【1-4】土地の管理
『あらいけない「管理者の本」の説明を忘れていたわ。さっきマナを出した時と同じように手を出しなさい』
女の後について小屋の外に出ると何か忘れていた事があるのか私に指示をします。
…整理されているのではなくこの女が思い出したら説明をしていく調子だとしたら説明漏れが起こるかもしれませんね…要注意です。
とりあえず言われた事を拒否する理由は無いのでさっきと同じように手の平を天に向けてかざしてみます。
『さっきはマナが出るように念じれば出たけど今度は「管理者の本」が出るように念じてみなさい』
言われるがままに「管理者の本」とはどういうものかはわかりませんが出ろと念じてみます。
すると古めかしさを感じる装丁の本が私の両手の上に…って大きい!?
慌てて両手で抱きかかえると女がケラケラと笑いながら私を見ています。
『それは貴方の一部のような物よ?重くも無いのに慌てちゃって滑稽だわ』
…確かに重くない。
そして抱きかかえるのを止めるとふわふわと私の見やすい位置に浮遊してくれるし…何というかすごく便利ですね。
「これって魔法で浮いてるのかな?」
『そうね…そうとってもらっても構わないわ。さあその本を開けて【土地の管理】を開いてみて』
という事は魔法ではないという事かしら?
けれどその辺りは答えてくれる気は無さそうなので言われた通りの事をしてみようと思いますけど…やりかたってどうすればいいのよ!?
うーん、魔法っぽいとは思うのだから念じればできるのかな?
そう思ってみると本が勝手にパラパラとめくれていきあるページが勝手に開く。
そこには【月江奈留の支配地域】という項目が書かれており、四角形が九個並んでいます。
中心だけは黒色だけど周りは全て茶色になってそこの外周が水色の枠で囲まれている。
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…こういった形のストラテジーゲームを見た事があるような気もします。
大体こういうマス目のゲームはユニットを使って戦争をするゲームが多いのですけれど…まさか?
私が嫌な方向に想像を始めていると女が近寄ってきて本を覗き込みます。
『ええ、無事に開くことができたようですね。管理者のマナの行使は基本的にこの本を使ってしますので大切にしてくださいね。まずはこの中央の黒い四角があるのがわかりますか?それはこの小屋になります。そうですね貴方の本拠点で最も重要な土地であると理解してください。それでは黒い土地に触れて情報を得たいと念じてください』
私は言われたとおりに念じてみると情報が本に表示され始めます。
どういう原理なのか本当に理解できないけどすごく便利なのは間違いないです。
それでどういった内容が表示されたかといいますと…
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〇小さな掘っ建て小屋
土地レベル:1
設置物スロット:5
①奇跡の箱:この土地の管理者は20日に1回だけ神の奇跡の効果を持つカードを引くことができる(本拠点にのみ設置可能)
②マナの箱:この土地の管理者は1日に1回だけ【火】【水】【風】【土】のいずれかのマナを選択して1点得る(本拠点にのみ設置可能)
③資材管理箱:この土地の管理者は自分の支配すると土地から収穫できるアイテムを箱に格納できる
箱の中では自動的に分類・区別されるので安心されたし(本拠点にのみ設置可能)
④空:未設置
⑤空:未設置
【フレーバー】
神様から特別に施されたありがたい土地であり管理者の本拠点
ぼろ小屋に藁のベッドを兼ね備える
神から下賜された奇跡の箱、マナの箱はこの土地にしか存在できない
この土地を失う事は全ての終わりである
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一瞬では理解できないぐらいの情報があっという間に本に表示されていきます。
細かく聞いておきたい所はあるけれどこの人の機嫌を損ねかねないのでまずはこの女の好きなように説明していただきましょうか。
『はい、管理者である貴方の本拠点の情報が表示されましたね。この本拠点が破壊されますと「管理者の本」は使用できなくなり、管理者の力は一切使えなくなるので注意してくださいね』
つまりここを失うと異世界で非力な人間が放りだされてしまうという事ですね。
なるほど、命は助かるかもしれませんけど本当に命だけが助かる状況になってしまいそうです。
他の管理者やこの世界にいる未知の勢力から確実に守り通さないといけないとなると…あまりの大変さが予想出来てしまいまた朦朧としてきます。
『今は【土地の管理】についての説明中だから中の説明は後にさせてもらうわ。興味があるかもしれないけど我慢しなさい』
いけないいけない。
これからの大変さに思いをはせてしまったけど説明を聞き逃すのが一番まずいですね。
慌ててこの女の話に耳を傾けます。
『次は水色の線が見えるかしら?この線の内側が貴方の支配地域…地球の言い方だと領土とでも認識してください。では左上の茶色の土地に触れて情報を得たいと念じてください』
さっきの本拠点の時と同じように茶色の四角を選択して念じると同じように土地の情報が表示されます。
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〇何も無い荒地
土地レベル:1
マナ構成:土0
建物スロット:0
【効果】
①この土地では「栄養の無い土」を少量収穫できる
②この土地は枯渇しているため【水】の力は半減される
【フレーバー】
かつては何かあったのかもしれない
今は草一つ虫一ついらない物すら存在しない
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初期の土地と言うべきでしょうか…どうやらほとんど何の役にも立たなそうな土地ですね?
周囲にそれが八箇所、基盤としてはあまりに貧弱としか思えません。
けど私の心配が表に出てしまったのかそれを汲みとった女の話は続いていきます。
『ええ、貴方が不安になるのもわかるぐらいひどい土地ですわね。そこで管理者の能力の一つとしてマナを使用した【土地の進化】ができます。この土地を進化させたいと念じてみてください』
言われたように念じるとこの土地の進化先の情報が表示されます。
「大地」という土地名が表示され、そこにその土地の詳細が見たいと思うとすぐさま本に情報が表示されます。
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〇大地
土地レベル:1
マナ構成:土1
建物スロット:3
①空き
②空き
③空き
【効果】
①この土地では「土」を少量収穫できる
【フレーバー】
基本の土地
マナを注ぐことで君の思う土地を手に入れよう
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『無事に情報を開けたようですね。まずはマナ構成に注目してください。「何も無い荒地」と比べてマナ構成の項目に土のマナが1多く表示されているのが分かりますか?この土地に進化させるためには土のマナを1点この土地にそそぐ必要があります。試しにやってみましょう対象の土地を選択して念じてみてください』
私は言われたとおりにこの土地へ土のマナを1点使用するよう念じてみます。
すると身体から黄色に輝く玉が飛び出していき、土地へとぶつかると光輝いて散っていきます。
これで終わりなのかなと思って見守っていると地面が震度1ぐらいで揺れ始めて…急に変わり始めていきます。
水もく乾いて裂けていた土地はあっという間に水と栄養を含んだ茶色い土地へと変貌してしまったのです。
あまりにも現実離れした光景に私は思わず口を開けたまま呆然と眺めてしまい制止してしまいました。
そしてそんな私の様子がおかしかったのか女が高笑いをしながら話しかけてきます。
『ええ!これこそが神の御業!そしてそれにあやかる事ができる貴方は物凄く幸運なのですよ!』
この女の態度は腹立たしくあるのですけど確かにこの光景と力はすごいとしか言いようがありません。
けれど基本の土地である「大地」への進化に【土】のマナが必要となるのでしたら…【土】のマナの重要度は高いのかもしれないですね?
『まあマナ以外にも条件さえ揃えば土地が進化するという事もありますのでそこはご自身で色々試してみてください。後ここで説明しなければいけないのはそうですね。…まず土地の進化は1マナずつしかできません、飛ばして進化はできないので面倒でも順を追ってくださいね。あ!そうでした。例えば土地の進化をやり直したいと思ってもできませんので注意してくださいね。ただし取り返しがつかないという意味ではありません。管理者は「何も無い荒地」以外は土地カードとして回収して「管理者の本」に格納する事が出来ます。そしてその土地カードは「何も無い荒地」に使用するとなんと!
あっという間にその土地になってしまうのです。すごいですよね!他には…建物スロットについては後で説明しますけど【建造物構築】で構築した建物をセットする事が出来ますね。他に土地の事で聞きたい事はありますか?』
少しはわかったかもしれないけど肝心な事を教えてもらっていないと思いますけど。
明らかに競争を煽っているくせにそのやり方を教えないのは意地悪なのかそれとも忘れてるのでしょうか?
「この九個の土地以外にも当然外にも土地がありますよね?」
『もちろん世界は広いですからね』
「それでしたらそういった土地を私の支配地域にするにはどうしたらいいのでしょう?」
その問いに対して女はあっとバツの悪い顔を浮かべ始める。
この純粋な驚きかたは…忘れていましたね?
女はごまかすように咳ばらいをすると笑顔を取り繕って説明を始める。
『簡単な話です。貴方がその土地へ行って私の土地だと念じればいいのです。ただし!そこに先住している別勢力がいる場合は駄目ですよ?全部追い払うか、それともあなたに恭順させるかしないと駄目です。理解できましたか?』
「はい、説明いただきありがとうございます。理解できました」
土地を奪う条件として最も楽で後腐れが発生しないのはそこにいる勢力を皆殺しにするのが手っ取り早いでしょうしね。
私達にとっても争わせたいという事がよく理解できましたとも。