ふたつの意味 4
誕生日は、クリスマスが終わって次の日になるまで続いた。
「うぅん・・・。んぅ」
主役は幸せな顔のまま、夢の世界に落ちてしまった。話していたら急に寝落ちするんだから、本当にびっくりした。
「奏さん、寝た?」
「うん。折角だし、寝顔撮っちゃお」
面白半分で奏さんの可愛い寝顔を写真に収める。
19歳になる女性とは思えない、幼い寝顔だった。
「ね、そっち行っていい?」
「うん」
ソファで1人くつろいでいる鳥海さんの隣に座る。
鳥海さんも眠気にやられているのか、少し長い欠伸をこぼしていた。
「楽しかった?」
「え?」
座った途端。鳥海さんにそう問われる。
「・・・うん。楽しかった。少しだけ、心が軽くなった」
「そか」
鳥海さんの視線はずっとテレビに注がれ続いてる。クリスマスは過ぎているのに、内容はいまだに25日を感じてしまう。
「私、プレゼント用意してなかった」
「また後日に渡せば良いじゃん。それに、奏さんと名前で呼び合う権利貰ったろ」
「そ、そんなのプレゼントにならないでしょ」
プレゼント?あはは、そんな良いのに〜。
えー?じゃあ・・・。
白奈ちゃんって呼びたいな。ダメ?
昔の人が天使を崇めた理由がわかった気がした。あんな頼まれ方したら、誰だってダメですなんて言えるわけない。いたら締める。
「そもそも私、元から奏さん呼び出し」
「細かいな〜木ノ下は」
「・・・そういう鳥海さんは、何渡したの?」
「マフラー」
「巻いてたやつ?」
「そう」
マフラー姿の奏さんを思い浮かべて、そっかそっかと納得する。少し大人びいていたマフラーは、奏さんにとても似合っていた。
「センスいいね。やるじゃん」
「まぁね」
得意げに微笑まれる。
私も、プレゼントを用意していたらこんな風に
笑えていたのかもしれない。
「奏さんって、何が欲しいんだろ。わかる?」
「わからん」
「じゃあなんでマフラーを選んだのさ」
「持ってないって言ってたから」
極めて単純な理由だった。
「うぅ〜、わかんない・・・。奏さん、何渡したら喜んでくれるかな」
「なんだろうな」
適当に相槌を打たれて、少しだけムッとしてしまう。こっちは真面目に悩んでいるのに。
プレゼントを渡せた勝者は、いまだに悩み続ける挑戦者なんてどうでもいいのだ。
「木ノ下と奏さんって、趣味嗜好が似てるんだよな。──木ノ下の欲しいもの渡せば?」
「え?」
その言葉で、モヤモヤしていた感情が晴れていくのを感じた。
「前から思ってたんだよなぁ。奏さんとどっか通ずるものあるって」
「・・・私の、欲しいもの」
思えば、奏さんはクリスマスプレゼントと合わせて、誕生日プレゼントを渡されてきたのかな
いや、違う。
絶対に違う。
鳥海飛鳥は、そんなことをしないだろう。
「クリスマスプレゼントは、何渡したの?」
投げかけられた言葉を、鳥海さんは受け止めてくれたのかわからない。けれど、そこに込められた意味を、理解してくれないのは知っていた
「一緒に出掛けた。すげぇ楽しかった」
やっぱり、恋というのは悪魔の別名かもしれない。
その感情に操られて、私は抱えてはいけないのに、どうしたってそれを抱いてしまう。
「・・・あのさ」
ポッケから、スマホを取り出して。
ずっと欲しかったものを、私は求めた。
「連絡先。ちょうだい」
「あぁ、そういえば交換してなかったか」
凄く嬉しい事なのに、私の心は少し冷めていた。
いや、燃え上がってはいる。
ケーキに刺されたロウソクの火よりも。
燃えたぎっている。
「あと、飛鳥の明日が欲しい」
「え?」
「それと、今日泊まって良い?」
「いいけど・・・。木ノ下──」
「白奈」
熱い。
でも、それだけだ。この人が言ったんだ。
私の欲しいものを考えろって。
クリスマスプレゼントと誕生日プレゼントを分けるなんて、凄く律儀な人だ。
──ほんと律儀な人だね。
「白奈・・・って呼んでよ。飛鳥」
この熱を与えた責任を絶対に取らせてやる。




