【1-3】神様からのプレゼント
明らかに狼狽しているであろう私に向かって目の前の女は話を止めると脅しながらも愉悦に満ちた笑みを浮かべており本当に性根が悪いと思います。
ただ本当に帰られると私が困るので何か話を繋げないと…どんな話題をしましょうか?
…ぽっと思いつきましたけどこれでいいのではないでしょうか?
「私達をこちらに転移させたのは見世物にして楽しむためでしょうか?」
『そうそう滑稽な事になるのは間違いな…ゲホンゴホン!当然、この世界の調和のために必要だから呼んだのですよ。私達は益の無い無駄な事をする暇は無いのですから』
何となくでしてみた質問でしたけれど予想以上に核心をついていたみたいですね。
この女が腹芸が不得意な事…そして性根が腐っているのはこいつだけではなくこいつ等という事が分かったというのもいい収穫になりました。
そう私が考えていると咳払いをしてむせている女は大声でしゃべり始めます。
『ああもう!話を脱線させるのは止めなさい!不敬ですよ!ここからは勝手な質問は許しません!おとなしく説明されなさい!』
そして最後には逆ギレですか…本当にこんなのが私を転移させたりと不思議な力を持っているのか疑問を持ちたくなりますけど、人格と力が比例する事は必ずしもないのでそういう事なんだと今は納得しておきましょう。
『うぅん…この理解力の無い女のために時間がかかっても最初から説明すべきですね。まず貴方には管理者の一人となってもらいます』
ようやく自分のまずい発言への気まずさから立ち直ったのか当初する予定だった説明に戻るみたいです。
そしてそれはもう聞いたけど、気を損ねられても困りますので話は遮らない事にします。
私がショックを受けすぎてまだ立ち直り切れず余計な事をする元気が無いという事もありますけれどここから読み取れる情報は…管理者が複数人、すなわち私以外にも転移させた人間がいると予想される事でしょうか?
お互いに争わせてそれをエンタメにするつもりでしょうか…こいつ等は本当に性根が悪いですね。
『管理者についてですが…神より特別な力を下賜された存在ですね。ほら手を上にしてかざしてごらんなさい。そしてマナよ出ろとでも念じてみなさい』
そんな風にして本当に何か起こる物なのでしょうか?
漫画や映画じゃあるまいし…と心の中では思っているのですけどここは異世界らしいですしとりあえずは試してみましょう。
女の人に言われるままに手の平を上に向けてかざしてマナ…マナって何だろ?
まあとにかく言われたとおりに念じてみると手から四色に光り輝く玉がでてきます。
「きゃ!?」
予想しなかった光景に思わず驚きの声をあげますがそれでも私の両手の上では赤、青、緑、黄に光った玉がゆっくりとたゆたい続けています。
『それはマナです。赤は【火】のマナ、青は【水】のマナ、緑は【風】のマナ、黄は【土】のマナでそれぞれ属性を持っています。マナは管理者が何か行使するたびに必要な力となります』
幻想的な光景に少し見惚れてしまったけど情報を聞き逃さないために慌てて女の話に耳を傾けます。
これって使い切ったらどうなるのでしょうか…むしろ使い方はどうするのでしょうか?
まあいずれは説明してくれるでしょうし、説明が無ければ機嫌を損ねるのを覚悟で聞いてみましょう。
『次はマナの使い方について説明します。管理者がマナを行使できる方法として主に【土地の管理】【眷属召喚】【道具作成】【建造物構築】【管理者ネット】になります』
どうやら私が危惧していたマナの使い方については教えてくれるみたいです。
主にはという事は他にマナの使い道は増えるのかな?
そっちも気になるけど今は使える物について聞いておかないといけないしより一層耳を傾けていく事にします。
『まず【土地の管理】についてですが…物覚えの悪そうな貴方には実際にやってもらったほうがいいわね』
もうあからさまに喧嘩を売っているとしか思えない発言は今さらの事ととしてスルーしますが、実際にやらせてもらえる点は私にはありがたいですね。
一度自分でやらせてもらえる事ほど確実な事はないですから。
『珍しく口ごたえはないようですね?それでは外に出てください。…もたもたしないで早くなさいね?』
女はそう言うと小屋から出ていったので私もその後からついて外へと出ていく事にします。