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にじゅうごにち 1

「しーちゃん〜!」


佐藤小雪が手を振って自分の居場所を教えてくれる。


「ごめん、遅れちゃった」

「いいよいいよ。来てくれてありがとね!」


集合時間から10分は遅刻したというのに、小雪は嫌な顔をひとつもしない。

むしろ、楽しそう。


「あ〜あ、なんで他の人も来るんだろ。いつもだったら、私達に絡んでこないのに」


クリスマスパーティーの参加者を小雪に聞いてみると、やっぱり殆ど関わりのない人ばかり。

急なクラスメイトの擦り寄りに小雪はぷりぷりと怒っている。


「あと・・・橋下君も来んだよね」

「へぇ」


隣を歩く友人の顔が顰めっ面に変わっていく。

それほどまでに橋下君を嫌っているらしい


「同じクラスの東郷君が同じ部活なんだって。

それで、なんか面白半分で呼んだんだよね。

ぜっっっったい!!橋下君としーちゃんの事でいじるつもりだよ!!」


地団駄まで踏み始めた。ザクザク、と雪を踏みつける音が心地よい。


「最ッ抵!とっとと帰ってもらおう!!」

「よく想像でそこまで言えるね・・・。折角のクリスマスパーティーなんだし、楽しもうよ」

「・・・はぁ〜い。でも、ダルいいじりされたらすぐに言ってね」


小雪の黒髪が揺れて、無邪気な笑顔を見せてくれる。そこにあるのは、ただ私への気遣いのみ


「──ふふ、うん。ありがと、小雪」

「〜〜〜ッッ!!し、しーちゃんが、デレたっ」


笑顔はころりと変わって、珍しい物を見た様に

顔を輝かせた。

そして、両腕をこちらに絡めてきた。


「ちょ、歩きづらい」

「いいじゃんいいじゃん。ほら、もうすぐだよ」


指差した先。本当に目的地はすぐそこだった


扉の前に近づいてみれば、ガヤガヤと騒がしい


「もう始まってんのかな」


小雪が扉を開けてみれば、一瞬の静寂の後に

店内を震わす歓声へと変わった


「来たー!!来た来た!!」

「佐藤さん、木ノ下さん〜!こんにちは」


麗しきお姫様二人に目を向ける・・・いや、二人ではない。その視線の先は、ただ一人。


ざわざわと、男子達が盛り上がる。


「っしゃあ!じゃ、2人も来たし乾杯し直そうぜ!」

「だね!」


みんな一斉に、紙コップを持ち上げる。

どうしたものかと思い悩んでいると、美咲からジュースを渡される。


「ほれ、オレンジジュースでいい?」

「美咲・・・。うん、ありがとう」

「小雪も」

「ありがとー、みさみさ」


クラスの中心の男子が、高らかに手を掲げる。

それに釣られてみんなも楽しそうに声を上げる


「メリークリスマス!!かんぱぁい!!」


かんぱーい。


居酒屋らしい、賑やかな雰囲気に笑みが溢れる。

美咲のお父さんも、それに気をよくしたのかキッチンから料理を持ってきた。


「おうおう!楽しめよ!みんな、ほら。唐揚げ出来たぞ!」


その一言で、また騒がしくなる。


「座ろ座ろ」

「うん」


小雪に腕を掴まれながら、奥の席へと移動させられる。


ちょっとした少スペース。

そこに、小雪、私、美咲のいつもの3人が座る


「いつから始まってたの?」

「確か、1時間前ぐらいから?案外、みんな来るの早かったよ。特に東郷君」

「は、マジかよ。だる」

「小雪・・・」


隠そうともしない嫌悪感。不服そうに唐揚げを頬張っている。


「白奈、この機会にみんなと交流深めたら?まぁ、あと数ヶ月でクラス替えだけど」

「意味ないからやめよ〜」

「小雪ー!」


美咲がわーっと怒って、小雪の小さな頭を掴んでぐわんぐわんと揺らす。


「や、やめてぇ!!」

「生意気言うのはこの口か!?えぇ!?」

「ならほっぺを引っ張ってよぉ!」


頬なら良いんだ・・・。


2人のやり取りに和んでいると、数人の女子がこちらに寄ってきた。


「木ノ下さん!メリークリスマス!」

「あ、うん。メリクリ」


だ、誰だ。この子は?


ゾロゾロと名も知らぬ女子達が集まってくる。


「小野寺さ〜ん、メリクリー」

「うん!小雪ちゃん、誘ってくれてありがとう!」

「・・・ウンッ!ハハ、ウンウン!」


相当、嫌だったのか・・・。


どこから椅子を持ってきて、私達はひとつのグループになる。


食べて。話して。飲んで。笑って。



・・・楽しい。凄く楽しい。


そのおかげか、ダメージを負っていた心が

癒されていくのを感じる。


「で、小野寺凄い必死でさ!」

「喋りすぎ!だって、木ノ下さんと仲良くなれるチャンスじゃん!」

「小野寺さん、私と仲良くなりたかったの?」


ポニーテールが揺れる。どうやら、合っているらしい。


「あ、えっと・・・うん」

「なら普通に話しかけに来れば良いじゃんー」


小雪の言葉は最もだった。隣に座る美咲は確かにと呟いている。


「木ノ下さん・・・ちょっと怖かったの」

「あぁ」


納得。


「人を寄せ付けないオーラっていうか、狼みたいっていうか・・・髪の色も、ね?」

「ま、小野寺ちゃんの言いたい事分かるよ。私も、白奈と初対面の頃やべぇやついるって思ったし」

「おい」


美咲の肩に頭突きをかます。ケラケラと笑いながら、唐揚げを咀嚼して飲み込んで。


「でも、印象って、話してみると変わるもんだよ?可愛いとこいっぱいあるんだから。白奈」

「美咲・・・急に何?恥ずいんだけど・・・」


美咲の言葉に、頬を赤く染める白奈。

それを見た第三者も何故だか悶える様に、身をくねらせて・・・。


「〜〜〜ッッ!!と、尊いー!!」

「やっば!え、やっば!!可愛いの空間だわ」

「しーちゃん、私ともてぇてぇしよう」


だ、大丈夫かな。この子達・・・。


そこからはくだらない話で盛り上がり、白奈も笑顔を見せ始める。居酒屋という空間だからなのか、陽気な雰囲気が絶えることはなく──


「そういえば、冬休み前に木ノ下ちゃん誰かと帰ってたよね?あれって誰なの!?」

「え」


急な暴露に固まってしまった。


「偶然私達見ちゃったんだよね!あの木ノ下ちゃんがすっごい楽しそうにしてるって!」

「遠目からでもわかったんだけどさ、すっごい美形じゃなかった!?」


「も、もしかして・・・彼氏?」


その言葉に、ズキリと胸が痛くなる。


「こらぁ!しーちゃんに彼氏なんていないよ!」


慌てて小雪が割って入って、3人の猛攻を止めてくれる。


「ちなみに、しーちゃんはトイレにも行かないし、鼻毛なんてないし。いびきもかかない」

「アイドルか何か?」


話題を逸らそうとしているのか、はたまた本気でそう思っているのかわからないけど、今の私にはありがたかった。


正直に言って、鳥海さんの事は今でも想っている。


例え、クリスマスを一緒に過ごす特別な人がいたとしても──。


やばい、マジで泣きそう。


「あ、あはは。ごめんごめん、実は針山が一目惚れしちゃったみたいで・・・。それで色々と聞きたくなってしまい・・・」

「は?」

「小野寺ちゃんッ!?」


2度目の爆弾発言に身が固まる。

慌てる女の子が針山だと、簡単に特定できた


「あー、だから彼氏かどうか聞いたんだんね」


呑気にジュースを飲む美咲。


「で、どうなの?しーちゃん?彼氏なの?」


ハイライトが薄れていく小雪。


「ち、違うよ、違うからね?ただ、綺麗な人って言っただけで・・・。一目惚れとかじゃ」


あわあわと、1人慌てる針山さん。


「・・・むぅ」


頬を染める針山さんを見て、ここにいない鳥海さんに何故だか無性に腹が立った。


あいつ、自分はモテないとか言っときながら

色んな子に目つけられてんじゃん。


自分の中の嫉妬心からか、木ノ下白奈は嘘をついた。



「あー、あれ女の子だよ。正真正銘」

「え!?」

「ま、マジ!?え、でもスラックス履いてたよね」

「それはスカートが恥ずかしいからやね」


適当な嘘だったのに、案外バレないもので。


「えぇ・・・イケメン女子って実在したんだ」

「わ、私・・・女の子にあんな胸が高鳴ってたんだ」

「針山さんが私みたいになっちゃった」



鳥海飛鳥は女の子になってしまった。


私は少しだけ、罪悪感を覚えた。

ごめん鳥海さん・・・。



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