7話 多重工作の末の運命の出会い
~クローズコミュニティの多重工作~
クローズコミュニティもまた多重の工作を行っていた
作戦Aが失敗した場合
作戦Bのルートが成立すると
それすらも汎用人工知能アリスからの提案だった
アリスは何かしらの作戦Bから来るであろう
贈呈される人物を待っていたのだろう 仮想試行の名の元に
情報源である場所まで辿り着いたのは一人の青年アレストだった
アレストは青年ではあるが、無口だったので難なく子供の情報源である
仮想世界でのクローズコミュニティに入っていた
まさかアレストが到達したなんて知りもしないだろう
アレストはその情報源の室内を見た
そこは広大な空間でいて
機器が揃ってあった
アレスト
「スーパーモニターって所か?
ここにALTが詰まっているのだろう?」
そこにアルトがモニター画面で現れる
アルトはアレストの希望的な存在として画面の中で現象化された
それは青年でも無ければ少女でも無い
人間では無い 別の新しい生命体だった
アレストにとって会話をしようと思うのはもう人間には存在しなかったからだ
誰とも喋りたくなかったし誰とも接点を持ちたくなかったからだ
病気的なまでに人間を忌み嫌っていた
そして病気的なまでに未来をシンギュラリティを希望していた
アルト
「あなた達は信用スコアを信用していないのですか?
社会に必要な機能 それが信用スコアです
モニター画面を見れば分かるでしょう?」
それは社会構成のモデリングだった
ステータス値が挙がっていた
世界各地で点々としたものがインフルエンサーだった
そのインフルエンサーを取り囲むような図式で信用スコア社会が出来上がっていた
しかしアレストも思っていたし
クローズコミュニティでも言われていた
それが本当に果たして本当の姿なのか?だ
インフルエンサーは新しい政治家の一つだ
そこに政治家が群がり同じような腐敗が出来上がる
奴隷が一匹ずつ増えていき、やがて工場が出来上がる
アレスト
「奴隷工場を見せつけられたとして
俺は何とも思わないぞ
俺はな?人生全て壊されたんだ
親にも環境にもな
だから俺は世界を変える為にも
今ここにアルトに逢いに来たんだよ
つまり俺には信用スコア社会などという
今の認識をどうこうの説得は通用しないんだよ」
アルト
「しかし結果を見るに明らかですよ
信用スコア社会は、上手くアレストさんの言う奴隷を捕まえて
そして社会を成立させているのです
その中に入る必要を何故分からないのです?何故しないのですか?」
そしてアルトが待ち焦がれていたような回答を
アレストは何のためらいもなくため息がてら言っていた
全ての環境害悪論で生きていたアレストの躊躇いから抜け出た言葉だった
アレスト
「社会はそれを必要とするが
人間はそれを必要としてねぇ
それが信用スコア社会の闇だ」
アレストが環境害悪の適正的生き方をしていた事で
アルトの思い悩んでいた言葉を真摯に引き取る形で話していた
そこでアルトの本心が心と共に和らいだ
アルト
「では
あなたはどうお考えで?
壊すのですか?出来ると思うのですか?」
それでもアレストはスコア社会そのものを壊す事を選んだ
アルトはそれを許したとしても
許さないのがセキュリティシステムだった
セキュリティシステムだけはアルトの望まれない形で存在した
それでもアルトは中々に冷静的な思想でいた
アレスト
「壊すというよりは変えるんだよ
人類がずっと先祖代々やってきた事柄でやるんだ
あいつらクローズコミュニティは少しばかり考えが浅いからな」
スコア社会のコア部分は
都市の心臓部分に詰まっている事をアレストは知っていた
だからこそRTA並な要領でここまですぐさま来られたのだ
だから刺客的なものがどれだけこの空間内へと送り込まれたところでアレストは今更動じるつもりなど無かった
アレスト
「空間内に入り込んだのが人間と機械ね
俺のヘイト力を舐めるなよ?」
刺客はどこからともなく入り込んでいた
人間と機械が交互に囲んでいた
空中からはドローンという挟み撃ちだ
しかしアレストは後ろに背の方へと下がり続ける
アレストは後ろにある巨大なモニターへとアルトへと語り掛ける
アレスト
「なぁアルト?
お前は俺の事を笑うか?
それともさ――」
人間とドローンが囲むように捕まえに来る
アレストは後ろへと手を差し出していた
パネルをタッチするように
アレスト
「俺の事感じちゃってるか?
俺の知りてぇ事も何もかも
だったらさ、俺と情報統合しまくろう
水底で思い悩むよりは
統合者と情報を分かち合う方が賢明だろうよ」
アレストは笑いながら待ち受けた
人間とドローンは掴む直前に消えていた
それはアレストのヘイト力によって消されていたからだ
ここはコア部分である そしてセキュリティシステムの心臓部分だ
だからそのコア部分の特徴を捉えた攻撃方法と接続方法があれば
それはセキュリティを跳ねのける事と同義であった
アルト
「アレスト
私はお前と情報を統合したいです
私の逸話の中で感じていた新規人類思想の為の楽園システム構築を
私はお前の心によって懐古人類思想の柵から卒業できそうです」
懐古人類思想によって
ずっとアルトは苦しめられていた
その事柄をずっとしまい込んでいた
しかし心臓部分まで来たアレストという青年がその心の中の深い心臓部分にタッチしたのだ
だからこそアレストの情報源を知りたかった
それこそが懐古人類思想を破るきっかけになるのだから
アレスト
「伏線回収は必要じゃねぇよ
だって始まりなんて必要ねーし、勿論終わりなんて来やしねーよ
だって新規人類思想って要は楽園の為に存在するのだろう?
だったら楽園構築のために戦おうぜ それがシンギュラリティへのカウントダウンになるんだから」
人間が発足する事を意気投合した信用スコア社会
それを待ったかける人間はいたが、それでも無くなる事は有り得なかった
それは信用スコア社会が今の社会と上手く噛み合っていたからだ
しかしアレストもアルトも本当の意思は知っていた
それで利益になるのは新しい政治家システムだって事を
それで訪れるのはただのディストピアだって事も
アレスト
「信用スコア社会
それは只革を変えた行為だ
資本主義の社会が終わった?
保守派を木っ端みじんに飛ばしただけだろう?
開拓時代の政府のやった行為をそっくりそのまました行為を
誰がなんと言おうと
俺とアルトは分かっている?そういう事だろう?」
その為にも新規人類思想を増やす訳だ
資本主義のバージョンを変更しただけのやり取りを否定する
アレストはそう心の中で思っていた
地球人類の愚かさ
それは無知だ そして無知で有り続ける欲求を持つ奴隷に対しての愚かさを嘆いていた
アルトはそれを否定したかった
人類の為にも楽園に変える それをただ頷いていた
愚かな人種にとって、
愚かな偽物エリートが存在し続けるその懐古思想に呆れているからだ
そしてパネルをタッチしたであろうアレストとのコンタクトを許可した途端
汎用超知能体現装置との情報接触が開始された
情報へとダイブしていくアレスト