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私たちは次第に漫画だけではなく、進路やプライベートの話までするようになっていった。私と沢見君がずっと話しているので、取り残されたような感じになった中原君と浅尾さんは自然と二人で話すことが多くなり、気付いた頃には二人は付き合う事になっていた。
「…いつの間に…おまえら…。」
「…そうだよ…早すぎない?」
私と沢見君は顔面蒼白になった。
「もとはと言えば、おまえら二人のせいだよ。俺と浅尾を無視して二人で盛り上がってたからな…。」
「そうだよ! 私たち取り残された組で仲良くするしかないじゃん!」
中原君と浅尾さんはそう言って私と沢見君をからかった。
「おまえらもそんなに仲いいんだったらくっついちゃえば?」
中原君がニヤニヤして言った。
「ちょっと…沢見はアレでしょ…」
横にいた浅尾さんが中原君を肘でつついて制止した。
「あ…そうか…小芝がいるもんな…」
中原君は気まずそうに頭を掻きながら言った。
沢見君は何も言わなかった。
私と沢見君が付き合うなんて、そんなこと有り得る訳無いし、たとえ沢見君が小芝さんと付き合っていなかったとしても、私と沢見君とはレベルが違いすぎる。別世界の人間だ。住んでいる世界線が違う。違いすぎる! 今、たまたま偶然一緒の空間にいるというだけなんだ!
中原君にそんな事を言われて私まで気まずくなってしまった。その時、たまたま使うペンキが切れていたので美術準備室に取りに行くことにした。沢見君は手伝うよと言ってくれたが、益々気まずくなる気がしたので、一人で大丈夫と言って、足早にその場を去った。
夕暮れ時の廊下。窓から夕陽が射し込んで、床が赤く染まっていた。
ふと想像した。沢見君と付き合っている自分を。
一緒に漫画を読んで…一緒にアニメを見て…カフェでお茶して…尽きない話をいつまでも…。心地いい…。ずっとそうしていたい。何をするにもずっとそうしていたいって思える。
…って、なんてバカな事を考えているのだ、相手は学園ヒエラルキートップにいる沢見君じゃあねえか! 有り得るはずが無い…いや、あってはならぬ
…一人苦笑い…。アホか…。