【1-1】誘拐された?
ちょっと筆が進まないので別の話を書いてリハビリができればいいなと考えて軽率に投稿を開始しました。
頑張ってどこまで書き続けれるかやってみる試験作となります。
なおタイトルも決めていないため何かいい案がございましたら提案ください。
『…きろ…き…さい…とっとと起きろと言っているのですが!?』
うーん…キンキン癇に障るヒステリックな声ですね。
今日は大学の講義は2限目からだから朝はゆっくりとお布団を装備して惰眠をむさぼる予定なのに。
けど聞いたことない声だし、それにどういう事かいつもより寝心地が悪いかもしれない。
…聞いたことない声って誰です?
頭は全然起きていないけど不審者が近くにいるのでは寝続けるわけにはいきません。
仕方なく目を覚ますと目の前には羽を生やした綺麗な女性が柔和に微笑みながら私を見下ろしている。
…待ってこれいったいどういう状況?
まだ寝起きでまどろんでいるせいか頭が上手く動いていないけどそれでも脳は緊急事態と認識したので慌ててきょろきょろと周囲を見回してみる。
まず木の板に囲まれた部屋にいるという事が分かり、それはつまりいつもの寝室ではない。
それに見た事が無い箱が置かれていていつの間にかベッドもギシギシと耐久性に不安がありそうな不穏な音を立てる物に変わっているし、愛用のふわふわな羽毛布団もざらざらな黄土色の藁に変わっていた。
それに加えて会った事も無い人がいるという事は…。
『あーやっと起きましたねこのク…。はぁ、まあいいです時間は大事なのですから。特に今は貴方の世界のゲームで言うとスタートダッシュにあたり…』
「わ…私を誘拐したのですか!?」
目の前の女性は何か説明を始めようとしていたみたいだけどそれに割り込む形で私は説明を投げかけてしまった。
私の名前は「月江 奈留」女子大学生2年で19歳になったばかり…身代金目的にせよ私の身体を目的にするにせよそういった可能性は捨てきれません。
けれど私の言動が気に食わなかったのか目の前の女性は一瞬だけピクリと目の下を震わせながら目を細めて何か言いたそうにしたいたけどそれを飲み込むと、また笑顔に戻っていった。
…この人笑顔で取り繕っているだけでイライラが隠せていません、明らかに内心では怒っていますよね?
状況が分からないしとりあえず不審者であるこの人をこれ以上は怒らせないように黙っておくことにしましょうか。
『そうですね…本来なら貴方の今後の生活に関わる所を優先的に説明してあげようと思ったのですけれど、貴方は事前の説明もしないと納得していただけなさそうですね』
面倒事を増やしやがってという恨みの感情が若干声にのったまま目の前の女性は話を続ける。
『まず貴方はこの「セン・ノンス」の世界の管理者の一人に選ばれました。おめでとうございます』
…この人が何を言っているのか何一つもわからないのですけれど?
異世界転移して勇者にでも選ばれたとでもいうのでしょうか?
そういうのは希望している他の人に譲りたいのですけど…と思っていても話は続いていきます。
『貴方は管理者としてこの世界を自由に生きていただいて問題ありません。そのための手助けをするために私が説明役として選ばれました。このありがたさに感謝しなくてはなりませんよ?』
駄目ですね。目の前の人は自分の喋りたい事しか喋っていません。
だけど明らかにおかしい人であるのは間違いないので今度は機嫌を損ねないようにスッと挙手して質問してもいいか確認してみる事にします。
『あら?そうですね聞きたい事に答えるのも仕事のうちですからね。愚か者でも私の話を遮る愚行を繰り返さない学習能力はあったようで何よりですね』
この人は相手をさげすむ事しか知らないのでしょうか?
話していても不愉快にしかならないのですけど、まあ答えていただけるなら遠慮なく質問をしてみましょうか…まずは。
「私が今いる場所は地球ではない?」
『はぁ…私が言った通りここは「セン・ノンス」です。理解力が足りないようですね』
なるほど、どうしてそんな事が可能になるのかはわからないけどこの人が言っている事が事実なら非常にまずい状況かもしれない。
「にわかに信じ難いですので…この部屋から出て外を確認してもいいでしょうか?」
『うぅん…まずは私のありがたい説明を聞いて欲しいのですが、まあ愚かな貴方でしたら直接見た方が早いかもしれませんね。ではどうぞ』
そう言うとこの人はギィーと木の扉を開けて外を確認するように促す。
してもいいのであればありがたく確認させてもらった方がいいに決まっていますね。
私はベッドに手をついて立ち上がると扉を抜けて外を確認する。
眩しい光が差し込み一瞬目がくらんだけれど右手を目の上に当て眩しさをカットした私の目に入ったのは…乾いて草木の生えていない茶色い大地とどこまでも続く空でした。