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にじゅうよんにち 1

24日といえばクリスマスイヴだ。

しかも、降りしきる雪の影響で自分たちの住んでいる街はそれはもう白一色。


外のイルミネーションは綺麗だし、吐いた息の色の行方が見える、ロマンチックな時間だ。


「さ、じゃんじゃん頼みなよ。お姉さんの奢りだぞ!」

「やったー!」

「わ、わぁい」


何故だか、俺はそんなロマンチックな日に、風情もへったくれもない焼肉屋へと足を運んでいた。



事の発端は、数日前へと遡る。


「飛鳥くん、24日暇?」

「ん、はい。暇ですよ」


目前の試合に集中している最中、奏さんに肩を叩かれて、振り向いた矢先に言われたその一言


これにそう答えた結果、現在の状況が完成した。



「あ〜あ、何がクリスマスイヴだよ。いい?クリスマスってそもそも、恋人達のための夜とかじゃなくてキリスト教の──」

「も、桃子さん!わ、私!カルビが食べたいな」

「若いねぇ〜」


何故ここに 歌恋ちはや・・・。


もとい、桜田桃子さんがいるのかというと──



「ちはやさんにご飯誘われたんだ〜。飛鳥くんにも来て欲しいんだって」

「いや、24日に?」



予定がないなら、配信した方がいいんじゃないか?クリスマス前の配信なんて、人が集まると思うんだけど・・・。



「ほら、弟くんは?」

「え?あ〜、どれにしよう」


──色々考えるのはやめよう。


桃子さんが奢ってくれるのだから、今はそれに甘えるべきだ。


しかも高級焼肉店、こんな機会は滅多にない。


「じゃあ・・・これで」


適当に安めのやつを指差す。桃子さんは少しだけこちらをチラ見したが、何も言わず微笑んだ


「そっか、じゃあ〜。私はー」


メニュー表をパラパラめくり、ひとつ頷いて呼び出しのベルを鳴らす。今時、端末で注文しないなんて珍しいな。


「お待たせしました、ご注文をどうぞ」


襖を開けて、店員が現れた。

そう、ここは個室。俺、個室の飲食店とか初めてだよ。


「はい、はい。繰り返します──」


店員さんが注文を再度確認する。俺らは一品ずつ注文したけど、桃子さんは色んなの注文していた、その中にお酒があった気がするが・・・


「飛鳥くん飛鳥くん」

「はい?」

「こういうお店、あんまり来た事ないから緊張するね」

「はは、ですよね。俺初めてだから、なんかそわそわしますよ」


子供2人のやりとりに、桜田桃子は微笑む。


・・・ラブホ初めてのカップルかな?


桃子は口を結んだ。


「──以上でよろしいですか?」

「え?ああ、はい。大丈夫で〜す」


スゥーっと、上品に退出していく店員さん。

まるで旅館の人間だ。


「今日はありがとうございます、桃子さん。

俺まで呼んでもらっちゃって」

「気にしないでよ、奏だけ誘うのもあれだしね

逆にこっちこそごめんね、本当に予定はない?」

「ないですよ、勉強で潰れる予定でした」

「それも大事な予定でしょ」


ケラケラと笑われる。

そう言える桃子さんは真面目な人なんだろう。


「一日中勉強する予定だったの?」

「え?弟君ってガリ勉タイプ?」

「その言い方やめてくださいよ、暇だから勉強しようって思っただけです」

「暇だから勉強って・・・」


言わないでほしい。つまらない人生と・・・


「こういう日は、恋人と過ごすものじゃない?学生ならさ」

「いるの?」

「いません」


いたらここにいない。


「へぇ、作んないの?」

「そう簡単に作れるものじゃないですよ」

「飛鳥くんなら作れそうだけどね」

「嫌味にしか聞こえない」


これ以上追撃されると、俺のちっぽけな自尊心が壊される。何か、他の話題を・・・


「失礼します、生ビールでーす」

「はいはーい。ありがとうございま〜す」


まぁまぁ大きいジョッキが桃子さんの前に置かれる。泡が今にもこぼれ落ちそうであった。


「それと、メロンソーダとウーロン茶です〜」


俺と奏さんは両手を上げる。


奏さんの前にウーロン茶。

俺の前にメロンソーダ。


「それでは、ごゆっくりどうぞ」


店員が退出したのを確認して、俺と奏さんは互いの飲み物を入れ替える。


「じゃ、かんぱ〜い」

「乾杯〜!」

「乾杯」


ひとつのジョッキと、ふたつのコップをぶつける。カチンと心地の良い音が鳴るのを確認して


「ん、ん・・・。っあぁぁぁ!美味いっ!」


おっさんすぎる・・・。


桃子さんの豪快な喉越し音と、豪快な感想。

漢らしくて感動した。


「このために生きてる・・・。私は」

「もっと目標は高く持って、ちはやさん」

「こら、名前で呼びなさい」

「わ、ごめんなさい」


個室といえど、活動名で呼ぶのは御法度だ。

漏れでもしたら一貫の終わりである。


「そういえば、配信しなくていいんですか?こんな日なのに」

「は?」

「ごめんなさい」


俺の持ち合わせていた疑問は桃子さんの威嚇によって亡き者にされた。


「こんな日に配信したら、ちはやちゃん彼氏はいいの〜?とか、イヴに配信とか寂しwとか色々言われんだよムカつくよね」

「あ、あはは」


もう酔っ払ってない?この人・・・。

活動名で呼ぶなって言ったのに、自分で言っちゃってるし。


「大体、私が彼氏作ったら絶対なんか言ってくるくせに、煽ってくる奴らはなんなの?」

「水飲みます?」

「酔ってねぇよ」


なら尚更怖いわ。


「私は、奏がそんな奴らに馬鹿にされると思うと・・・許せないッ」


「桃子さん・・・」


「私が出来ないのに、奏に出来る訳ないじゃん!!!!」


「桃子さん・・・????」


なんだこのやりとりは・・・。


しばらく桃子さんの愚痴を面白半分で聞いていると、やっとメインのお肉達が配膳されてきた。



「でさぁ!律ってマジでFPSが上手いんだよ、なのに、なのにね?好きなゲームはルンファクとか牧場物語が好きなんだよ可愛くない?」


そして、2杯目のビールで出来上がった桜田桃子が完成した。


「わかります!すっごく可愛ですよね」

「だよなぁ!」

「ギャップやばいですよね!ほのぼのゲームやってるりっちゃん激かわですよね!いつものクールさが消えてほわほわしてますし!」

「わかるわぁ↑↑」


そして何故か、テンションが高まった鳥海奏も完成した。


「はぐ、でさでさ。最近、琴美がさ、むぐむぐ

最近、レッスン場・・・はぐ、最近、レッスン場・・・むぐむぐ」

「喋るか食べるかどっちかにして・・・」


喋る事ループしちゃってるよ。


「あ、もしかしてボーッと座って歌詞暗記してた話ですか?」

「そうそう!やばくない?家でやればいいのに

わざわざレッスン場借りてんの!まじで笑っちゃってさ。いや、なんで借りたん?て聞いたの」

「はい、はいっ!」

「え?んー、あは!なんとなくっ!って言われて!こいつおもろー!って!」

「あはははっ!!!」



「・・・」


やばい、怖い。ひたすらにこの空間が怖すぎる

俺に矛先が向いた瞬間、一瞬で串刺しだ・・・


細々とお肉を焼いて、タレに付けてご飯と共に口に含んでいると、桃子さんのたれ目がこちらに向いた。


「でさでさ、弟くん」

「終わった」

「え?なにが?」

「いや、なんでもないです・・・。どうしました?」

「多分ね、弟君が律を見たら好きになっちゃうと思うんだよね」

「いきなり何言ってんの・・・」


真顔で何言ってんだ?


「もう〜、何言ってんですか?桃子さんっ!」


ニコニコ笑顔で、笑い声を混ぜながら面白いものを聞いた様に奏さんが俺の背中を叩きまくる。


・・・普通に痛い。



「飛鳥くんに彼女は必要ないですよぉ〜!」

「何言ってんの?」

「あはははははッッッッ!確かに〜(?)」

「何言ってんの?」



ダメだ。俺1人では捌ききれないぞ・・・ッ


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