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なんで僕が!?  作者: へたれ度100%
23/79

権限

一夜があけた。

どうにか・・・

あいつと仲直りできた・・・

のだろうか?

そこは正直微妙なところである。


さて・・・

今日は学校がある。

今日は行こう。

今日は休まない。


いつものように用意をしていつものように道を通る。


「!」


すると・・・

彼女はいつもの場所でいつも通りに待っていた。


「よぅ。」

「貴様!今、何時だと思っている!?」

「・・・8時12分だが?」

「2分遅刻とはどういうことだ!?正確・的確・具体的に30文字以内で私に説明しろ!!」


うわぁ・・・面倒くせぇ・・・

でも・・・彼女がいつも通りにふるまってくれて若干心にゆとりができる。

なら・・・僕もいつもの僕らしく応答しよう。



「ダルッ・・・てか、お前の言う正確・的確・具体的に説明するんなら30文字じゃたりねぇよ・・・」

「ほぅ・・・そうか?なら、25文字以上30文字以内と訂正しよう。」

「かえって難しくしてるんじゃねぇ!!」


しかも30文字はかわってないし・・・



「そういえば・・・私たち、生徒会にアルファーを指定されたぞ。」

「・・・はぁ!?」


アルファー・・・

一応僕も知っている。

たしか・・・みんなからは「引き裂き」とよばれている。

生徒会の権限の1つ。


この高校は生徒会の権力が非常に強い。


というのは・・・

太平洋戦後、稀の帝国主義を残している学校である。

帝国主義といっても、軍事力ではなく、いわゆる上からの命令は絶対という絶対服従。

逆らうことはおろか、反対意見をだすことすら厳しい。

下のものは黙って上の命令をきけばいいという、なんとも軍国主義というかなんというか・・・

まぁ、それも校長は「人生の厳しさと上下関係をしっかり理解させるため」とかなんとか、集会でいっていたが・・・

僕からすれば単なる奇麗事にしかきこえない。


生徒会は、生徒たちの代表ということもあり・・・

学校そのものが、生徒会に大きな力を与えている。


先ほども書いたとおり、上からの命令は絶対服従。

それに逆らったものは、学校および生徒会から、厳しい罰を受けることとなる。

最悪は「退学」ときく。



「・・・マジか?」

「えぇ。」


それって・・・

僕たち・・・こうして一緒に歩いてるのってかなりまずいのでは?


いや、待てよ。

僕と彼女にだされたという理由はおそらく一昨日の喧嘩だ。

なら、もう仲直り・・・おそらくしている。

となれば、アルファーは解除されるのだろうか・・・



「しかしよぉ・・・うちの高校も矛盾してるよな・・・」

「そうね・・・」



というのも・・・

学校そのものの目標は・・・

「生徒一人一人がしっかり自ら意見を持てる学校にする」というものである。

が、ここは絶対服従制。

意見を持っても、発言はできない。


・・・矛盾している。


そのことを校長は気づいているのだろうか・・・

いや、気づいているだろう。


そういえば前に校長はいっていた。

「あくまでこの高校の一人として意見せよ」と。

それは・・・つまりこの高校のためになることを意見するのであって、マイナスなことは意見するなということだろう。

いわゆる・・・学校と生徒会に逆らうな、という意味もとれるわけだ。


・・・そうみるとうちの高校は結構面倒である。


というか・・

うちの高校は外部・・・

というか、表向きにはまったく「帝国主義」を残している高校というイメージはない。

おそらく高校説明会でもそんなことは一言もいっていないだろう。

ただ言っているのは「生と一人一人がしっかり意見をもてる高校」という目標のみ。

そんなデカデカとレッテルを貼ってるくせに、中身は帝国主義で、意見なんていえない状況なんて、「詐欺」もいいところだ。

が!!

高校は将来を担う場所の第一歩として、とても大切な役目をする。

実際、この高校・・・「霧島第3高校」は文型高校で非情にレベルの高い高校である。

そんな高校が実は内部で「詐欺」ってました・・・

なんて公表された日には・・・

「高校」そのものの評価が落ちる。

それを防ぐために、「学校」はもちろん、「生徒」も公表できないのである・・・

この高校に入学しちまったら・・・帝国主義を貫かないといけないというわけだ。


しかし、基本はどの高校とも一緒なわけで・・・

これらはほんの一部でしかない。

だから今までぜんぜん気にしてなかったことなのだが・・・

まさか・・・僕が休んでいる間にこんなことになってるなんて・・・



「・・・後ろ。」

「え?」

「・・・約30m後ろ。私たちからみて、5人目。」



5人目・・・

1人、2人、3人・・・


!!

ありゃぁ・・・


「・・・生徒会生じゃねぇか・・・」

「おそらくアルファーがだされたのだから、私たちの監視・・・ってところね。」


ったく・・・

生徒会ならなんでもしていいのかよ・・・

これじゃぁ、プライベートもくそもねぇぜ・・・



生徒会生は、皆と同じ制服をきているが・・・

唯一違うところがある。

それは・・・

首・・・襟の部分に、菊の紋章がついているということだ。


菊の紋章は多ければ多いほうが、生徒会でも権力が高い人をさす。

1つは、生徒会に入っているだけの生徒。

2つは、会計・情報・監視等々の役割を果たしている生徒。

2つと黄色い線があるのが、会計・情報・監視等々のリーダーを務めている者。いわば幹部ということになる。

3つは、副生徒会長。

そして、3つと黄色い線が、生徒会長・・・つまりトップだ。


副生徒会長は、1年・2年・3年と3名のみ。

生徒会長は3年だが・・・3年が生徒会を離れたあとは、2年の代表が受け継ぐこととなっている。

もちろん、3年生徒会長がふさわしいと思った人材に引き渡すのだ。


うちの高校は生徒会の権力が高いということもあり・・・

かなり生徒会の規模も大きい。

生徒会は、総勢で約60名にも及ぶのだ。

うちの高校が全学年あわせて、約600人。

つまり、10人のうち1人は生徒会ということになる。



後ろをつけてきている生徒会のやつは・・・

襟の菊の紋章が2つ。

やはり・・・監視部か。



ちなみになぜ「菊」かといわれれば簡単なことである。

この高校そのものの紋章であるからだ。





しかしまぁ・・・

監視部につけられてるってことは・・・

マジもマジ・・・大マジっぽいな。



基本、どのクラスにも、一クラスに生徒会3名の配置となっている。


うちのクラスにも生徒会は3人。

うち1人は副会長である。

・・・川口だ。

つまり・・・生徒会のなかでもかなり権力が高い者がうちのクラスにいるということだ。

あとの2人は、無所属。

つまり、菊の紋章1つである。




さて、そんなことを思いながら、学校までついた。

教室に入ると・・・

皆が皆、目をまるくした。

それはそうだろう・・・

一昨日にあんな派手な喧嘩をしたのに、今日という今日は仲良く並んで学校にきたわけだ。



「・・・仲直りしたんだな。」


桶狭間がフッと胸をなでおろすようにいった。



「悪い・・・心配かけちまったな・・・」

「ケッ、こいつは高くつくぜ。」


なんて桶狭間が言う。



「みんな・・・一昨日のことは本当にすまなかった!」


僕は頭を下げる。

当たり前なことだ。

いくら彼女が許してくれたとしても、まわりはまだ怒っているだろう。



「なにいってんだよ・・・一昨日のことなんて忘れちまったぜ・・・なぁ、みんな?」

「あぁ、そうだっぺ。」

「そうだぜ!」


そうだ・・・

このクラスは最初からそうだった。

決して誰も省こうとしない。

ただ、どう詰め寄るかが苦手なだけ。

だから1人がきっかけをつくれば、誰もが駆けつける。



「いいのか、十六夜?」


すると時津風がいった。


「なにが?」

「お前、一昨日、接触は控えてほしいっていってたじゃねぇか。」

「いや、あれは撤回する。今まで通りでいいんだ。」


僕はハッキリといった。



「なるほどな・・・」



そう言うと彼は教室から出て行った。



「よっしゃ!生徒会に「引き裂き」とといてもらおうぜ!!」

「そうだっぺな。彼らはいつもどおりだっぺ。「引き裂き」をする意味はないっぺ。」


彼らは喜んでいた。

やはり・・・彼らも彼らで自らを責めていたのだろう・・・

だが・・・ここで「引き裂き」がとかれれば、無条件で責任なんて消えちまうさ。



「川口はどうした?」

「あぁ、川口ならさっき、お前らが並んで教室に入ってくるのをみて、生徒会本部に報告しにいったよ。」

「・・・」


川口・・・

下手な報告はしてないだろうな・・・



それから少しして、川口が戻ってきた。


「おい、川口。生徒会に報告しに行っていたんだろう?」

「あぁ。」


彼はハッキリといった。



「で?アルファーは解除されたよな?」



誰もがそう思っていた。

それが当たり前だとすら思っていた。


だが・・・

現実はそんなに甘くはなかったのだ。



「・・・解除されていない。」



彼はいった。

・・・そう、ハッキリと。

先ほどと変わらずに。



「な!?」

「なんでだよ!?」

「おかしいだろうが!」



クラスで一気に反論がでる。

皆、僕たちのことを思ってくれている・・・

そう思うと、やっぱこの高校に入学してよかった・・・

そう思う。



「・・・理由を言えよ、川口。」


桶狭間はいつになく真剣である。



「それは機密事項だ。言うことはできない。」

「な・・・なんだと!?」


咄嗟に彼は川口の胸倉をつかみ、壁に押し付けた。

・・・彼女に最初に告白されたとき、僕もあんな状況だった・・・


「おい、生徒会は生徒の代表だろうが!!その生徒代表が隠し事なんてしていいのか?」

「機密事項だといっている。」

「なんだよ!?機密事項って!生徒会はいつもいつも機密事項じゃねぇか!!」

「いつもではない。伝えるべきことはしっかり伝えている。」


川口は壁に押し付けられても、冷静に対応していた。

さすがは生徒会副会長といったところだ。



「ふっ・・・わかったぞ。」

「?」

「おい、てめぇが継続させるように報告したんだろうが!!あぁ!?」

「・・・」



川口は何もいわず、ただ彼の目だけを見ていた。



「それともなんだ?そう報告するように時津風か川中にでも頼まれたのか!?」

「それは違う!姐さんは・・・時津風は・・・そんな人じゃない。」

「そうか?実際お前らはいつも卯月ちゃんを敵視してるじゃねぇか!!」



たしかに彼らはあまり卯月を良い目では見ていない。

つまり、桶狭間がいうような可能性もたしかに否定はできなくない。



「おい、やめろ、桶狭間!!生徒会副会長の胸倉をつかむなんて、下手すれば校長室行きだぞ!!」

「そうだ、ここは冷静になれ。」


関ヶ原と長篠が冷静さを失った桶狭間にいう。



「くっ・・・」



そういうと、彼は川口の胸倉をしぶしぶはなした。



「・・・悪かった。」

「別に気にはしていない。」


川口は胸倉をつかまれて、曲がってしまっている制服を、もとに戻す。



「俺はこのことを生徒会本部に報告しなければならない。失礼する。」


そういうと彼は再び生徒会本部に向かった。



「チッ・・・畜生が・・・」

「・・・少し落ち着け。」


長篠が静かに真剣にいった。



「桶狭間・・・いや、関ヶ原もか・・・お前らが責任を感じてるのは知ってる。けど・・・僕はそんなのもう気にしていない。」

「・・・そんなんじゃぁ・・・」


桶狭間は下を向いたまま・・・

厳しい顔つきでいう。



「そんなんじゃぁ、納得できねぇんだよ!!」

「・・・」

「お前らが納得してくれても、自分自身が!」

「・・・それには俺も同意だ。」


それに長篠が、まさかの同意をした。



「一昨日の件は・・・俺たち皆に責任があると俺たちは結論をだした。だから・・・その責任は償っていく。」

「そうだっぺな。」



関ヶ原も同意権ということか・・・


「自分自身が納得できる形にしなきゃ・・・スッキリしねぇ・・・」

「だから・・・俺たちは俺たちの納得できる形にする!」

「あぁ、そうだっぺな。」



その後、桶狭間は校長室へと連行されていった・・・


これから僕たちは思いがけないことをすることとなる。

いや、僕たちというか・・・彼らのほうが正しいかもしれない。



一昨日のことは、僕が思っている以上に彼らを追い詰めているものだった。



                         

                        「権限」   完 

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