団結
彼は壇上で生徒会・そしてこの学校に宣戦布告した。
だが・・・
それは「絆」同盟が望んだものではない。
彼1人が宣戦布告した・・・
絆同盟は何の関係もない。
そういうことになっている・・・
集会が終わり、教室にもどった。
関ヶ原、長篠、時津風の3人はすでに教室についていた。
「・・・おい・・桶狭間は?」
「先公に連行されていっちまった・・・」
「は?」
「あの野郎・・・第2プランを1人ででも実行するつもりだぜ・・・」
時津風が静かに言う。
「・・・自分1人のミスってことで丸くおさめようとしてやがる。」
「・・・」
それは・・・
自爆?
特攻?
そういう意味か?
「なんなんだよ・・・自分ひとりでミスを背負って・・・俺らを助けてくれたっぺ。」
「・・・とりあえず説明してもらおうか。」
まず何がどうなってるんだか・・・
そこを整理したい。
僕は皆に確認をした。
・・・すべてをきいて、事情はわかった。
が・・・
気に食わないな。
「なるほど・・・まぁ、俺たちのことを思ってやってくれたことは感謝するが・・・気に食わないな。」
「悪いな、良い成果をあげて、お前らを少しでも安心させたかった。」
将軍は言う。
ったく・・・
まぁ。皆が僕や卯月のことを思ってやってくれたこと・・・
ろならば、許さずにはいられないが・・・
「あいつが一番最初に同盟をつくろうっつったのに・・・」
その通りだ。
あのあいつが同盟に期待しなかった?
「はぁ・・・ここからの道は険しいな。」
川中は言う。
すると廊下で声がした。
「さっきの・・・マジ馬鹿だよな。」
「あぁ・・・退学にしてくれっていってるようなもんだぜ?」
なんでだよ・・・
あいつは何か間違ってることを言ったってのか?
何一つ、間違ってなんかないじゃないか。
そう思ってると、関ヶ原が廊下にでた。
「おい・・・お前ら。」
「ん?」
彼らが立ち止まると、一人の胸倉を関ヶ原がつかんだのだ。
「あいつのどこが間違ってるってんだ!?あぁ!?」
彼の左手が胸倉をつかみ、右手のこぶしに力が入り、その生徒の顔面へと突き進む。
が・・・
生徒を殴る音は聞こえなかった。
「やめろ、関ヶ原。人にあたるのはよくないぜ?」
殴りかかろうとしている関ヶ原をとめたのは、時津風だった。
「くっ・・・」
そう時津風にいわれ、関ヶ原は自覚したようだ。
左手をスッと胸倉からはなした。
はなしたとたん、生徒たちは走っていった。
「じゃぁ・・・どうすればいい?」
「・・・俺も少し考えたい。」
そういって、時津風は外にでていった。
「・・・実際、校長室に殴りこみ・・・って手もあるが、それじゃぁ、桶狭間の意思が・・・」
将軍はしたを向きながらにいった。
僕のせいだ。
僕と卯月が喧嘩しなければこうはならなかった。
こんな・・・
桶狭間や、関係のない人たちを巻き込んでしまうとわかっいていたのに・・・
こんなことなら・・・
「・・・同盟なんて組まなければよかった・・・」
それが結論。
同盟なんて組まなければ、僕と卯月だけで終わってた。
のに!
僕の「人に頼る」という弱さが、関係のない人たちを巻き込んだのだ。
「なんだと?・・・同盟を組まなければ良かった・・・だと?」
関ヶ原はこぶしに力を込めながらに言う。
「・・・ちょっと面かせよ。」
「え?」
「面かせってんだ!」
「・・・わかった。」
「俺も行く。・・・十六夜、親友として話しがある。」
こうして、僕と関ヶ原・五月雨も外にでていった。
「中島・・・どうすればいい?」
卯月はしたを向いたままにいった。
「せっかく・・・みんなが協力できるようになったのに・・・どうすればいい?」
「・・・わかりません。」
卯月は、いろんなことを知っている中島にきいた。
が、それは中島にもわからない問題だった。
「ここは・・・あいつらの迷いがなくなるまで待つしかないだろうな・・・」
将軍は静かに言った。
その言葉に、中島・卯月の2人は静かに頷いた。
体育館裏・・・
「くそ!」
右のこぶしで体育館裏の壁を殴る。
重たい音がした。
が、その音は響くことはない。
一瞬の音だった。
「・・・ものにあたるというのも感心せんな。」
そのとき、後ろで声がした。
「・・・お姫様か・・・」
「なんだ?珍しくお熱くなってるじゃないか。」
「・・・みたいだな。ったく・・・俺もまだまだだな。こういうときこそ、冷静にっつうのによ。」
時津風は苦笑する。
「・・・このこぶしは、あの作戦を成功させて、桶狭間とぶつける予定だったんだがねぇ・・・」
「しかし・・・面白半分で入ったんじゃないのか?なぜここまでお前が熱くなる?」
「ハハ・・・なんでだろうな。・・・やるとなりゃ、徹底的にやるってのが俺のモットーだから、かもな。」
(・・・お前のそんなモットー、初めてきいたがな・・・)
と川中は心の奥で思っていた。
「やるなら完全勝利。・・・誰一人失うことのない勝利を手に入れてぇもんだぜ・・・」
「なるほどな・・・」
まぁ、時津風らしいといえば、時津風らしい。
「これから・・・どうするべきか・・・難しいもんだぜ。」
「お前という男も悩むことがあるんだな。」
「なんか、地味に嫌味にきこえるんだが・・・もしかしてお姫様も今、ご機嫌斜めか?」
「いや、普通だ。」
時津風はその答えに苦笑である。
「そんなに悩むものか?」
「なんだ?いい案でもあるってのか?」
「なぁ・・・多数決というものは知ってるだろ?」
「お姫様・・・俺をなめてるか?」
「いや・・・ただ、民主主義の基本は「多数決」だといいたいんだ。」
「・・・多数決ねぇ・・・」
時津風が険しい表情をみせる。
「つまり・・・絆同盟のメンツは桶狭間以外納得いってない。・・・なら、やるべきことは1つってか?」
「そういうことだ。」
(チッ・・・今度は俺がお姫様に説得させられる側かよ・・・)
そう思うと、時津風は苦笑をやめずにはいられない。
「わぁ~った。・・・絆同盟に火をつけにいくか・・・」
そういって、時津風は前へ歩き出す。
(俺も結構単純なやつかもな・・・)
なんて空を見ながら時津風は思う。
「・・・助かったぜ、お姫様。」
「ふん・・・前の借りは返したぞ。」
「わかってる。・・・まぁ、今日、ドリンクバーでもおごってやるよ・・・」
(ただし・・・絆同盟もみんな一緒にな。)
校舎の外。
風が吹く。
木々がゆれる。
普段ならそんな自然現象をゆっくり味わいたいものだが・・・
そういうわけにもいかないらしい。
「おい・・・十六夜・・・」
「ん?」
目の前には超真剣顔の男が2人。
いつも変なしゃべり方をする関ヶ原も、今は普通にしゃべっている。
「一発喰らっとけ!!」
は?
そう思った瞬間に、バシッ!という鈍い音がきこえた。
視界がぼやける。
そして、頬に痛みを感じる。
「痛ぇ・・・関ヶ原、てめぇ、なにしやがる!!」
「いい加減に諦めろ。絆同盟を巻き込まないで問題解決なんて、不可能だ。」
親友である五月雨がいう。
「十六夜、てめぇと卯月のために「絆」同盟を結成したってのに、お前が「組まなければよかった」なんていったら、ここまでやってきたことが全部水の泡じゃねぇか!!」
関ヶ原・・・
たしかに、同盟を組んだことはいいかもしれない。
けど・・・
それでも僕は、みんなを巻き込みたくなんてないんだよ。
「はぁ・・・お前は「ひぐらし」で何を学んだんだ!?」
「!」
ひぐらし・・・
「さぁ行こう みんな心をひとつにして 如何なる嵐も乗り越えて」
「さぁ行こう みんな手と手を重ね合って 如何なる苦境も乗り越えて」
「さぁ行こう みんな心を一つにして 笑いあえる日はこの腕に」
「With you 絆」のサビが頭のなかでグルグルとまわる。
旋律がはしる。
そう・・・
僕は「ひぐらし」で仲間の重要性。
絆の強さ。
仲間を信じることの大切さを知った。
それらを学んできた。
「全員一致であの馬鹿を助けないと、あの馬鹿はホントに退学になっちまうぞ!」
関ヶ原には何のことかわからないだろう。
だが・・・
それでも、今の言葉は重みがあるぜ。
そうだ・・・
みんなが1つになっていかないと、嵐になんて勝てるはずがない。
ひぐらしで仲間を信じることの重要性をしった?
馬鹿か、僕か。
今までこんなにも堂々と言い張ってきたくせに・・・
ぜんぜん信じてなかったじゃないか。
なに?
みんなを巻き込みたくない?
皆はとうに決断できていたじゃないか。
単に僕だけが勝手に解釈して、同盟を乱していたんじゃないか。
そうだ・・・
ここまできたにはひくことなんてもうできない。
もう一度、全員で笑いあうためには・・・
みんなの心を1つにして・・・
この腕で、この手で!
「嵐」を乗り越えないといけないじゃないか!!
なのに、僕は「結成しなければよかった」だと・・・?
ふざけるな。
僕はここまでいい仲間をもっておいて・・・
ここまでいい同盟を味方にして・・・
何が「結成しなければよかった」だ!!
「ひぐらし」。
「竜騎士07」大先生。
「五月雨」。
「関ヶ原」。
「絆同盟」。
感謝するぜ。
皆のおかげで僕はまた一歩成長できたんだからな!
「ハハハ!」
「!?」
関ヶ原はいきなり笑い始める僕を見て、少しひいた。
五月雨は、おそらく僕の覚醒を知っていたのだろう・・・微笑んでいた。
いいぜ、桶狭間。
お前が絆同盟を思って動いたのなら、絆同盟はお前のために動こうじゃないか!!
もう・・・最初から決意してたじゃないか。
「みんなは一人のために、一人はみんなのために」。
誰も犠牲にしない。
もう戦いから逃げない。
桶狭間が退学になるときは、絆同盟全員で退学してやるぜ!!
「関ヶ原・・・お前のパンチは効いたぜ・・・だが、おかげで目をさますことができたぜ!!」
「そうか・・・やっと自覚してくれたか・・・」
関ヶ原は一息ため息をいれる。
「よし、教室に戻ろう。」
そういって教室にもどった。
さぁ・・・
こんな「混乱」なんて破壊しよう。
僕が作った混乱だ。
なら、破壊も僕にできるはずだ。
教室にもどると、将軍・卯月・中島の3人が暗い表情でいた。
まずは点火の作業から始めるとしよう。
「よぅ、お前ら!何を暗くなってやがる!!」
やべぇ・・・
相変わらず上から目線・・・
最悪だ、僕。
だが・・・
僕の覚醒はもやは誰にもとめられないぜ!
「お前ら、この同盟の由来は皆の絆で乗り越える!・・・だから「絆」ってつけたんだろ?」
いやはや・・・
この言葉はさっきまでの僕にいってやりたくぐらいだ。
「この同盟の絆は9人全員がそろって「絆同盟の絆」といえるんだ!8人なんて、もはや単なるフツーに同盟だぜ!」
はぁ・・・
さっきまで、根っからマイナス思考万歳だった僕が何を言う・・・
と思うが、皆を暗くさせたんだ。
なら・・・明るくさせるのも、僕の責任じゃないか!
「みんな、テンションあげてこうぜ!!これから生徒会に挑むんだ、気合十分でいかなくちゃな!!」
「・・・何を吹き込まれたかは知らんが・・・お前もやっとやる気をだしたか。」
将軍がいう。
「たしかにテンションがあげてくのは大切ですね。」
「星矢、お前もなかなかいいことをいうじゃないか。」
なんて女子2人も、暗いムードから脱出できた。
「ったく・・・火をつけるのは俺の仕事・・・と思ったんだが。まぁ、いいさ。・・・熱いじゃねぇか、少年。」
後ろには時津風と川中がいた。
そっちは何の話をしていたのだろうか?
とりあえず話は済んだから、戻ってきたのだろう。
「お姫様がいうには、民主主義の基本は「多数決」だ。」
「・・・」
皆は静まる。
「なら・・・俺らもそれをとろうじゃねぇか。」
「・・・というと?」
関ヶ原が目をまるくして、きく。
「ここで質問だ。お前らは・・・このままで満足か?」
「・・・」
川中は真剣な眼差しで言う。
「桶狭間1人にミスを背負わせて、満足か?」
「・・・なわけねぇだろうが・・・」
関ヶ原はいった。
「皆はどうだ?」
「・・・満足できるわけねぇだろう。」
「これは絆同盟全員の失敗ですからね。」
皆も賛成をし始める。
「「みんなは1人のために、1人はみんなのために」・・・またこの言葉をいう時がくるなんてな・・・」
将軍は苦笑いをする。
「いいじゃないか・・・全員一致ならやることは1つだろう?」
時津風は竹刀を持ち出す。
「だな。どうせ退学覚悟だ。置き土産に核爆弾でも置いてくか!」
関ヶ原もバットを持ちだす。
「そうですね。」
「あぁ!」
皆も賛成する。
それは校長室に殴りこみにいくということだ。
「・・・なぁ、1つきいていいか?なぜ武器をもつ?」
「校長室前はどうせ、生徒会の「警備部」がいるだろう?あいつらは武器をもってる。」
なんか・・・
すごく乱暴になる予感が・・・
「大丈夫、生徒を傷つけはしない。この竹刀で武器だけはじければそれでいい。」
時津風は竹刀を見つめて言う。
「・・・お前・・・そんなこと、できるのか?」
「これでも元剣道部だぜ?」
時津風はウインクをする。
そう・・・あのときと・・・
川中説得のときと同じウインク。
こいつは「超」がつくほど心強いじゃないか。
「よっしゃ!絆同盟の絆の強さ、この学校中に見せ付けてやろうぜ!!」
「おぉ!!!」
これで本当に絆同盟は1つになった。
これで戦闘準備は万全。
見てろ、生徒会。
見てろ、学校。
僕たちは絶対に挫けない。
桶狭間・・・
お前の意思はわかった。
けどな・・・
絆同盟はそんなの納得なんてしねぇ。
お前を見捨てたりなんてしねぇぜ。
さぁ・・・
絆同盟全力の第2ラウンドを開始しよう!!
「団結」 完