相棒
※川中視点の物語です。
今日・・・
「第5同盟」は解散となった。
解散にさせた理由は、もう卯月咲良は大丈夫ということの確証を得たから。
そして・・・
そのことに気づかせてくれたのは、隣にいる「第5同盟」副リーダー・・・
「時津風 斬」だ。
彼との出会いは中学時代までさかのぼることとなる。
「あ・あの!!俺、あなたのことが好きです!!」
中学2年になって早々私は告白された。
いや、もうこの男・・・西野に告白されたのは3回目だった。
世の中には「三度目の正直」という言葉があるわけで・・・
私もこれ以上告白されても面倒なだけなので、仕方なく付き合うことにした。
付き合い始めて、3日ほどしてから、西野という男はとても優しい男だということを知った。
そして、私自身も知らず知らずのうちに、彼に惚れていた。
が!!
付き合い始めて1週間後。
彼はいきなり私をふったのだ。
理由?
そんなの教えてくれなかった。
ただ「もう別れたい」。
それだけだった。
私は「これはさすがにおかしい」と思い、彼のあとをつけ、調べた。
「卯月咲良」という人物が浮かび上がったのだ。
卯月といる西野は本当に楽しそうで、とめに入るわけにはいかなかった・・・
いけなかった。
でも・・・
彼は私に3回も告白してくれたのだ。
教室で待っていれば、きっと・・・
きっと戻ってきてくれるだろう。
最初は怒り狂っていたが・・・
それでもやはり彼を信じることにしたのだ。
そんなわずかな期待に身を任せ、教室にただ一人、ポツンと座り込んでいた。
そんなときにドアが開いたのだ。
一瞬私は彼・・・
「西野」だと思った。
西野がきてくれた。
やっぱり、私のほうを選んでくれた。
・・・が、期待は大きくハズれた。
・・・誰だ、こいつ?
人の教室に入ってきて・・・
しかもこの状況に。
「・・・貴様、どこのクラスの人間だ?」
「なぁ・・・西野を知ってるか?」
こいつ・・・西野の友達か?
「西野?・・・あぁ、私が今、真っ先に殺したい男NO,1の男のことだな。」
実際、まだ怒りというものは鎮まったわけではない。
3回も告白して、私をその気にさせておいて、1週間後にさようなら・・・
というのであれば、マジで殺しにいくかもしれない。
「あの男・・・私に告白しておいて、許可をだしたと思えば、卯月のほうへいっちまいやがった・・・」
許せない・・・
西野も・・・卯月という女性も。
「で?貴様、何のようだ?」
「・・・単に仲直りさせたいだけだよ・・・お前と西野をな。」
「!!」
まさかこいつ・・・
念のために確認してみる。
「ほぅ・・・お前が噂のピースメーカーか。」
だが彼は「なんのこっちゃ?」てな具合に首をかしげている。
「なんでも卯月に破壊されそうなカップルを助けてもらってるとか・・・まぁ、成功したのは1回のみのヤブらしいがな。」
「どうせヤブなピースメーカーだよ・・・」
やはり・・・
ピースメーカーか・・・
ということは、こいつの目的はただ1つだろう。
「なるほどな。」
「・・・で?西野と話すか?」
そう・・・
私と彼の仲直り。
時間はすでに午後4時をまわっていた。
やはり彼はこなかった。
・・・いつまであいつを信じているんだ、自分!
あいつは私を裏切ったのだ!
そう思うと抑えることのできないレベルの大きな怒りがこみ上げてくる。
誰があんな奴と仲直りなんてするか!!
「いや、いい。」
もうあいつと話すことなど何もないのだから。
「え?」
「てか、安心しろ。」
「?」
「私はもう西野とよろしくやるつもりはない。」
仮にあいつが謝りにきたら、考えてやってもいいが・・・
それは確実にない。
そう、これ以上彼女による被害を増やさないために何かしようじゃないか。
え~と・・・
何をすればいい?
先生にいう?
そんなの注意だけで終わる。何の意味もない。
生徒会?
生徒会は役立たずといっても過言ではない。
となれば・・・
自らが動くしかないわけだが・・・
・・・そうだ、「同盟」を作ろう。
その「同盟」で彼女の動きを封じ込むのだ。
私は・・・
これからは、彼を私からとった卯月咲良の反同盟を結成する!
しかし・・・
まず協力者がいなければできないことだ。
・・・目の前にはピースメーカーが1人・・・
いや、ピースメーカーだからこそ、役に立つかもしれん。
「・・・そう、じゃぁ、役立たずなヤブピースメーカーの名前がさらに拡大するな。」
「・・・お前・・・名前は?」
「え?時津風だが・・・」
時津風・・・
きいたことのない名字だな。
「時津風・・・かわった名前だな。」
「よく言われるよ・・・」
だが・・・
確認しなければならないことがある。
それはこいつの卯月に対する意見だ。
「・・・なるほど。じゃぁ・・・卯月への意見をきかせてくれ。」
「まぁ、人の心をもてあそぶなんて許せないよな。」
合格だ。
「・・・OK、気に入った。」
「・・・」
「よし・・・これから同盟を作ることにする!」
だが彼はあくまで他人事のような目で見ていた。
「あ、そう。」
「まぁ、当然私がリーダーを勤めるとして・・・お前が副を勤めろ!!」
「はいぃぃぃぃ!?」
お前も彼女が許せないのだろう?
・・・私も同じなのだ。
ともに同盟を組み、卯月を封じ込もうじゃないか。
「あの男・・・許せん。人をその気にさせておいて・・・だが、卯月はもっと許せん!!人の男をとりやがって・・・」
彼は少し考えこんでいたのだろうか・・・
ボォ~ッとしていた。
「おい、ヤブピースメーカー!」
「なんだよ?」
「そういうわけだ。手伝え!」
今までピースメーカーとして動いてきたこいつなら・・・
私の気持ちも理解するだろう。
「よし、これから生徒会公認の同盟を作るぞ!!」
だが・・・
彼は私の気持ちを理解などしていなかった。
「悪い、用事ができた!!じゃ・じゃぁな!」
逃げた・・・
逃げられた・・・
しかし後々考えてみれば私も大馬鹿野郎だ・・・
ホントは彼のことを想っているくせに強がって、仲直りしないなどといって・・・
やっぱり・・・
私は彼に惚れていたのだろう・・・
そう改めて確証すると・・・
どうしても、涙を抑えることができなかった。
悔しい・・・悲しい・・・
彼が告白を私に開始しはじめたのは、去年の9月のこと。
それから今までの時間が・・・
卯月咲良とであったたった1日に破れたというのか!?
・・・おかしいだろうが・・・
すると、急にドアがあいた。
この状況はさすがにまずすぎる!
不意に後ろを向く。
「ど・どうした?」
「・・・泣いてたのか?」
その声はさっきのピースメーカーか・・・
というか・・・
なんとデリカシーのない男だろう・・・
「な・泣くわけないだろう!!私は3組一厳しいと言われている女だぞ!!」
「・・・ふっ・・・」
鼻で笑われた!?
すべてを見透かされたようで、非常に不愉快。
「笑うな!てか、泣いていて何が悪い!」
無意識に「泣いていた」ということを自ら口でいっている。
「普通好きだったやつが、他の女にとられたら、悔しいし悲しいだろうが!」
「そりゃぁそうだな。」
「その悔しさや悲しさを涙であらわしてなにが悪い!!」
今までこらえていた言葉が・・・
感情が・・・
すべてが表へとでる。
だが・・・
彼はそこにはふれなかった。
・・・察していたのだろうか?
「・・・てか、同盟の話はどうなったんだよ?」
「え?・・・手伝ってくれるのか?」
「人が困ってるのを見かけると、ほっとけない性質でね。」
やはりこの男を副リーダーにするべきだ。
そう見込んだ私の目は間違っていなかった。
「それに・・・卯月のことは気に食わないし。」
「よし、じゃぁ、同盟を作るぞ!!」
「・・・お前・・・名前は?」
「・・・川中だ。」
これが「時津風 斬」との最初の出会い。
そして「第5同盟」結成の瞬間。
それから私と時津風は今までずっと「反卯月被害防止同盟」としての「第5同盟」を二人三脚で動かしてきた。
最初の結成から、今までずっと・・・
だからこそ、許せなかった・・・
彼の言葉が。
今日の昼休み、私は「絆」同盟の連中に罠にはめられ・・・
彼らと話し合っていた。
そこに時津風が途中からやってきて、こういったのだ。
「いつまでも中学の親友のことのトラウマを引きずってるなんて、格好悪いぜ?」
「貴様も同じだろう?」
「そう・・・だな。けど・・・俺はもう十分だと思うぜ。」
「なに?」
その「十分」という言葉が、私には理解不能だった。
彼が表向きには私は「親友のトラウマ」ということがあったということになっている。
本当のことを知っている彼の心遣いには感謝するしかない。
だから、多少のことでは私は彼に何もいわなかった。
だが・・・
それでも、「十分」という言葉は気に食わなかった。
「前に十六夜に確認した。迷惑はしてないといった。卯月は本気。・・・なら俺らの仕事はねぇじゃねぇかよ。」
「くっ・・・時津風・・・この期におよんで、同盟を裏切るつもりか?」
時津風が・・・「敵(絆同盟)」についた!?
今まで、同盟を一緒に動かしてきたじゃないか!
彼は私が一番信頼できる、いわば「相棒」のような存在だった。
そんなパートナーが・・・
私を・・・「第5同盟」を・・・
裏切ったというのか!?
「裏切るんじゃねぇ・・・やめ時だっつってるんだよ。」
「それが・・・お前の意見か?」
「そうだ。実際・・・皆、もうやめ時だって気づいてる。お前もそうだろうが・・・いつまでもやってるとくだらねぇぜ。」
そんなことありえるわけがない。
「第5同盟」すら私を裏切ろうとしているというのか?
彼が私のパートナーであるのであれば、「第5同盟」は精鋭部隊も同然だ。
そんな精鋭部隊が・・・
生みの親を裏切るというのか!?
・・・ありえない話だ。
「・・・くっ・・・時津風、こい!!」
「時津風 斬」・・・
貴様、絆同盟に何を吹き込まれた?
・・・これからお前の目を覚まさせてやる。
そして、校舎内の物置地域へとやってきた。
ここは本来人はいない場所である。
「お前・・・どういうつもりだ?」
「どうもこうも・・・さっきいった通りだぜ?」
考えをかえないつもりか・・・
「貴様・・・裏切り者が。」
「裏切り?なら第5同盟のメンツに確認してみろ。どいつもこいつも、もうこんなこと、無意味だと自覚してる。」
「無意味!?無意味だと・・・!?」
無意味・・・
その言葉が私のなかの怒りを爆発させた。
私が・・・
私と彼が・・・
「第5同盟」が・・・
やっていることが無意味だというのか!?
「貴様!それでも「第5同盟」の副リーダーを務める者か!?」
「副リーダーを務める者としての意見だ。」
副リーダーとしての意見・・・だと!?
貴様の意見は、「第5同盟」の消滅を意味する言葉じゃないか!
そんなの「第5同盟」のためにはならない。
「わかってるのか?貴様は今、「第5同盟」そのものを否定したんだぞ?」
「ガタガタうるせぇんだよ!!」
すると彼は怒鳴った。
今まで彼と一緒に「第5同盟」を動かしてきて、彼が怒鳴ったことは2回。
1回は、「第5同盟」が私に逆らったとき・・・
反感をいったとき・・・
彼は私を守ってくれた。
そして2回目は「第5同盟」がやりすぎたとき・・・
具体的にいえば、中学のとき、第5同盟は、卯月の相手の男子生徒を「目を覚まさせる」という名目の下、殴ったのだ。
それどころじゃない。
「卯月咲良」に対しても、真冬に水風船をあてたとかなんとか・・・
そのときに彼は副リーダーとして、「卑怯なやり方をするな!」と怒鳴った。
そう・・・「第5同盟」は卯月咲良の次の犠牲を防ぐことであり、攻撃することではない。
今回はどっちだ?
まさか・・・私のやり方が「卑怯」だというのか?
邪道だというのか?
「てめぇ、まだ気づいてないのか!?第5同盟はさっきも言ったとおり、もう気づいてる!」
それはありえない話しなのだ。
子鳥が親鳥を裏切れば・・・
子鳥たちは、朽ちるのみ。
そんなことは誰もが理解している。
だからこそ、「第5同盟」が私を裏切るはずがない。
「それにも気づかず「次なる被害を防止する」だぁ!?フッ、鼻で笑っちまうぜ!!」
「き・貴様!!」
「あぁ?どうした?鈍感リーダー!」
鈍感リーダーだ・・・と!?
絆同盟になにを吹き込まれたかは知らんが、貴様とて私に言っていいことと悪いことがある。
「言わせておけば!!貴様、何様のつもりだ!?」
「副リーダー様だぜ。第5同盟のな!」
それでもなお、「第5同盟」の副リーダーと名乗るか・・・
しかし・・・
お前はあくまで「副」だ。
「なら私はリーダーだ!!」
「あぁ、そうかい。けど、俺を含めて「第5同盟」はもう、お前の命令になんて従わない。」
「なに!?」
時津風のみならず・・・
「第5同盟」そのものが命令に従わないだと?
その道を「第5同盟」が選んだというのか?
「無意味な命令なんてもんに従ったって、何の利益もない。」
「無意味なわけないだろうが!!」
「無意味だろ!!そう思ってないのはお前しかいないぜ?」
「そんなわけないだろうが!」
無意味なわけがない!
無意味なわけが・・・ないに決まっている・・・じゃないか。
「お前がそう思わないのは、単に「復讐」したいだけだろうが!!いつまでも自分の過去を卯月のせいにしてるんじゃねぇ!」
「!!」
彼の言葉が胸にグサリと刺さった。
無意識にそれが「図星」だと感じていたのかもしれない。
「実際、お前の過去は卯月のせいもあるが、あのあと仲直りしようと思えばできたのにしなかったお前にもある。」
「・・・わかってる。」
わかってる・・・
わかってるさ。
そんなこと、「第5同盟」を結成し、動かしたときから気づいてる。
・・・このことだけは彼に言われたくなかったのに。
彼は今まで私の気持ちを察して、このことに関して何も言わなかった。
それどころか隠してくれていたというのに・・・
今回は何がなんでも敵対する・・・
ということか。
すると、ちょうど5時間目開始の鐘がなった。
「授業に遅れちまうぜ。とっとと戻るぞ。」
まだ話は終わってない。
まだ決着はついてない。
結論もでていない!!
「・・・この話しはまたあとでするぞ。」
「・・・へいへい。」
そういって教室に戻り、5時間目の授業をうけた。
実際、私には5時間目の授業のことなんて何一つ頭のなかに入っていなかった。
「私のしていること・・・第5同盟のしていること・・・それらは本当に「無意味」なのか?」
そのことをただひたすらに考えていたのだ。
結論はやはり「無意味」なわけがない。
時津風がこの期におよんで裏切る気なのだ。
・・・という結論だった。
「敵(卯月側の人間)」ならば・・・
全力で潰す・・・のみ!!
しかし・・・
やはり彼とて「第5同盟」の人間。
しかも、副リーダー。
失うというのは、非常に大きな犠牲である。
私は決断を下す。
この5時間目終了後の休み時間で説得できなければ・・・
今後、時津風も「卯月側の人間」として認識する。
5時間目が終了し、彼に目で合図する。
彼は「はぁ・・・」とひとつ、ため息をつき、席を立ちあがった。
決着をつける場所はやはり・・・
物置地域。
「・・・」
「・・・」
そこまでつくのに、一言もしゃべらなかった。
仮に時津風を失ったら「第5同盟」にとって、どれほどの痛手になるか・・・
それを計算していた。
・・・答えはでなかった。
「ったく・・・いつまでトラウマを引きずってるつもりだよ?」
「そうじゃない!だが・・・まだ彼女が安心できるといえるレベルでもないだろうが!」
物置地域につくと、彼から口を開いた。
喧嘩上等・・・ということか。
私はその喧嘩は早々に買った。
決着をつけたがっているのは、あっちもこっちも同じということだろう。
「昼間もいったが、第5同盟の連中だってもう・・・やめ時だって気づいてる。」
「なぜそうも簡単に彼女を信用できる!?」
お前だって、卯月に友のカップルをいくつも潰されたといっていたじゃないか。
なのに・・・
あんなに「気に食わない」といっていたのに・・・
なぜそこまで信用できるのだ!?
「見てりゃぁわかるだろう・・・」
「なに!?」
あいつのどこがかわったというのだ?
前とかわってなんていない。
どこもかわってなんてない!
「男視点だとな、女性がかわったことなんてすぐわかるっつってんだ。」
何気にイラッとさせられる言葉。
「あいつのどこがかわったというのだ!?」
「まず雰囲気がかわっただろう・・・なんというか、柔らかになった。」
雰囲気?
雰囲気などで「第5同盟」を潰されてなるものか!
「第5同盟」は守り抜く。
そして、卯月の行動を阻止しなければならないのだ。
「なに?笑わせるなよ・・・そんな実態のないものを信じろというのか?それは幽霊を信じろ、といってるようなもんだぞ?」
「それにいつも卯月から十六夜に行ってるじゃないか。前は男から卯月に・・・だったのに。」
「!!」
たしかにいわれてみればその通りだった。
あいつは昔は自ら動こうとなんてしなかった・・・
なら・・・
彼の言う通り、卯月は変わってきたというのか?
・・・もう、第5同盟は必要ないというのか・・・
「普段動かない卯月が動いている・・・ということか。」
「そうだ。それに、十六夜には2回も確認したが、「このままでいい」って言っていた。」
「・・・」
「つまり・・・俺たちのでる幕はもうないってわけだ。」
卯月が・・・十六夜を本気で想っている。
十六夜はそのことに迷惑をしていない・・・
ならば・・・
たしかに「第5同盟」の出る幕はない。
だが・・・
なら、西野との関係を潰された私の怒りはどこで鎮めればいい?
・・・やはり、私は時津風のいう通り、「復讐心」にとらわれているのかもしれない。
「てめぇも女なら、人を好きになる気持ちぐらいわかるだろう?それを邪魔されるってのは相当つらいことなんだぜ?」
!!!
私は・・・あのときの悲しみをもう一度繰り返そうとしているというのか・・・
あのときとは逆の立場だが・・・
あの苦しみを、今度は私自身が起こそうとしているというのか!?
私はあの時、どれほど卯月を憎んだ?
どれほど悲しんだ?
もし・・・私が今の卯月ならば・・・
これ以上のことをすれば・・・
あのときのように、相当卯月は私を恨むこととなる。
自らが被った痛手を、今度は自ら手で起こそうとしているなんて・・・
私はもしかして・・・
とてつもなく、愚かで醜い者なんじゃないのか?
くっ・・・
まさか最後の最後でピースメーカーに救われることになるとはな・・・
こいつもなかなかわかったことをいうようになったもんだ・・・
「ずいぶんわかったようにいうじゃないか。」
「へっ、俺にかかれば、全部お見通しだっつ~の。」
「・・・だが・・・」
「お前が何度抗議しようと、俺はもう意見をかえる予定はない。・・・もう一度だけいう。やめ時だ。」
・・・どうする?
たしかに私のやり方は間違っている。
けど・・・それだけで終わらせていいのか?
卯月にも対等な痛手を与えて初めてフェアになるんじゃないのか?
すると足音がきこえた。
聞こえた方向をみてみると・・・
「卯月咲良」がいた。
「!!」
「・・・卯月じゃねぇか・・・」
今の話を・・・
全部きいていたのか?
「あの・・・」
貴様が何を言おうと、私は前のことを許す気にはなれない。
やはり・・・こいつには私と対等の痛手を与えるべきだな。
「ごめんなさい!!」
「!」
だが・・・
彼女が発した言葉・・・
それは「謝罪」だった。
・・・嘘・・・だろ?
あの卯月咲良が・・・
今まであんなに対立してきた女が・・・
今になって頭を下げただと!?
・・・こいつ、本当に意味をわかって謝っているのか?
釜をかけて、本音をあぶりだすとしようじゃないか。
「なぜ私に謝る?」
「私が謝っておきたいんです!」
・・・卯月が・・・頭をさげた。
だが・・・
それであのときの痛みが・・・癒されるとでも思っているのだろうか?
否!!
許してはならない!!
あのときの痛みを・・・
忘れてはならない!!
「それで許されるとでも?」
「私の完全な自己満足です。けど・・・謝らずにはいられないんです。」
彼女は何度も何度も頭をさげる。
すると・・・
「悪いな、卯月。川中は今、川中で悩んでるんだ。ここはそっとしといてやってくれ。」
時津風・・・それは少し一人で考えろ・・・ということか?
私に考えを改めろ・・・
そういう意味なのか?
「・・・わかりました・・・でも、もう少しだけいいですか?」
「じゃぁ、俺がきいてやる。・・・少しここで待ってろよ、川中。」
そういうと2人は奥まで進んでいった。
・・・さて、1人になった。
ゆっくり考えることにしよう。
・・・卯月が頭をさげた。
私のやり方は間違っている。
・・・そして、時津風のいうことが本当であれば、「第5同盟」は皆、もうやめたがっている。
・・・私はどうしたい?
彼女に「復讐」したいのか?
またあの苦しみを繰り返すというのか・・・
いや、プラス思考に考えろ・・・
たしかに卯月のせいで失ったものは大きい。
だが・・・それと同時に「第5同盟」という大きな仲間を手に入れた。
そして・・・時津風というパートナーができた。
・・・パートナー?
それだけの存在?
ならばなぜ私はこうも彼にこだわる?
パートナーだから?
なら新たなパートナーを作ればいい。
副リーダーだから?
新たな副リーダーを任命すればいい。
そもそも・・・
彼を失った「第5同盟」は「第5同盟」とよべるのか?
・・・被害が大きすぎる?
・・・じゃぁ、計算できなかったんじゃないじゃないか。
私は・・・第5同盟から彼を失うことを恐れていた。
だから・・・彼を失ったときの被害を計算できなかったのではない。
しなかった。
考えられなかった。
リーダーである私がいて、副リーダーである時津風がいて、他の4人がいて・・・
全員がいて「第5同盟」じゃないか。
何が「敵」だ!?
私は馬鹿か・・・
1人でも省いたら・・・もう「第5同盟」じゃないじゃないか。
すると彼がやってきた。
「おい、川中。」
「・・・」
やはりここは念のため確認しておこう。
「なぁ・・・1つ質問していいか。」
「いいんじゃねぇか?」
相変わらず、テキトーなやつだ。
考えていることがまったくよめない。
「・・・もし、ここでまだ続けるといったら・・・お前はどうするつもりだ?」
彼は少し考えた。
それから・・・
口をひらいた。
「そしたらついていけねぇな・・・」
つまり?
「第5同盟を俺は抜けさせてもらうことにするぜ。」
やはり・・・彼を失うということか。
「副リーダーが抜ける・・・だと?」
「副リーダーなら他をあたってくれ。」
彼の意思はかたかった。
抜けるな、といっても抜けるだろう。
「・・・少し・・・考えさせてくれ。」
「わぁ~ってる。俺は先に教室に戻ってるぜ。」
そういって時津風は教室に戻っていった。
・・・どうする?
これ以上のことをやれば、いろんなものを失うだけだ。
時津風、「第5同盟」の信頼・・・
そして、あの苦しみをもう一度繰り返すだけ。
・・・仮に卯月に対等の痛みを与えたとして、私は満足なのだろうか・・・
それに彼女はもう私に「謝罪」をした。
ここでやめれば、時津風も「第5同盟」の信頼も失わずに済む。
それに「第5同盟」は解散しても、消えるのは「第5同盟」という名前のみ。
メンツそのものが消えるわけでも、我々の絆が消えるわけでもない。
・・・やれやれ・・・
仕方がない・・・か。
それから放課後まで、私は自ら決断を時津風にいうことはなかった。
それは最後になるであろう「第5同盟」の会議で言おうと思う。
・・・だが、その前にしておかなければならないことがある。
放課後、川口が生徒会に向かった。
「おい、川口。」
「姐さん・・・どうしたんです?」
「・・・1つききたいことがある。」
「・・・はい?」
川口は首をかしげる。
「・・・「引き裂き」は誰の意思で続いている?」
「・・・」
川口は下を向いた。
「・・・お前の意思はわかっている。理解しているつもりだ。だから、生徒会副会長である責務を真っ当すればそれでいいと思う。」
「・・・はい。」
川口はそれから少し考えて口をひらいた。
「・・・「引き裂き」は生徒会そのものが動いています。私が報告したわけではありません。」
・・・だろうな。
川口がそんな嫌な奴なら、そんなやつに私は「姐さん」となんて呼ばせない。
「・・・なぜ生徒会は「引き裂き」を解除しない?もう卯月と十六夜は問題ないはずだ。」
「ここだけの話ですが・・・生徒会には「プライド」というものがあります。」
プライド?
それは普通の意味でとらえていいのだろうか?
「生徒会は権力が強く、学校ができて以来、一度も敗北はありません。」
「・・・」
「そんな生徒会が自ら発動させた権限を、解除するなんて恥ずかしい真似はできないんですよ。」
・・・な!?
そ・それだけの理由・・・
だというのか!?
「恥ずかしい・・・だと?」
「えぇ。一度自らが発動させた権限を解除するのは、生徒会の甘さを見せる行為で、生徒会そのものの顔に泥を塗るようなものなんです。」
ずいぶんと誇りの高い組織なこった・・・
面倒だな・・・
「そんなことをすれば、この学校全学年の生徒からなめられます。」
「そんなわけないだろ?生徒会の権限は大きい。」
「それでも・・・恥となる行為はしない。・・・それが生徒会の考えです。」
つまり・・・
逆に捕らえれば、生徒会は自ら発動した権限も解除できない臆病者どもってことだな・・・
「・・・このことは黙っていてください。」
「わかっている。」
もしこれを「絆」同盟にいえば、生徒会の弱点を堂々公表するだろう。
そうなれば、生徒会会長だけじゃない。
副会長である川口にも迷惑がかかっちまう。
「・・・姐さん。」
「なんだ?」
「姐さんは・・・「絆」同盟につくつもりですか?」
・・・どう答えればいい?
時津風がつくとならば・・・
当然私もいきたいところだ。
「・・・もしかしたら・・・な。」
「そうですか・・・なら、たとえ敵になったとしても、あのことだけは忘れないでください。」
「わかっている。」
わかってるさ。
お前が誰よりもこの学校のことを思っていることぐらい・・・
忘れるわけがない。
「・・・これを。」
私は川口に封筒を差し出した。
「これは?」
「いわば・・・「絆」同盟の生徒会に対する「宣戦布告書」だ。」
「・・・これを会長に渡せ・・・と?」
「そうじゃない。これを生徒会から・・・お前から学校に渡して欲しい。」
「・・・」
彼は迷っていた。
当然だ。
川口は「生徒会側の人間」。
協力しろなんて、所詮は無理な話だ。
「これが私が生徒会としてのお前に頼む最後の頼みだと思う。」
「・・・わかりました。中身は?」
「確認するな。」
「はい。」
まぁ・・・確認されても、学校に渡してもらえればそれでいいのだが。
「・・・失礼します、姐さん。」
「・・・頼んだぞ。」
川口を利用するなんてことはあまりしたくないが・・・
この際、仕方のないことだ。
「さて・・・第5同盟最後の会議へといきますか・・・」
なんて1人ごとをいって、第5同盟の会議室へと向かう。
ドアをあけると、いつもどおり、いつものメンツが顔をそろえていた。
このメンツで集まるのもこれで最後と思うと少し寂しい気がする。
「今日は私から重大な発表がある!」
「?」
皆は目をまるくしている。
時津風のみが若干呆れ顔をしていた。
どうせ私がおれなかったとでも思っているのだろう・・・
見事にお前の勝ちだ、時津風。
「今日をもって・・・この第5同盟は解散とする!!」
「か・解散?」
「あぁ。もう卯月に問題はないと判断した。異議のあるものはいるか?」
「・・・」
やはり異議のある者はいなかった。
時津風のいっていた、「同盟の皆は無意味だと気づいている」というのは本当だったか・・・
「よし、今日で第5同盟は解散だ!!諸君、今までごくろうだった。リーダーとして、感謝する!では解散!!」
なんてサクッといって終わらせる。
本当はもう少し何か言いたいが・・・
言う内容も考えていない。
少ししてから同盟のメンツは皆、帰って行った。
残りは私と時津風のみとなった。
「・・・これでよかったんだな?」
お前が言い出しておいて、なにをいう・・・
「あぁ。」
「・・・感謝する。」
「え?」
「おかげでやっと気づくことができた。」
彼は少し驚くと、いつもの呆れ顔に戻った。
「ホントだぜ。ったく・・・人がどれだけ苦労したと思ってやがる。」
「だから感謝するといっている。」
「・・・今日、サイゼリアのドリンクバーをおごりやがれ。」
うっ・・・
人の弱みに付け込みやがって・・・
相変わらずだな・・・この男は。
しかし、こいつのおかげで自分のやり方が間違ってると気づくことができた。
仕方ないが・・・
承諾してやろう。
「・・・わかった。」
「んだよ・・・聞き分けがいいじゃねぇか、お姫様。」
「お・お姫様!?」
・・・こいつはからかっているのだろうか?
彼は呆れ顔でため息を1回した。
・・・何がしたいんだか・・・
「・・・さて・・・と。」
「・・・どこにいくつもりだ?」
まぁ・・・決まってるか。
「決まってんだろ。」
「絆同盟・・・か。」
「あぁ。面白そうな同盟だぜ・・・」
「面白そう?」
「あぁ。生徒会とやりあうんだとよ。それほどのスリリングで面白そうなこと、なかなかなさそうだぜ。」
ホントに相変わらず・・・だ。
こいつは面白そうなことは何でも参戦したがるからな・・・
まぁ、そんなこいつのこういうところに・・・
惚れたのかもしれんな。
「・・・お前らしいな。」
「お前はどうするんだ?」
「・・・私は・・・」
やはり、時津風がいくというならいきたい・・・が。
信用されるだろうか・・・
「・・・時津風がいくというなら・・・いきたい・・・けど・・・信用されないだろうし・・・」
「なぁに、あいつらなら信用してくれるだろうぜ。」
ずいぶんと評価してるじゃないか。
まぁ、こいつはよく十六夜たちとからんでいたからな・・・
「・・・」
「まぁ、そこんところは任せとけって。」
彼は私にウインクをする。
・・・なら任せようじゃないか。
お前に「そこんところ」を任せる。
しっかり頼む。
「・・・わかった。」
それから廊下にでて、「絆」同盟のところへと向かう。
「・・・川口は生徒会そのものが動いているといっていた。」
「いつ、きいたんだ?」
彼は同様しなかった。
やはり、ある程度予測していたのだろうか。
それとも彼にとっては「生徒会とやりあう」確証を得たのだから、好都合なのだろうか・・・
「第5同盟の会議室にいく前だ。」
それからまた無言の状況となる。
「・・・卯月のやつ、私に謝ったわけじゃないだろう?」
よくよく考えてみればすぐにわかることだ。
彼女は私に対して謝ったのではない。
自らの過去のミスを償うために、せめてその過去を知っている私たち「第5同盟」に謝ったのだ。
「・・・どうだろうな?」
相変わらず、嘘をつくのがうまいというか・・・
何を考えているのかわからないやつだ。
・・・卯月咲良。
お前は「西野」という男を私から奪った。
それしか見えていなかった。
が、そのかわりに・・・
「時津風」という男を得た。
・・・そう思えば・・・
フェアじゃないか。
「まぁ・・・別にいいがな。」
そんなこんなな話しをしていると、教室の前へとついた。
絆同盟の本拠地といっても過言ではない。
放課後の1年B組の教室だ。
「まぁ、突っ立っててもなんだし、入ってみるか。」
なんていって彼は入る。
・・・任せたぞ。
「よぅ、諸君。元気にやってるか?」
「時津風!?」
「お前らいいこと教えてやる。」
「?」
「今日から、俺と川中もお前らの同盟に入ってやることにしたから。」
「はぁ!?」
彼はいつもどおりに振舞っている。
・・・私もいくか。
「そういうことだ。これから私たちも時津風の言うとおり、同盟に参加させてもらう。」
皆が目をまるくする。
まぁ、当然だ。
今まで対立してきた相手だからな。
「・・・なんだ・・・こりゃぁ、罠か?」
「まぁ、嫌ならいいんだぜ?俺らは断られれば入らない、それだけだしよ。」
相変わらず釜をかけるのがうまい。
・・・断られても、入る気満々なくせに。
「ちなみに川口は関係ねぇぜ。」
「え?」
「ただ・・・生徒会そのものが動いてる。」
・・・やっぱこいつ・・・馬鹿か?
それだと、生徒会になすりつけてるようにしかきこえんぞ・・・
「どうする?俺らはお前らに任せるぜ。」
「参加させてもらえるのであれば、可能な限り協力を約束する。」
「・・・」
「・・・いいんじゃない?」
意外だった・・・
賛成派がでるなんて思ってもいなかった。
ダメでもともとだった。
しかも、一番最初に名乗ったのは十六夜だった。
これまでこんなに敵対してきた相手を、こんなにあっさり信じ込むというのか?
「な!?十六夜、正気か!?」
「だって、生徒会を相手にするなら、いつかはバレることだし・・・こいつらが情報収集のための川口が送り込んだスパイだったとしても・・・早めにバレる、それだけだろ?」
なんてプラス思考だ。
・・・そのプラス思考をわけてもらいたいが・・・
なかなか面白い考えをする奴だな。
「簡単にいってくれるぜ・・・」
「私も・・・彼らを信じていいと思う。」
そして・・・
私にとって何より信じられないことがおきた。
「卯月咲良」が賛成したのだ。
私は絶対反対派だと思った。
これまでこんなに敵視して、こんなに対立して・・・
一番このなかで対立してきた相手だというのに・・・
「はぁ・・・十六夜と卯月がいうならいいんじゃねぇか?もともとこいつら2人が中心なんだし・・・」
「・・・そうだな。」
この2人の賛成のおかげで私たちは無事、絆同盟の仲間入りをすることができた。
そして、話し合いをして、解散をした。
「少しやることがある。」
やるべきことは2つ。
まず1つ目をやるとしよう。
「・・・あの・・・話って?」
「・・・今まですまなかった。お前はお前なりに考えていたのに・・・」
彼女が謝ったというなら・・・
私も謝らなければフェアじゃない。
何しろ、前のことは「西野」のかわりに「時津風」を得た。
その地点でフェアなのだから。
「そんな・・・謝らないといけないのは私のほう・・・」
「いいからいいから。」
時津風は卯月の言葉をさえぎる。
・・・助かる、時津風。
時津風はウインクをした。
(なに?そこんところは任せとけってこと?・・・らしいな。)
そういう意味で・・・
「そこんところは任せとけ」って言ったのだろうか?
・・・たしかにこいつには「お見通し」ってわけだな・・・
「実際、もう卯月を責めてるやつなんていないさ。」
「でも・・・」
「それに、償うなら、十六夜とおまえ自身が幸せになれ。」
・・・時津風・・・
なんか・・・ものすご~く恥ずかしいことを言わなかったか?
「中学の頃、お前を好きになって付き合った男は皆、お前が幸せになってくれることを願うはずだ。」
「・・・」
「それが罪滅ぼしと考えていいと思うぜ。」
「でも・・・」
「それが・・・モトチュー最後の同盟・・・第5同盟総意の意見だ。」
勝手に総意なんていいやがって・・・
まぁ・・・同盟は解散した。
それはもう卯月は心配ないということ。
・・・おそらく、もう同盟の皆が卯月を1人の女性としてみている。
ならば・・・
みんな思うはずだ。
「幸せになれ」・・・と。
・・・現に私も少し思っているからな。
さて・・・2つ目をやりに行こう。
「・・・桶狭間、話しがある。」
「?」
そういって桶狭間を呼び出した。
そして私は月曜日の作戦を提案した。
そう・・・川口に託した封筒の件だ。
「それって・・・マジな話しか?」
「あぁ。」
「お前・・・やるじゃねぇか。」
時津風も桶狭間も目をまるくしている。
・・・まぁ、感謝するなら川口にしてやってほしいものだ。
「だけど・・・俺1人でやるのか?」
「なぁに、ここは俺も手伝ってやる。・・・主役はお前に任せるぜ、桶狭間。」
「・・・いいのか?」
「なぁに、今までお前らに迷惑をかけたぶんと・・・俺自身がやりてぇんだよ。」
どうせ、面白そうだから・・・だろう。
というか、「迷惑をかけたぶん」というのはあくまでついでだろう・・・
「それと・・・後ろで盗み聞きしてる関ヶ原と将軍も手伝ってくれるよな?」
「え?」
「ハハッ・・・バレてたのか・・・」
「さすがだっぺね・・・」
すると2人がでてきた。
・・・いつ気づいたんだ?
私はまったく気づかなかったのだが・・・
「チッ、桶狭間・・・お前に主役を譲っちまうのはもったいけど・・・俺もやるときにゃやってやるぜ。」
関ヶ原が親指をたてる。
「まぁ・・・やってやるか。」
将軍も苦笑しながら親指をたてた。
「お前らいいのか?・・・退学覚悟の行動だぜ?」
「へっ、絆同盟を組んだ地点で、退学なんて覚悟済みだぜ。」
「いいこというじゃねぇか・・・さすがは将軍だぜ。」
「うちの将軍は最高の将軍だっぺ。」
これが・・・絆同盟・・・
なんて団結力。
・・・さすが「絆」とつけただけあるな。
私は彼らの団結力に魅了されていた。
「五月雨と中島ちゃんには十六夜と卯月をとめてもらう役をしてもらうとしよう。」
「あぁ・・・あいつらはどうせ、まだ「俺たちを巻き込みたくない」とか思ってるだろうからな。」
「・・・川中は川口のことを頼むぜ?」
桶狭間は私に向かっていった。
「え・えぇ。」
「OK・・・じゃぁ、絆同盟総力戦といきますかねぇ・・・」
桶狭間はテンション高めでいう。
「最初っから総力戦じゃぁ、途中でへばるぜ?」
「ホントだっぺ・・・最初だからこそ、軽くだっぺ。」
「うるせぇ・・・さぁ・・・月曜が楽しみになってきやがった!!」
その後、皆は各自家に帰って行った。
帰り道・・・
「・・・まさかこうも簡単に信用してくれるとはな・・・」
「なぁに・・・B組は誰一人省かない。・・・ただ詰め寄るのが苦手なだけなんだ。」
・・・時々こいつはいいことをいう。
「・・・珍しくいいこというじゃないか。」
「・・・十六夜の言葉だよ。」
「・・・なんだ。」
そこは普通ネタばらしをするのだろうか?
いや、普通は言わないよな・・・
「まぁ、あいつらはいい奴らだし・・・大丈夫だとは思っていたけどな。」
・・・お前に任せておいて正解だったよ。
「・・・今日のサイゼリアの件・・・おごってやるよ。」
「あぁ?あれは冗談だぜ?」
「・・・いや、おごりたいんだ。」
珍しく私がおごる気になってるんだ。
ここはおごってもらっておくのが得策だと思うぞ?
「・・・わかったよ。・・・にしても、今日のお姫様はご機嫌じゃねぇか・・・どうしたんだ?」
「・・・まずそのお姫様というのをやめろ。」
「いいじゃねぇか。お姫様。」
にくたらしい・・・
「・・・んじゃぁ、月曜のあとの作戦でもサイゼリアでゆっくり考えますかねぇ・・・」
「そうするか。」
こうして私と時津風は「第5同盟」を解散させ、新たに「絆同盟」に入った。
絆同盟・・・
私たちをいれて、たった9人の同盟だが・・・
すでに「第5同盟」より上だ。
それは人数でも・・・
団結力でも・・・
この同盟なら・・・
ガチでやれば生徒会に勝てるかもしれん。
正直川口と敵対するのは気がのらんが・・・
それでも月曜日はいろんな意味で楽しみな日になりそうだ。
「相棒」 完
やっと川中と時津風参戦のところを終わらせることができました。
次からは結構サクサクと話が進むと思います。
~読んでくれた方々へ~
毎度毎度お付き合いいただきありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
お願いしてくれるとありがたいです。