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【3-7】いつの間にか知らぬ新機能

「え…え…えぇ―――――!?」


一瞬で現れた家具の数々に子供がまた絶叫しています。

こちらも普通ならできないであろうことでしょうし驚くのも無理はないと思います。

まあ、一々それに付き合うつもりはもう無いので次の事へと思考を傾けます。

後必要な物は…やはり布団があればいいのですけどないものねだりでしかないでしょう。

思い当たるのは…ちょっと違うかもしれませんけどあれぐらいでしょうか?

小屋へ移動し資材管理箱から目的の物を取り出します。


レーザ布…一つ取り出すと1メートル四方の白く分厚い布が手元に現れます。

丈夫そうなのはいいですけど…手で撫でてみるとごつごつとして粗いざらざらさが際立ちます。

壊れた馬車から回収した幌の部分の布なので仕方ないのかもしれませんけどこちらを使用しましょう。

2枚を自分のベッドの上に放り出すと残りの2枚を折り畳んで持って小屋の外へ出ます。


「これを寝る時に使うといいですよ。はっきり言って寝具としては最低ですけど無いよりは遥かにいいですから」


そう言って何かを言い返す前に子供に手渡すと私は周囲に聞こえるように声を張り上げます。


「今日のお仕事はお終いです。所定の命令を遂行する以外は自由にしてください。あ、後明日は遠くまで移動する予定なのでゆっくり休むように!」


そう言い終わると私は小屋の中へと戻ります。


やっと終わったぁ…。

小屋に戻って扉を閉め終わると私はへにゃへにゃとベッドの布の上に崩れ落ちます。

毎日思うのですけど…どうして私がこんな目にあっているのでしょうか?


誰かの玩具として見知らぬ世界に放り出されて生きるのに毎日必死、命のやり取りをしなければいけない。

今日は今日とて恨みつらみを残した顔をしている死体を我慢して処理して、自分の面倒もままならないのに子供の面倒までも見ている。


…全部私が決断した事です。

だから納得して我慢して全て受け入れろというのも…はいそうですと言えるわけがないじゃないですか!


ほんの半月前までは親に養ってもらって、生活に困るどころか美味しい食事が気軽にとれて、快適な睡眠が約束され、安全で清潔な住居がありました。

大学で将来役に立つかどうかわからない知識を学んで、友達と時には喧嘩しながらも仲良く遊んで、お出かけして買い物してちょっとした浪費を楽しむ…そんな生活が当たり前だったのに。



…はぁぁぁぁ。



長い溜息をつくと私は顔だけむくりと上げると両手でパチンと両側から頬を叩いて気を取り直します。

もやもやとしたものに踏ん切りをつけたわけではありません…行動しないと死んでしまうので仕方なく強引に気持ちを切り替えただけです。

これからどうなるのか不安で押しつぶされそうですけれど、やれる事をしていくしかないのでしょう。


心の中で乾いたように自嘲して自分を納得させると「管理者の本」を開きます。

今日も今日とて晩の食事までは情報をチェックして動向を見ておかないといけません…ってあら?

何か光っている項目がありますね。

ちょっと気になるので触れてみますと表示されるのは【戸籍】という見た事も無い項目です。


…いえ、本当に見た事が無いのですけれど?

説明を受けた記憶もありませんし、どういう機能なのか…確認しておく必要はあるでしょう。

【戸籍】の項目を選択して画面を開くとただ一行だけ本に表示されます。


・名無し


このように表示されています。

試しにリストの項目に指で触れてみると私の支配している土地の地図が表示され、その中で光り輝く点が一つ表示されます。

本拠点からほんの少しだけ東…予想はついていましたけどこの点はログハウスを建築した場所…すなわち子供がいる場所が表示されていますね。


さて、ここから考えられるのは…私が子供に住んでもいいと許可をしたことが原因でしょうか?

あのいい加減な女の説明にはありませんでしたけど、この世界の現地の方と共存したり…悪い場合は支配したり奴隷にしたりした場合に解放されると考えてよさそうです。

…まあ解放されてしまったので解放条件の究明はどうでもいいでしょう。

特に不便な事は無く、むしろ監視がしやすくなるありがたい機能なので私にとっては歓迎すべき事です。

…そういえば「管理者の本」が警告でずっと震えていたのがいつの間にか止まっています。

思い返してみると…ちょうど今朝、渋々と子供が滞在するのを認めた時だったと思います。


なるほど私が認めて【戸籍】に登録されると「管理者の本」の侵入警報に引っかからなくなると予想できますね。

…これは一長一短ありそうな気がしますので気を付けておいた方がよさそうです。


そしてここから気になるのは…【戸籍】はこれだけの機能なのでしょうか?

これだけの機能ならばそれで問題は無いのですけれど、何かが条件となり機能拡張があったりするとすればその分を他の管理者を警戒しなければならないでしょう。

その条件は【戸籍】に登録する人数?それとも性別?年齢?

全く分からないので手探りになるでしょうけど…余裕があればその辺りの実験もすべきかもしれませんね。


さて、新しい事に目を取られてしまいましたけど他の情報にも目を通しておきましょう。


【管理者ネット】の動向は…並んでいる眷属の種類も数も増えて来ましたね。

買うわけではないですけど眷属の情報とマナの消費量を知っておくだけでもためになるのでなるべく覚え込んでおきます。

そして神の奇跡カードは出品がわずか2,3点しかないので流し見をして終わらせて…そろそろ10日以上経過するので道具

で売りに出されている物がかなり増えてきました。

ただ明らかに相場が高すぎると思います。

果物2個に1マナは釣り合わないと思いますよ?

…まあ余程切羽詰まっている人がいれば売れないという事は無いでしょう。

それ以外に気になったのは見慣れない材木や木の実…それに道具が並んでいる事でしょうか?

材木や木の実については他の人の近くに運よく採取ができる土地があったのでしょう…実にうらやましい事です。

道具については…規則性が無いですね。

農具であったり衣服であったり…ですけど材料についてはこの世界の物が使用されているようです。


…ひょっとするとリスクを恐れずにこの世界の人達と交流して交易をしているのでしょうか?

確かに取れる選択肢が増えますしそういった行動も大いにありでしょう。

私には怖くてできません…少なくとも力が不足している今は駄目です。


それに加えてこの世界の貨幣も道具として売られていますね。

…他の国の名前がついた貨幣がほとんどですけれど、数は少ないですがローゼリア王国下貨という項目も見受けられます。

当然私は出品していませんので…距離は近いか遠いかはわかりませんけど同じ国内に管理者がいますね。

遅かれ早かれ接触は避けられないかもしれません…その時に手を取り合うのかそれとも敵対するのか、どう転ぶにせよまだまだ力を蓄えて選択肢を増やしておく必要があるでしょう。

無論行動にも気を付ける必要があると思いますが…それで拡大路線を止める事はありません。

ですが気に留めておくことは大事です。


見て想像をしているだけなのに先行きの怪しさから気分が重くなってきます。

そしてこの私の不幸を見て楽しんでいるあの女達がいると思うと…はらわたが煮えくり返りますね。


私は頭を抱えてごろんとベッドの上に転がると、ふと違和感を覚えます。

何でしょうかこれは…においがおかしいような。


これは…煙たい!?

誰かが火を使っている!?

慌てて身を起こすと状況を確認すべく小屋の外へと飛び出しました。

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