ふたつの意味 1
「なんなの!?あの人!木ノ下ちゃんに言いたい放題で!!」
俺の前を歩く奏さんは、見てわかる通りに怒り心頭であった。
「誰なの?木ノ下ちゃんの知り合い?」
「あ、えと・・・。クラスメイト」
「えぇ!?ク、クラスメイトにあんな言われる!?いじめられたりとかしてない?」
隣を歩く木ノ下は困った様に笑っていた。
先程まで泣いていたから、目は少し赤く腫れてしまっている。
「最低だよっ。普通、女の子にあそこまで言うかな・・・。飛鳥君が来てくれなかったら、手出そうとしてたよね」
「怖い事を言わないでください・・・」
もしそんな事があったらと思うと、怖くて仕方ない。木ノ下もそれを思い出したのか、俺の腕にしがみついて、身を震わせる。
「もう大丈夫だから。目、痛くない?」
「うん・・・」
しおらしく頷かれて、ひしひしと恐怖が伝わってくる。
湧き上がる恐怖心に打ち勝てず、巻きつかれた
俺の腕は悲鳴をあげてる。
「・・・木ノ下ちゃん。うち来る?」
「え?」
そんな木ノ下を見兼ねてか、奏さんはいつもの様に楽しく笑いかける。
「あのね?これから家でお祝いするんだ。2人だけじゃ寂しいし、木ノ下ちゃんも来てくれたら嬉しいんだけど」
「えと、いいんですか?」
「もちろん、良いに決まってるじゃん。ね?」
そう言って、こちらに同意を求めてくる奏さんを見て少し笑ってしまう。
「そうですね。2人は寂しいですもんね」
「うっ」
「・・・?」
今朝の言葉を思い出しながら、そう口に出せば
奏さんは頬を染めて忌々しげにこちらを睨む。
まぁ、奏さんがいいなら。俺は何も言わない
「じゃ、じゃあ私は先に帰って暖房つけてくるね!!お2人さんはごゆっくりどうぞ〜!」
「あ、ちょ」
「意外と足速いな・・・」
早口のまま駆けていく奏さんは意外にも足が早かった。そんな人を止める事なんて出来るわけなく、俺達は取り残されてしまう。
「・・・」
「ま、奏さんに甘えて俺達はゆっくり行こう」
「う、うん」
抱きしめられていた俺の腕は気付けば離れていた。
いつかの様に、木ノ下は俺の数本後ろで歩いている。
「なんか、懐かしいな。初めて会った時もこうやって歩いた」
「・・・だね」
木ノ下の声音はいまだに弱々しい。
こんなにもしおらしいと、正直どのように対応すればいいのか困ってしまう。
──仕方ない。本当は後で渡そうと思ったけど
「木ノ下、これ」
「え?」
鞄からひとつの包みを渡す。
袋は赤く、可愛らしいリボンで縛られているそれは、誰がどう見てもこの日に相応しい代物だった。
「メリークリスマス。鳥海サンタからの贈り物」
「・・・ぇ」
楽しげに笑う飛鳥、戸惑う白奈。
袋を受け取る女の子の手はいつも真っ赤だ。
「開けて開けて」
「う、わ、わかった」
恐る恐る、リボンを解いて袋から中身を取り出すと、出てきたのは手袋だった。
黒色で、入れ口には袋同様に可愛いリボンがあしらわれている。
「手袋だ・・・」
「木ノ下、いつも寒そうに手を暖めてるじゃん?だから、渡すならこれがいいなって」
寒そうに自分の手を吐いた息で暖めていた木ノ下。もしかしたら手袋を持っていたいないのではと思い、俺はこのプレゼントを選んだのだ。
流石、俺ってセンス抜ぐ────。
「──なんで」
「え?」
あまりにも突然だ。
固まるしかない。
得意げに笑っていた飛鳥は、今の現状に凍りついた。
木ノ下白奈は、泣いてしまった。




