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曇り空が晴れるとき

 変わったんだね。奏。


健吾の瞳に映る愛娘は決意に溢れながらも、不安で押し潰されそうであった。


「Vtuberに・・・なるの」


困惑した。それと同時に、一歩を踏み出してくれたことが、凄く嬉しかった。


 高校1年の終わり頃、なにか絶望を覚えた

顔つきで帰ってきた時、言った言葉が脳裏によぎる。


 学校、行きたくない・・・。


聞けば、学友に母が死んだことを好奇心で聞かれたそうだ。子供特有の、無邪気な好奇心。

それにあてられてしまったのだろう。

 それ以来、部屋に塞ぎ込んでしまった奏は

見ていて痛々しかった。



「・・・Vtuberに。奏が?」

「う、ん・・・ごめんなさい。いきなりのことで」


台所で洗い物をしている飛鳥くんに目を向けると、どこか気まずそうに目を逸らされた。


なるほど、飛鳥くんは知っていたんだね。


「詳しい話を聞かせて欲しいな。奏」

「え?・・・その、応募したのは、先月ぐらいで・・・それで、最終面接は、最近パス出来て」


そうか・・・そうだったのか。


「僕に言えなかった理由、聞いてもいいかい」

「・・・パパに心配かけちゃうかなとか、もし

上手くいかなかったらとか・・・色々考えてたら、中々言い出せなくて」

「そうか・・・」


後ろ向きに物を考えてしまうのは、恐らく僕に似てしまったのだろう。変なところで血のつながりを感じて、少し微笑ましくなる。


「飛鳥くんはいつから?」

「・・・昨日です」


もっと詳しくいうと、昨日の夜。カレーを食べる前に言い渡された。


きっと、飛鳥くんが背中を押してくれたんだろうね。


「飛鳥くん、やはりあの人の息子だね」

「・・・自分ではよくわかりませんが、周りにはそう言われましたね。集まりとかで」

「あ、あの!」


奏が身を乗り出し、逸れようとした話題を引き戻す。


そうだね。今は、昔を懐かしむ場合ではない。


「パパ・・・的には、反対かな」

「奏、僕は、あまりVtuberっていうものに詳しい訳じゃないけど」

「・・・」



塞ぎ込んでしまった奏を、救ってくれたのだ。

だから・・・最愛の娘が、それになりたいということに、反対な訳ない。


「奏ひとりで、色々と考えてしまうぐらいには

辛い道になる。それはわかるかい?」

「・・・うん」

「なら、僕は止めないよ。・・・母さんも、絶対に応援している」

「っ!」


そう、あの人は絶対に応援している。昔から

奏に厳しく、それでも・・・


「僕達は、奏のやりたいことを尊重したい。名一杯、Vtuberを楽しみなさい」

「・・・!!」


久しぶりに見た。奏の、この笑顔。元来この娘は、このように笑ってくれる子であった。


「やったぁぁ!!パパ!!本当に、ありがとう!!」

「はは、頑張るんだよ」


嬉しそうに笑っている飛鳥くんに目を向ける。

やはり、父親にそっくりであった。


何度、僕も背中を押されただろうか。その後、

優しい笑顔を向けられただろうか。


「飛鳥くんも、ありがとう!」

「何度目ですか。俺は何もしてませんよ」

「ううん!!飛鳥くんは、私のファン1号じゃん!」

「健吾さんじゃないのね・・・」

「うーん、順番的には僕は2号ってことか。なんだか悔しいね」


1号じゃないのは悔しいけれど、その1号が飛鳥くんだというのなら、素直に譲るしかない。


「・・・ふぅ、よし!それじゃあ、早速!来る日に備えて、挨拶とか色々考えなくちゃ!」



奏の笑顔を引っ張り出した功績者は、紛れもなく、彼なのだから。


「楽しみだね。飛鳥くん」

「・・・はい。本当に」

子供のころ、親が離婚したとか周りに言っても別に気にならなかったんですけどね。

いつからかな。周りに家庭事情を話すのって、妙に気が引けませんでした?俺だけ?

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