治安
不知火と飯を作り終わり、出来上がった飯をテーブルの上へおく。
卯月はなぜだか知らないが、不機嫌だ。
「・・・なんでそんなに不機嫌そうなんだよ?」
「別に。」
「・・・不機嫌じゃねぇか。」
「別に。」
・・・これは相手にしてもすべて「別に」で通しそうだ。
面倒だから、さっさと飯を運ぶ作業に専念しよう。
「・・・これで最後か?」
「あぁ、手伝ってもらって悪かった、先輩。」
「なぁに、いいってことよ!」
というわけでみんなそろって「いただきます」と、手を合わせた。
「なぁ、親はいいのか?」
「あぁ・・・親父は夜遅くにならないと帰ってこない。」
「・・・」
「母はもう寝た。」
え!?何が何でも早すぎじゃないか!?
このうちはそこまで「疾風」なのか!?
きいてみよう。
「・・・早くないか?」
「そうだな・・・まぁ、皆がきているか気を利かせてくれたのだろう。」
「・・・悪いな。」
「そう親に伝えておく。」
なんてことを話しながら食べる。
一方いつもよくしゃべる問題児は今日は不機嫌なので静かだ。
「・・・静かじゃねぇか。」
「飯は静かに味わって食べるものだ。」
「あぁ、そうかい。」
やれやれ・・・
なんでこんなに不機嫌なのだろう?
何かやらかしたか?
んなことはしてないが・・・
「卯月先輩。」
「?」
すると今度は不知火が卯月にしゃべりはじめた。
「たしかに飯は味わって食べるものだが、皆としゃべりながら食べるのも悪くないぞ?」
「・・・」
「んなにらむことないだろう・・・」
すると今度は卯月は僕を・・・
それはそれは怖い怖~い目つきでにらんだ。
が!!
そんなの僕には効かん!!
なぜなら僕はもうこいつににらまれすぎてるからだ。
つまり慣れというものだ。
「はぁ・・・」
「なんだ、そのため息は?」
うわぁ・・・
また地雷を踏んでしまったか・・・
「別に。ただ、またかって思っただけだよ。」
「なんだとッ!?だいたいこれはお前が・・・」
「?」
「・・・なんでもない。」
なんなんだよ・・・
僕が何をしたというのだ?
「・・・」
「・・・」
「・・・」
気まずい空気が漂う。
さすがにこの流れはまずい。
何か話題を作らなければ・・・
「そ・そうだ!そういえば、中東のほうで紛争が激化してるらしいな。」
昨日にテレビでやっていたことを話題に出すことにした。
「まぁ、あそこはいつだってドンパチやってる地域ですからねぇ・・・」
「なんでも最近、急激に対多国籍軍組織の装備が充実しているらしい。」
「というと?」
「戦車とか戦闘機とかも投入してくるっていってたな。」
数では対多国籍軍組織のほうが人数は多い。
そこに多国籍軍とほぼ同じ兵装でこられたら、多国籍軍はかなり苦戦するだろう。
「しかも、反国家組織同士で手をつないでるって噂もでてる。」
「・・・」
「異常に反国家組織や対多国籍軍組織の装備が充実しはじめているらしいからな。」
なんとも怖い話である。
やはりいつの時代も、人と人とが殺しあう時代は避けたいものだ。
「そういえば先輩、この地域に強盗が多発してるって知ってますか?」
「え?そうなのか?」
それはまた意外なことである。
そのことに関してはまったく知らなかった。
「えぇ。でも、人は襲わないので、警察は市民を混乱させたくないってことであまり表向きには公表していないみたいです。」
「よくそんなこと知ってるな。」
「そういう情報は早いです。」
さすがといわんばかりだ。
そんなこんなの話をしていると飯はすぐに食べ終わってしまっていた。
その後、片付けをして、家に帰ることとなる。
「今日はサンキューな、不知火。」
「いえいえ、こちらこそ無理に誘ってすまなかった。」
「いや、大丈夫だ。」
むしろ大丈夫じゃないのは隣の問題児。
さっきからずっとムスッとしている。
「なんか食い逃げみたいで悪いな。」
「いや、ぜんぜんかまわない。また機会があればうちによってくれ。」
「あぁ、ありがとな。」
そういって別れた。
それから数分歩いて・・・
さすがにこの気まずさに勝てなくなった僕は思い切ってきいてみることに。
「なぁ・・・そろそろ教えてくれよ。今日はなんでそんなに不機嫌なんだ?」
「別に。」
「・・・」
やはり答えはさっきと一緒。
「・・・はぁ・・・なんなんだよ・・・」
空を見上げると綺麗に星が見えていた。
「・・・お前が悪い。」
「・・・なんで?」
そしてしゃべり始めたかと思えば、今度は僕のせいになんかなっている。
「・・・私とあの女とではずいぶんと温度差があるじゃないか。」
「はぁ!?」
いや、意味わからん。
温度差?
そんなのあるのか?
てか、まず温度差ってなんの温度の差だよ?
体温?
なわけねぇ~か・・・
「何が「いつでも手伝ってやるぞ!」だ。私にはそんなこと、一言もいってないじゃないか。」
「・・・」
いや、マジで何について怒ってるのはサッパリだ・・・
おかげでどう反応すればいいかもわからん。
「人がきいていないということをいいことに、イチャつきやがって・・・」
「・・・あの・・・さ。・・・結局何がいいたいんだ?」
すると、この問題児は僕をにらみつけた。
あぁ・・・また地雷を踏んだ・・・
でも、実際何についていってるかわからなかったし・・・
今回は地雷を踏んで、後悔はない。
・・・と思う。
ちなみに古文だと「思ふ」となるらしい。
「だから!!私は・・・」
「私は?」
「・・・その・・・」
「?」
急に卯月が下を向いた。
まったくなんなんだ?
「・・・なんでもない!!」
「え!?」
そこまでいっておいて、そこで打ち切りかよ!?
てか、僕のどこがいけなかったんだ?
マジで・・・
「・・・だぁ~!!貴様はどこまで鈍感なんだ!?」
「なんだよ・・・急に。」
今度は毎回お馴染みの侮辱ときた。
「大体、なんで飯を食ってるときに話をふってくれなかったんだ!?あの女にばっかりふって!」
「あのなぁ・・・お前が進んで話を拒んだんじゃねぇか・・・」
「お前が何か私に話題をふれば、私は対応した!!」
・・・嘘つけ。
あのとき、あんなに不機嫌だったじゃねぇかよ・・・
「はぁ・・・これだから鈍感男は苦労するんだ。」
「・・・なんだよ、その超上から目線は・・・」
まぁ、上から目線なのはいつものことなのだが・・・
「この私という美人がいながら貴様は・・・」
「なんのことだよ・・・てか、自分で美人っていうなよ・・・」
毎回毎回苦労しているのはこっちのはずなのだが・・・
とか思ってしまう自分がいる。
「・・・もういい!!」
「・・・意味わからん。」
「意味わからないのは貴様のほうだ!」
今回は相当お怒りのようだ・・・
謝るもお怒りの原因がわからないから、謝れない・・・
すると左側から急にライトが光った。
「危ない!!」
咄嗟の防衛反応?
みたいな反射能力的なもので、少し左前を歩いている卯月の腕を引っ張る。
「!?」
もう少しで轢かれるところだった・・・
白いワゴン車が全速力で走っていった。
その後ろを2~3台のパトカーが追いかけていった。
(もしかして・・・今のが不知火がいっていた強盗?)
そんなことを思っていると・・・
「なぁ・・・お前・・・この状況は・・・と・とりあえずどいてくれないか?」
「え?」
気づけば僕は四つんばいになっていた。
下に卯月が倒れこんでいるという、まさに危険な態勢。
「ちょっ!何、この・・・」
「・・・!!」
すると今度は一般市民に見られた。
「・・・す・すみません!!」
一般人は走っていってしまった。
「ちょっ!僕たちはそんな関係じゃ・・・」
「いいから早くどけ!!」
・・・とそうだった。
すぐさまにどく。
急いでどく。
神速のごとくどく。
何せ、自分の命がかかっているのだから。
「・・・まったく・・・」
「・・・ごめん。」
「次やったら殺す。」
「・・・」
なんとも物騒な話だ。
てか、命を救ってあげたのに、この扱い・・・
ひどくない?
「・・・まぁ、一応感謝する。」
「・・・あぁ。」
それでも・・・まぁ、感謝されたことだし、いいか。
やはり人に感謝されるということはいいことだ。
「にしてもさっきの車・・・」
「どうした?」
「・・・なんでもない。」
今日のこいつは「なんでもない」が多い気がする。
どうしたのだろうか?
(うちの霧雨が使う車と車種が同じだったな・・・まぁ、偶然だろう。)
「・・・にしても・・・あの人・・・完璧に誤解してたな・・・」
思い出すと結構へこむものである。
いわば無罪の罪をきせられた気分である。
「まぁ、気にするな。こんな美人を抱ける一歩手前までいけたことを、まず神様に感謝するがいい。」
「・・・」
こいつは・・・
てか、僕はわざとやったんじゃないし。
どちらかというと神様と抗議したいものだ。
「・・・あと貴様。」
「なんだよ・・・」
まだ何かあるのか?
「次、あの女とイチャついたら殺す。」
「・・・あの女って不知火か?」
「そうだ。」
「・・・てかイチャついてないし。」
何を勘違いしているのだろうか・・・こいつは。
「いや、イチャついていた!」
「・・・いや、どうみればイチャついているように見えるんだよ・・・ただの先輩と後輩の仲だろうが・・・」
よくわからないが、彼女はそれについて怒っていたのだろうか?
う~ん・・・やっぱアニメのほうが現実よりいいな。
アニメはわからないことだらけでも、最後は必ずわかる!
けど・・・現実世界は実際わからないことはわからないままだからな。
このことはよくわからん。
明日、女性に「いろいろと」詳しい桶狭間にでもきいてみるか・・・
そんなこんなである意味長い1日はどうにか終了した。
今日1日で僕は3日分の体力と精神力を使った気がする・・・
なぜそんなに疲れたかは知らないが・・・
おそらく原因は、あの2人に間違いないだろう!
とりあえず今日は家に帰ったらゆっくり休むということにしよう。
「治安」 完