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1,日常

「アーヴィン、今日も野草のスープと固いパンしか用意できなかったよ。まだ食べ盛りだというのに……これだけでは足りないだろう?」

「母さん、僕なら大丈夫だよ。それに、ほら見て! 今日は森でウサギを捕ってきたんだ」

 アーヴィンが得意げにウサギを差し出すと、母親は嬉しそうに微笑んだ。

「それじゃ、後で干し肉でも作ろうかね」


「母さんは病気なんだから、無理しちゃいけないよ?」

 アーヴィンはまだ幼さの残る表情で母親を気遣った。

「アーヴィン、母さんの分もお食べ。私はあまり動いていないし、お腹も空いていないから……」

 母親の言葉を聞いて、アーヴィンは言った。

「ダメだよ、母さん。ちゃんと食べなきゃ。栄養を取らないと病気も治らないよ」

「こんな母さんでごめんね、アーヴィン。ところで傭兵の仕事は順調かい?」


 アーヴィンは母親から目をそらして言った。

「……うん。大丈夫」

「この町は貧しくて、ろくな仕事がないからね。……アーヴィンはまだ子どもなんだから、無理をしてはいけないよ? 母さんだって、働けるから……」

 母親はそこまで言うと、苦しそうにむせ込んだ。


「母さん。母さんの仕事は病気を治すことだよ。仕事なら僕に任せて」

「……ありがとう、アーヴィン」

「それじゃ、これから僕は仕事だから。先に寝ていてね、母さん」

「気をつけるんだよ、この町は物騒だからね」

 アーヴィンはボロボロの家を出ると、薄暗い空き屋に向かった。


「遅いぞ、アーヴィン」

「すいません、マックス頭領」

 アーヴィンは母親には傭兵と言っていたが、実際は盗賊団の下っ端として働いていた。

「アーヴィン、気を抜くとやられるぞ? 弱い奴は生き残れないからな」

「……はい、マックス頭領」


 アーヴィンは憂鬱な気分で盗賊団の中に入っていった。アーヴィンは、まともな仕事に就きたかったが、この町は子どもが正当な仕事を出来るほど豊かでは無かった。

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