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なんで僕が!?  作者: へたれ度100%
27/79

帰道

※卯月視点の物語です。

朝がきた。

今日も晴れ。

天気は快調である。



「よし・・・いくか。」



髪をしっかりと整えて・・・

いつものように出かける。


いや、「いつものように」というのは若干嘘が混ざっている。

いつもどおりならば「髪を整える」わけがない。


まぁ、私は美人だし、髪なんて整えなくても、男なんていちころ?

・・・の予定だったのが、昨日、やっと仲直りできた男性は、なかなか私に惚れてくれないものである。

私もかわっている。

まさか、あんな変な人を好きになってしまうなんて・・・


昨日、告白するも、見事に撃沈。

海の藻屑となった。


まったく・・・

どうでもいいときに、男は私に惚れるくせに・・・

私が惚れて欲しいと思ったときには、男性は惚れてくれない。

神様もずいぶんと私に対しては、厳しいじゃないか・・・




そんなことを思いながら、いつもの待ち合わせ場所に着いた。

・・・実際、昨日、完璧に仲直りしたか?

ときかれれば、詰まるところである。


まぁ・・・いつもどおり話かけよう。

いつもどおりの対応をしよう。


多分彼もどう対応すればいいか、困ってるはずだ。

昨日、救われたぶん・・・今日は私が奮闘しようじゃないか。


すると、その彼がやってきた。

名前は「十六夜 星矢」。

入学当時は、下の名前なんてどうでもいい、と思っていたが・・・

私もかわったものだ。



・・・げっ・・・

彼はいつもどおりの時間にきて・・・

いつもどおり、寝癖がたっている。

なぜなおさない?

私という美人と会うというのにもかかわらず・・・

この私はちゃんと整えてきたというのに・・・


時間は8時12分となった・・・

2分遅刻だ。



「よぅ。」


あくまでいつもどおりの反応でいく。


「貴様!今、何時だと思っている!?」

「・・・8時12分だが?」


相変わらず馬鹿正直な男・・・

面白さのかけらもない。


「2分遅刻とはどういうことだ!?正確・的確・具体的に30文字以内で私に説明しろ!!」


貴様・・・

私がたかが2分、などと考えると思ったか?

それは甘いぞ。

2分だろうが1分だろうが、1秒だろうが遅刻は遅刻だ。

この私を待たせたのだ・・・


しかも2分となれば・・・

120秒という計算になるじゃないか!

遅刻しすぎだ。



「ダルッ・・・てか、お前の言う正確・的確・具体的に説明するんなら30文字じゃたりねぇよ・・・」


それは、お前の国語力がないからだ。

30文字なんて多いほうじゃないのか?


「ほぅ・・・そうか?なら、25文字以上30文字以内と訂正しよう。」

「かえって難しくしてるんじゃねぇ!!」


彼もいつもどおりの反応をした。

うん、これならもう大丈夫かな・・・



「そういえば・・・私たち、生徒会にアルファーを指定されたぞ。」

「・・・はぁ!?」


やはり知らなかったか・・・

状況を報告しておいて、正解だったな・・・

この間抜け・・・情報網狭すぎなんじゃないのか?



「・・・マジか?」

「えぇ。」



てか・・・私は基本、嘘をいわないだろう・・・



「しかしよぉ・・・うちの高校も矛盾してるよな・・・」

「そうね・・・」



たしかに彼のいうことはあっている。

「生徒一人一人がしっかり意見を持てる学校」という目標があるのにもかかわらず、完璧なる上下関係。

しかし・・・

「矛盾」はしていない。

目標はあくまで「意見をもつ」ということであり・・・

それを言葉にだせ、とは誰もいっていないからである。


この馬鹿はそんなことにも気づいていない・・・

呆れるばかりである。



しかしまぁ・・・

生徒会の連中は仕事熱心なことだ。


「・・・後ろ。」

「え?」

「・・・約30m後ろ。私たちからみて、5人目。」


そう・・・5人目にずっとつけられている。

菊の紋章2つからして、生徒会監視部所属のやつだろう・・・



「・・・生徒会生じゃねぇか・・・」

「おそらくアルファーがだされたのだから、私たちの監視・・・ってところね。」



後ろに気を使いながら、学校まで登校した。

実際つけられるというのは嫌な気分である。



教室につく早々彼は皆に謝った。

そういえば、まだ彼は皆がもう許していることを知らないんだった・・・

こう見ると惨めである。


しかし・・・

やはり皆は優しい。

昨日の私と同じように対応してくれていた。


このクラスは誰一人省こうとしない。

そう彼はいっていた。

どう詰め寄るかが苦手なだけ・・・

今ならその意味が痛いほどにわかる。



「よっしゃ!生徒会に「引き裂き」とといてもらおうぜ!!」



そうだ・・・

彼とはもう仲直りしたわけだ。

生徒会に解除してもらいたい。


それから少しして、生徒会に報告にいっていた川口が戻ってきた。


「で?アルファーは解除されたよな?」


桶狭間が確認をする。

誰もが解除されたと思っていたと思う。

私も解除されて当たり前。

そう考えていた。

ところが・・・



「・・・解除されていない。」


川口はそう答えた。


なぜ!?

もう仲直りした。

問題はない。

なのになぜ「引き裂き」を継続させる理由がある!?



「・・・理由を言えよ、川口。」

「それは機密事項だ。言うことはできない。」



生徒会は権力が強く、何事も力押しでいける。

なにか、まずいことをきかれれば、毎回「機密事項」である。



「な・・・なんだと!?」


すると桶狭間の怒りは爆発し、川口の胸倉をつかみ、壁に押し付けた。


それから彼は怒鳴り散らした。

やはり自分を責めているのだろう・・・

そんな彼をみるたびに、心が痛む。


その後、結局彼は校長室に連行されてしまった。


・・・彼は間違っていることをいったのか?

いっていないと思う。

生徒代表が生徒に隠し事をしていいわけがない。

なのに・・・

なぜ彼が悪くなっている?

なぜ彼が校長室に連行されなければならない?


おかしいだろうが・・・

そう、初めて思った瞬間だった。




それから彼が帰ってきた。


「そういえば・・・お前、卯月ちゃんと正式に付き合うことにしたの?」


なんて、彼は何事もなかったかのように話すをふるが・・・

実際問題彼には悪いことをしてしまった。

彼一人を校長室にいかせてしまった・・・


「いや・・・」

「はぁ!?お前・・・」

「なんだよ・・・」


先ほど校長室に連行されたとは思えないほどだ・・・

気を使わせてしまって、本当に悪い気がする・・・


しかし、彼はどこででも私を否定する。

が、欲しいものは苦労して手に入れないとうれしさを感じないともいう。


「いいの・・・」

「え?」

「これから、私が彼を惚れさせるから。」


なら・・・

苦労してでも、私はそれを手に入れる。



「うらやましいぞ、このこの!!」

「バカップル登場が楽しみだっぺ。」

「まずなる予定はない!!」



ほぅ・・・

そこまで否定するか・・・

だが、それは「嘘」というものだろう・・・

私にはわかっているぞ。



「あら?昨日、私に「この僕を惚れさせてみろ!」とかどうとか言ってなかったかしら?」

「そ・そんなことはいってないぜ?」


急に焦り始める。

急に目をそらす。


・・・相変わらず嘘がつけない人だ。

それをみているとつい・・・

からかいたくなるものである。

遊びたくなるものである。



「あれぇ~?そうだったかしら?」


次の一手で、貴様は海底の底へと沈むのだ!

大丈夫だ、沈んだら、線香の一本くらいはくれてやる。



「嘘をつけないってつらいね?」

「うっ・・・」



勝利!

が・・・

貴様はこの私を否定したのだ。

その程度で許されると思うなよ・・・

仕返しは2・・・じゃ少ないから・・・

5倍ぐらいにして返してやる。

しかも、ちゃんと綺麗な包み紙で彩る!!

貴様にはもったいないぐらいの心遣いだ。



「おいおい、イチャついてる暇があったら、「引き裂き」の対処の方法でも考えようぜ・・・」

「そうね。じゃないと下手にイチャつけないわ。」


彼は「そうじゃないだろ・・・」という顔をしている。



「・・・もう知らん。」


さぁ・・・第二派攻撃の開始だ!


「グレちゃった?・・・もう、星矢ったら・・・」


貴様・・・

この私に「スルー」などという戦略がきくとでも思っているのか!?



「照れちゃって・・・」



押して押して押せば、貴様は絶対に陥落する。

どんな難攻不落の要塞でも、数での力押しには勝てないのだ!



「フフッ・・・可愛いよ、星矢ハァト。」

「何が「はぁと」だ!!自分でいうな!てか、なぜ僕が照れなきゃならない!!」



ほら・・・ね?

あなたもまだまだね。


「・・・あれ?スルーしないの?」

「しねぇよ・・・諦めた。」

「そう。残念ね。」

「お前のせいだろ!!」


人のせいにするのはよくない・・・

が、まぁ、第三派攻撃の用意もある。

ここは冷静に対処し、各個撃退といこうじゃないか。



「お~い、もういいか?」

「・・・いいよ。」


話がもとにもどる。


「しかしよぉ・・・こうも人が多いところで堂々話すのはまずくないか?」

「そう?」


実際、なぜ堂々話すのがまずいのか・・・

よくわからない。

どうせこれから生徒会に逆らうなら、あとから絶対バレるのである。

今バレても、少し早くなるだけじゃないか。



「だって、このクラスには副生徒会長もいるわけだし・・・しくじっただけで今回はすぐに校長室行きだぜ。」


まぁ・・・たしかにそのとおりだが。

面倒ごとは増やすものではない。


「まぁ、ミスったら、また桶狭間に全部かぶせればいいんだけどな。」

「な!?なんで俺なんだよ!?」


桶狭間が今度は攻められ始めた。

彼は・・・なんだかホッとしているようだ。

そんなので攻撃が止むとでも思ったか?

攻撃再開・第三派攻撃隊発進である。



「なに、安心してるのよ?」

「してねぇよ。」


お前の嘘は致命的だな・・・

何度みても、誰でもわかるぞ・・・


「嘘ね。」

「あぁ、嘘だよ、どうせ僕は嘘が苦手ですよ。」


今回は彼は認めた。

意外と諦めが早い男だ。

が!

それは隙をみせたも同然!

「攻撃してください」といっているようなものだ。

なら・・・私はそこを・・・槍でつくなんて甘いことはしない。

ロケットランチャーでコッパ微塵にする!!


「それもあるけど・・・」

「?」

「だって・・・私、ずっと星矢を見てるから・・・わかるよ、全部全部。」

「・・・」


「プッ・・・」

「ククク・・・」


後ろが笑いをこらえている。

よしよし、順調だ。

彼の精神攻撃はまさか快調すぎである。



「アハハハハ!!」


ついに我慢がきれたようだ。

これで私じゃなく、彼らが彼を攻めるだろう・・・無意識に。

誘導攻撃である。



「お前、ホント、幸せモンだな!!」

「いやぁ~、マジでうらやましいっぺ。」

「こいつは・・・なかなか面白いもんを見させてもらった。」

「我が親友ながらにくいぞ、このこの!!」


そのとおりだ!

この私にかまってもらえるなんて、お前は幸せ者なのだ!

・・・おそらく本人は自覚がないが。


「お・おい・・・話をもとにもどせ・・・」


彼も相当疲れたようだ。

そろそろ良いだろう。


「そ・そうだな・・・ククク・・・」

「いつまでも笑ってるんじゃねぇ、変態野郎が・・・」

「って、誰が変態だよ!?」


桶狭間がさらに彼を攻める。

ここまでやれば、もういいだろう。

うむ、完全な勝利だ。



「で?堂々話すのがまずいんだろ?・・・どうするんだ?」

「もちろん放課後だろ。」

「大丈夫か、放課後で?」


そうだ・・・

前に放課後で話したら、川中と川口にきかれたんだった・・・

一番きかれたくない相手に・・・な。


「どうしたんだ?」


もちろん彼がしるはずがない。

彼はいなかったのだから。



「あ、そうたっぺなぁ・・・お前はいなかったもんにゃ~・・・」


・・・可愛い・・・

じゃなくて!!


彼はなんだか「納得いかん!」という顔をしていた。

どうせこいつのことだ。

「猫耳をつけないと僕は納得しないぞ!!」とか思っているのだろう・・・

「超マニアックフェチの下心ありありの変態スケベ最低野郎」が・・・



「・・・最低ね。」


こうとだけいっておこう。



「で?何があったんだよ?」

「いや、前に川中と川口に俺たちの会話をきかれたんだよ・・・」

「まぁ、今回は徹底するし・・・大丈夫だろ・・・」


しかし・・・

問題なのは監視部のやつらだ。

やつらは、注意して見つけても、追い出すことはできない。



「で?今日、残るか?」

「今日は・・・ちょっと俺、きついっぺ・・・」

「全員そろわないと意味ねぇからな・・・」


では・・・

明日までに監視部の対策を考えておかなければ・・・



「じゃぁ・・・明日は?」

「明日は大丈夫だっぺ。」

「他に明日、ダメなやつはいるか?」


誰もなにもいわない。

ということは明日は大丈夫ということである。



「じゃぁ、明日の放課後にこの話の続きをしよう!!」



そういって解散となった。



その日の帰り道のこと。


その日の帰り道の空も、いつものように赤く夕焼けがでていた。

鮮やかな緋色が、町を照らす。



「・・・なんか、あいつらに悪いよな・・・」


先に口をひらいたのは彼。


たしかに悪い。

というか・・・私のせいで彼らを巻き込んでしまった・・・

本当にどう償えばよいのかわからない・・・


「えぇ・・・」



けど・・・

それと同様にもう1つの感情がうまれていた。


「でも・・・うれしい。」

「え?」


そう・・・うれしかったのだ。


「彼らが・・・関係ないのに、あんなに私たちのことで真剣になってくれるなんて・・・」

「まぁ・・・そうだな。」


少し彼は考えて、そう肯定した。

彼には彼なりの重みがあるのだろう。


しかし・・・


「・・・」

「なに?」


この男はやはり・・・


「そうだなってそれだけ?・・・ホント」

「?」

「つまらない男ね!」



どうしてこうもつまらない男になれるのかしら・・・

今までの男性は皆、面白い話とかを結構話したりしていたり、熱心に話しをきいてくれたりしたのに・・・

なぜこの男はこうもテキトーなのだろうか・・・



「どうせ僕はつらまない男ですよ。」

「・・・」



そもそもこいつはなぜ私に惚れないんだ?

ここまでやっているのに・・・


「てか・・・なんであんたは私に惚れないのよ!!」


こいつにも好みのタイプといものがあるのだろうか?

いや、それは最初の告白で理由をきいたじゃないか。

たしか・・・



「そりゃぁ、アニメのほうが・・・」



アニメのほうがこの私より大切だというのか!?

・・・ふむ・・・これから2~3つ、アニメ会社を潰してくるか・・・



「へぇ~・・・私よりアニメのほうが大切っていうんだぁ~?」



この私にかかれば、アニメ会社をつぶすことなんて簡単なのだぞ!!

この際、「アニメ禁止令」でもだすか・・・



「あなたが望めば、わざと襲われてあげてもいいのに・・・」



なんていってみる。

男性は皆、エロい。

こういう話をして、男性は赤くならなかったことはない。

・・・ない・・・はずなのだが・・・


「私を抱かしてあげてもいいのに・・・」


やはり念を押してもこの男は赤くならないどころか・・・

反応すらしない。

なんか・・・呆れている、という感じだ。


・・・しかし、こうみると、私だけはしゃいでる(しかも下ネタで・・・)みたいで気に食わない。

極度の恥ずかしさまででてくる。



「嘘。誰があんたなんかに抱かれるもんですか!ヤダヤダ・・・」



まぁ、実際、襲ってきたら、ナイフで刺すが・・・

いや、刺すだけじゃ物足りんな・・・

この際、燃やすか・・・

火達磨になっているこいつを蹴飛ばしたら、さぞ楽しいことだろう。

燃やしたあと、灰をドラム缶にいれて、それをセメントで固めて、東京湾に捨ててくるか・・・

うん、それで決まりだな。



「・・・」


しかしそれでも彼は普通だった。

むしろ普通すぎて気に食わない。


「少しは期待した?」

「してない!」


完全否定・・・

念を押そう。


「・・・したでしょ?」

「してない!!」


さらに強くなってムッとくる。


この展開・・・

前にもあった気がする。



「・・・しろ!!」

「・・・なんで?」

「いいから。」



よく考えてみろ、凡人。

この私が襲われてやってもいいといっているのだぞ?

それはそれは「超」がつくほど光栄なことだろうが・・・



「なんならしっかり子供を産んでやってもいいのだぞ。」


なんて、さらに強みを増してみる。

これはもはや念を押すレベルじゃない。

ほぼ強制のような気が自分でもしてくる。



「はぁ・・・じゃぁ、期待するよ・・・(棒読み



が!!

彼が同意した・・・

のだが・・・


それはそれで恥ずかしいじゃないか!!


「はぁ!?なぜお前にそんなことを期待されなければならない!?この変態!!最低!!」


最低だな、この男・・・

やはり、男はどいつもこいつも変態だな・・・

よし、こいつが襲ってきたら、火炎放射器で、燃やそう。

きっと私は彼が燃えているのにもかかわらず、ずっと火を出し続けるだろう・・・



「・・・あのなぁ・・・お前が期待しろといったんだろうが・・・」


・・・我ながら恥ずかしい。


「そんなの、記憶にないな。」

「あ~あ~、そうですかい・・・ったく・・・」

「というか・・・そんな期待されるぐらいなら死んだほうがマシだ。」



・・・というか、私が死ぬ前に、お前が死んでるだろうがな。



「もしかして妄想とかふくらませてるのか?最低すぎるな!!キモいのレベルじゃすまないぞ!!」

「・・・」



妄想されていたら・・・

うん、こいつの家に放火しにいこう。

・・・親は助けようじゃないか。

え?こいつ?


知らん!!



「そんな妄想してねぇよ。まず興味ない。それにそんなことをしたらお前の殺されるだろうが・・・」


興味がないとまでいうか・・・

・・・しかし、私の考えていることをよくわかってるじゃないか。


けど・・・

こいつは私をどう見ているのだろうか?

気になる。



「お前・・・お前のなかの私の人物像というのはどうなっているのだ?」

「そうだなぁ・・・」


どう思っているのだろう・・・

ここは真面目にこたえてほしい。



「鬼だな。」

「!!!」


・・・ショック?

そんなレベルじゃない。

もし、生まれ変われるのであれば、性格をなおして、一からこいつとやり直したい、とまで思う。



「鬼・・・だと?天使じゃなくて?」

「誰が鬼を天使と間違えるんだよ・・・」



それは・・・そう。

完全否定。

私そのものの。


彼は私を「鬼」としてみている・・・

泣きたくなる。

だって・・・私だって・・・・一応、女の子だもん・・・



「貴様・・・」



彼は怒られることを覚悟していたようだ。

だが・・・

私は怒ってなどいない。

むしろ・・・悲しいんだ。



そう思うと、体が勝手に動く。


気が付けば、彼に抱きついている、という状況だった。

それも道のど真ん中で・・・


こんな細っちい彼でも・・・

私よりも肩幅がある。


初めて男性に抱きついたので、少ししみじみとしている自分がいる。

が、心はしみじみしていても、口は勝手にひらく。



「どうしてだよ・・・」

「え?」


体が勝手に動き、そして口が勝手にひらく。

・・・今までこんなことはなかったのに。


どうして・・・

それを知れば、今からでもなおせるかもしれない。

気づけば、そんなわずかな期待で心を保とうとしている自分がいる。



「どうして・・・私を女として見れくれない・・・」

「大丈夫、女性としては見てるから。」



彼の答えは即答だった。

けどね・・・

それは本当に?

単なる慰め・・・というかなんというか・・・

そういうものなんじゃないのか?


私だって・・・

もっと女性っぽく・・・

可愛くなりたい。

優しくて、おおらかで、彼氏を癒して上げられるような・・・

そんな存在になりたい。


けど・・・

そうなれないのが現状である。

彼の負担は大きい。

それは自分でもわかっている。


せめて・・・

可愛くはなれないけど・・・

女性としてぐらいは見て欲しい。



「・・・もっと・・・女性として見てよ・・・」


別に惚れてくれなくてもいい。

けど・・・

ただただ一人の女性として、見て欲しい。



「十分お前は女性っぽいよ。それに・・・全部が「鬼」なわけじゃねぇだろ?」



女性っぽい?

どこが?

それに・・・全部「鬼」じゃない?

そう・・・なのかな?



「前にもいったけど・・・お前は優しいやつじゃねぇかよ・・・な?」



前?

前というのは、仲直りをしたときのことか・・・


あのときの会話を思い出す。

彼は私を救ってくれた。

そして、私が「優しい」と認めさせてくれた・・・



彼は私を女性として見てくれている・・・のだろうか。

正直わからない。

けど・・・「優しい」といってくれた。

なら・・・それでいいじゃないか。



彼から離れる。

こうしてみると、またまたとてつもなく恥ずかしい。

久々にごまかし技でも使うことにしよう。



「プッ・・・アハハ!!やっぱ星矢はこういうの弱いね!!」


今回は勘付かれないように、わざわざ「吹く」ところからはじめたのだ。

多分バレないだろう。


「そうだな・・・どうせこういうのは弱ぇよ。」

「見事に戦略にハマったな・・・ダサすぎるよ、フフフ。」


ダサすぎる・・・か。

本当に「ダサすぎる」のは自分だろうが・・・

どうして、こうも素直に自らの気持ちを伝えられないのだろうか・・・



さて・・・ごまかし技第2弾といきますか!


「まったく・・・で?私に抱きつかれてうれしかったか?」

「・・・はぁ?」


彼は私の予想外の言葉に目を丸くした。



「うれしかったろ?」

「うれしくねぇよ・・・何事かと思ったぜ・・・」



彼は呆れ顔でいう。

一番彼らしい反応である。


「そう・・・まぁ、あなたが望めば、猫耳をつけて、水着で、料理してあげてもいいのに・・・」


なんて仮定の話をまたまた出す。


「頼むから・・・そのネタは桶狭間たちの前ではやるなよ・・・」


が!

その仮定は見事に彼にネタという話になってしまう。

これは反撃・・・なのか?


「・・・どうしようかな?」


なんていじめてみようとするが・・・


「・・・てか、お前・・・料理つくれるのか?」

「え!?」


しまった!!

私、そういえば料理なんてしたことなかったじゃないか!!


「そ・それは・・・」

「あれ?できないのぉ~?」



彼の馬鹿にした反応に再びムッとくる。



「で・できるに決まっているじゃないか!!」



あ~、やっちゃった・・・

できないのに、意地をはってしまった・・・



「じゃぁ、今度何か作ってくれよ。」

「うっ・・・」


・・・もし、それで出せたらどんなにいいことだろうか。

そういえば、前に桶狭間が・・・

「女性は、顔と体と性格と飯だよな!!」

といっていた・・・

それって・・・

百歩譲って、彼が私に惚れてくれたとして・・・

4つ中2つを落としているという計算になるじゃないか!!


というか、まだ彼は私に惚れていないから・・・

彼の視点でいくと・・・

全部ダメじゃん!!!



「まぁ、頑張ってくれよ、期待してるからよ、卯月。」


念を押してくれるな!!

・・・今度、中島に料理を教えてもらおうかなぁ・・・


父にいうと、また厳しいのがきそうだし・・・

そうだな、やっぱ中島に教えてもらう。



・・・しかし。

「卯月」か・・・

前みたいに「咲良」とは呼んでくれない。

やはり・・・まだ壁があるのだろうか・・・



そうだ、また呼んでもらおう。

もし壁があるなら、呼んでくれないかもしれないけど・・・

今なら多分大丈夫なような気がする。

さりげなく料理の話からそらせるということで一石二鳥だ!!



「・・・よし、決めた!!」

「一応きいてやる。・・・なにを決めたんだ?」

「前みたいに「咲良」と呼んでくれないと、返事をしないことにする!!」


はぁ・・・

やっぱ素直に「咲良って呼んで」とはいえないものである。


「さぁ、咲良と呼べ。」


やはり強制じゃないと無理なのだろうか・・・

それとも最悪の場合・・・

いや、それは想像したくない。


「・・・わかったよ・・・咲良。」



!!

よかった・・・


そして、これでOKがでたということは・・・

壁はもうない、ということだ。

安心感に浸る。


「うん、よろしい。」





次の日の放課後。

彼らは皆、真剣だった。

それはそのはず。

こんなことがバレたら、私たちは皆、ただでは済まされないのだ。

何しろ、生徒会に歯向かっているのだから。



さて・・・

監視部のやつをどうするか・・・

なぁに、作戦はある。


私がチョチョいとトイレにいくふりをして・・・

生徒会生の前で、叫べばいいのだ・・・

女性としての利点を最大限に使用したこの戦法なら確実なはずだ。


「んじゃぁ・・・始めるか・・・」


そう桶狭間がいい、私が「その前にお手洗いに先にいってくる」といおうとした瞬間だった・・・



「きゃぁ~!?変態!!なんで胸を触ってくるんですか!?やめてください!!」



!?

この声は・・・中島?



「何事だ!?」

「これって犯罪だっぺ・・・」


そして男子たちが扉をあけて、廊下にでると・・・

やはりそこには中島がたっていた。


「どうも。」

「・・・今のって、中島ちゃん?」

「えぇ、そうですよ?」



彼女はニコニコしながら、答える。

こういう癒し系になれたら・・・

女性っぽくなれたら・・・

どんなにいいか。



「いやぁ・・・廊下に生徒会の人があなた方を見張っていましたから・・・多分、監視部ですね。」

「監視部!?」


やはり・・・

監視部がいたか。



「で?その監視部は?」

「叫んだら、あわてて逃げていきました。」



!!!

中島、よくやったぞ!!

そうか、それで叫んだのか・・・

って、よく考えたら私と同じ戦法じゃないか!!



「で?大丈夫だったのか?その・・・痴漢?っていうのか?」

「え?されてませんよ。」

「・・・」



男子たちはまるで石化したかのように固まった。

女性の恐ろしさを知ったのだろうか・・・


「で・・・ですね・・・私も仲間にいれてもらえませんか?」

「え?」


中島が・・・

仲間に?


それは、仲間になってくれればうれしいし、心強い。

が!

中島はまったく関係ない。

巻き込むわけにもいかない。


「・・・卯月さん、今回こそは味方になります。」

「・・・でも・・・」

「生徒会に俺たちは逆らうんだぜ?下手すれば退学だぞ?」

「そうだっぺ・・・巻き込むわけにはいかないっぺ・・・」



皆もとめる。

当たり前だ。

下手をすれば「退学」なのだから・・・



「いいんです・・・前に卯月さんに救われましたから。今度は私が・・・救うまではいけないかもしれませんが、せめて仲間になっておきたいんです。」


しかし・・・

彼女の意思はかたかった。


「・・・どうする?」

「いいんじゃないの?表向きに出さなければ・・・」


星矢!?

お前・・・馬鹿か?

表にださなくても、相手は生徒会だぞ!?

いずれバレるだろうが・・・


「そうだな。だが・・・絶対安全って保障はないぜ?」

「わかってます・・・え~と・・・将軍さん。」


だが・・・

やはり彼女の意思はかたい。

とめても、無理に入ってくるつもりだったのだろう。


そこも見越して星矢は言ったのだろうか・・・

なかなか頭がまわるじゃないか。



「んじゃぁ、いつものメンツに新たに仲間が入ったわけだし・・・テンションあげていくかぁ~!!」

「おぅ!!」



まったく・・・

彼女も彼女だけど・・・

ありがとう、中島。



「・・・咲良・・・お前、何気に中学でもいいことしてたんじゃねぇか・・・」


隣の星矢がボソッといってくる。

なんか気に食わないな、その言い方。


「当たり前だ。」

「・・・ってことは中学の頃から優しかったってことだな。」


!!!


「な!?な・なにを・・・」

「えぇ、そうですよ。卯月さんは中学のときからとても優しい人でした。」


ナイス、中島!

おかげで恥ずかしさの窮地から脱出することができた・・・


「・・・で?まずどうする?」

「俺が思うに・・・川口が「引き裂き」を継続させるための報告をしたとしたら・・・やっぱ川中と時津風が怪しいと思うっぺ。」


やっぱり・・・

あの2人か・・・

あの2人を説得するのはかなり難しいと思われる。

だってあの2人は・・・

同じ中学で、私を良いと思っていない人たちだから・・・



「実際に昨日・・・桶狭間ともめたとき・・・あいつは継続させるための報告をしただろう?と桶狭間がきいたら否定しなかったしな・・・」



たしかにそういわれてみればそうだった。



「というと・・・まず最初の攻略ポイントは・・・時津風と川中の2人か・・・」


そう、五月雨が少し厳しめの顔でいう。



「・・・あの2人はなかなか自分の考えを曲げそうにないからな・・・」



なんて将軍ですら苦笑いをする。

それほどの強敵なのだ・・・あの2人は。

まぁ、「敵」というか・・・どちらかといえば「壁」だが・・・

強壁なのだ。



「けど・・・まだ相手が生徒会じゃないだけマシだぜ・・・」



そう桶狭間が皆を励ますかのようにいう。

確かにそのとおりだ。

少し安心というか・・・

ゆとりがもてる。



「・・・決着は早いほうがいい。」

「ってことは明日だっぺね・・・」



明日!?

早いな・・・

それにあの2人は話をきいてくれるだろうか・・・

特に「川中」は厳しいと思うが・・・



「よし・・・明日のことを本格的に決めようじゃねぇか。」

「そうだっぺな。」



その後、明日のことをしっかり確実に何度も確認して、決めた。

まぁ、なんとかいくかもしれない・・・

というレベルだが・・・

それでも、あの2人の強壁を乗り越えなければならない。



「よし、明日の大体のことは決まったし・・・第1回はこれで終了でいいかな・・・」

「そうだっぺな・・・」

「すまねぇな、中島さん・・・巻き込んじまって・・・」

「いいえ、私が望んだことですから。」



そういって、第1回は解散ということとなった。

皆がかばんをもって、教室をでて、階段をおりはじめた。



「・・・なんか、「引き裂き解放同盟」結成って感じだよな・・・」

「なんかそのまんますぎてつまらないっぺ・・・」

「じゃぁ・・・どんな名前にするんだよ?」

「そうだっぺねぇ・・・」


関ヶ原は少し考えている。


名前か・・・

同盟の名前・・・

なんか本格的というかなんというか・・・



「・・・「絆」同盟なんてどうだっぺ?」



絆・・・

いい響きだ。


なんか逆に名前負けしそうで怖い。



「これから俺たちにはいろんな苦難があると思う・・・もちろん明日の川中と時津風説得だけじゃうまくいかないだろう・・・そんな苦難も全部、俺たちの友としての「絆」で乗り切る!!」



私たちらしいなぁ、と思った。

みんながみんな、仲がいい。

その絆で乗り越えていく・・・か。

なんか青春って感じがする。



「この名前で異存がある者は?」



いるわけがない。

こんなに私たちらしい名前はないだろうから。



「よっしゃ!絆同盟結成だぜ!!」



たった7人だけだけど・・・

されど7人。

7人の絆はかたい。



この7人で「引き裂き」を解除したい・・・

そう、本気で願う。

誰一人かけないように・・・

誰一人「退学」にならないように・・・


そう・・・本気で願った。




                           「帰道」  完


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