疑惑
土曜、日曜をあけて、月曜がきた。
月曜・・・
今日は生徒会と交渉をする日となっていた。
金曜の放課後に絆同盟のメンツで決めたのだ。
9人全員で、生徒会本部会議室に乗り込みにいくと。
もう皆、退学覚悟だが・・・
やはり僕としては、皆を巻き込みたくはないというのもある。
「はぁ・・・」
朝から不安度MAXである。
これで誰かが「退学」なんてなったら、どう責任をとればいいのだろうか・・・
今日はやけに空気が重たく感じる。
重たい空気を吸いながら、いつもの道を行く。
せめてもの癒しとして、音楽をきこう。
ずいぶん前にどっかにいったIpodを昨日、見つけ出したのだ。
そのため、昨日はTube FireでYou tubeの動画・音楽をMP3に変換しまくり・・・
それを根こそぎiTunesに入れ込み・・・
そして、Ipodと同期したのだ!
・・・いや、我ながらあんなに地味で面倒な作業をよくやったと思う。
自分で自分をほめてあげたいぐらいだ。
昨日でなんと合計157曲をIpodに追加した。
もちろん、どれもMP3である。
やったことのある人ならわかるであろう、僕の努力が。
僕は昨日、奮闘したのだ。
昨日入れたてのホッカホカな音楽を「(自称)優雅」に楽しむ。
テンションが上がる。
いやはや、やはり音楽の力は素晴らしい!
「相変わらずノロマじゃないか・・・」
・・・あぁ・・・せっかく音楽を「(自称)優雅」に楽しんでいたのに・・・
・・・この重たい空気に・・・
重たい発言をする奴がいるよ・・・
「まぁ・・・今日は8時ピッタリだ。よしとするか。」
「よしとするか」じゃないだろ!!
まず最初にいう言葉があるだろうが!
「・・・おはよう、咲良。」
「あぁ。」
・・・はい?
それで終わり?
「・・・お前、「おはよう」って返さないのか?」
「なぜ私がそんなカップルがやるようなことをしなければならない!」
・・・いやいや、常識だし。
カップル関係ないし。
「・・・それは音楽プレイヤーというものか?」
「あぁ。」
咲良は真剣な眼差しでこちらを・・・
というか、Ipodを見つめている。
・・・そんなに見つめたら、Ipodがビビッちまうだろうが・・・
「世に言うPMPというものか?」
PMP?
なんじゃそりゃぁ・・・
「ん?なんだ知らんのか?物知りのお前にしては珍しい。」
・・・いや、普通、炭酸飲料を見て、「炭酸水素ナトリウム」の組成式を言うやつのほうが珍しいだろう・・・
てか、いないだろ・・・そんなやつ。
まぁ・・・ここに例外が1人いるが。
「ポータブルミュージックプレイヤーの略だ。」
んな略なんてあったか?
・・・ポータブルオーディオプレイヤーと勘違いしているのだろうか・・・
「そういえば、最近、略語というのが流行ってるらしいな。」
ずいぶん前から流行ってるよ・・・
まぁ、最近はまた言わなくなってきたが・・・
「KYというのは、「空気読めない」ということらしいな。」
あぁ・・・まさにお前のことだよ。
こんな朝っぱらから、どうでもいい話をゴチャゴチャと・・・
「JKというのは「女子高生」という意味らしいな。」
まぁ・・・「冗談は顔だけにしろ」とかいうのもあるらしいがな。
「じゃぁ・・・ここで問題だ。」
「?」
「KKとはなんだ?」
KK?
んなのあったか?
やはりKYと同じで最初の「K」は「空気」なのだろうか・・・
「どうやらわからないようだな・・・雑魚が。」
・・・なんかムカつく言い方だな。
「正解は「こいつ、殺したい」だ。」
「わかるか、そんなもん!!」
てか・・・
んなのねぇ~じゃねぇか!!
「これは完全に私オリジナルのものだ。」
だろうな・・・
こんな殺戮的な言い回し、お前しか考えられん!!
「いや、世の中の人は略語になれているから、こんなの楽勝だと思ったのだが・・・」
「悪いが、正式に出回っているものじゃないと解読は不可能だ。」
「・・・そうなのか!?」
「当たり前だ。」
なぜこんな常識をそんな真顔で聞き返すんだ!?
「・・・KK。」
「・・・」
・・・そんな真剣な眼差しでこっちに「KK(こいつ、殺したい)」とか言われても困るんだが・・・
「・・・はぁ・・・リアクションなしか・・・やっぱKYを相手にするとダメだな・・・」
僕にはお前の考え方そのものがよめないんだがな・・・
「・・・で?何をきいてるんだ?」
・・・やっとまともな質問になったか。
「アニソン。」
「・・・アニ・・・ソン?・・・兄損?」
「あぁ?」
「そうかそうか、兄は大変なのか・・・」
はぁ・・・ダメだこりゃぁ・・・
一瞬、わざとかと考えたが・・・
こいつの目は真剣そのもの。
なぜ「炭酸水素ナトリウム」の組成式がわかって、「アニソン」が何の略だかわからない!!
常識がおかしすぎるだろ!
「アニメソングの略だよ・・・」
「ほぅ・・・略か。・・・なんでも省くな!!」
・・・お前だってさっき「KY」とか「KK」とか言ってたじゃねぇか・・・
「しかし、お前はホントにアニメというものが好きだな。」
「あぁ・・・悪いか?」
「よし、質問だ。」
今度はなんだよ・・・
「世の中で自分の好きなこと・もの・人のベスト3を言え!」
「アニメ・家族・友達。」
「・・・」
なんだよ・・・
その鋭い目つきは・・・
「貴様・・・私という人間が入っていないじゃないか!!」
んなの知らねぇよ・・・
「・・・もう一度きく。お前の好きなこと・もの・人のベスト3は?」
「アニメ・家族・友達。」
そこはかえる予定はない!
「・・・もう一度きいてやる。」
こいつ・・・
もしかして、「咲良」って単語を入れるまでいい続けるつもりか!?
「お前の好きなこと・もの・人のベスト3をいえ。」
「・・・はぁ・・・家族・友達・咲良。」
実際アニメを抜くのは不甲斐ないが・・・
どうせこいつの質問だ。
テキトーに答えていいだろ。
「・・・気持ち悪ッ!」
「はぁ!?」
「最低!なに、「咲良」って!?ありえない・・・」
ありえないのはお前のその考え方だよ・・・
何がしたいんだ、ホントに・・・
「・・・で?アニメが好きで、アニメソングも好きなのか?」
「あぁ。」
「・・・」
隣の理解不能な女がジッとにらんでくる。
「春になると、「桜」と入る曲が多くなるわけだが・・・」
「・・・貴様、それ、わざと私の前でいってるか?」
「いってねぇ~よ・・・」
てか、なぜ一々そんなことに突っかかってくるんだか・・・
「僕のアニソン好きは、春夏秋冬、まったくかわることがない!!」
「げっ・・・」
なんかさりげなくひかれた気がするんだが・・・
まぁ、それはそれで隣が静かになるからいいんだがな。
「一応きいてやるが・・・」
きかなくていいよ・・・
静かにしとれ・・・
「今はなんという曲をきいている?」
「「nowhere」。」
「・・・」
「知らん」という顔をしている。
まぁ・・・そうだろうがな。
「この曲はアニメ「MADLAX」の挿入歌で、別名「ヤンマーニ」。ニコ動では結構有名な曲だ。」
「・・・そんな専門用語を並べられても理解できん。」
・・・専門用語ではないのだが・・・
そんな話をしながら、絆同盟のメンツの集合場所まで歩いていく。
そういえば、前々に「比叡」さんから素直になれないといわれたな・・・
フッ・・・少しからかってみるか。
僕は咲良をジッと見つめる。
「・・・なに?」
「いや、可愛いなって思って。」
「か・可愛い!?」
卯月は顔を赤くした。
目がしどろみどろ、あっちいったりこっちいったりしている。
「ふっ、やっと気づいたか・・・この私の美貌に。」
「あぁ・・・可愛いと思う。」
「うっ・・・」
いつしか彼女の頭の上には湯気がたっている。
「か・からかってるのか!?」
「いや、素で可愛いと思うぞ。」
「・・・ホントに?」
そろそろ楽しんだことだし、いいだろうか。
「嘘。」
「・・・はぁ!?」
いつもやられる側だからな・・・
たまには、やる側にまわってもいいだろう。
女性に嘘の褒め言葉をかけるのは、デリカシーのない最低な行動だが・・・
まぁ・・・こいつの焦るところを見れたのだ。
よしとしようじゃないか。
「お前!!」
「・・・「反応は」可愛かったぞ。」
「・・・」
彼女が顔を真っ赤っかにして、下を向いた。
・・・反応は可愛い。
顔?
それは桶狭間にきいてくれ。
僕はアニメ基準だから、現実の可愛い顔というのはどんなんか理解不能だ。
「やっときたか・・・」
「あれ?なんか少なくない?」
絆同盟の集合場所についたわけだが・・・
本来いるはずのメンツが3人ほどいない。
関ヶ原と桶狭間、将軍である。
「あいつらは先に行っててくれっていってたぞ。」
五月雨は言う。
珍しいこともあるもんだ・・・あいつらが遅れるなんて・・・
まさか・・・
サボりか?
「じゃぁ、先にいってましょうか。」
なんて中島がいう。
・・・相変わらずおしとやかだな。
「そういえば五月雨。」
「ん?」
「キュべレイはメタルギアポータブルオプスに登場するメタルギアRAXAに似てないか?」
「・・・というか、RAXAがキュべレイに似てるんだろ・・・」
なるほど!
そうか、そういえばガンダムのほうが先か。
・・・と思えば、REXも似ている機体があった気がするぞ・・・
まぁ・・・いいか。
「というか、キュべレイって強くない?」
「でも、コスト3000じゃん・・・」
「でも、ファンネルは強いじゃん!」
「・・・あれ、ファンネルを射出してから、攻撃するの遅いじゃん・・・」
「・・・ねぇ・・・さっきからあの2人は何についていってるの?わかる?」
「えぇ、大体は。」
なんて女子2人が話している。
「RAXAってなに?」
「メタルギアポータブルオプスにでてくる、いわば敵の架空兵器です。」
「架空兵器?」
「えぇ。RAXAそのものは未完成状態ですが、ウルスラという女性が操ることで生き物のような機動をするらしいです。」
卯月は目を丸くしている。
「じゃぁ・・・なに?「キュべレイ」って・・・」
「ガンダムにでてくる機体のうちの1つです。」
「・・・じゃぁ、コスト3000ってのは?」
「ゲームセンターと「VS」シリーズのシステムのうちの1つ・・・まぁ、ルールみたいなものです。」
「じゃぁ、ファンネルは?」
「キュべレイが射出する無人攻撃装置・・・みたいなところでしょうか。正式には「オールレンジ攻撃」というそうです。」
「へぇ・・・」
何気に中島はそういうところが詳しいらしい・・・
卯月にも意外だったらしい。
「僕思ったんだけど、テイルズでリオンってめっちゃ強くない?」
「あれはねぇ・・・「ヒール」を使える上に「ブラックホール」と「デモンズランス」、さらに接近戦闘なら「魔人闇」があるし・・・強いよね・・・」
「うん。しかもイケ面だしね。」
「たしかに。」
「・・・あれは?」
「「ヒール」は回復術、「ブラックホール」と「デモンズランス」は攻撃術、「魔人闇」は接近戦闘用の攻撃技です。」
「・・・」
まぁ、そんな話を五月雨としながら、学校についた。
教室に入ると、やはり桶狭間と関ヶ原、将軍・・・
それどころか「時津風」まできてなかった。
「・・・今日、遅刻多いな。」
「そうですね。まぁ・・・大丈夫ですよ、きっと。みんな元気にやってます。」
「・・・なんか、病気になった人みたいな言い方だな・・・」
「そうですか?」
中島・・・
お前って、やはり侮れないな・・・
「なぁ、川中。時津風たちを見なかったか?」
「ん?知らんが・・・」
少し川中には笑みが混ざっていた。
「・・・知ってるだろ?」
「知らんな。」
「・・・」
なんなんだよ・・・
「くそ・・・時津風がいれば、ガンダムのゲームは「VS」派か「バトル」派かきこうと思ってたのに・・・」
「ちなみに私は「VS」派です。」
「うわっ!?」
なんて中島が混ざってくる。
「そう?俺は「バトル」派なんだけどなぁ・・・」
なんて五月雨が苦笑する。
・・・この際、ガンダムの話しは後回しだ!
まず4人はなんで4人そろって遅刻なんだ!?
これは全力でサボり疑惑じゃないか!
まぁ・・・それはそれで彼らを巻き込まなくて済む。
そう考えるとむしろうれしいぐらいだ。
「おかしくないか・・・あいつら、まさか本当にサボりなんじゃ・・・」
「それはないと思いますよ?」
「あぁ。金曜にあんなに張り切ってた奴らが、簡単に休むとは思えないしな。」
・・・じゃぁ・・・
なんだってんだ?
「・・・あれ?十六夜くん、音楽きいてるんですか?」
「うん。」
「何を聞いてるんですか?」
どうせいってもわからないだろうが・・・
え~と今は・・・
うわぁ・・・よりによって、かなり難しいところじゃないか。
「「星色夜空」だよ。」
「あ~、東方のVocalアレンジ曲ですね。」
え!?
わかるのかよ!?
「たしか・・・原曲は「恋色マスタースパーク」・・・でしたっけ?」
・・・完璧だ・・・
何気にこいつ・・・
やるな!
「あぁ。じゃぁ・・・」
飛び切り難しいのでいくことにする。
これを答えられたら、相当なレベルだ。
「Fragmentって知ってる?」
「曲ですか?」
「うん。」
さすがにこれはわからないだろう・・・
「たしか・・・水夏・・・だった気がします。」
「!?」
なぜだ!?
なぜこうもわかるんだ!?
こいつ・・・
何気にホントにマジのガチで侮れないぞ!
「じゃ・じゃぁ、「荒野流転」は?」
「「いろはにほへと」ですね。」
・・・認めよう・・・
こいつは冗談抜きで強いぞ・・・
そんなどうでもいい話で盛り上がっている(?)と・・・
「そろそろ集会が始まるぞ!」
なんて声がする。
「やべぇ・・・そろそろ行かなきゃな。」
今回の集会は体育祭の種目の説明。
いわば全校生徒が集まる。
ゆえに狭いところではできないので、体育館でやることとなる。
しかし・・・
体育祭の種目なんて誰もが理解している。
やる必要なんてない。
と皆が思っている。
・・・が、動かしているのは「生徒会」。
意見がいえない。
・・・正直僕は無駄なことだと思うけど・・・
せっかくだし、今日、抗議しにいくときにいっておくか。
体育館へ皆で移動する。
「・・・狭いじゃないか!」
「・・・んなこと、僕にいうなよ・・・」
実際かなり狭いが・・・
そんな文句をいって、なんとかなるわけでもない。
「あ~・・・これだから庶民は・・・」
うわぁ・・・
バ金持ちの発言・・・
「というか・・・この体育館を大きくすればいいんだよな?」
「・・・あぁ。」
「・・・するか。」
ちなみに、このニ週間後・・・
僕たちが「試験」というものと戦っているときに、体育館は改装・拡大されることとなった・・・
「え~、これより体育祭説明会を始めます。」
「やっと始まったか・・・どれだけ人を待たせれば気が済むんだか・・・」
・・・お前はどれだけ愚痴を言えば気が済むんだ?
「それでは、体育祭実行委員より、説明してもらいます。」
といって体育祭実行委員とやらがでてきたのだが・・・
・・・ん?
なんか桶狭間に似てるな・・・
・・・てか、桶狭間じゃん!!
あいつ・・・何してるんだ?
・・・というか、まず体育祭実行委員なんてあったか?
そんなことを思っていると、桶狭間が舞台の上で、マイクを持った。
やれやれ・・・あいつも面倒な委員に選ばれたもんだ・・・
「おい、てめぇら!!よく耳をかっぽじってききやがれ!!!」
「!?」
その・・・なんというのだろう・・・
舞台上にたっての、いわば「暴言」的な言葉に皆が反応する。
今まで後ろを向いてしゃべっていた生徒も、下を向いていた生徒も、皆、彼を見た。
先生たちはすぐに立ち上がった。
生徒会の連中も焦っている。
それもそのはずだ。
何しろ、体育館の壇上・舞台上では「暴言」は一切禁止となっているのだから。
・・・桶狭間・・・
お前、これからいったい何を始めるつもりだ!?
「疑惑」 完