかってるでしょう!」



先生たちは桐山を囲む。



「いいから・・・」

「なに?」

「黙って生徒の意見をききやがれっつってんだろうが!!」



さすがは体育の先生とだけあって・・・

迫力が違う。

みなが静まり返る。




「朝から何事だね?」


すると校長室から校長がやってきた。



「校長先生、今日で決着をつけます。」

「そうか・・・」


校長はうなづく。



「なら・・・私も最大限に支援しなければな。」


校長はやはり味方である。



「校長先生!なにをいって・・・」

「桐山先生・・・支援しますよ?」


校長はほかの先生の意見を華麗にスルーし・・・

桐山に言う。



「はい。」



さぁ・・・

メンツはそろった。


最終決戦の幕開だ!!



「校長先生!あなたはこの高校の伝統をつぶす気ですか!?」


教活主任・・・

この高校では校長、教頭に続く・・・

3番目にえらい男が言う。




「そのとおりです。この伝統を守っていくのが我々の役目です。」


それに続き、学年主任も言う。



「我々の役目?生徒を抑圧することがですか?」


桐山は言う。



「帝国主義は抑圧などしていない。」


やはり・・・

返ってくるのは否定の言葉ばかり。

前に校長室で話したことと同じである・・・

同じことの無限ループ。

それが「時間稼ぎ」となる。



なぜ・・・自覚しない?

これほどに生徒たちを「帝国主義」は抑圧しているというのに!




「おい、じじぃども。一回土にかえれ。」


桶狭間・・・

お前・・・今のはNGなんじゃぁ・・・



「なんだと!?」

「生徒の分際がなにを!!」

「あぁ?馬鹿は死んでもなおらないってのはホントのことなのか?」


先生たちがこぶしに力をいれ、こちらに歩いてくる。



「やれるもんならやってみな。が・・・その後の代償は覚悟してもらうぜ?」


と時津風が言う。



「考え方に生徒も教師もないと思います。」

「それこそ、「差別」ってやつなんじゃないのか?」



お~・・・

相変わらず女子陣は攻めるねぇ・・・




「皆さん、36名もの生徒が帝国主義を否定してるんですよ?それでも続けるのですか?」

「たかが36名だ。」


先生たちは帝国主義がどれほど生徒たちを抑圧しているかを理解していない。

だから、B組36名が立ち上がったことがどれほどすごいことかを理解していない。

いや、できないんだ。

だから「たかが」なんて言葉が使えるんだ。


たしかに36名というのは一クラスでしかないし・・・

全体の一割にも満たない。

だが・・・

それでも、36名が帝国主義の脅威に抗うために立ち上がったという事実はかえられない。



「たかが?・・・くそティーチャー、今、「たかが」っていったか?」

「なに?」

「お前、どれだけB組が立ち上がるのに苦労したかわかってんのか!?それを「たかが」だと!?」



だめだ・・・

これじゃぁ、ラチがあかない。

このまま交渉しても、おそらく「時間稼ぎ」のみだ。

だが・・・学校を味方にしないと、勝利なんて絶対手に入れられない。

・・・どうすればいい?




「俺も・・・桐山先生が正しいと思います。」


すると先生たちから、賛成派がでてきた。


・・・校長先生と桐山先生が説得させた先生か。



「俺もそう思います。」


1人が言い出すとみな言い出す。

それは高校生でも先生でもかわらないんだな・・・


最終的には賛成派の人数は7名。

校長と桐山先生をいれれば9名となる。

みな、若い先生ばかりである。


対する反対派は教活主任と学年主任を中心とする38名の先生たち。




「お前ら・・・この学校を裏切る気か!?」

「裏切るわけではありません。よい方向へ正すんです。」

「正す?よい方向へ?どこが悪いというんだ?」

「そうだそうだ!」



先生と先生の間でも激突が生まれ始めた。



「これだから若い連中は・・・」

「気合というものが足りん。」



相手はベテラン揃い。

自分のキャリアをいかして、言いたい放題を言う。



「あの・・・なら、あなた方は頑固者・・・ということになりませんか?」

「なんだと!?」


あ~・・・

普段おしとやかで、やさしい女の子(と見せかけている)・・・

中島にまでそんなことをいわれちまった・・・




「なぜお前らは伝統の大切さを理解しない!?」

「ならあなた方は、昔のやり方・・・「神風特攻隊」を伝統としたら、素直に飛行機にのりますか?」



厳しい質問である。

いやなものはいや・・・

それの象徴だな。




「「玉砕」を伝統としたら、素直におなかをきれますか?」


念を押すねぇ・・・




「それは・・・」

「間違ってる伝統は捨てたほうがいいと思います。」

「そのとおりだ。そんな足手まといな伝統など使っていたらいつか滅びることになるぞ。」



ある程度の先生たちも味方につけたし・・・

ここは攻めどころ・・・か。



「あんたらは生きてる時代を勘違いしてる。・・・今は昭和じゃない。」

「・・・」



昭和ならまだこの考え方は認められただろう。

だが・・・

残念ながら、今は昭和じゃない。




「フォッフォッフォ。両者とも・・・熱くなさるな。」


すると教頭が歩いてきて言う。




「きみたち・・・今は出直しなさい。」


これは教頭の命令。




「ですが・・・」

「いいから。出直すというのも戦略のうちですよ?」

「くっ・・・」


どうする?

ここでひいたら、単に時間を失うだけだ。

ここは攻めるべき・・・




「わかった。」



だが、桶狭間はそれを承諾した。

それもあっさりと。


・・・なぜ?



「お・おい・・・桶狭間?ここは攻めるべきじゃぁ・・・」

「ここで下手に攻めても、鉄壁の要塞を崩せない。むしろ崩せないとわかればメンツの士気低下につながる。」



将軍も冷静に見極めていた。


・・・桶狭間がここまで冷静に状況を見極められているとは・・・

正直びっくりだ。



「1時間目が終わったあとにまた来ます。それまでに結論をだしておいてください。」



そういうと彼は職員室から出て行った。


先ほどまであれほどに鋭い刃を持つかのごとく、完璧な陣形がはられていたB組のメンツも指揮官を失ったことで、混乱をはじめていた。



「ここはさがるべきですね。」

「あぁ。」



相手にも考える時間をあたえる。

まぁ・・・どうせ考えはかわらないだろうが。



すでに将軍と桶狭間・・・

軍師とリーダーがいない。

となれば、連携などとれるわけもない。


ここで下手に攻めても、敗北は目に見えている。



「一回退くぞ。」



まず・・・

攻防戦の第1回戦は敗北。

撤退ということになった。


だが・・・

被害は大きくない。


むしろ敗北したには小さいぐらいだ。




「おい!桶狭間!!」


細い廊下をB組のメンツが追いかける。



「てめぇ、やる気あんのか!?」

「あるさ。」


関が原が言う。

だが、桶狭間はあせることなどしなかった。

桶狭間は何かを成し遂げたような、達成感に浸った顔をしていた。



「お前と将軍が抜けたおかげで混乱・・・士気低下につながるところだったぞ。」

「やっぱりか。」


今日が最後のチャンス。

そして、そのチャンスの第1戦を敗れたというのに・・・

やはり彼は満足気な顔をしていた。




「さて・・・第2戦の下準備といきますか。」


彼は言う。



「お前・・・第1戦を見事に敗北させておいてよくいうぜ・・・」

「あのままやっていてもラチはあかない。むしろ無駄に時間を消耗するだけだ。」


将軍も桶狭間と同意見だった。


だが・・・

なら、新しい考えはあるのだろうか?


どう転んでも「乱舞」作戦には進む道がある。

だが、教師説得に失敗すれば、また教師説得のために職員室を攻める・・・

いわば「連打」戦法しか考えになかった。



「悪いが第1戦はあきらめた。教師説得は・・・第2戦に賭けよう。」

「あぁ。こちらの完璧な戦略ミスだ。」



2人は言う。

なにが戦略ミスなのだろうか・・・



「まさか・・・あそこまで教師たちの意思がかたいとはな。」

「俺は校長と桐山がいけたから、結構あっさりいけると思ってたんだが・・・」



そう・・・

教師たちは協力・連携し・・・

難攻不落の大要塞を築き上げていた。


これを陥落させるにはどうすればいいのだろうか・・・


力押しでいけば、先ほど2人が言ったとおり、時間がなくなる。

だが・・・

ほかに考えなんてあるのか?




「第2攻防戦は・・・俺たちは撤退は許されない。」


1回戦ですでに敗北済み。

これ以上負けたら士気低下にもつながる。

そして・・・時間も失う。


これ以上退くわけにはいかないということか。


ということは・・・

わざと第1戦を退いたことで、自らの首をしめたわけだが・・・

それほどまでに自信のある良い作戦があるというのか。




「「剣の舞」を開始するぞ。」



・・・はじめて聞いた言葉。

この「乱舞」作戦には、先ほども言ったとおり、どう転んでも対処法がある。

その対処法を一々みなに言うのは面倒なので・・・

1つ1つの細かな作戦にまで名前をつけているわけだが・・・


「剣のつるぎのまい」なんてのは初めて聞いた。

「乱舞」作戦を考えたときにはなかったのだろう。




「剣の舞・・・ですか?」

「んなのあったか?」


みなも始めて聞く言葉に首をかしげる。



「行く途中にでも説明するさ。さて、いこうぜ。」



すると桶狭間は歩き出す。


この方向は・・・

職員室?

いや、職員室は今、難攻不落。

となれば・・・

どこだ?



この状況で教師たちを説得できる作戦・・・

桶狭間と将軍が考え出した「剣の舞」・・・


・・・これから何をしようというのだ!?




                             「幕開」 完

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