表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/24

有意義な土曜日 2

「結局、買ったのはマイクだけ・・・」


 右手にぶら下がった袋の中身は、高品質な

マイクただ一個のみであった。

他にも買えばいいのでは?と言ってみても


「んー、よくわかんないし。やっぱりちはやさんにあれこれ聞いて、通販で買おうかな」


一体、今までの時間はなんだったのか。

でも、奏さんの嬉しそうな表情を見てしまうと

まぁ、別にいっかと思えてしまう。


「お待たせ、行こっか」

「はい」


ぼーっと待ちぼうけていると、後ろから肩を

叩かれ、歩き出す。数本前を歩き続ける義姉の

後ろ姿は、本当に楽しそうであった。


「奏さん」

「ん?」

「楽しそうですね」

「うん、楽しいよ」



秋葉の騒がしい街並みを歩きながら、奏さんは振り向いた。その一連の所作が綺麗で、少しだけ目を奪われた。


「特に俺ら会話してないのに?」

「うんー、そうだねぇ・・・。飛鳥くん、何を言っても淡白な返事しかしない」

「あー、申し訳ないです」

「あは!冗談だよ、むしろそれぐらいのテンション感の方が私もやりやすいよ」


そう言われてホッとする。つまらない人間なのは自分でもわかっているため、そう言ってくれると胸の重みが軽くなる。


「それに・・・なにより、飛鳥くんが一緒にいるっていうのが、1番大きいかな」

「え?変わってますね」

「・・・へへ、そうかな」


俺と一緒にいるメリットってあるのか?

財布ぐらいにならなれるけど・・・。会計しようとしたら、奏さんに怒られたし。わからん


「俺じゃなくてもよくないですか?ほら、さっき言ってた・・・ちはやさんとか?っていうか

ちはやさんって誰・・・」

「ちはやさんはしんふぉにーの大先輩!私の面接を担当してくれたんだー」


なるほど。それなら、奏さんが頼りにするわけだ。


「なら、尚更。ちはやさんの方がよくないですかね?」

「・・・さっきから、私と一緒に出掛けたくないみたいな言い方・・・」

「え、あ、違くて!」


むすっとしてしまった・・・。元々の童顔に

さらに磨きがかかるほど、頬を膨らませる。

拗ねさせてしまった、これはまずい。


「何が違うんですか」

「・・・俺の真似ですか?」

「へへ、当たり」


そこまで怒ってはないようで安心する。そして

俺ってそう見えてるのかとも、内心呟く。


「俺、そんな真顔ですか」

「うん、私の相手する時は大体こんなだよ」

「・・・あー、申し訳ないです。つまらないとかじゃないですよ?奏さんの相手するの」

「あれ?そうなの?」


いや、そうだろ。むしろ楽しいとさえ思ってる。


「んー、でも・・・飛鳥くんって、パパ相手だと結構表情にでるよね」

「まあ・・・」

「あはは・・・。めんどうだよね私」


あ、これはガチで落ち込んでる。悲しい笑顔を

浮かべられると、胸がとても痛むから本当にやめてほしい。


「思ってないですよ。めんどうとか」

「じゃあ・・・単純に嫌い?飛鳥くんって、強引な人苦手そうだもんね」

「それはそうだけど」

「・・・だよね」


・・・ええい、もう言ってしまえ。


「奏さん」

「ん?」



 頬が熱い。耳も熱を感じる。それでも、恥ずかしさを追い抜いて、少し震える口を広げて、一歩先を歩く義姉に、胸の内を話す。


「苦手とかじゃないんですよ。・・・ただ、奏さんといると、緊張するんです」

「・・・え、なんで?」

「えと、綺麗だから?あはは・・・、ごめんなさい。引きますよね」


 義理の弟・・・いや、世間一般的な弟の立場で姉に向かって言う言葉ではないとわかっているが、伝えなければ。これで避けられようが、嫌われようが、あんな表情されるよりはマシだ


「・・・そう来るか」

「え?」

「なんでも〜、でもそっかぁ〜。お姉ちゃんは

綺麗ですか〜?」

「・・・はい」


顔を逸らす。なんだこれ・・・俺だいぶキモイな。言っといてあれだけど、言わなきゃよかったかも・・・。


「・・・ふぅ〜ん。そう、思ってるんだ」


 逸らす飛鳥は気づかない。綺麗だと言われて、目の前の義姉も、頬を染めている事に。


「嫌いなわけじゃないんだね」

「え?当たり前ですよ。むしろ好きです」


「・・・えっ!!!!」

「?」


バッと振り向かれる。さっきとは違って、優雅さのカケラもない。余裕のない動きであった


「す、好きなの?」

「そりゃあ・・・嫌いになる要素ないですし」

「あ、ああ。そっちね」


何か・・・変な事言ってしまっただろうか。冷や汗が止まらない、変なことを言ってしまっていたら気まずい。ただでさえ、<義理>の姉なのに


「本当に嫌いじゃないです。奏さんのこと好きですよ!」

「わ、わかったから!!あんま公の場で好きって言わないで!?」

「でも奏さんよそよそしいです!!!」

「飛鳥くんが変な事言うからじゃん!!」

「やっぱ変な事言ってました!?それは違うんですよ!!」

「え!?違うの!?」


人が入り浸る歩道の2人組に目線が集まる。なんだ?なんだ?と、カップルの喧嘩なのかと。


「す、好きじゃないの!?やっぱ嫌いなの!?」

「好きですよ!」

「違くないじゃん!!」

「ええ!?・・・ちょ、なんでズカズカ前に行くんですか?」

「恥ずかしいからだよ!」

「俺、恥ずかしいこと言ってました?」

「言ってるよ!?」

「え、いつ!?」


奏の歩幅は加速する。それに釣られて、飛鳥の

足も加速する。


「い、いま!好きって言ったからぁ・・・!」

「え!?好きですもんだって!」



「もうーーーー!!!!大声で好きって言うなぁぁぁーーー!!!」



2人の土曜日は、まだ終わらない

今更ですが、アホみたいに更新遅いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ