12 沢見君
二年の海外赴任が終わり、僕は日本に戻ってきた。
向こうにいる間、ずっと夜宮さんに会いたかった。帰ったらすぐにでも会いに行きたいと思っていた。
彼女はまだ横浜にいるのかな…。
やっぱり連絡先を聞いておくべきだった。
とにかく帰れば何とかなるだろうと思った。同じ関東で、休みの日は二人でアニメを見たり、イベントに参加したりしたいなと想像したら、楽しみすぎて泣きそうになった。…彼女に彼氏がいなかったらの話だけど…。
まったく自分でも呆れてしまう。付き合っても無いくせに彼氏気どりか?
そんな事を思っていたのに帰って早々、会社からショックな事を言い渡された。
今度は京都支社に転勤だって? ちょっと待ってくれよ! せっかく夜宮さんと楽しく暮らそうと思って戻って来たのに!
しかし、しがないサラリーマンは会社に従うしか生きて行く道は無い…。後ろ髪を惹かれながらも僕は従った。
京都に移って初めての週末。
雨も降っているし家でゴロゴロしてようかとも思ったけど、せっかく京都に移り住んだわけだから、散歩がてら外出してみる事にした。
大学は関西だったので、京都は全く知らない街では無い。
僕は大好きな南禅寺の水路閣を見に行ってみた。
久しぶりの南禅寺。雨に打たれる石畳。濡れる新緑は美しかった。
その時、水路閣の下に僕は見てしまった。
懐かしい水色の傘!
まだ持ってたんだ…。
君…物持ち良すぎじゃない?
思わず笑ってしまった。そして心臓がドキドキしてきた。
水色の傘がゆっくり回ってしずくが落ちる。
あと3秒後かな?
きっと彼女は目を丸くして、開いた口が塞がらなくなると思うよ。
そしたら何て言おう…。
その時は…。
終り
最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。
次回作は、ついこの間書き始めました。(;^ω^)
書き終わるのにしばらくかかると思いますが、次の連載が始まりましたら、またよろしくお願いいたします。
まんまるムーン




