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【6-2】新しくできる事

屠百舌を南方へと飛び立たせて時間がしばらく経ち…私は困っていました。

そう自分の命がかかっている状況でまだまだ私には足りないものだらけなのはわかっているのですが…では今すぐやれそうな事で新しい事が思い浮かばなかったのです。


やるべき事なんてすぐに迫ってきて山積みになって忙しさから逃れないだろうと思っていたのですけれど、実際今はこうなのです。

いつもやっていた「管理者ネット」での情報収集や新しい事柄への検証ぐらいしか思い当たらず、マナが溜まるのを待つなり偵察の結果を待つなりといった時間の経過を待たなければならない前提が多いという事実に思い当たって思わず呆けてしまいました。

馬鹿みたいに呆けている場合では無いのですけれど…。


何かすべき事は無いか、本当に新しく打てる手は無いのか…とりあえずじっとしていても仕方はありませんので歩きだしてみる事にします。

暢気に散歩をしているように見えますがこれでも真面目に…いえ虚飾はいけませんね少し気が抜けてしまって散歩をしています。

ですが、こう何も重たく考えずに風景を楽しみながら歩くのも悪くは無いです。

思い返せば直近でも人を殺さなければいけなかったりアンデッドと接したり激しい暴行を受けたりと…こちらの世界に来て常に色々と晒されていましたのでこういった気分転換をした事もありませんでしたからね。

こうゆっくりとお日様の温かみと緩やかな風を楽しみながら歩いていると心も落ち着いてきますし、新たな発見もあります。


そう、目の前の草の上でかがんでいる日輪鳥を発見するとその羽毛を枕にして寝ている元子供。


「うみゅ…すやすや…すぴーー」


やはり仕事の量が多いのか疲れがたまるのでしょう。

気持ちよさそうに日当たりの良さそうな所で昼寝をしています。

安らかな寝顔を見ていると怒る気も怒りませんね…私も似たような事をしている手前ですし。

名付けを頼まれている点は悩ましいですがそれはそれ、寝顔が微笑ましいのでしばらく眺めてしまいました。


…そういえば、この子労働ばかりさせているのですけれど教育はどうなっているのかしら?

聞いた過去の話からすると全く受けてない気がするのだけれど…こっちの世界では義務教育は無いにしても読み書きを教えるぐらいはしないのでしょうか?


そうなると私のこの世界に対する知識が不足していますね。

そして勉強ができないかと言えばそういう事は無く…私は教師の心当たりの方へと歩き出し始めました。






『え…?読み書、きをおし、えるのですか?』


「それと並行してこちらの社会についても情報が欲しいのでまとめて教えていただく事は可能ですか?」


そう、私には記憶を取り戻した元現地の方、現アンデッドのエビルプリーストがいるのです。

闇魔法のテストをする予定も思い出しましたのでついでにまとめて進めてしまおうと思い話を持ちかけたのですが…。


『いいに、くいのですが…』


「何かしら?遠慮なく言ってください」


『…私字は読め、ても書けませ、ん』


「え?」


読む事だけできるってそんな事ありますか?

普通読み書きってセットで教えられるものじゃないの?

そう私は思っていたのだけどこちらでは…いえエビルプリーストはそうじゃなかったらしい。


『依頼書をよ、まないといけな、いはありまし、たのでお、ぼえましが書く必要、性はなかったので…』


なるほど、読む事については必要性に迫られたけど書く事については必要じゃなかったから覚えていないと。

それはまあわかる事情ではあるので納得する。

そうとしますと…。


「わかりました。では追加の仕事を頼む事になって悪いのですが、時間がある時にあの子に文字の読み方を教えてもらえないかしら?それと私には社会常識を教えていただければ」


『です、が何を元に、教えれば?』


「悪徳商人たちが帳簿や日誌を残していってくれました。まずはこちらを利用してみましょう」


私がそう言うとエビルプリーストは了解の意を示してくれたのでそれもお願いする事にする。

これが本当に必要かと言われるとそうでは無いかもしれません。

ですが新しい事に着手できるという事は新鮮な事でありローテーションされた動きよりもやる気ができます。

そうでした、もう1個仕事がありましたね、それならついでにこちらもお願いしてみましょうか。


「それなら子供への名前を付ける件ですがこちらも手伝ってもらえ…」


『わたしはせ、んすがないのでそ、っちはおことわりさせて、いただきます』


…こっちの方は駄目みたいですね。

これぐらいの相談乗ってくれてもいいと思いますが…結果は変わりそうにはありません。

仕方がないのでこの話はここで終わりにする事にしましょう…そしてこの後は色々と検証を手伝ってもらう事にしました。

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