【2-10】異世界人とのファーストコンタクト
…しまったあ!?
明らかに私の方を見てるしどうしましょ!?
ウルフに先制攻撃させます?
それをするにしても先手不意打ちの機会を私が無くしてしまったのは手痛すぎます。
…本当にどうしましょう?
そう頭の中で解決に辿り着けずエンドレスにぐるぐると悩んでいると向こうから声が飛んできます。
「やはり出かけておったのか。勝手ながら家の前で待たせていただいた。…できれば話をしたいのじゃが可能か?」
やけにドスの聞いた低い声が響いてきます。
もしかしてやばい相手!?
けど相手の話を額面通りに取るなら対話が可能という事なのでしょうか?
落ち着いて落ち着いて、間違っても失うのは私の命だけ…ってそれが一番いやなんですけど!?
もう頭の中で混乱が盛大に盆踊りし始めたので私はもうどうとでもなれという感じで口を開きました。
「ここ私の家では無いのであちらで話をしませんか?」
なんでそんな事を言ってしまったのでしょうか!?
わざわざ本拠点の小屋にまで案内する必要ないじゃないですか?
馬鹿ですか私は!?
…準備不足で慌てている時点で十二分に愚かなのは分かっていますよええ。
とりあえず目の前の男をいちかばちか排除するにせよ、このまま話し合いをするにせよまずは私が落ち着く必要がありますね。
それにしても対面してわかりましたけど…本当に子供みたいに背が低いですけど髭を生やしてますし顔は年季を感じさせるぐらいに渋いんですよね。
こんな身長の人間はいるはずがない…いや異世界ならありえるのかしら?
とりあえず話をしてみましょうか。
私がようやく覚悟を決めて地面に座り込むと相手は…あれ?大分周りをきょろきょろしてますけど大丈夫でしょうか?
私みたいな小娘に恐れる必要なんて無いと思うのですけどウルフが強そうに見えるのかしら?
相手も斧みたいな刃物を持っていますけどひょっとするとこちらが有利なのかリスクを避けたいのか…わかりませんけど話のイニシアチブを取ってしまいましょう。
「ご足労ありがとうございます。さてわざわざ私の土地に踏み入ったのですから何か御用がおありでしょうか?」
何故かビクンと肩を震わせてこちらを見て来ます。
強面に見えますけど思ったより小心者なのでしょうか?
…いえ、結論付けるには早いですね。
話を聞いてみましょう。
「う…うむ。何と言うべきかな。この辺りはまあ何も無い荒野だったはずなのだが急に森ができていて山がそびえ立っておってな。人間の町から帰る途中であったのじゃがこれはおかし…いや気になって調…立ち寄らせてもらったのじゃ。西の耳長が何かやらかした可能性も捨てきれんで…ところでじゃが…その…うむ…これはお主がやったのか?」
周りを見ながら言葉を選んで聞いてくるけど正直に答えていいものでしょうか?
…嘘をついてもその嘘のために新しい嘘をつかないといけなければいけなさそうですし…まあいいでしょうか?
「ええ、私ですけれど?何か問題でもありますでしょうか?」
「んん!?いや耳長で無ければ問題などない!ところで人族のようじゃが…ドルイドなのか?いやドルイドは森は操作できても山は…地脈士?泉も沸かせておるし精霊術士なのか?」
はい…聞かれた事がまるで理解できませんね?
ですがわからない以上ははぐらかすしかありません。
「それはどうでしょうか?答える必要は無いと思うのですけど?」
「いやいや、それはその通りじゃが!気分を害したのなら謝罪する!」
どうも下手に出過ぎている気がしますけどどういう事でしょうかね?
「ではこちらからも貴方の素性を…話せる範囲で話していただけますでしょうか?」
「これは失礼!儂はここから東にあるドワーフのバルノフ氏族のメルゾと申す。このたびは北東にある人族の領主に招かれて武器の行商を行っての帰りじゃったがここが気になったので確認をしにこちらまで足を延ばした」
…なるほど、ドワーフというキーワード。
指輪を火山に捨てに行く映画でみた幻想上の種族でしょうか?
いえ、幻想というには目の前にいるのですが。
そして北東に人間の集落があると…話すたびに情報の収集ができるのは素晴らしいですね。
…その対価としていつぼろが出てしまわないか心配で心の痛みがつらいという欠点を除けばもう言う事はありません。
他者との接触はつらいですけどここは頑張り所ですね。
頑張り所なのですけどここで私が選択するのは…。
「なるほど。それでは要件は済みましたでしょ?お帰りいただいても大丈夫ですが?」
はい、何の準備も無く綱渡りをするのは私にはもう無理です!
とりあえずは私の心の安寧のためにも早く帰ってもらいましょう。そうしましょう。




