表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
なんで僕が!?  作者: へたれ度100%
39/79

脱出

教室からは、夕方になり、オレンジ色に染まった空が見える。

その空を悠々とカラスが飛ぶ。


・・・いつもとかわらない。

のだが!

僕たちには危機が訪れていた。



「いいか、絶対に治安維持部そのものの生徒を傷つけるなよ。」

「わかってるっぺ。生徒を傷つけたら、俺たちも生徒会の連中と同じだっぺ。」


皆は頷く。


生徒会の生徒を傷つければ、生徒会そのものと同類。

いわば中東紛争と同レベルのことをすることになる。


あんなくだらない真似はしたくはない。



「相手の武器のみを粉砕すればいい。」


将軍はそういった。

武器のみを粉砕すれば、いくら相手でもビビるだろう。

素手でくるほどの馬鹿共とは思えない。



するとドアが開いた。

「治安維持部」のおでましである。




生徒会本部会議室・・・



「会長!やはり中止すべきです!「ガンマ」はやりすぎです。」


川口が天王山に抗議していた。



「お前も生徒会の副会長なら覚悟を決めろ。」

「・・・ですが、それでも今回はやりすぎです!!」


生徒会そのものの総勢は64人。

今回の「闇討ち」に参加させた「治安維持部」の人数17人。

さらに本来「監視部」などの暴力行為を行わない部からも、ほとんどの人数を「警備部」に移した。

そして、現在「警備部」36人。

「警備部」総動員で、学校のいたるところを警備させている。

「ベータ」が発動したことで、「治安維持部」のみならず、「警備部」も無条件攻撃を許可されている。


総勢53人で、わずか9人を包囲したのである(ただし、川口・天王山・陽炎は省く)。


ちなみにここまでの人数・・・

生徒会の生徒を総動員した「闇討ち」は初めて。

今回の生徒会の「敵」には、剣道が優れている時津風、空手黒帯の川中がいる。

それに、今までにすでに2回も彼らに警備部は敗北しているのである。


基本編成は、3人で1チーム。

ただし、1つだけ2人で1チームのところがある。

3人チームが17チームに、2人チームが1チーム。

全18チームがいる。


ちなみに2チームは天王山・川口の護衛である。


他の幹部や2年副生徒会長たちは、別の会議室で、絆同盟対策会議をしているところである。




「生徒会の危険はすべて排除するのみ。」


天王山ははっきりと言った。

この会議室には、陽炎とその部下3名、天王山とその護衛3名。

それに川口とその護衛3名で計12人がいるわけだが・・・

だれ一人しゃべろうとしない。


なので、より天王山の声がはっきりと響くのだった。







校長室・・・

学校でそんなことがおきているなか・・・

職員室・校長室は静かであった。



「・・・校長先生。」

「なんだね?」


桐山が校長室に入ってきた。



「・・・生徒会が「ガンマ」を始動させたようですね・・・」

「・・・あぁ。」

「とめにいきましょう!」

「・・・」


が、校長はしたを向いたまま。



「なぜいかないのです!?」

「我々がとめにいっても、学校全体の総意ではない。・・・とめられないのだよ。」

「・・・」


桐山は下を向く。



「やはり・・・彼らの安全を優先して、退学にさせるべきだったか・・・」


校長は渋い顔をして言う。



「いえ、彼らは絶対にやってみせます。それは・・・担任である私が言い切れます。」

「・・・そうか。」



職員室では、ヒソヒソ声がきこえる。

帝国主義を貫くこの学校では、生徒会を敵にまわした地点で、ゲームセットなのだ。







再び教室。


ドアが開き、生徒会の生徒・・・

襟には、菊の紋章2つに赤い線が一本。

黄色い線が一本なら幹部。

赤い線が一本なら、臨時に招集された、緊急対策部。

この場合は・・・

「治安維持部」である。




「生徒会所属「治安維持部」だ。お前ら、おとなしくしろ。」

「おいおい・・・人様の教室に勝手に入り込んでおいて、そりゃないんじゃねぇのか?」


時津風が言う。



「・・・時津風。」

「よぅ・・・」


生徒会治安部の1人は時津風の友らしい。



「まさか・・・モトチューの奴に竹刀を向けることになるとはな・・・」


時津風が苦笑する。



「お前・・・やっていることの大きさをわかってるのか?」

「お前こそ・・・お前らのやってることが「正義」だと思ってるのか?」


2人はにらみ合う。

生徒会と絆同盟。

やはり敵対する組織どおりなら、モトチューなど関係ないのだろうか。



「お前らのしてることは、反逆も同然だぞ!」

「反逆・・・ねぇ?ならお前らがしてることは支配も同然だな。」


お互いに一歩も引かない。



「俺たちはお前らの支配から学校を解き放つ。・・・太平洋戦争のときの日本みたいにな。」



太平洋戦争。

それは、日本が好き好んで始めた戦争ではない。

陸軍の暴走、そして、米英等の列強諸国からの石油排出停止。

ハルノート・・・いわば降伏勧告。


日本は列強諸国に支配されたアジアを救い出すために、戦争を行った。

「大東亜共栄圏」というものを掲げて。


戦争後にアジアは独立を果たした。

日本は自らを犠牲にして、アジアを開放した。


・・・そういう説もある。



なら・・・

僕たちは、太平洋戦争時の日本ってか・・・

学校というものを解放するために、生徒会に喧嘩を売る。




「だが・・・唯一太平洋戦争の日本と違うのは、自らを犠牲にしないってとこだな。」


時津風は微笑みながらに言う。



「この絆同盟が、お前ら生徒会に負けるはずがねぇ。」

「・・・」


生徒会治安部の連中が目を細める。

そして、1歩・・・

また1歩と前へ歩き出す。



「下がりなさい!」


すると咲良が前にでた。

・・・どうするつもりだ?



「貴方たち、生徒会だろうがなんだろうが、勝手な行動は慎みなさい。」

「・・・なんだ、てめぇ?」


「治安維持部」の連中も目を丸くする。



「・・・こいつが、卯月咲良か。」

「・・・なるほどな。」


「治安維持部」の連中は納得しているが・・・

僕たちにはサッパリである。



「学校から、勝手な行動は慎むように言われたはずです。」

「いえいえ、麗しいお嬢さん。校長に言われただけで、学校そのものの総意ではありません。」

「・・・」


咲良・・・

お前はいったい何をしたんだ?



「いくら大企業の娘で、学校に多くの援助をしているからといって・・・生徒会の敵となれば、学校そのものを敵にまわしますよ?」

「実際、あなた方からの援助がなくても、学校はやっていけます。」

「くっ・・・」


そういえば、前に校長室で、こいつの親がこの学校に多くの援助をしているといっていたな・・・



「咲良さん、あなたがこちらにつけば、我々の勝利は確実。自ら危ない橋を渡る必要はありません。」



まさか・・・

こいつら、咲良をひきぬくつもりか?



「あなたがこちらにつけば、生徒会の指揮権をゆだねると会長が言っています。」



天王山が?

それほどまでして、なぜ咲良を引き抜く?

そんなにこいつの存在は大きいのだろうか?



「却下します。私は彼らが間違っているとは思いませんし、彼らと危ない橋を渡ると誓い合いました。」

「・・・」


治安維持部の連中は目を細める。



「それに・・・仮に全指揮権を私に委ねるのであれば、この「ガンマ」を解除しなさい。」


咲良が奮闘している。

絆同盟の全員はすでに隠し持っている武器に手をかけている。


おそらく咲良は絆同盟に暴力を震わせないため・・・

そして、生徒会と暴力でやりあわないために、奮闘しているのだろう。



「・・・わかりました。」

「!」


まさか・・・

「宣戦布告」を取り消してくれるのだろうか?



「あなたの意思は理解しました。これより治安維持部は卯月咲良も敵と認識し、行動を開始します。」

「!!」



頭のかたい連中め・・・



「天王山会長から、何があっても、「ガンマ」は解除しないという命令がでています。」

「・・・そう・・・」


咲良は下を向く。

すると、生徒会治安維持部の1人がバットを彼女に向けて振り下ろす。



「咲良!危・・・」


守ろうと走るも、間に合わない!

・・・喰らったか?

・・・いや、音がしなかった。


顔を上げてみれば、バットが空に舞っている。



「ケッ、女性をバットで殴るってのは関心しねぇぜ?」


時津風が竹刀をもっていた。

・・・弾き飛ばしたのか?



「咲良ちゃん、下がって!ここは俺らがやる。」


すると桶狭間がバットを握る。



「・・・わかってるな?」


将軍が桶狭間に言う。



「上等!治安維持部、かかってきな!!」

「・・・いくぞ!」


治安維持部の2人が走り始める。



「うらぁ!」


桶狭間が1人の持っている竹刀をバットで叩き、竹刀が折れた。

が、その間にもう1人が後ろについていた。

無防備になっている桶狭間に金属バットを振り下ろす。


・・・のだが・・・

なぜか「金属」でできているバットがまっ二つになり、先端が飛んでいった・・・




「ったく・・・世話がやける男だ。」

「・・・川中?」

「・・・へっ、言ったろ?お姫様は「黒帯」だって。」


・・・嘘だろ?

「金属」だぞ?「金属」!!



「く・黒帯!?んなのきいてねぇぞ!!」


どうやら「治安維持部」はそれを知らなかったらしい。



「くっ・・・逃げろ!」


治安維持部が背を向ける。


が、ドアが閉まった。



「逃がしませんよ?」


中島がスプレーを上下にふり、ドアを閉めたのだった。



「ひっ・・・」

「はい、おやすみなさい。」


あ~・・・

何度みても、催眠スプレーってのは便利なもんだ。

僕も、今度買おうかな?




「3人上がりってところだな。」


五月雨が言う。



「・・・んじゃぁ、お前ら、先にこの学校を出てろ。」


時津風が竹刀を見つめて言う。



「は?」


意外な言葉に皆が目を丸くする。



「ここで俺とお姫様が乱舞してやる。」

「生徒会のひきつけ役は任せとけ。」



川中が微笑む。



「お・おい、お前ら。お前らも一緒に行くんだろ?」

「んな全員でいったら、生徒会の連中に囲まれちまう・・・そっちはそっちで頼むぜ。」


時津風が桶狭間にウインクする。



「何をいって・・・」

「早くしねぇと、次がきちまう。早く行けって。」

「・・・」


桶狭間が考え込んでいる。



「まぁ、俺らは生徒会にフルボッコにあったりはしねぇって。」

「あぁ。どちらかといえば、フルボッコにする側だからな。」

「いやいや、お姫様、怖ぇって・・・」


なんて2人が言う。



「お前ら・・・俺らを信用しろって。」

「・・・わかった。じゃぁ、後で合おうぜ。」

「OK。じゃぁ、後で・・・絆同盟の朝の集合場所にな。」


時津風がウインクし、桶狭間が親指をたてる。



「・・・中島、催眠スプレーを1つくれ。」


川中がいう。



「今日はたくさん使うと思っていましたので・・・どうぞ。」



すると、中島は催眠スプレーを川中に2つ渡した。



「2つも!?」

「大丈夫です。たくさんありますから。」


お前はいったいどんだけ催眠スプレーをもってるんだ?



「今のうちに皆に配っておきましょうか。」


すると1人1本催眠スプレーを渡された。

こいつは・・・かなりの武器となるな。



「よし、いくっぺ。」


すると、川中と時津風を教室に残し、皆は教室を後にする。





生徒会本部会議室。



「「治安維持部」第1チームの連絡がきませんね。」


陽炎が静かに言う。



「・・・眠らされたか。」


天王山も静かにいった。



「はぁ・・・」


すると陽炎は携帯を取り出す。



「・・・よし。」

「何をした?」

「「治安維持部」全員で教室を制圧しろ、とメールしたのみです。」


やはり1チームでは無理があったか・・・

そう言うかのように、陽炎は目を細める。





階段を下る。

意外に生徒会相手にしては警備が少ない。

やはり「治安維持部」のみを動かしているなら、人数が足りないのだろうか・・・



「やべっ!」


すると、五月雨が脚をとめた。

階段を下りたところに生徒会の連中が3名いた。



「・・・どうする?」

「強行突破か、迂回するか・・・」


強行突破を実施すれば、時津風と川中がひきつけてくれている意味がなくなる。



「・・・この階で迂回しよう。」


それしか方法がない。



仕方なく道を迂回し、歩いていると・・・

視聴覚室前に、またもや3名。

が、今回は後ろから奇襲をかけられそうである。




「・・・ここはいくしかねぇっぺ。」

「だが・・・3人一気に・・・ってのは無理がある。」

「それに大声を出されたらゲームオーバーだぜ?」


あぁ・・・

3人一気に眠らせるには無理がある。


大声を出されたら、たちまち生徒会の連中が集まってくる。


すると、中島がハンカチを出した。

そして、スプレーをハンカチにしみこませた。



「・・・後ろからグッ・・・てか?」

「はい。」


おいおい・・・

マジですか・・・

ったく・・・メタギアじゃねぇんだからよ・・・

でも、戦闘そのものをするよりかはマシだがな。



「じゃぁ・・・俺らもやるか。」


すると、五月雨と将軍がハンカチを出す。

・・・僕も皆に任せっぱなしだから、やろうか考えたが・・・

ハンカチがない。


2人もハンカチにスプレーをしみこませる。



「・・・さて、いくか。」


3人は書く1人の後ろにつく。

五月雨が合図をだしている。


見事な合図である。

わかりやすいったらありゃしない。


さて、僕たち待機チームもいくか。

待機チームが飛び出して、相手がこちらをみた瞬間に後ろから催眠ハンカチで襲い掛かる・・・

という戦法である。



僕たち待機チームが飛び出す。


「!」


生徒会の連中がこちらを向いた。

いまだ!!


3人が後ろから襲い掛かる。


・・・バッタリ。

おやすみなさい。



「・・・完了。」

「ったく・・・手荒だな・・・」


なんて将軍が苦笑する。



「赤い線がないな・・・彼らは警備部か?」


五月雨が目を細めて言う。



「警備部だとしたら、パトロール隊も動いているはずね。」



警備部は、その地点を警備する「立ち止まり役」と、校内をランダムに歩き回る「パトロール役」がいる。



「パトロールの連中に眠らせた警備部を見つけられたら厄介ね・・・」


咲良・・・

お前、地味に怖いぞ・・・



「・・・眠らせた奴らはどこかの部屋に集めるか。」

「おそらく起きることはないと思いますが・・・起きたときのための縄も必要ですね。」


それは縛るということか?

おいおい・・・これじゃぁ、僕たち悪者じゃないか。

・・・いうならば、テロリスト?



「縄?そんなのあるの?」


咲良がきく。

まぁ、あるだろうが・・・

生徒会の連中が警備してるところにあるか、先生たちがもってるか・・・



「唯一安全なのは・・・物置地域のところですね。」

「!」



たしかにあそこはいろんなものがある。

それに・・・あそこまでは生徒会の連中は警備していないだろう。




「なら・・・私が行きますね。」

「・・・大丈夫か?」


女性1人でいかせるのはかなり危険だと思うが・・・



「大丈夫ですよ。物置地域あたりは生徒会が守る要所もありません。」

「・・・」

「それに・・・いざとなれば、これがありますし。」


中島は微笑みながら、催眠スプレーを指さす。

その微笑は・・・「安心しろ」という意味だろう。



「わかったっぺ。」


関ヶ原が承諾した。



「中島がいってる間に俺たちは脱出路にいる生徒会警備部を眠らせて、眠らせた奴らをここ、視聴覚室につれてきておこうぜ。」



五月雨が言う。

たしかに、それなら時間を無駄にしなくて済む。



「視聴覚室の守りも必要ね・・・」



いつパトロールの連中がくるかわからない。

そのパトロールの連中に、視聴覚室内を調べられたらアウトである。



「なら、俺がここの守りを果たそう。」


桶狭間が言う。


「・・・俺も残る。」


将軍も警備にまわる。

1人じゃさすがに危険だもんな。



「となると・・・関ヶ原と咲良ちゃん、五月雨が眠らせる係りってことだな。」


桶狭間が言う。


え?

僕は?



「お前は、見つかる役と、運び係りだな。」


五月雨・・・

お前、僕を馬鹿にしてるのか?


だが、実際運動神経の悪い僕がハンカチのをやると、しくじる可能性がある。

ここはやはり見つかる役と、眠らせた生徒会のやつを視聴覚室に運ぶ役しかないのだろうか。



「・・・わかったよ。」

「よし・・・行動開始だな。」


そういうと、各自、自らが果たすことのため、散り散りとなった。





僕たちは・・・

今、脱出路確保のため、また1つのチームを眠らさせた。



「・・・頼む。」


・・・ったく、五月雨。

お前も少し手伝ってくれよ・・・


まぁ、彼らには彼らの仕事があるため、任せられない。

どうにかこうにか、視聴覚室まできた。

ドアをあけると・・・


あれ?

将軍しかいない。



「・・・よっと・・・」

「お疲れ。」


なんていうが・・・

桶狭間はどうしたのだろうか?



「桶狭間は?」

「中島を手伝いにいった。」



ははぁ~ん・・・

もしかして、これが目的だったのか?



「俺が頼んだ。」

「え?」

「・・・ここの守りより、あっちに手をまわすべきだって。散々いって、やっと行かせられた・・・」


なんだ・・・

将軍が頼んだのか・・・


しかも、あいつが中島のいる物置地域より、ここの守りに徹するとは驚きだ。



「なんで将軍がいかなかったんだ?」

「・・・少し考えたかった。」



考えたかった?

なんのことだろうか・・・

まぁ・・・あいつがいると、まともに考えられないからな・・・

将軍、お前の気持ちはわかるぞ!



「ここで脱出できても・・・また明日もこれをやられるんじゃないかと思ってな。」

「・・・」



たしかにその可能性は高い。

そう思うと途方にくれる・・・

が!!

負けるわけにはいかないのだ。




「それに明日、どうするべきか・・・」



明日にはもう「ガンマ」が発令されたことが学校中に広まっているだろう・・・

話すことそのものを拒否される可能性もある。

できることは生徒会本部に話をしにいくことぐらいだ。



するとドアが開いた。



「もってきましたよ。」

「結構大変だったぜ・・・」


桶狭間と中島が帰ってきた。

大量の縄をもって。



「何事もなく帰ってこれて何よりだな・・・」


なんて僕が言う。



「いえいえ、何事もありましたよ?」



・・・あったのか!?

てか、その前に「何事もある」というのか?



「まぁ・・・桶狭間くんが助けてくれましたが。」



おぉ!

桶狭間、やるな!!



「桶狭間・・・やるじゃないか。」

「少なくても、人運びよりかは役に立ってるぜ?」



・・・イラッ!

僕だって、好きでこんな面倒で疲れる仕事をしているわけじゃない!!



「さて・・・僕もまた運びにいくか・・・」




関ヶ原と五月雨、咲良、僕は脱出路確保のために生徒会警備部の連中を眠らせているわけだが・・・

思った以上に警備が厳しい。

階段を下れば、下るほど警備の数が多くなっていく。

今、見てきたなかでは・・・

3階にパトロールが1チーム。

2階に、待機チームが1チームに、パトロール1。

1回に、待機3チームに、パトロール2。




「はぁ・・・はぁ・・・くっ・・・重ッ・・・」



さりげなく眠らせた警備部のやつに失礼な言葉がでてしまうが・・・

1人で、視聴覚室まで警備部の連中を運ぶのってかなり大変なんだぞ!


皆は馬鹿正直に、1階ずつ攻略をしている。

つまり、もう2階と3階は安全だ。

・・・なんでも「安全性をとる」とか・・・

こっちの苦労も知らないで・・・



「クリア。よし、星矢、つれていけ。」


咲良・・・

「つれていけ」じゃなくて、お前も少し手伝ってくれ・・・

もうこれで25往復目だぞ・・・

1回で運べるのは1人のみ。

生徒会警備部の連中は3人で1チームらしく、すでに7チームは睡魔のなかへGO!

となっている。

いや、今運んでいるチームと、視聴覚室前を警備していた連中も入れれば、9チームか。



「・・・やっと・・・ついた・・・」



視聴覚室についた。

いやいや・・・見事な手際である。

すでに24人が縛られている。



「ほら・・・25人目だ。」

「お疲れ様です。」



いやいや、中島の笑顔には癒されるぜ。


昨日、絆同盟の女子は皆可愛いとか、桶狭間がいっていたが・・・

実際どうなのだろうか?



「・・・桶狭間・・・お前も手伝ってくれ・・・」

「え~!?お前の仕事だろ・・・」


おいおい・・・

絆同盟の強さは「団結力」じゃなかったのか?



「・・・わかったよ・・・」



僕が桶狭間をジッと見ると、桶狭間は諦めたようだ。



「じゃぁ・・・中島ちゃんと将軍、ここはまかせたぜ。」

「了解した。」



階段を下りながら桶狭間と話す。


「まさか・・・放課後にこんなことになるなんてな。」

「生徒会の本気は怖いね・・・」



なんて軽いノリでいうが・・・

実際かなり怖いものである。



「なぁ・・・やっぱ生徒会本部前の警備まで眠らすことはなかったんじゃないか?」



再度いうが・・・

眠らせチームは安全性のために、その階すべてのチームを眠らせている。


・・・つまり、生徒会本部会議室前の奴らも眠らせたのだ。

もちろん連行済みだが。



「生徒会本部前の連中まで眠らせたのか?」


あ、そうか・・・

桶狭間は知らないのか。



「あぁ・・・おかげで運ぶ仕事が増える。」

「・・・まさか全部の階の連中を眠らせているのか?」

「あぁ、そうだよ。」



悪いが、それはもはや脱出路確保というものではない気がするぜ・・・



「しかし・・・包囲網でよかったな。」


え?

どういうことだ、桶狭間。



「だって・・・これだけの人数を投入しているなら教室に一気にこられたら大変だったぜ・・・」

「たしかにな。」



こりゃぁ、生徒会の戦略ミスだな。

そんなことを言いながら、1階までやってきた。




「十六夜・・・こいつらで最後みたいだ。」


つまり・・・警備・パトロールチームは9チームか。

総勢27人。


まぁ・・・

後から脱出する時津風・川中のことも考えて、一応視聴覚室につれていくことにする。



「よし、こいつらを運んで脱出しようぜ。」


残っているのは2人。

僕と桶狭間で1人ずつつれていく。




視聴覚室についた。

ドアをあけると・・・


あ~あ・・・

生徒会も自ら仕事を果たしているまでなのに・・・

25人が眠ったまま縛られている。



「よいしょっと・・・これで・・・27人。」


僕たちが眠らせたチーム9である。



「脱出路も確保した。脱出するぞ。」

「わかった。」



というわけで、無事学校から出られたわけだが・・・


絆同盟は夕日も沈み、薄暗い闇に辺りが包まれていくなか、朝に集合する場所にいた。



「・・・遅いな・・・」

「えぇ。心配ね。」


咲良が不安そうな顔をする。

あの2人にかぎって・・・それはないだろうが。


すると1人が走ってきた。

あれは・・・



「おぉ、川中!」


川中は無傷で帰ってきた。

さすがは黒帯。



「で?時津風は?」

「はぁ・・・はぁ・・・あいつは、私を先に逃がして、剣道部のエースと戦っている・・・」

「な!?」



剣道部のエース?

聞いたことあるぞ・・・

たしか1年で、関東大会までいったとかいう・・・

たしか名前は・・・



「陽炎というやつだ。」



陽炎・・・

そいつも・・・生徒会側なのか・・・



「あいつは1対1で勝負がしたい・・・と。」


川中は下を向く。



「あんな・・・真剣な顔・・・久しぶりにみた。」


おそらく、川中は・・・

良く一緒にいる時津風のことを理解しているはず。

そんな時津風が久しぶりに真剣な顔で川中に「先に行け」「1対1で勝負がしたい」といったんだ・・・

断れなかったのだろう・・・



それから結構待った。

時間?

そんなのわからん。

不安げなのだから、1秒が1分に感じてるかもしれない。

今、僕の中では1時間たっているが、実際はまだ1分しかたってないかもしれない。


川中はずっと下を向いたままだった。

おそらく・・・悔やんでいるのだろうか。



するとまた1つの影が。

今度こそ・・・彼だろうか。

こんな期待をするが、毎回単なる通行人でガッカリしてきた・・・

が、今回は・・・



「おい、あれ・・・」

「時津風!!」

「よぅ。」



彼は竹刀を片手に、悠々と歩いてくる。



「てめぇ、何してやがった!俺らがどんだけ心配したと思ってやがる!!」


桶狭間が言う。



「悪ぃ悪ぃ、意外と手間取ってな。」

「・・・」

「まぁ・・・川口のやつに感謝しなくちゃな。」

「え?」



川口?

感謝ということは、川口に助けてもらったのだろうか。



「俺を見逃してくれた。・・・おかげで助かったぜ。」


・・・川口はどちらに立っているのだろうか。

絆同盟?

それとも生徒会?


・・・わからない。

が、あいつはいい奴だ。

それは良く時津風と川中からきく。

なら・・・きっと安心しても大丈夫だろう。



「さて・・・全員の無事を確認したし、帰るか!!」



もう今日はカラスがないていない。

街灯が、道を照らす。

冷たい風が身を包む。


そんなに遅い時間になってしまったが・・・

間違いない。

絆同盟、全員が無事なのだ。


今日は・・・

絆同盟の初勝利だろう!!



                                 「脱出」  完


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ