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【4-6】空からの侵入者

「…え?」


「な…なんじゃい突然?」


この本が震えている時は少なくとも私に関わるか近くで何かが起こった事を示しています。

当然すぐにでも確認をしたい所なのですけれど…驚いているドワーフ達の前でこちらの手の内を見せてしまっても大丈夫でしょうか?


…ですがこの自問はすぐに終わります。

自分の命に危険が差し迫っているリスクが考えられる以上それよりも重要な事なんてあるわけがありません。

ドワーフへの情報漏洩というリスクを切り捨てるとそのまま「管理者の本」を開き何故震えているか原因を確認します。

すると、地図上に新たな侵入する点が南西から1つ…ドワーフ達が来た同じ方向からゆっくりと近づいてきます。


…これはどういう事でしょうか?

分からない以上ここで私があれこれと考えているのは時間の無駄です。

そんな事をするぐらいならば一番怪しい所から潰していきましょう。


「何じゃいそれは!?ま、まさか儂等に何か問題でもあったのか!?早まる…」


「失礼ですけれど至急聞きたい事があります!」


何故かドワーフ達は慌てふためいていますけれどそれ以上の声量で叫んで私の要求を押し通す事にしました。

私の出来損ないの威圧でも何故か押し切れたようでドワーフ達はピタッと止まります。


「…あなた達はここにいる3人で全員ですか?」


「な…ん?…3人だが?まさか他に誰かおるのか!?」


どうやらあっちには心当たりは無いようですけれどまだ嘘をついている可能性はあります。

ですので私はドワーフ達が来た方角へと勢いよく指差します。


「ではあちらから来るものは何でしょうか!?」


私がビシっと指差した先をドワーフ達も振り返って確認します。

力強く指差しましたが向きに関しては「管理者の本」の表示から推測した上で適当です。

ですけれどこちらに方角にいるのは間違いなさそうですし、それなら私の代わりに確認したドワーフが教えてくれるかそれともドワーフ達がぼろを出すか期待してその時を待ちます。

そして緊張した時間が続く事十数秒…とうとう沈黙に耐えきれなくなったドワーフの1人が重い声を漏らします。


「…何も…おらんようじゃが?」


…あれぇ、そんなはずは?

いえいえ、確かに「管理者の本」に反応はありました。

でしたら相手が目視できないかもしれない可能性も?

そう考えながらも自信が無くなって来た手は思わず上へと伸びてしまいます。

それを見ていたドワーフの視線も徐々に上へと移っていき、後ろの方にいたドワーフが声を上げます。


「ありゃあーランドトレーサーか?珍しい魔物じゃな?」


「ランドトレーサー?」


魔物…と言う事はドワーフ達の隠していた増援では無かったようです。

ですけれどどこかで聞いたようで覚えていない単語に思わず聞き返してしまいます。


「そうじゃ、空をゆっくりと飛びながら地上の獲物を探す鳥のような魔物じゃ」


「目はいいんじゃが早く飛ぶことも無いしのう…弱った獲物の足跡を辿るのが得意と聞いた事はある…」


「あいつが探しておるのは死肉じゃし、生きているもんはそうそう襲わん…だが妙じゃな?こんな所にいるなんて聞いた事も無いぞ?」


ドワーフ達の会話という名の解説で新たに侵入してきたものの正体がわかりました。

それで私は安心…する事なんかまったくできずむしろ焦りが増していきます。


最初から今の今まで気付かない違和感がありました。

そして違和感が積み重なるにつれ…今の状況は何かおかしいのではないかともやもやとした物が積もっていきます。


その違和感の一つを確認するために「管理者の本」の【眷属召喚】を確認してみますと…


------------------------------------------------------------------------------------------


名称:ランドトレーサー

種族:鳥

召喚コスト:風1

維持コスト:肉類、魚類


ステータス

体力 :2

攻撃力:1

魔力 :0

持久力:3

俊敏性:2

器用さ:1


装備スロット:0


スキル

①飛行2(中空ををゆっくりと飛ぶことができる)


特性

①地上視界(空から地上を視認する際視力向上)


------------------------------------------------------------------------------------------


うろ覚えでしたが、やはりランドトレーサーは管理者が眷属として召喚が可能な魔物で間違いなさそうです。

そうなると偶然こんな所をドワーフ達を尾行するように飛んでいたというとても怪しい状況は捨てておくわけにはいきません。


「あれをすぐに殺してきて」


私が指示をすると側に控えていたヒポグリフがバサバサと砂埃を吹かせながら離陸し、ランドトレーサーへと一直線に飛び立っていきます。

飛行スキル、俊敏性で勝っているので追い付けないはずは無いですしその後の戦闘ステータスはこちらが圧倒的に有利…勝ちは揺ぎ無いでしょう。


「あまり害は無い魔物じゃぞ?放っておいてもいいのではなかろうか?」


ドワーフ達は暢気にそんな事を言っていますけど私が考えるにかなり有害だと思います。

ですのでドワーフ達の事は無視して指示は取り下げません。

その後すぐに、ヒポグリフの存在に気付いたランドトレーサーはゆっくりと進路を変えようと旋回を始めましたが…そこを前足でがっしりとヒポグリフに捕まえられました。

そのままヒポグリフは地面に向かって急降下し…そのまま途中で離して地面に叩き付けます。


ゴゥ…


地面に衝突する音と共に埃が舞い踊り、地面が少しだけ揺れるとその周辺にランドトレーサーだった物の部位があちこちに飛び散ります。

正直な所、直視するのは気持ち悪かったのですけれど、脅威が肉片になった事は確認できましたのでまずは一安心です。

逆にドワーフ達はなぜここまでするのか納得できていないようでうろたえていますけど…。


ですが私の仕事はここからです。

この違和感の正体を確かめるべくこのドワーフ達を問い詰める必要がありますから。


---------------------------------------------------------------------------------------


話が結構進みましたので地図を更新しました。

文章のつたない部分を補完できれば幸いです。


挿絵(By みてみん)

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