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卯ノ花腐し

作者: 下川 颯


 梅雨時の雨はあまり好きではない。

 じとじと雨が降り続けるだけではなく、じめじめとした蒸し暑さが一緒になってやってくるからだ。現にそう思っている今ですら、傘の淵から止まることなく滑り落ちてくる雨は、止む気配すら見せてはいなかった。

 水を含んだ雑草を踏みしめながら、あーきっとこの靴はそう簡単には乾いてはくれないだろうなと、雨も止んでいないのに止んだ後の心配をしていたせいだろうか、ふと気づくと周りは見覚えのない場所であった。

「どこだ……ここ?」

 ぼそっと口からでた言葉の通り、うっそうと木々が生い茂った場所、森に迷い込んだわけではなさそうだけど、ここは適度に手入れのされた公園、もしくは誰かの家の庭のような場所であった。

 どうしてこんな所に来てしまったのだろうか……最初から思い出してみよう。学校を出た後、朝から曇っていた空が雨粒をこぼし始め、傘なんて持っているわけもなく、近くのコンビニでビニール傘を買ったところまでは覚えている。なぜなら、ビニール傘にしては540円(税込み)と高かったし、現に今差している傘がその540円(税込み)なのだから間違いないだろう。

 コンビニを出た後、当てもなく雨の中を歩いていて、気づいたらここにいた。

 おとぎ話でも、ボツになりそうなシチュエーションである。

 雨が降る中で立ったまま考えていてもしょうがない、とりあえずは前に進むしかないだろう。気のせいか、戻るという選択肢はなかったし、これでいいような気もしていた。

 綺麗に咲き始めた蒼色のアジサイの横を通り抜けると、視界の先に、白い小屋のようなものが見えてきた。小屋とは言っても、そんな上質なものではなく、なんだろう、田舎のバス停に毛が生えた程度のものであった。

 簡易的な椅子があって、そこに雨をなんとか凌げるだろう屋根がついているだけ。

ただ、田舎のバス停と違うのは壁や屋根を含めたすべてが白一色だということと、そこに人が腰かけていることだろうか。

 遠くからでもわかる、そこには一人の女性が座っていた。どうして女性だと分かったのか……簡単なこと、なぜなら彼女はとても綺麗な長い黒髪をしていたし、小屋と対照的な黒いロングスカートは、ときおり吹く風に、小刻みに靡いていたからであった。

 少し重たくなった足を踏み出し、一歩、又一歩と前に進んでいく。

 ひどく重たい足取りである。これはきっと、水が沁み込んで靴が重くなっただけではないだろう。なぜだか彼女の近くに行くことを、何者かが邪魔しているようにも思えたし、無意識に自分自身が近寄らないように、ストップをかけていたようにも思えた。

 彼女はベンチに座ったまま、じっと手に持った本に目を向けている。

 外国の本みたいである。かろうじて英語だと分かるスペルが背表紙に書かれていた。

 傍には、彼女には似つかわしくない、花柄の傘が無造作に立てかけて置いてある。

 透き通った指が、1ページ、1ページ、ゆっくりと捲っていく。

 隣に立っているのに、彼女は周りに誰もいないかのように、じっと本の上の文字だけを見つめていた。思わず口をはさむことができないくらい。

 どれくらいそうしていただろう……雨が少し小降りになってきた頃だろうか、区切りのいいところまで読み終えた彼女は、開いていたページに、赤いリボンのついた栞を挟むと、パタンと本を閉じた。

 そして一言「こんにちは」と口を開いたのであった。

「こんにちは」と、自然と咄嗟に返答していた。

 彼女はその言葉に少し嬉しそうに微笑むと、そっと座ったまま横にずれた。

 それは隣に座りなさいと言っているようだった。

 傘をたたむと、花柄の傘の横に同じように並べる。少しだけ540円(税込み)の傘も誇らしげに喜んでいるように見えた。

 彼女の隣に並ぶように座ると、フワッとフローラルな花の香りがした。香水のような、とても自然な香りであった。

「学校帰り?」

「ええ」

 彼女は返事を聞くと、当たり前かと小さく頷く。

 彼女がそんな風に聞いてきたのはきっと、服装のせいかもしれない。黒い学生ズボンに、白のワイシャツ、アルファベットのNが大きく印字された鞄を持っていれば、誰だって南陽高校の生徒だと思うはずだ。

「でも、すこし早いね」

「え? あ、はい、早いですね」

 確信を付くような質問に、少し躊躇ってしまう。

 彼女の右手に巻かれた腕時計の短針は2、長針は9を指していた。確かに彼女が指摘するように高校生が帰る時間にしては少し早かった。

「嫌なことがあって、早退したんです。サボったともいえますね」

「学生の頃の特権かしら、いいのよ」

「そ、そうですね」

 素直に肯定されると照れ臭くなってしまう。

「こんな所で何をされてるんですか?」

 なんとなく一目見た時から気になっていた。

 雨の中で一人佇む彼女の姿が。

「人を待ってるの」

「こんな雨の中を?」

 先程より雨脚が早くなっていた。

「そうね。でも今日来るはずだったから」

「はずだったって変な言い方ですね。まるで、もう来ないのが分かっているのか……もしくは、もう待ち人が来たみたいですね。あ、もしかして待ち人って僕の事だったりして……そ、そんなわけないか」

 言い終わると恥ずかしさから顔が熱くなるのが分かった。他の人が聞いたら、ナンパしていると勘違いしてもおかしくない。

「そうよ」

「え?」

 冗談で言ったつもりが、真顔で返されてしまうと戸惑ってしまう。

「え……あ、あの……待ち人が僕って……」

 動揺で口が上手く回らない。

「ぷ……ふふふ」

「え……あーもう」

 目の前でおかしそうに笑う彼女の姿を見て、自分がからかわれているのだと気付いた。

「ごめんなさい。騙すつもりはなかったの」

「酷いですよ。本気で信じるところでした」

 なぜだろう、騙されたのにムッとするよりも、緊張が解けたような、重かった唇が軽くなったように感じた。

「でも、貴方を待っていたっていうのは、半分は本当よ」

「え?」

「この雨の中、この閉鎖された場所にやってくる人、そんな人なかなかいないわ。そんな物好きな人をずっと待っているの」

 そう言われると、来たいと思って来れる場所ではないのだろう、ここは。たぶんもう一度来いと言われて、ちゃんと来られる自身はない。そんな場所である

「そしてそこに……」

「僕が来たと」

「そう、だから待ち人は貴方ではないけど……貴方でもある。分かったかな、学生君?」

 そう言って微笑む姿は、なんだか微笑ましく胸が熱くなってしまっていた。

「だからもし貴方が、話してもいいと思うなら話してほしいな。嫌な事って何があったの? 聞かせてほしいな」

「……それは」

 いつもなら見ず知らずの人に気軽に話したりしないのに、どうしてだか彼女には話してしまいたくなっている。そんな不思議な気持ちであった。

「聞きたいですか?」

 念のため確認する。興味本位で聞いて、面白い話でないことは自分自身がよく分かっていた。

「そうね。学生君が話してもいいって思ってくれているなら、話してほしいな」

「学生君はやめて下さい。山下です、山下優です」

「ごめんね。じゃあ山下君、話してくれる?」

「……わかりました」

 そんな嬉しそうな笑顔で頼まれては断れるわけもない。

 さて、どこから話始めたらいいのだろうか? 普段、人に話した事がないので正直戸惑ってしまう。胸の奥に眠る彼女との日々について。



 思い返してみると、2人の出会いはいつのことだっただろうか?

 物心ついたときには、もう一緒にいるのが当たり前になっていた。

 たまたま生まれた家が隣同士で、同じ年齢、親同士が仲良し、そんな環境で、子供同士が親密な関係にならないわけがなかった。彼女は昔からかくれんぼが大好きで、いつもせがまれては鬼の役をやらされていた。2人でかくれんぼをしても面白くないはずなのに、不思議と彼女とやるかくれんぼは、子供心に楽しかった思い出がある。

 隣接する家、2階にあるお互いの部屋から相手の部屋が見える。よくこっそりと窓を飛び越えて2人は行き来していた。

 僕の部屋に彼女こと、理恵がやってくると「優くん、来ちゃった」ときまって満面の笑顔で言うのであった。その笑顔が見られるだけで、僕はなんだか心が暖まるようで、何か気恥ずかしい気持ちになっていた。

小学校を卒業し、同じ中学校へ、少しずつ大人になっていく僕らは、次第に幼馴染という枠組みを超えていくようになっていた。

 2人が付き合い始めてしばらくたった中学2年生の夏、僕らにとってとても大きな出会いがあった。

「政所中学校から転校してきました岩本啓介です。よろしくお願いします」

 そう言って緊張したように自己紹介する彼、背が高く小麦色の肌はスポーツマンといった様子で、文科系な僕とは住む世界が違うタイプだなと最初は思っていた。

 ただキッカケはなんだったかと言われると、同じクラスだったから? 隣の席だったから? 同じ歌が好きだったから? 理恵と仲がいいから? 明確な理由ははっきりと思い出せないけど、いつのまにか人生初の親友といってもおかしくないような親しい関係になり、3人は自然といつも一緒にいるようになっていた。

「3人はとても仲が良いのね」

 黙って聞いていた彼女は言う。

「はい、理恵は僕の大切な人で、啓介は親友です」

 このことは誰にいっても恥ずかしくないし、自慢でもあった。


 仲良しの3人は同じ中学を卒業し、当たり前のように同じ高校に進学した。通っていた中学校から少し離れた場所にある高校。丘の上にある校舎の窓からは近くの海を見渡すことができた。

 入学式が終わると……僕達に、いや、正確には僕にとってとても重大な問題が起きてしまった。それは僕ら3人とも、クラスが別々になってしまったことだ。

 思い返してみると、理恵とクラスが別別々になったのはいつぶりだろうか? 啓介とだって、出会ってからはずっと一緒だった。それくらい2人と一緒にいることが当たり前だった。

 新しいクラスの中に知り合いはほとんどいない。僕は自然と1人でいることが多くなっていた。

 そんな僕の救いだったのは学校への登下校の時間、この時だけ僕は中学の幸せだった頃を思い出せていた。3人で学校から帰る道、川沿いの道を自転車で走りぬけていく。

 隣で笑う2人の笑顔、それを見ているだけで幸せになれていた。この時間があるから僕は高校生活を続けられていた。

 そんなある日だった。

 先生に呼ばれた職員室からの帰り道、放課後だからか、廊下に他の生徒の姿はなかった。

 夕日の差し込む廊下を足早に2人の待つ教室に向かって歩く。教室が近づいてくると、言い争うような声が聞こえてくる。その声はどちらも、よく知っているものだった。

 なんとなく嫌な予感がした僕は、急いで教室のドアを開けた。そこには取り乱した2人の姿があった。

 理恵は涙で目を濡らし、啓介は顔を真っ赤にしていた。

 間違いなく、いつもとは何かが違うと一目で分かった。

「何? どうしたの?」

 2人は黙ったまま、俯いているだけだった。

「ち、違うわ。なにも……ね? 啓介」

「あ、あぁそうだな……悪い……俺、先帰るな」

 罰が悪そうに鞄を掴むと、啓介は教室を出ていった。

「啓介」咄嗟に引き留めようとすると、「待って」と、理恵にワイシャツの袖を掴まれる。

「理恵……どうした?」

 未だに理恵の目は涙で赤く充血している。

「……うん、ごめん。家に帰ったら、後で部屋に行くね。そしたら話すから」

 そう言って再び俯く。その姿を見ると、これ以上追及はできなかった。

「分かった。いつもみたいに窓を開けて待っているから、来いよ絶対に」

「……うん」

 なんとなく理恵は、自分に言い聞かせるように頷いているように思えた。

 結局この日、いくら待っても彼女は家に来なかった。


 この日を境に、理恵の様子がおかしくなっていた。

 話しかけても、ボーっと外を眺めているだけ……それは啓介も一緒だった。

 心配しているのに、2人とは上手く話すことができない。

 まるで自分だけがずっと、終わりのないかくれんぼをしているかのように。鬼である2人が見つけてくれるまで、表に出ることが許されない。そんな錯覚に襲われてしまいながらも、放課後になると、2人の姿を探して校内を駆け巡る。

 探して、探して……校舎裏で2人を見つけてしまった。見つけない方がよかったのかもしれない。なぜなら2人はそこで口づけを交わしていたのだから。

 気が付けば走り出していた。信じられず、信じたくない現実に人間は怒りでもなく、ただ、その場から逃げ出す事しかできないのだ。

 どのくらい走ったのだろう?

 家に向かっていたはずなのに、気が付けば見知らぬ場所に一人。服が濡れていた、雨が降ってきたようだ。その事にも気が付かず無我夢中だった。

 当てもなく歩き続け……そしてついた場所が。

「ここだったのね?」

 優しく諭すように言う。まるで話した事、すべてを包み込んでくれるかのように。

「信じていた人達の信じられない現実、それを見たら誰だって取り乱すわ」

「……はい」

「ありがとう話してくれて……だから1つだけ貴方のために伝えることがあるの」

「……なんでしょう?」

「信じていた2人の関係を知る前、貴方は急に周りが別の世界のようになったように感じた。まるで自分だけかくれんぼをしていかのように……」

「……はい。ずっと僕だけが隠れていて、誰にも見つけてもらえないような気がして……変ですよね」

「変ではないわ。それにそう感じたのも当り前なの」

「え?」

「いい? しっかり聞いてね?」

「……」

 2人の間を雨の降り落ちる音が包み込む。

「もう……貴方は死んでいるの」

「……」

「ごめんなさい。貴方には辛いことだけど本当なの。貴方の存在をみんなが気付いていないのもその為」

「……そんな」 

「信じられないかもしれない。でもそれが真実。そう考えればすべては繋がるの」

「……」

「……」

「……そうだったんですね」

 暗く靄がかかっていた胸の内に、暖かな風が吹いたような気がした。すでに死んでいるという、普通なら信じられないような現実を安易に受け止められていた。これも死んでいるからかもしれない。死を意識したせいだろうか……体は軽く、腕は透け始めていた。

「時間はあまりないんですね……」

「……そうね。ずいぶん長く隠れたままになっていたから」

「やっと見つけて……もらえたんですね。最後に一目とは思うのに、それは無理そうですね……そうだ、2人に伝えて下さい。幸せにって」

「ええ、伝えるわ」

「……よかった」

 次の瞬間、ふっと一陣の風が吹きこむと、白い小屋のベンチには女性が1人、座っているだけだった。


「……さようなら。次は幸せにね」

 女性は言葉をかみしめるようにじっと目を閉じる。どれくらいそうしていたのだろうか?

「ありがとうございます」

 ベンチの後ろから声が聞こえる。閉じていた目を開くと声の方へ振り向く。そこに立っていたのは1組の男女。黒い学生ズボンに白いワイシャツを着た青年と、セーラー服を聞いた女の子。2人ともNが印字された鞄を肩に掛けていた。

 2人はしっかりと手と握りあっている。

「霊となってしまった彼は何も覚えてなかった。でも生前の強い思いが、この場に留まらせてしまった」

「……はい」

 青年は厳しい表情で頷く。

「彼は言っていたわ。3人でいる時間は幸せだったと」

 堪え切れなくなった涙が、女の子の頬をつたって流れ落ちていく。そんな彼女を青年はギュッと抱き寄せる。

「僕達も優と同じ気持ちでした。でも……」

「やめて。悪いのは私なの」

 女の子は制止するように声を荒げる。

「2人に何があって、彼と何があったのか……深くまでは私には分からない。だけど、思い出した彼は2人の幸せを祈っているわ……これでもう貴方達の前に現れることはないでしょう、おそらく」

「……ありがとうございます」

 もう一度頭を下げると、表情を変えぬまま2人はその場を後にした。

「さようなら。お気をつけて」

 並ぶ2つの背中に問いかけるように呟く。2人の背中が見えなくなると眼鏡を掛けた初老の男性が姿を現す。

「ご苦労様です、お嬢様」

 執事のような黒一色の服装、その手には薄いグリーンのカーディガンがあった。

「まだ肌寒いですから」

「ありがとう」

 渡されたカーディガンを羽織ると、柔軟剤の香りが女性の体を包み込む。

「柔軟剤を変えてみました。あと、これもお使い下さい」

 そう言って差し出されたのは新品のように真白なハンカチ、隅にバラの刺繍が施されていた。

「そう。私……泣いているのね」

 ハンカチを手渡されるまで、泣いていることにさえ気づいていなかったようだ。

「お嬢様はお優しいですから」

「そうじゃないわ。ただ、彼の最後を思うと……」

 大粒の涙をそっとハンカチで抑える。

「彼は確か……自殺だったとか」

 当時の新聞には、浴槽で手首を切って自殺した男子高校生と、1面に掲載されていた。

「突然の自殺に、周囲も驚きが隠せなかったでしょうね」

「ええ、でもどうして彼は死してなお、2人の傍に現れたのかしら」

「好きだった彼女への思い、そして親友だった新しい彼氏の存在を認めたくなかったのかもしれませんね。その思いがあんな形で現れてしまった。死んだ人間が生きた人間の前に現れる理由としては至極単純なことかと」

「そうね、でも本当にそうかしら……?」

 そう言って先程まで彼の座っていた場所を見つめる。

「死んだ人間は未練の多さで現世に留まってしまう。強い思いは時に憎悪にもなって、近しい人を襲うわ。自殺した彼はきっと、自殺するだけの絶望と悲しみを伴って死を選んだはず……それならその段階で絶望や悲しみがうちきれたのか、もしくは自殺を選ぶ前に、何かしら打ち消す手段をとっていたはずよ。間接的にも直接的にも」

「自殺前に何かあったとは聞き及んでおりませんね。ではお嬢様はどうお考えで?」

「もしかしたらあの自殺……本当に自殺だったのかしら」

 当時の新聞にはこうも書かれていた……戸締りのされた家の中で、なぜか2階の窓の鍵だけが空いていたと。ただ、当時の捜査の結果では単なる閉め忘れだと断定され、自殺のまま捜査は打ち切りとなった。

「2階の窓……まさか……あのふた」

 咄嗟に2人が去って行った後を目で追いかける。

「やめましょう。想像で話すのは」

 言いかけた言葉を制止するように、スッと人差し指を口元に当てる。

 目元からはスーッと大粒の涙が1つ流れ落ちる。

「でも、いつか罪は戻ってくるわね。きっと彼女達はこれからの人生をずっと、今度は自分たちが永遠に終わらない、かくれんぼをし続けないといけなくなるのだから。休ませてくれない鬼と仲良く3人で」

 そう言って見上げた空には、雲の間から日の光がカーテンのように無数に差し込んでいた。雨は上がり、気持ちのいい太陽の光が大地を照らしていく。

 誰もいなくなったベンチの横で、寂しそうに二本の傘がパタンと音を立てて倒れるのであった。


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