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「528」  作者: 1月の海馬
1/1

天音の物語


世界には色々な音が溢れている。

「風の音」「水音」「炎の燃える音」

「植物」「機械」

そして「人間」が奏でる音。


世界は音で溢れている

これは音に運命を委ねた青年の成長記


1.始まり


ベルトコンベアで流れていく荷物。

ここは宅配便の集荷場

テキパキと働く中年男性


「ほら、ちゃんと集中して〜」

「お客様の大切な荷物なんだから〜」


ヨタヨタと頼りない20代の青年


「カズさん、スイマセン」


どんどん流れてくるダンボール、箱には行き先別の番号がついているので先輩カズは素早く仕分ける。青年音無天音オトナシアマネはそんな荷引きのアルバイトをしていた。


「ほらーそれ3番だよ!集中して、集中!」


先輩カズは偉そうに指示を出している。

頭の剥げ方が人気のお笑い芸人

ムーブメントデビルのタカシに似ていると

天音はずっと思っている。


「フン!フン!」


落ち武者のような髪型のカズは

神のようなスピードで荷物を仕分けていく。

「やることはちゃんとやろうよ〜プロとしてさ」

「………」

「返事もないし、声の出し方忘れちゃったの〜?」

「……スイマセン」


呆れた様子のカズ


(しっかし気持ちわりぃやつだな……)


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


季節は夏、夜の繁華街は

人で溢れてむせ返るような暑さ。

そんな中仕事終わりの天音はダラダラと歩いている。


(やっと終わった……)

(あんな落ち武者風情は)

「ゴートゥーヘル!」


思い出し怒りの声があまりに大きく、

前からくるガングロギャルとヤンキーのカップルに

聞こえたようで睨まれる天音。

二人はチワワの散歩中。


「ああん?」


天音、目をあわせないように道の端で

ポケモンゴーゴーをやっているふりをして

やり過ごそうとする。

天音足元に違和感、視線を下げる


「…………」


オシッコを足にかけているチワワ


「ぬぉぉぉ」


犬を追い払おうとするも、

続けてウンコもしようとしているチワワ


天音「やめーー!!」


追い払おうとすると天音


「オイ!うちのぴーちゃんに何するんじゃ!」

「あ……スイマセンーー」


走って逃げる天音


(はぁぁぁぁ、俺は何でこんなについていないんだ。きっと一生ついてないよ)


ベンチに座り考え込む天音


(高校を卒業してからの3年間、ただ寝て、起きて、バイトする日々)


工事や、日雇い土木作業のバイトを思い出す天音


(寝て、起きて、バイト。寝て、起きて、バイト。寝て、起きて、バイト…)

(唯一の生きがいはラジオの女帝「古城みゆき」の声を聞くことだけ)


再び歩きだし、道の中央でニヤニヤする天音。


(しかし今日は特別な日なのだ)


天音の手にはネズミのマークが3つ揃った当りのスクラッチクジ。


(買える、ついに買えるぞ!古城みゆき等身大フィギュア)


妄想を膨らませながらフラフラと歓楽街を歩く天音。

うかれてつまづき、転んだ拍子にスクラッチを落とす。


「おっと、危なくドブに落とす所だった」


ホッとしてを拾おうとしたとき、キラリと光るスクラッチめがけてカラスが急降下。

スクラッチはカラスと空に消えていった。


「……」

「何で俺だけ、こんな日に限って!!」


突然道路の真ん中に寝転がる天音、周囲の視線が集まる。


(くだらん、くだらんよ)

「あーーーーあー」


真っ暗な空を見ている天音、しとしとと雨が降ってくる。


(またこの日に雨か……)

「呪われてんのかな、俺」


そのままゆっくり目をつぶる天音。



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