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【2-18】奴隷の取り扱い

さて、完全に幌のせいで内側が見えない馬車…確かにこの中から人の気配がしますね。

中では慌ただしく騒いでいる音が聞こえてきますし…この落ち着きのなさは外で何かあったのは既に中まで伝わっているようです。


この奴隷たちの持ち主の部下の話によりますとなんでも奴隷魔法という魔法があるらしくそれで死んだ商会長がこの中の人達と奴隷契約を結んでいたようです。

この奴隷魔法、奴隷という単語に私はいいイメージは無いのですがこちらの世界では光属性に属する聖なる魔法であるらしいです。

契約に関わるという意味で正しく履行がどうのこうのと詳しくは覚えていませんけどこちらの世界の人達にとっては悪いイメージは一切無いとの事。

奴隷魔法の行使者と奴隷の双方の同意を得たら奴隷契約を結べるらしく、双方に平等だと言ってはいましたけど…契約内容やその強制力は魔法の行使者が設定できて、奴隷は弱者であるケースが多いと考えるとやはりそういうことなんだろうなと予想しています。

まあそんな話は今はどうでもいいのです。

問題は奴隷魔法を行使していた商会長が死んでしまったのでこの馬車にいる奴隷は奴隷魔法の効果が切れているという事なのですよね。

奴隷だったらそのまま私にも有効活用できるかなと淡い期待を抱いたのですが、そうはいかないようです。

話をしてくれた商人は残された奴隷の扱いに困っていたようですけど…確かに私も今困っています。


困ってはいるのですけど…ここが最後なのですし、とりあえずは現物を見て判断してしまいましょう。

私は気合を入れ直すと馬車の中がのぞける後部の位置へ移動します。

馬車を塞いでいた木の板を取り外し…はい、道具も無く私が取り外すなんて無理ですね。

ヒポグリフに頼んでくちばしでメキメキバリバリと引っぺがしてもらうと馬車の中が見えるようになり、更に内扉を開くと奴隷達はぴたりと騒ぐのを止めて私に注目します。

見た目のいい筋肉質なイケメンな男が一人にすらりとした体系でモデルのような美人の女が二人に…それと奥で座り込んでいる元気の無さそうな子供が一人、どうやら先に確認した帳簿の通りのようですね。

そして話に聞いていた通り扉を開けた先は牢屋となっており、こちらには手出しできなさそうなので私に危害を加えられるという事は無いでしょう。

ちなみにこの牢屋の鍵は私の手元にあります。


そして、私を見るや否や子供以外の三人は直立不動でビシッと立ち上がると私の前に整列します。

…何か下手に出てこちらを欺こうとしているのでしょうか?

それとも何か原因があるのでしょうか…どちらにせよ不気味ですね。

馬車の作り上外の音が聞こえないようにはなっていると聞いていますので外で何があったのかはこの人達は知っていないと思いますけど…とりあえずカマかけでもしてみましょうか?


「近くを通りかかった所大きな物音がしたので様子を見に来たのですけれど周りは死体だけしかなくて生きているのは貴方達だけです。生憎私は田舎から出てきたので何もわからないのですけど貴方達は何故牢屋に入っているのですか?」


私がそう問いかけると三人の奴隷達は顔を見合わせ、何か相談したそうにしましたけれど結局何も言葉のやり取りはせず、男が私に逆に問いかけてきました。


「私達は罪人ではなく奴隷です。田舎という事は奴隷は見た事はないでしょうか?」


「いえ、奴隷なんて初めて知りました。どういうものなのでしょうか?」


当然嘘です。

だけど相手の出方を見るために何も知らない通行人を装わせていただきます。

すると男の口先が僅かに上がり…今の彼等の状況を話し始めました。


「奴隷とは奴隷魔法という魔法で契約を結んだ者を指します。契約者は魔法の行使者により主人を定められ、主人に対して魔法のレベルに応じて服従しますです。私達は…その中でも最も高位な奴隷魔法のため絶対服従です。そして主人が死んだことにより主人が変わった事が私達にはわかっています。見た所お一人のようですが?」


「ええ、私一人ですよ?」


「そうでしょうとも。最寄りの生存者である貴方に主人の権限が移ったのです。そういう事ですので貴方に仕え尽くす事が私達の役目となります。よろしければ外でお役に立ちたく思うのですがいかがでしょうか?」


あれ?おかしいですね?

外で聞いた情報と齟齬があります。

奴隷魔法は主人が死んだことで既に解除されているから取り扱いに困っているという話でしたけどどちらが正しいでしょうか?

周りにいる女性に目をやると同じように頷きます。


「彼の言う通りです。何なりとお役に立ちます」


「何でも仰せのままに」


うーん…この二人の女性少し目が泳いでいたような気がしますね?

話を合わせに来たのかもしれないけど決定打になるような判断基準も今は無いですし…どうしようかしら?

元の世界では疑わしきは罰せず、灰色は白扱いでしたけれど今はそんな法律もありませんし、危険要素になりえるようなら彼等も周りの人達の後を追ってもらった方がいいかしら?

そう考えていた所で牢の隅で座っていた子供と目が会ってしまいます。

すると子供はふるふると首を横に振るのみで、そのままうつむいてしまいました。


ああ…これが一番信用できそうですね。

私の中ではこれからどうするかはほとんど決まりましたが最後に試験をしてみましょう。

少し馬車から離れると側にいる眷属たちに新しい命令を出して待機させます。

そして私は満面の笑顔を作るとそのまま牢に近づき鍵を開けます。


「貴方達を信用します。出てもいいですよ」


私はそう言うと扉を開けて馬車から離れます。

その様子を見ていた牢の中の奴隷三人は顔を見合わせ、男だけがゆっくりと動き出します。

そして一歩一歩ゆっくりと扉に近づき、扉をくぐって馬車を下りると…。


「馬鹿め!これでお前さえどうにかすれば俺達はじゆ…うわぁぁぁ!?」


…こんな危なさそうな場所に女が一人でいるなんて不自然な話を本当に信じていたのでしょうか?

勝ちを確信して狂喜した男は私に向かって叫びながら駆けだしてきましたけど馬車の横にいたヒポグリフに頭からくわえられてそのまま宙へと放り投げられました。


男は数メートルは回転しながら宙を舞い…そのまま痛い音と共に地面に衝突しました。


「いてぇ…足がうごかな…」


どうやら受け身もせず無茶な体制で着地したので足が折れましたでしょうか?

衝突音に混じって骨の折れる音も聞こえたのでほぼ間違いないでしょう。

さて、試験の結果は出て採点もしました。

後は…。


「一晩見張りさせて悪かったからそいつはウルフが食べちゃっていいよ」


『ワウ!』


私が許可を出すとウルフが痛みでもがいている男の首筋に近寄っていきます。


「よ…よせ、これは何かのまちが…ぐわぁぁぁ!?寄るな!あぁぁ!?」


ウルフは容赦なく首元に噛みつくとそのまま悲鳴をあげる男を絶命させ、そのまま食べ始めてしまいました。

…あまり直視して気分のいい物じゃないのでこっちはウルフに任せてしまいましょう。

まだ後始末が残っていますしね。


「ひぃ!?」


「待って私達はそんなつもりない!彼だけが!」


そう、私を嵌めようとした人間を生かしておいていい事はありません。

ですけれどわざわざ牢の中に入って始末するリスクを負う必要はありません。

私が手を上げるとスノーシルフが詠唱を開始し、鋭い氷片を宙に何個も作り出します。

女達は何が起こるか理解をしたらしく甲高い悲鳴をあげましたけれど直後、氷片が射出され女達を串刺しにします。


短いうめきと何とか空気を吸おうとする必死な呼吸音のみ聞こえますがそれも段々消えていき、静かになります。

…これでほとんど終わりですね。

後は…。


「あ…あ…」


こっちを見て声にもならない声を上げている正直だった子供。

…この子はどうしようかしら?

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