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なんで僕が!?  作者: へたれ度100%
11/79

解放

「性格」の卯月視点の物語です。

この土日はあっという間に過ぎてしまった。


土曜日はなかなか退屈しない日となった。

日曜日は、次はどんな手であの男を攻略しようかをずっと考えていた。


そんなこんなでもう月曜日だ。

朝の日差しがまぶしい。


「お嬢様、朝食でございます。」

「ありがとう。」


とりあえず朝食を食べる。


「~♪」

「・・・ご機嫌ですね。」

「そう?」

「えぇ。」


今日もあの馬鹿にあいにいってやろう。

ほんの少しだけ楽しみでもある。

暇つぶしとして、最適なのだ。


「私が・・・ご機嫌・・・ねぇ・・・」

「えぇ、ご機嫌でした。」


じぃやは私にすごく優しい。


中学の頃、私が付き合っていた男子と喧嘩して、泣いてしまったとき・・・

つきっきりで相談にのってくれた。

結局その男子とは仲直りできなかったし、男子の見方もかわってしまったが・・・

それでもうれしかった。

男子の見方がかわったが、「じぃや」だけはかわらなかった。


そして、それ以降、私は何人もの男子と付き合っては別れた。

利用するだけ利用して切り捨てた。

もちろん、草食系がいるのだから、肉食系もいる。

そういう男は抗議しに、家にやってくる。


そのときもじぃやはいつもその男どもに頭を下げてくれた。

・・・私が悪いのに。

だから、私はじぃやの優しさに頼ってしまっていた。


こんな付き合っては別れて、なんてことを父に知られたら殺される。

こっちの出来事はすべてじぃやが父に毎日報告をしている。

だけど、じぃやはそのことだけは報告しなかった。


じぃやは私が毎日苦しい生活をしているのを知っていた。

毎日苦しんでいるのを知っていた。

だから、そのストレスが原因だろうと考えたらしい。


原因などどうだっていいが・・・

じぃやは私の苦しみを知っていたからこそ、報告しないでいてくれた。

おかげで私は思うのままに男を利用することができたのである。




そして今もその状況は続いている。

目標はたった1人。

けど、その1人は面倒なまでに手ごわい。

じぃやは前の作戦にも加担してくれた。

じぃやだけが私の頼れる存在だった。


「・・・お嬢様。」


そんなじぃやは毎朝、必ず確認することがある。


「本日は、ピアノのレッスン、お茶の指導、それから・・・」

「全部キャンセルいてちょうだい。それと・・・いつものように父には私がしっかりうけていると報告を。もちろん、先生たちにもそういわせるようにお金を倍に渡しておきなさい。」

「はい、お嬢様。」


なぜこんなことをいつも確認するのだろう?

答えはいつも決まっているのに。


「ねぇ・・・なんで毎回、こんなことを確認するの?」

「それは、お嬢様、もしかしたら、あなたがやる気になってくれるかもしれませんから。」

「・・・そう。」


じぃやにとっても私は完璧であってほしいのだろう。

けど、私はそこまで完璧じゃない。

練習なんてしても、疲れるだけ。

でもそれでも信じてくれるじぃやのことを思うと、少し悪い気になってしまう。



さて・・・しかしながら、今日も退屈である。

こういう日はあの男の攻略を進めることにしよう。

とっとと奴隷を作らないと、楽ができない。


「じぃや、車を。」

「はい。」


家の外にでて、車に乗り込む。


「あ、じぃや、今日は・・・」

「わかっております。彼の家の近くでよろしいでしょうか?」


相変わらずじぃやには見え見えのようだ。


「えぇ、お願い。」



そして、目的地について、車から降りた。


「ではお嬢様、お気をつけてくださいませ。」

「えぇ、ありがとね。」


そういって手を戻っていく車に手を振る。

こんなこと、じぃやにしかしないことだ。


そして少し待っていると、やっときた・・・

「カモ」である。


今日はのんきに空を見ながら登校か・・・

まったく・・・相変わらず平和ボケしたやつめ。


「あの!!」

「・・・お前・・・何やってるんだ?」


・・・朝っぱらから気に食わない態度。

この私がわざわざ貴様という下人を待っててやったというのに・・・


「失礼ですね、あなたを待っていたんですよ。」

「・・・」


あまりうれしそうではない様子をみると、さらにイライラが募る。


「これから私は毎日あなたと登校しますので!」

「はぁ!?」


その態度・・・

その言葉・・・

気に食わない。

ウザイ。


そんなことを思っていると後ろから声がした。


「とぅ!!」

「かはっ!」


うるさいのがやってきた。

桶狭間という男だ。

こいつはいつもうるさくて、正直苦手だが、最大限に利用できる男だ。


「よぅ、朝から一緒に登校なんて、もうラブラブじゃん。」


うるさい。

何もわかっていないくせに、余計なことをいうな。


私はこの男を利用するために一緒にいるだけだ。

ラブラブでもなんでもない。


「・・・桶狭間・・・てめぇ・・・」

「ごめんのぅ・・・ボケ狭間は朝からテンションがいかれとんじゃ。」


今度はよくわからないしゃべり方をする男。

お前のしゃべり方は理解しにくい。

それが面白いと思っているのであれば、それは痛い子である。


「だぁ~!!てめぇ、朝から俺のことをボケっていうんじゃねぇ!」

「あぁ?よくきこえないな・・・」

「・・・関ヶ原・・・喧嘩うってるのか?」

「そんな商売はあまりしたくないものだね。」


毎回おなじみの喧嘩。

子供の喧嘩のようで、見ていてこっちがイライラさせられる。


隣の男は隣で下手な苦笑いをしている。

ふん、いつまでもこう平和でいられるわけではないのだから、今のうちに笑っておくんだな。


「よぅ、十六夜。」


すると最後の男がやってきた。

五月雨 時雨。

・・・前々に告白を邪魔された。

邪魔な男。


「よぅ、五月雨。」

「朝から元気だな。」

「元気じゃねぇ~よ・・・朝っぱらからハイキックは喰らうは、待ち伏せは喰らうは・・・」

「ハハハ、充実してるじゃないか。」

「してない!そこは断固否定する!!」


こんな調子で学校へと向かう。

ウザイし、うるさいし、変なしゃべり方だし、邪魔だし・・・

最悪な奴らばかりそろっているが・・・

不思議と見ていて飽きないものだ。

それは毎回自分に「なぜ?」と問いただしてしまう。


学校につくと、「カモ」は救世主のところへといった。

「長篠」。

無口で、戦略ゲーム好きのクズ。

彼はなぜかわからないが、よく「カモ」である十六夜を助ける。

そのため、十六夜と長篠はとても仲が良い。


・・・別にうらやましいというわけではない。

が・・・

どうやったらあそこまで十六夜と仲良くなれるのか・・・

長篠にきいてみたいものだ。



今は授業の3時間目が終わったところだ。

十六夜はどこかへいこうとする。

気になったので行こうとすると前をふさがれた。


「?」

「よぅ、卯月。」


そこに立ちはだかっていたのは、「川中」という女だった。


「話があるんだ、会議室までこいや。」

「・・・なんでです。」

「いいからこいっつってんだ!!」


彼女が怒鳴ったせいで、クラスは静まりかえった。


「・・・わかりました。」

「そうだ。それでいい。」


そして、少し歩いて、会議室前まできた。

が、会議室はあいにく使われていた。


「チッ・・・おい、お前ら。」

「わかってますよ、姐さん。」


すると彼女の子分(?)のうちの1人がいきなり強くドアを開けた。

なかには生徒が10人ほどいた。


「なんだ!?」

「お前ら、ここからでていけ!」

「な!?」


なかにいた生徒たちは皆、戸惑った。


「ここはこれから臨時の生徒会会議室として使う。」

「何を勝手に・・・」


すると、子分のうちの1人がゆっくりと歩き出す。


「生徒会1年副会長の川口だ。お前ら、すぐそこをどかせ。さもないと・・・」

「うっ・・・わかった!」


そういうと皆、生徒たちはでていった。

この高校で生徒会は非常に権力が強い。

また先生たちからの信頼度も非常に強い。

生徒会の力を使えば、嘘の証言で、先生たちを誘導し、生徒たちに攻撃することができる。

権力を使った間接的攻撃だ。


「よし、川口、よくやった。」

「ありがとうございます。」

「お前らは会議室前で見張っていろ。誰一人この部屋にいれるな。」

「はい、姐さん!お前ら、いくぞ。」


そういうと同じクラスの副生徒会長の川口は他の子分たちをひきつれ、でていく。


「これでゆっくり話しができるな。」

「・・・あの・・・なんのご用件ですか?」


川中という女とは元同じ中学だ。

こいつは前からその性格をフルで活用し、バリバリ子分を作り、指揮りまくっていた。

それは今もかわっていないようだ。


「ふざけるな。お前、もう言われること、わかってるんじゃねぇのか?」

「何のことでしょう?」

「・・・フッ・・・あくまでとぼけるか・・・」


彼女の恐ろしさは昔から知っている。

中学でもたびたび言い合いになった。


「率直に言おう。これ以上、十六夜星矢とかかわるのをやめてもらおう。」


それはわかりきっていたこと。

だが、そういわれると、やめたくなんてなくなる。

まぁ、もともとやめる気もないが。


「・・・だったら・・・お前もそろそろクラスメイトを子分にするのをやめたらどうだ?」

「なっ!?」


もう避けられない。

ならやってやる。

喧嘩上等だ。


「もうお前は十分だろう?私が見たところは4~5人はいるが?」

「5人だ。」

「それ以上いてもあまりかわらないだろう?」


攻撃するときは一気に攻める。

敵にこちらへ攻撃をする隙を与えないようにするためだ。


「・・・いいだろう、私も5人もいれば十分だ。」


が、誤算だった。

今回は聞き分けがよかった。


「だが・・・そのかわり、貴様はこれ以上十六夜とかかわるのをやめてもらおう。」


ミスった。

攻撃させる隙を簡単に与えてしまった。


「フッ、ならお前も子分をすべて捨てたらどうだ?」

「それはできんな。」

「ならこっちもできない。」


お互いは中学のときのことを反省し、それを生かしていた。

冷静に対応していた。


「なら・・・今日で最後にしてもらおう。」

「・・・」

「もしお前が今日で最後にすれば、私も子分を減らそうじゃないか。」


減らす?

減らすだって?


「それは不平等じゃないか?」

「それはお前がやることをやってからいうべき台詞じゃないのか?」


よく考えろ。

今の「カモ」を捨てるだけで、こいつは「子分」をすべて捨てるといっている。

なら、新たなカモを作れば、今度こそ私をとめてられる者はいなくなる。

どうする?

どっちのほうが利益がある?


・・・決まっているじゃないか。


「わかった。・・・今日で最後にしてやる。」

「・・・ほぅ?」

「そのかわり、それに応じたら、子分は捨ててもらおう。」

「・・・わかった。」


ここで1つの契約ができた。



そしてその日の帰り道。


「・・・で?なんで付いてくるの?」


それは今日で最後だから、お前を少しでも利用するためだ。

まぁ、利用できるかはわからんが・・・

最後まで私は諦めない。


「いやぁ、付いていっているわけではありません。帰り道が一緒なだけです。」

「・・・お前の家、明らかに逆方向だろうが!」

「あっれー?そうでしたっけ?」


相変わらず勘が鋭い奴だ。

鈍感のくせに。

勘だけは嫌にさえている。


「もしかして・・・方向音痴ですか?」

「なんでそういう結果になるんだよ・・・」


だが・・・

これ以降、彼はしゃべろうとしなかった。


仕方ない・・・

この空気はまずいし、私がなにか話題をふろう。


「そういえば今日の理科の授業、わかりましたか?」

「え?・・・あ~、あまりわからなかったな。」

「ですよね!!意味わからないですよ!!」

「・・・そうだな。」


テキトーな答え。

気に食わない。


・・・いや、待て待て。

いつもの彼らしくない。

何かあったのだろうか?


「・・・何かあったの?」

「・・・いや、なんでもないよ。」


本当に嘘のつけない男。

嘘がつけないとは不便な男だ。

てか、こいつは私にバレバレなことを理解できていないのだろうか?

だとしたら、救いようのない馬鹿ということになる。

とりあえず問い詰めよう。


「・・・嘘だよ。」

「なんでもないって。」

「嘘でしょ?」

「・・・」


やはり嘘のようだ。


「・・・嘘つけない人って大変だね。」


なんて少し皮肉を込めてみる。

なに、こいつは鈍感だから、この皮肉にも気づかないだろう。


さぁ、問い詰めよう。

嘘のつけない男を。


「・・・どうしたの?」


だが返ってきた返事は意外なものだった。


「・・・お前に関係ないだろう。」

「なっ!?」


それは私を否定する言葉。

気に食わない。

関係ないだろ・・・

だと!?


それはつい言葉に表れてしまう。


「関係ないだろ!?人が気を使ってやっているというのに!!」


ついつい素がでてしまった。

まぁ、鈍感な男はうまくつなげば大丈夫なはずだ!


「・・・といえば、教えてくれるかな?」

「・・・」

「・・・」


今日はいつものように次の話へとかわらない。

気まずい空気になる。


「なぁ・・・お前さぁ、そんなに本心を溜め込んで、ストレスたまらないのか?」


なっ!?

バレた!?

いや、今までと同じだ。

ごまかせるはず。


「な・なんのことですか?」

「・・・いや、何のことって・・・」


・・・この様子だとずっと前から気づいていたようだった。

まったく私としたことが。

前々から気づかれていたのに、無理につなげようとしているなんて・・・


まぁ、最後だし、彼の質問にも、答えてやるか。


「・・・たまるよ。」

「え?」

「・・・たまる。ものすごくたまる。」


それは根っからの本音。

なんでこんなどうにもならないことをこんな頼りない男にしゃべっているのだろう・・・

私も相当な馬鹿だ。


「ならなんでそんなに使い分けてるんだよ?」

「だって・・・私は卯月コーポレーション社長の娘だから・・・」


彼はキョトンとしている。

まぁ、そりゃぁそうだろう。


「あなたにはわからないよ。」


そう・・・あなたには。

平和で貧乏だけど何一つ不自由のない生活をしているあなたには・・・


「私は大企業、卯月コーポレーション社長の娘なのよ!?完璧でなくちゃいけないのよ!」

「なぁ、さっきからよくわからないことを並べてるけどよ・・・」


だぁ~!!

ここまでいってもわからないなんて・・・

どこまで鈍感なんだ!?

これは一種の病気か?


「あなた、ホントに馬鹿ね!!」

「まぁ、馬鹿なのは認めるけど。・・・でもさ、その大企業社長に娘さんに、性格って関係あるの?」

「あるに決まってるじゃない!だって世界のトップをいく会社は皆、弱点がない。それは娘だってそう。」


いっていて気づいた。

こんなたわいもない、彼にとっては死ぬほどどうでもいい話を・・・

彼は真面目に笑わずに聞いていてくれた。

・・・まぁ、聞いてきたのが彼なのだからそこで笑ったりしたら、殺すが。


「なんでも完璧にこなせる娘じゃないとダメ。そう思うのはどこの会社の社長も同じなのよ。」

「・・・」

「私の父だってそう!私を完璧な女性にしようとしている。わかる!?いつも綺麗な言葉を使っていないと、ご飯すらぬきになるのよ!?何かうまくできないと、すぐ先生にボロくそいわれる。」


実際オーバーになんていっていない。

すべて本当のこと。

まぁ、どうせこんな話、信じてくれないだろう。


「だから、お前は完璧でおしとやかな可愛い女の子を演じてるってのか?」

「それしかないじゃない。」


そこまでいうと、彼は難しい顔をしていた。

それは考え込んでいるようだった。

何に?

・・・わからない。

というか・・・この馬鹿は、今の話を理解できたのだろうか?


「・・・はぁ・・・僕にはやっぱ、その考え方はわからないよ。」

「は?」


・・・やっぱり理解できていなかった。

ここまで説明したのに・・・

理解できないなんて、ありえない・・・

信じられない。


「だってさ、そんなの会社の前でだけいい子にしてりゃいいんだろ?プライベートなんて関係ないじゃん。」

「だからそれは・・・」

「それにその先生とやらが何かいうなら、言いたいだけ言わせておけばいいんだよ。」

「え?」


その彼の言葉に私は思わず声をだしてしまった。


「その代わりに、思いっきり反抗してやればいいのさ。」

「・・・」


そう・・・まるで反抗期のガキのような考え方。

でも、たしかに反抗・・・できたらどれだけいいだろう。


「そんなことしたら、ご飯も抜きになるし・・・」

「んなら、僕ん家で食べてく?」

「は?」


彼の答えは奇想天外である。

普通、よそ者を勝手に食卓に案内するだろうか?

この男はやっぱり意味わからん。


「そんなことまでしたら、追放される・・・」

「いや、いくらなんでも自分の娘をそんなことは・・・」


やはり彼は軽くうけとめている。

本当はそんなに軽くない。

そんなことをいってもどうにもならない。

わかっている。

わかっているのに、なぜだか彼に言っている私がいる。

なんでこんなことを彼なんかに相談してるんだろう・・・


「する。父はそんなに甘くない。」

「・・・はぁ・・・じゃぁ、家でもいい子にしてればいい。けどさ・・・」


そうさ。

結局これしか道はないんだ。


「?」

「せめて僕の前だけなら、素でいていいよ。」


そのときの彼は私の目にはとても格好良く・優しく見えた。

そう・・・ピアノを弾いているときや、ボディーガードとしての役目をまっとうしたときのような・・・

とても、格好良く・・・優しい。


よくよく聞いてみれば、告白も同然じゃないか。

最終日にして私は勝利を手に入れられたのか?

一応確認をしてみる。


「フッ・・・なにそれ?告白のつもり?」

「・・・どうとったら、そう解釈できるんだよ・・・」


どうやら勝利・・・というわけではなさそうだ。

でも・・・今の彼なら頼れるような気がした。

あのとき・・・ピアノのときやボディーガードのときと同じ彼なら。


「本当に・・・素でいていいのか?」

「うん。」


即答だった。

優柔不断男のくせに・・・

珍しく早い回答。


「・・・報告しない?」

「誰に?」

「・・・なんでもない。」


そりゃぁそうか。

彼はまず誰に報告すればいいか知らない。

なら安全だ。


「なら・・・お前を信用してやろうじゃないか。」


その言葉は言った私本人ですら、びっくりの言葉だった。

今まで・・・

中学のときの付き合っていた男子との喧嘩以来、「じぃや」以外の人を頼ろうなんて思ったことはない。

ましてや、信用しようなんて確実に思ってはいない。

なのに・・・

今、私はサラリとその言葉をいった・・・

無意識に。


「おう、任せとけってんだ!」


こんな細くて、運動神経がなくて、筋力もない。

どこからどうみたって頼りなさそうな男に頼ってしまうなんて・・・

私の人生もとうとう危ないところまできてしまったのだろうか・・・



その後、彼と別れ、家に帰った。


「せめて僕の前だけなら、素でいていいよ。」

・・・か。

そんなこと言われたら、手を切りたくても、切れなくなってしまうじゃないか。


・・・悪いな、川中。

お前との契約は破棄させてもらうぞ。




いつしか私は彼を・・・

「奴隷」の候補としてではなく、少しは「頼りになる人物」と見るようになっていた・・・



                         「解放」 完

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