【2-6】ウルフの報告と相談
「おかえり何か見つけました…か?」
ウルフの方を見ると何かを咥えているみたいですね。
何か赤い…液体がしたたっている気がしますが気のせいでは無さそうですね。
段々とこちらに近づいて来るにつれて…何か50センチはありそうな動物を口に咥えている事は分かりました。
なるほど、自分の食事をとってきたという事ですね。
「それで食事は十分そうですか?」
『ワン!』
尻尾を振りながら頭を縦に振ったので大丈夫という事でしょう。
ということはウルフの食事…維持コストはまかなえたという事でいいでしょうか?
それなら朗報ですね。
「餌になりそうな動物の数は大体把握できました?」
『ワン!』
「それはご苦労様です。でしたらこれ…」
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名称:ワイバーン
種族:レッサードラゴン
召喚コスト:風10
維持コスト:肉類
ステータス
体力 :40
攻撃力:30
魔力 :10
持久力:30
俊敏性:50
器用さ:20
装備スロット:0
スキル
①飛行3(中空をそれなりの速さで飛ぶことができる)
②麻痺のブレス(広範囲に麻痺毒の息を吹きかける)
特性
①風乗り(風が吹いている土地で俊敏性の補正を受ける)
②騎乗(適性がある他生物を乗せて行動が可能)
③麻痺毒耐性(麻痺毒に対して抵抗力を持つ)
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私がウルフに見せたのは「管理者の本」で私が一番欲しい眷属です。
体長5~6メートルぐらいのドラゴンで前回見たファイアドラゴンよりも明らかに小柄ですけど、騎乗がついていて私が移動するのにも持ってこいじゃないかと思ったのです。
最も使用せずに残っている【風】のマナで召喚できて維持できるのでしたらこれがいいと思ったのです。
「これを召喚したとして…土地で取れる動物でワイバーンの肉の量は足りると思いますか?」
聞いてもわからないかもしれないけどこのウルフは少し賢いと思いますので聞いてみる価値はあると思います。
では反応はといいますと…。
首をかしげていますね。
どうやらわからないという意味でしょうか?
いえ、判断に困っているようにも見えますね。
もう少し詳しく掘り下げてみましょうか。
「動物の数が把握しきれていない、または動物の数が変動するから回答できないという意味でしょうか?」
首を横に振っていますね。
どうやら質問の意図は伝わっているらしく、さらには「熱帯林」と「森」の把握は一通りできているようですね。
では直接的な量について確認してみましょう。
さて反応に困っていたという事は恐らくわからないという事だったのでそこを中心についていくと…。
「お肉が足りるか足りないか微妙なラインという事でしょうか?」
『ワン!』
首を縦に振っているからそういう事らしい。
そうなるとですよ…少なくともワイバーンの維持には「森」が3つ、またはもっと進化させた「森」の系統が必要になるという事でしょうか。
そして事故にせよ侵略にせよ災害にせよ何かあった時のために保険としての予備は欲しい所なのでその倍は最低用意しておかないと安心して運用できませんね…これは大変ですね。
「それではあなたと同じウルフと同サイズぐらいならどれだけの数がいけますか?」
私は1から順番に数を上げていき…6を数える辺りでウルフが首をかしげたのでそこで数えるのを止めました。
余裕を持つなら三体…後二体分ですか、なるほど参考になりました。
「ありがとうございます。出来れば強い騎乗できる眷属が欲しかったのですが他の眷属を探してみます」
そう私が言って話は終わり…のはずだったのですけど何故かウルフが心配そうに私を見て来ます。
…あれ?
私何かおかしなことをいいましたでしょうか?
私には心当たりはなく疑問に思っているとウルフは背を向けてこちらを見て来ます。
どういう事でしょうか?
…ひょっとして背中に乗れといっているのではないですよね?
「確認しますけど乗れという事でしょうか?あなたに騎乗は無かったと思いますけど」
『ワン!』
いいから乗れというように促してきます。
そこまで自信があるという事でしょうか?
ひょっとするとわざわざ騎乗スキルがある眷属を召喚しなくても自分ができると主張しているのかもしれません。
「…私の安全を第一にお願いしますね」
私よりも大きいウルフに恐る恐るまたがると何故か私の方を振り向いてきます。
何故でしょうか?もう準備はいいと思うのですけど。
「何か不満な点でもありますか?」
『ワン!!』
どうやら不満な点があるらしく首をプルプル振って何かを主張しています。
…ひょっとして首をしっかりと抱え込めという事でしょうか?
「大げさではないでしょうか?そこまでしなくて…ワヒィ!?」
私が両手をウルフの首に回すとウルフはゆっくりと駆け出しました。
いきなり景色が変わってすごく上下して気持ち悪くなります。
それだけではなく駆けるたびにウルフの背が大きく縦に揺れて吹き飛んでしまいそうになります。
慌てて両手はしっかりと首をつかみ必死に足は落ちないようジタバタとさせます。
その頃にはもう周りの景色を見る余裕はありません。
「どうなって!?ちょっと!アウ!?」
もう何が何だかわからないぐらいに混乱しています。
速度としては自転車よりも遅いはずなのに最高速度のジェットコースターよりも怖いです。
目も閉じてしまったので真っ暗で、それなのに体はあちこち自由に揺らされていつ吹き飛ばされるのかわからない…本当にもう怖すぎて無理です!
安全性なんて保障が一切無い恐怖というのは今になって実直し、より恐怖が加速していくのが分かります。
「もう無理ぃ!止めてぇ!」
私が叫ぶとウルフはゆっくりと停止し…私はぐったりと地面に転げ落ちるのでした。




