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なんで僕が!?  作者: へたれ度100%
33/79

始動

※桶狭間視点の物語です。

「おい、てめぇら!!よく耳をかっぽじってききやがれ!!!」



俺は今、全校生徒が集まっている体育館の壇上で、大声をあげた。

それによって全校生徒は皆、俺へと注目する。


・・・こうなった理由?

それは金曜日にさかのぼることになる。




「・・・桶狭間、話しがある。」


そう、川中に呼ばれ、俺は物置地域にいった。

そこで川中に俺はある1枚のプリントを渡された。



「・・・これは?」

「体育祭実行委員作成書だ。責任者はお前ということになっている。」

「・・・」


俺には川中がこれを俺に託した理由が不明だった。



「これと同じプリントを川口に渡した。」

「!?」


川口に!?

どういうことだ?



「川口を通じて、学校に送ってもらう。生徒会からなら、学校も動くはずだ。」

「・・・でも・・・体育祭実行委員なんて作って何になるんだ?」

「月曜日に全校生徒が集まる大規模な集会がある。そこでお前が体育祭実行委員として、壇上に立つんだ。」


・・・それって・・・

まさか・・・



「おい・・・それって・・・」

「あぁ。生徒会に堂々「宣戦布告」できるってことだ。・・・しかも全校生徒を味方につけてな。」


たしかにそれができれば、とんでもなくことは有利に進む。

だが・・・



「川口が学校にとどけるという確証は?」

「ない。」


・・・やはり。

川口だって、生徒会の人間だ。

自らの敵と認識した者たちの言うことをきくようにも思えない。



「ここは川口を信じるのみだが・・・仮に届けてくれたのならば、月曜日に教室にお前を迎えに生徒会の人間がくるはずだ。」

「・・・」



「絆」同盟のことはまだ1年B組のなかでしかひろまっていない。

まだバレてはいない。

そこは確信できる。




「月曜にお前は学校に早めにいき、もし呼ばれたら・・・やることはわかってるな?」

「・・・」

「これが実現すれば、絆同盟は勝利の第一歩を歩むことになる。」



・・・わかってる。

けど・・・

確証がない。



「まぁ・・・できなければ、次の作戦を考えればいい。」

「・・・」

「・・・どうだ?」


川口が学校にその川中が託したプリント・・・

おそらく封筒か何かにいれたのだろうが・・・

それを学校におくるとは思えない。


が・・・

確率がゼロなわけではない。



「それって・・・マジな話しか?」

「あぁ。」

「お前・・・やるじゃねぇか。」



・・・

・・・

こうして・・・

絆同盟のすべてのメンツにやるべきことを伝えた。

もちろん五月雨と中島にも。



月曜日。

つまり今日。

俺と関ヶ原、将軍と時津風は早めに学校にきた。


いつもどおりに装って、ダラダラしていると・・・

見事に生徒会「準備部」の連中が俺を呼びにきた。

それは川口が学校にプリントをまわしてくれたということだった。

・・・川口、サンキュー、助かるぜ。



そして・・・


「え~、これより体育祭説明会を始めます。」



体育館の舞台裏で俺は準備をしていた。

舞台は中央。

右と左に各1箇所ずつ出入り口がある。

そこの封鎖を3人に任せた。


3人は各自「武器」とよべるものを携帯していた。

それは、力押しでこられたら、中断させられてしまう・・・

そうならないために、出入り口は「死守」しなければならない。


仮に力押しでこられたときに、素手だと苦しいものがあるが・・・

武器となるものをもっていれば、相手も下手に突っ込んでこなくなる。

相手に怪我をおわせる予定などない。

あくまで「死守」のためだ。




「・・・よし、作戦決行だぜ。」

「へっ、出入り口閉鎖は任せときな。」


将軍の言葉がいつもより力強く聞こえる。



「桶狭間・・・お前は「演説」に専念するっぺ。」


いつも突っ込んでくる関ヶ原も、今日という今日は心の奥底から信頼できる。



「なぁに、「演説」は中断なんてさせねぇ。出入り口は俺らが「死守」してやるよ。」


時津風のウインクが今日ほど心強く思えた日はない。




「へっ・・・お前ら、最高に格好良いじゃねぇか・・・」

「なぁに、お前のいい格好させるんだ・・・俺たちもせめて見えないところぐらいでは格好よくないとな。」


将軍は苦笑しながらにいう。



「その通りだっぺ。今日、何かおごれよな。」


関ヶ原も親指をたて、ニコやかに笑う。



「んじゃぁ、今日が終わったら、サイゼリアでドリンクバーとしますか!!」


時津風も親指を立てて、テンション高めでいう。



「いいじゃねぇか。」

「皆で飲みにいこうだっぺ。」

「・・・といっても金曜にお姫様におごってもらったんだけどねぇ・・・」


なんて時津風が苦笑しながらにいう。



「へっ・・・ここまできたなら引き返せねぇ・・・でかい花火をあげてやろうぜ!」


そういって時津風はこぶしを前にだす。

皆がこぶしとこぶしを無言でぶつけ合って、そのまま各自の持ち場へとついた。




「それでは、体育祭実行委員より、説明してもらいます。」


さぁ・・・

あの3人に裏仕事を任せてるんだ・・・

主役が失敗するなんて許されねぇぜ。


そして、ゆっくりと壇上へと出て行った。



壇上にたつと、よく見えるもんだ。

下を向いてるやつ、後ろを向いて話してるやつ・・・

全部丸見えだぜ。

さて・・・

楽しい楽しい祭りの始まりだ!!



俺が一言この場で怒鳴っただけで、皆が一瞬にして、こちらに向いた。

右からは、生徒会の連中が出入り口へと入っていく。

左からは、先公どもが入っていく。

あいつら・・・大丈夫だろうか。


なんてことを気にする余裕はない。

なぁに、「退学」覚悟の一世一代の大演説だぜ。

てめぇら、心して聞きやがれってんだ。





出入り口右通路・・・



「急いであいつをたたき出せ!壇上で暴言など許すな!」


生徒会長、「天王山てんのうざん かおる」の声を先頭に、生徒会生たちが進んでいく。

だが・・・

急に生徒会生たちの脚がとまった。



「・・・時津風?」

「よぅ、川口。元気にしてるか?」

「そこをどいてもらおうか、1年坊主。」


天王山は竹刀をもっている時津風にいう。



「は?きこえねぇな、3年ガール。女ってのは、もう少しおしとやかなもんだぜ?」

「なんだと!?」

「おい、時津風!そこをどけ!」


1年副会長である川口と会長である天王山が時津風に怒鳴る。



「へっ、絶対通すかよ。何が何でも、死守するって、決めてんだからよ。」

「なに?」

「あいつと・・・絆同盟の意思をこんなところでとめるわけにはいかねぇんだ。」

「・・・」

「ここを通りたかったら、俺をぶん殴ってでもいくんだな。・・・まぁ、当然正当防衛はとらせてもらうがな。」


そういって、竹刀を生徒会生たちに向けていた。





出入り口左通路・・・


こちらは先生たちが桶狭間を取り押さえようと進んでいた。



「おい、先公ども。」

「・・・お前は長篠!ここで何をしている?」

「おいおい・・・俺を忘れてもらっちゃ困るぜ?」

「関ヶ原も一緒か・・・早くそこをどきなさい。」



先生たちは焦っていた。

ここで桶狭間に余計なことをいわれ、反生徒会の意思が全校生徒たちに宿ったら・・・

面倒なことになるのは目に見えている。



「嫌だね。先公たちはここで見ててもらいますぜ。」

「あぁ・・・あいつの・・・絆同盟の意思をな!」





そして、中央部。

すなわち、壇上。



「てめぇら、生徒会についてどう思ってやがる!!」


原稿なんてない。

すべてアドリブ。


極度の緊張と、責任。

そのなかでのアドリブは思った以上にきついもんだぜ・・・

だが・・・ここで俺が成功させないと、絆同盟が腐っちまうぜ・・・




「あぁ?なに?生徒会の連中の権限はおかしい?生徒会の権限のせいでおびえてなくちゃならないから、怖い?」



皆の反応はない。

いいさ、なら俺がマシンガントークしてやる。



「それとも学校に不満もってるか?「生徒一人一人がしっかり意見をもてる学校」という目標のくせに中身は帝国主義万歳だ!それを「詐欺」だと思ってるか?」



生徒たちはザワつきはじめる。


・・・皆だってわかってるはずだ。

だが・・・

それをいったら、生徒会の権限で「退学」になる。

それが怖い。



「てめぇら・・・いつまで殻にこもってるつもりだ!?このまま次の世代にも、このままでいかせていいのか!?」



ケッ・・・

やっと緊張が消えてきた。



「大体、明日体育祭の予定だったのに、急に来週に変更だ。生徒会の都合のせいでコロコロとかえられて、おかしいと思わないのか?」


生徒たちはザワつくことしかしない。



「大体てめぇらは生徒会をどう思ってるんだ!?おい、生徒会に不満のある奴、手をあげてみやがれ!」



だが・・・

誰1人手を上げなかった。



「お前ら・・・本当に臆病者だな・・・俺が独断でうちのクラスでひっそり確認したとき、確実に半分以上はいたぜ?」



生徒たちはやはりザワつくことしかしない。

どいつもこいつも臆病者だぜ・・・



「どいつもこいつも陰口はいえるくせに、表ではいえないってか!?」



だが・・・

皆の反応は冷たかった。



「俺は言えるぜ!!生徒会はくそったれで、この学校は腐ってる!」



やべぇ・・・

ここまでいうと、さすがに危ない人に見えてくるぜ・・・




「くそ!!なんで、お前ら、そんなに何もいわねぇんだよ!?このまま我慢し続けるってのかよ!?」



だんだんと敗北の予感がしてきた。

俺は・・・

この最高のチャンスをつぶすってのか・・・




「じゃぁ、この学校が狂ってるってなら、お前らは洗脳されてるぜ!!これがおかしいと思わないのかよ!!」



ダメだ・・・

俺がどれだけ強くいっても・・・

生徒たちは納得しない。


いや、納得は最初からしている。

だが・・・

生徒会と学校の協同戦線のせいで「恐怖」がある。

誰も「退学」なんてしたくはない。


その「恐怖」に負けちまってるんだ・・・




「おかしいだろうが!!そう思わないやつはどうかしてるぜ!!」



ダメだ・・・

これじゃぁ、たとえ百時間かけても、生徒たちは味方になんて付かない。



・・・チッ・・・

ここは潔く諦めて・・・

「第2プラン」といくか・・・




「第2プラン」。

それは学校の説得。

これほどのことをやらかせば、校長室は間違いない。

校長と担任と学年主任と・・・

まぁ、そこらお偉いさんと話すのだろう。

・・・そいつらを説得する。


だが・・・

これはきわめて成功率が低いといっても過言ではない。


けど・・・

ここでどれだけねばっても、無理だろう。


ここは一時撤退・・・か。






「わかった・・・てめぇらそういう態度なら俺は何も言うことができない。」



生徒たちはまた静まり返る。



「だが・・・いつか立ち上がってくれる日がきてくれると・・・俺は信じてる。」


チッ・・・

ここまでやったら、俺1人で全部やってやる。

絆同盟を巻き込むわけにはいかない。

へっ・・・神風特攻ってのも悪くはない。



「最後に一言。俺は・・・生徒会ならびに霧島第3高校に宣戦布告する!!!」



そういって、俺は壇上を後にした。


いうべきことはいった。




「・・・お前・・・いいのか?」



左通路でねばっていた、将軍がいった。



「あぁ。おい、先公ども。」

「桶狭間!!お前、ただで済むと思うなよ!!」

「わかってる。だがな、関ヶ原と長篠、それに右の通路にいる時津風は俺が脅してやらせた。」

「は?」



将軍と関ヶ原は目をまるくした。

俺は「いいから」というように目で合図する。



「本当なのか?関ヶ原、長篠・・・」

「いや・・・」

「関ヶ原!!!」

「!」



俺は関ヶ原に怒鳴った。

この惨敗を絆同盟に押し付けたら・・・

絆同盟そのものが消え去る。



「・・・」

「俺が脅してやれせました。どうぞ、くそ先公ども。校長室だろうと、国会議事堂だろうと、どこへでもつれてけってんだ。」



そういって、俺は先生たちのあとに続く。



・・・俺は諦めたわけじゃない。

1人ででも、第2プランを実行する。

校長どもを説得だ。


なに・・・俺には切り札がある。

最後の最後まで奮闘してやるぜ。




そう・・・

最初は惨敗という結果に終わった。

そして、俺は自ら1人で責任を背負う。

特攻という道を選ぶ。


俺は絶対にこのまま退学にはならない。

せめて何かしでかしてから、退学になってやる。


さぁ・・・

第2戦といこうじゃないか!



                           「始動」   完

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