宣言
※これは「返答」の卯月視点です
うちの見慣れた敷地を2人きりで歩く。
気づけば、こんなシチュエーションは今までなかったな・・・
本来はとても楽しいものなのだろう。
だけど・・・
昨日、彼と喧嘩してしまって・・・
そのせいで、どちらも一言もしゃべらない。
本当は謝りたい。
けど・・・また昨日みたいに門前払いをくらったら・・・
それが・・・怖い。
謝ろう・・・
そう決意したはずなのに・・・
本番となるとうまくいかないものである。
「・・・なぁ、卯月。」
最初に口をひらいたのは彼だった。
いつもいつも彼にまかせて・・・
私はそんなんだから、成長できない。
つい・・・彼の優しさに甘えてしまう・・・
だけど・・・
彼は「咲良」と呼んでくれなかった。
もちろん私も・・・「星矢」と呼べる勇気がない。
彼は空を眺めながらに言う。
「・・・お前の家って、ホントに広いな・・・びっくりしちまったぜ・・・」
空を見ながら言われても、説得力ないぞ・・・
でも・・・素をいって、また彼を怒らせるのが怖い。
また・・・昨日みたいになるのが・・・
とてもとても怖いのだ。
私もとりあえず並んで歩いて、一緒に空を眺める。
彼はよく空を眺めている。
きっと空が好きなのだろう。
今度・・・一緒に星がたくさん見えるところにいきたい・・・
なんてことを思う。
「えぇ・・・まぁ・・・卯月コーポレーションの社長の家・・・だから。」
結局怖さに勝てなかった。
彼をこれ以上怒らせたら・・・
もう二度と振り向いてくれないかもしれない。
それだけは嫌だ。
せっかく人を好きになれたのだ。
こんなところで終わるなんて・・・
死んでもごめんだ。
私の返事でまた会話は途切れた。
いつものように続かない。
「・・・なんか・・・元気ないな。」
不意にまた彼が言う。
こんな状況なのに・・・
昨日、あんなことがあったのに・・・
私を気遣ってくれるなんて・・・
本当に優しい人。
「・・・そう?」
実際苦しい。
あなたに謝りたい。
けど・・・
怖いものは怖く、勇気がでない。
「うん・・・元気ない。」
「そう・・・かもね。」
また・・・途切れてしまった。
・・・言おう。
覚悟が決まった。
彼にもう一度「昨日はごめんなさい」というんだ。
そう思って口を開こうとした瞬間・・・
カラスが鳴いた。
「アホー」
「アホー」
「アホー」
最初に鳴いたカラスと先頭に、何度も多くのカラスが鳴く。
カラスの「アホ」というのが、私に向けて言われているようでつらい。
それはカラス・・・早く彼に謝れということなのだろうか?
そんなことを思っていると・・・
「だぁ~!!!なんで僕はいつもこんなに男らしくないんだ!!」
いきなり彼が叫び始めた。
あまりに急なことでびっくりした。
「カラス!!てめぇら、うるせぇんだよ!!いつもいつも侮辱しやがって!こっちがどれだけ迷惑してると思ってやがる!!」
侮辱・・・
そうだ、私も彼をよく侮辱する。
もしかして・・・遠まわしに私を責めているのか?
・・・別にいい。
だって、全て私が悪い。
けど・・・それでもやっぱりつらい。
彼はその二言をいうと、軽く息を吸って、こちらをみた。
目と目が合う。
また・・・いつも目と目を合わせられるように戻したい・・・
「昨日はごめん!!」
そう思っていたときに、彼は私に謝った。
「・・・その・・・昨日、卯月は何にも悪くないのに、全部お前に押し付けて・・・」
ちょっと待ってよ・・・
それはおかしいでしょ?
あなたはぜんぜん悪くない・・・
むしろ悪いのは全部私なのに・・・
「・・・私のが悪い。」
そこはハッキリとさせておきたい。
いや、ハッキリさせないといけないところなのだ。
「私があんなこと言わなければ、あの楽しい空気を壊さずにいられた!なのに・・・私が・・・」
今でも思い出すと自然と涙があふれてくる。
また・・・泣いてしまっている・・・
また彼を困らせてしまっている・・・
とめたい。
けど・・・どうしてもとめられない・・・
とまらない。
「なんでそうなるんだよ!?昨日のは全部僕が・・・」
全部?
全部だって?
そんなのおかしい。
彼がどうして悪くなるのだろうか・・・
昨日のことは全部全部私が悪いのに・・・
「違う!あなたは何も悪くない。むしろ怒って当然。だって、昨日、私・・・最低だったから。」
本心をありのままにいう。
「お前は最低なんかじゃない。むしろいい奴だ。」
いい奴?
いい奴が、私の味方になってくれた友達を・・・
ただ敗北したから・・・
そんな理由だけで、責める?
彼らは十分に傷ついていた。
自分を責めていた。
なのに・・・
私はそれにさらに釘を打ち込んだのだ。
そんな人のことをどう見れば、「いい奴」なんてものになるのだろうか・・・
「そんなこと言って貰える権利は私にはない・・・昨日、あの空気を全部壊したのは私なんだよ?全部全部!!」
すべてを破壊したのは私だ。
私が勝手に暴走して、結果まわりをたくさん傷つけた。
その真実はかわらない。
かえられない。
もし私に時間を操る力があるとすれば・・・
私は昨日の私を迷わずに刺すだろう。
今の存在が消えてもかまわない。
だから・・・せめて味方になってくれた人達だけは絶対に傷つけたくない。
なのに・・・
どうして彼は自分が悪いと自らを責めるのだろうか?
彼はぜんぜん悪くない。
彼の悪いところなんてない。
もし彼の悪いところが「決断をださなかったこと」という人がいれば・・・
私は徹底的に抗議する。
裁判でもなんでもしてやる。
だって・・・実際彼はまったく悪くないのだから。
勝手に暴れた私が全て悪い。
彼はこんな私に、謝ってくれた。
彼はぜんぜん悪くないのに。
なら・・・
私もちゃんと謝らないといけない。
もちろんあやふやにする気なんてもともとないが・・・
「ホントにごめんなさい!!あんなことになるなんて思わなくて・・・つい、怒りが暴走して・・・」
涙がとまらない。
もし・・・彼が許してくれなかったら・・・
・・・とても怖い。
最初にも増して、恐怖が増大している。
「・・・心配すんな。僕はもうぜんぜん怒ってない。」
この言葉がすごく安心感を与えてくれた。
彼は怒っていない。
けど・・・許すとはまた意味が違うのだ。
でも・・・それでも安心感が少しある。
「それに怒りが暴走するなんて・・・よくあるこった。」
昨日あんなに怒っていたのに・・・
自分が彼の視点になって考えると、本当に許せない最低なことを私はしたのに・・・
なんで・・・かばってくれるの?
どうして、フォローしてくれるの?
・・・決まっている。
優しいからだ。
彼は優しい。
なのに・・・
私は昨日、優しい彼を壊した。
そして怒らせてしまった。
そんなので何か得たものは?
ない。
単に彼を苦しみ続けさせているだけ・・・
「泣くなよ・・・お前は悪くない。お前は・・・」
嫌・・・
そんなに優しくしないで・・・
そんなに優しくされたら・・・
私、自分を許してしまう。
私は自分に甘いから・・・
なのに他人に厳しくて・・・
普段から最低なのに・・・
なのに、今回はもっと最低だ。
そんな最低な自分を自分は許す気にはなれない。
いや、許すわけがないだろうが。
「・・・ダメだよ・・・」
「え?」
そう・・・ダメ。
「そんなこといったら・・・自分が昨日、悪くないみたいに本当に思っちゃう・・・」
全部全部私は自らのミスを彼に押し付けてしまう。
ついいつものように優しい彼に頼ってしまう。
そんなことをしていたら・・・
一生成長できない。
そして・・・
彼をさらに苦しめてしまうだけ・・・
そんなの・・・絶対ダメ。
「私は・・・最低なんだよ・・・」
「なんでそういう結論にいたるんだ!?昨日のことは・・・」
なんで?
なんでそんなにかばってくれるの?
あなたも気づいているはずでしょう?
私は最低なんだよ?
最低で・・・なのに、危ないときだけいつも優しい彼に頼ってしまう臆病で卑怯者なんだよ・・・
「私が全部悪いの・・・」
これだけは絶対に譲れない。
戦略もくそもない。
何が何でも・・・私のミスを背負わせない。
自分の責任ぐらい自分でとらなきゃいけない。
そうよく父もいっていたじゃないか。
なのに・・・
いつも彼に甘えて・・・
私はいったい何がしたいんだか・・・
自分でもわからない。
「いい加減にしろ!!!」
彼はついに怒ってしまった・・・
昨日と同じ展開・・・
昨日のことが頭によぎる。
それでも・・・
いくら彼でも・・・
彼に嫌われても・・・
これだけは絶対にダメ。
自分のミスは自分のミスでしかないの。
私のミスは私のミスであって、彼のミスではない。
彼を巻き込むわけにはいかない。
「どうしてお前はそうやって自分を責めるんだ!?悪いのは全部僕じゃないか!!」
まだ気づいていないの・・・
なら気づかせてあげる。
私がどれだけ最低かを。
そして二度とあなたに「全部僕が悪い」なんて言わせない。
「そっちこそ・・・」
「え?」
「そっちこそいい加減にしてよ!!!」
初めて怒鳴った。
怒鳴ったことなんて今までに一度もないだろう。
「全部全部悪いのは私なんだよ!?なのにどうして自分ばっか責めるの!?」
本当に・・・意味わからないよ・・・
そんなことされても・・・ぜんぜんうれしくなんてない。
すると彼は少し考えてからいった。
「じゃぁ・・・お前が悪い。」
そう・・・それでいいの。
私が全部悪いの。
「そう・・・全部私が悪いの!」
「それは違う!」
え?
今、あなたは私が悪いって自覚したんでしょ?
どこが違うの?
「・・・お前は昨日、たしかに悪かった。けどな・・・」
けど・・・なに?
「僕もお前と同じぐらい悪い。」
なっ!?
予想外すぎる言葉に私は唖然とした。
「よくききやがれ!僕が好きなアニソンのなかの1つの曲の歌詞にはな、「自分を許さなければ、他人も許せない」って歌詞があるんだよ!!」
またわけのわからないことを・・・
でも・・・もしかしたら、これが彼のよくわからない話をきける最後になるかもしれないから・・・
ちゃんときこう。
ただわかったことは「自分を許さなければ、他人も許せない」という彼の言葉の意味。
「だから、僕は昨日の僕を許す。だから・・・」
あなたはもともと何処も悪いところなんてないじゃない。
「お前も昨日のお前を許せ!!」
そう・・・
「自分を許さなければ、他人も許せない」とはこういう意味だ。
彼は自分を責めていた。
そのことを彼は自らで許した。
だから・・・
私も私を責めるのをやめろということだろう。
だが・・・それはできないことなのだ。
そんなことしたら・・・
また彼に甘えてしまう。
「・・・無理だよ。」
「!!」
また彼は黙り込んでしまった。
次の言葉を考えているのだろうか・・・
だが・・・私は今回だけは一歩も譲る気になれない。
てか・・・譲ってはいけないのだ。
「ケッ、この頑固野郎が・・・」
「!」
なっ!?
こいつ・・・この私を頑固だと!?
私は・・・これ以上自分がミスを犯さないため。
まわりの人に迷惑をかけないため。
そして何より彼を苦しめ続けさせないため。
そのために・・・いっているのに、頑固だと!?
気づけば・・・私は彼のために自分が悪いと思っているのか?
いや、そうではない。
自らのミスの意識はちゃんとある。
けど・・・
やっぱ彼のため・・・ということもあるのではないだろうか・・・
彼は私のことをどう思っているのだろう?
やっぱり「お荷物」だと思っているのだろうか・・・
お荷物ならお荷物なりに、主人に気を使うものだ。
主人にばかり負担させるわけにはいかないのだ。
つい、彼の「頑固」という言葉にカチンときて、素をだしてしまう。
「な!?頑固って、貴様!!」
「そうだ、てめぇは頑固野郎だ。少しはまわりを見て見やがれ!!」
「なにを・・・」
まわり?
まわりってどこ?
なにをみればいいの?
「よく考えてみろっつってんだ!その上で昨日と自分と向き合って、昨日の自分を許せ!」
昨日の自分と向き合う・・・
昨日の自分を許す・・・
そんなこと・・・
「それでも自分を責めるならお前は救いようのない馬鹿だ!頑固野郎だ!!」
貴様!!
言わせておけば!!
「お前!!私はお前のことを思って・・・!!」
つい本音がでてしまった。
そう・・・私はやっぱり何より彼を苦しませないために・・・
迷惑をかけないために・・・
そのために、彼と言い合っている。
もちろん他の理由もたくさんある。
が、それが一番大きい。
「僕のことを思って?ならやっぱ僕が悪いと思ってたんだろ?だけど、それを僕のせいにしたら僕がお前を嫌う。だから、自分を責め続けてる・・・そうじゃねぇのか?」
そんなこと思うわけないじゃないか!
お前の優しさは私が身をもって知っている。
お前が優しいということは誰よりも知っているつもりだ。
だって・・・好きだもん。
その優しさを傷つけないように・・・
奮闘しているんだ。
大好きな彼の長所を傷つけないように・・・
「そういう意味で、お前のことを思っているわけじゃない!」
「じゃぁ、どういう意味で思ってるんだ?」
「・・・それは・・・」
そんなこと・・・いえるわけないじゃないか。
そんなことをいったら、彼は絶対に「大丈夫」というに決まっている。
心の奥底で傷ついているのに、それでも無理して「大丈夫」って私を安心させるために言うに決まっている。
「あいにくなぁ・・・僕はそんなわがまま野郎じゃない。・・・昨日はそうだったかもしれねぇが、今日はまた一歩進化してるんだ。」
あ~・・・ダメだ、こりゃぁ・・・
完全に勘違いをしている。
けど・・・次の彼の言葉がうれしかった。
そう・・・本当に。
「大体なぁ・・・誰がお前のことを嫌いになるかっつうんだ・・・」
うれしい・・・
すごくすごく。
「お前は優しい奴じゃないか。昨日は気づかなかったけど・・・パンをくれたり、買い物を手伝ってくれたり・・・遅刻しそうな僕を迎えにまできてくれたじゃねぇか。自分だって僕を待ってたら遅刻しちまうのに・・・」
だって・・・それは彼のことが好きだから・・・
どうしようもなく頼りのない人だから・・・
どうしても、彼を救いたくなる。助けてあげたくなる。そしてもっと彼といたくなる。
でも・・・そんなこといえるわけがない。
恥ずかしすぎる・・・
「お前は優しいやつなんだよ。そんなお前を・・・嫌いになんてなったら、神様に殺されるじゃ済まされないぜ。」
違うの・・・
それはあなたのことが好きだからであって・・・
優しさではないの。
「・・・私は・・・優しくなんて・・・」
「優しいんだよ!てめぇは昨日のことを思いすぎで、そんなことまでわからなくなっちまったのか!?」
それでも彼は私を「優しい」といってくれる。
本当に優しいのは・・・お前のほうだよ。
「大体なぁ、お前みたいな美人がこんなさえない男の僕にかまってくれる、それだけで超がつくほど僕は幸せ者なんだよ。」
初めて・・・
彼に「美人」だといわれた気がする。
まぁ・・・実際彼は本気で「美人」だとは思ってないのだろう・・・
だって・・・彼、私が自分で「美人」っていうと、スルーか「自分でいうな」としかいってないもの。
それは・・・彼から見れば私は「美人」に見えないということだ。
「それに昨日、いろいろと助けてくれて・・・これのどこが優しくないってんだ!?答えて見やがれ!!」
てか貴様・・・
今気づいたが・・・
なぜそんなに上から目線なのだ!?
気に食わないが・・・
彼の優しさに甘えてしまいそうな私がいるのも事実である。
「・・・私が・・・優しい?」
「そう、優しいんだ。」
そんな・・・
優しいわけが・・・
「そう・・・認めろ。」
・・・彼はずるい。
ずっと攻めてばっかで。
こちらからも攻めれば、私のこの心情を理解するだろう。
「・・・じゃぁ、あなたも認めて。」
「何を?」
「あなたも十分優しいってことを。」
あなたがまず認めるべき。
だって・・・仮に私が優しいとしても・・・
彼のほうがぜんぜん優しいから。
「あなたは・・・私の無理な注文にこたえてくれた。それどころか・・・毎回私に付き合ってくれた。」
彼は考え込んでいる。
「自分を許さなきゃ、他人も許せないんでしょ?だったらまず認めろ。」
彼は優しい。
だから・・・その優しさに気づいて。
そして、あなたがぜんぜん悪くないということ。
その優しさゆえに私をかばうために自らが悪役になろうとしているということを自覚して。
「あなたが優しいと認めれば私も認める。昨日の自分を許す。」
・・・まぁ、彼のことだ、認めないだろう。
だって・・・仮に私が彼にこういわれても、絶対に認めないから。
彼も私と同じ選択肢を出すだろう。
だが・・・
彼の質問は私の予想を裏切った。
「いいぜ。僕は超優しい。毎回毎回乗り気じゃないお前の提案にわざわざ手伝ってやってる。・・・これでどうだ?」
その「これでどうだ?」というのは、「お前も認めろ」という意味なのか?
・・・今、気づいた。
私たちはお互いに自らを責め続けている。
そして理由は・・・
お互いを悪役にしないため。
お互いをかばうため。
なら・・・私も覚悟を決めよう。
「そう・・・なら私も、お金持ちで美人なのに、わざわざお前というさえない男に付き合ってやっている。」
彼は私がこういったのを満足そうに微笑んでいた。
「・・・お前・・・」
「・・・あなた・・・」
「ナルシストだな。」
見事にかぶった。
「ハハ・・・」
「フフ・・・」
笑いさえこみ上げてくる。
・・・こんな状況なのに。
「・・・お互い様か・・・」
「みたいね。」
これは決して、彼の優しさに甘えるという意味ではない。
彼の優しさに甘えるのではなく、彼のミスを私も一緒に背負うかわりに、私のミスも彼が背負ってくれる。
いわば交換条件。
しかし・・彼にミスなどあったのだろうか?
うまく丸め込まれた気がする。
いや・・・彼にミスはないが・・・
彼は彼を責め続けていた。
だから・・・それを私が背負い、彼にミスがなかったことを自覚させる。
多分彼も・・・同じことを考えてみるのではないだろうか・・・
となれば・・・
お互いをお互いがかばいあい、お互いがお互いのミスを自覚する。
そして・・・
このミスを次につなげる。
仮にまたどちらかがミスしようとすれば・・・
もう片方がとめる。
お互いを背負いあうというのはきっとこういう意味なのだろう。
「自分を許さなければ、他人も許せない。」
それはもしかしたら、あたっているのかもしれない。
この言葉があったからこそ、私たちは「背負いあう」という「交換条件」を作り出すことが出来た。
そう・・・信頼という名のもとで結ばれたレベルの高い「交換条件」を。
「さて・・・帰るか。」
「ちょっと待って!」
まだ・・・私は伝え切れていないことがある。
もちろん結果なんてものはわかっている。
けど・・・それでも伝えておかないといけないことがある。
そして・・・宣言しないといけないことがある。
「私は・・・」
「・・・」
・・・恥ずかしい。
前に告白したときは、こんな感情なんて感じなかったのに・・・
私もずいぶんとかわったものだ。
「お前のことが・・・好きだ。」
「・・・」
そう・・・結果が見えていること。
「・・・僕たちは・・・今まで通りでいいと思う。」
彼なら絶対にこういう選択肢をとると思った。
だが・・・
それでも運が私はいい。
「今まで通り」でいいのだ。
手をきらなくて済むのだ。
「・・・それって・・・」
「ごめん・・・お前の気持ちには・・・こたえられない。」
わかってるよ、そんなこと。
そうじゃないとあなたらしくない。
私は今のあなたの気持ちを知りたかっただけ。
私の期待した答えが返ってきてくれてうれしい。
「フフッ・・・」
「?」
「そういうと思った。」
じゃぁ告白なんてするなよ・・・
という目で彼は見ている。
でも・・・どうしても告白しておきたかったんだ。
そして・・・宣言しておきたかったんだ。
「なぁ・・・お前は今まで通りといった・・・それは、今まで通り、お前の隣にいていいってことだよな?」
「あぁ・・・」
なら・・・堂々と宣言できるな。
「なら・・・これからお前という男を私という1人の女性に惚れさせてやる!!」
そう・・・彼を「奴隷」としてではなく、「1人の男性」として・・・
1人の男性として、これから私は彼を惚れさせる。
これを・・・どうしても決意・宣言しておきたかった。
彼は目をまるくしている。
私のこの行動が意外だったのだろうか・・・
だが・・・
こうなったら、もう私をとめることは誰にもできん。
「ハハ・・・」
「絶対にお前に私を惚れさせてやる!!」
「そうだな・・・僕を惚れさせてみろ!そしたら・・・付き合ってやる。」
そして、彼はその宣言に見事に「返答」した。
それこそが私のなかでの真の「返答」。
上等。
やってる。
絶対に・・・
絶対に惚れさせてやる!
その後、彼は家に帰り、私も家でいつもどおりにやることを済ませた。
さぁ・・・明日は生徒会と抗議だ。
「宣言」 完
いやぁ~、やっと仲直りさせられました・・・
なんかここら辺は書いていて「グダってるなぁ~」とか思ったりしています。
次回からは「VS生徒会」編となります。
これからもよろしくお願いします。