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神父様、死すべし者を応援する


ふぅ、今日はお日様が雲から出てきて、良い天気日和だ。近頃は雨続きだったから裏庭にある畑も日光を欲しがっているように葉を動かしているように感じる。今日はこれ以上は水をまかなくていいだろう。さて、肥料を撒いて中に戻ろう。この肥料は最近、街に寄ったときに商店で売られていたのを見つけたものだ。値段もお手頃価格で俺の丹念に育てた植物にも効果があったようで、葉は艶やかに、茎はまっすぐ張っている。早く成長して、実をつけるんだよ~。



「すいませ~ん、誰かいませんかー」


どうやら、誰かが教会の前で呼んでいるらしい。まったく、俺の大事なストレス解消タイムを邪魔をしよってからに。速足でそちらに向かうと多少、髪の毛に癖があり目元まで隠れている少年が扉の前で右往左往していた。



「はい、どちら様ですか?」


「うわっ!、えーっと、ここにいるってことは神父様ですよね?」


「もちろん、混ぜ物なしの100%神父様ですよ、新規のお客様ですね、ではこちらをどうぞ」


俺はいつも常備している目次表を彼に手渡す。



「え、これは、なになに…、礼拝にお布施に寄付…、礼拝ってお金取るんですか?、もっと清らかなところだと思ってました…」


「ええ、もちろん、神に願ったり、拝んだりするには手間賃が必要でしょう、それにただで貸し出すなら、我々も生活なんてできませんよ、人の世なんて大体そんなものです。」


神殿の掟のせいでこれ以上は金額をあげれないので、こうやってちょこまかと稼いでおかないと修繕費用やら食費やらで金はすぐになくなってしまいますよ。

光あるところには影やら闇やらがわんさかあるもんなんですからまだまだましな方です。


「そ、そうですか、でも今回はここで悩みを聞いてくれるっていうのを噂で耳にしたんですが。」


「はぁ、談話のことですね。」


「はい、それでお願いします。」


「ではこちらにどうぞ。」


っていうか噂って何のこと?知らないんだけど?



   $  $  $



お名前はシルキー君というんですか。体は随分と小柄でカッコイイというより可愛らしい雰囲気がある。髪の毛で素顔は分からないが、なぜ、隠しているんだろうか。まぁ、それも追々聞くことになるだろうか。



「さて、迷える子羊よ、何をお悩みですか?」


「なんだか、そうしていると、一気に神父らしくなりますね。」


「あの、茶々入れないでくれません?、で悩みは何ですか、早く吐露してしまいなさい」


「はい…、実は気になっている人がいまし、「ペッッ」、て、え、今唾吐きませんでした?」


「そんなわけないじゃないですか、見間違いですよ。それよりもあなたの悩みはズバリ恋愛ごとについてですね」


「な、なぜそれを!?、もしや啓示かなんかですか」


んなわけねぇだろ、もう聞き飽きてんだよ、彼女とか彼女とかマリアとかに。それにそんなもん、もじもじしながら聞いてみるこっちにもなってみろ、一目瞭然に察してまうんだよ!



「あなたがそう思うならそうなんでしょう、それであなたの思い人は誰なんですか?」


「僕が気になっているのはギルドの受付嬢の子なんですけど、僕もその子のところに通って依頼を受注しているんですが、中々、勇気を出せずにいて。」


受付嬢、女性が一度は夢見る職業。冒険者と呼ばれる者たちの中には多大な功績を残したものや最低でも一家を養えるぐらいには稼いでくれる。であれば、そんな優良物件たちを女たちが見逃すわけもなく、さらに受付嬢という立場であれば、簡単にお近づきになれることだろう。より高見を望む受付嬢は成績を残し、王都にあるギルドへの申請や推薦とかをしてもらって花形に就くらしい。まぁ、それよりも。



「あなた、冒険者だったんですね、小柄な割にも」


なるほど、確かに今の服装は普段着となるのでしょうが、それにしてもあまり想像はできませんね、小柄な彼が凶悪なモンスターと闘うなど。



「ははは、よく言われます。なので特に気にしてませんが、これでも戦士職なんですよ、僕。今は装備とか着ていないのでわかりにくいですが。」


「で、そんなモンスターと闘うあなたが勇気を出せずにいるとは。まさか、その髪で顔を隠しているのにも理由が?」


「そうなんです、実は一緒にパーティーを組んでいる女の子たちがいて…」


 ん?、まぁ、いいでしょう。


「まぁ、その組んでいるパーティーメンバーは僕の幼馴染や妹…といっても親違いの妹なんですけど可愛いやつなんです。そんな彼女たちが最近、僕の顔を何かと他人に見せたがらなくなってしまって…」


 んん?


「彼女たちは本当にいい子たちなんです。たまに素っ気ない態度を取られることもありますが、いい子たちなんです。だから、もしかしたら、僕の顔が何か他のみんなに悪い印象を与えているのかもしれないと思って。だから、僕も髪を伸ばして隠してるんです。」


 んんん!?


「あ、あの、神父様、そ、そんなにこっちを見つめられるとは、恥ずかしいです…」


おい、照れるんじゃない、頬を紅潮させるんじゃない!、顔を背けるじゃありません!。

私はそっちの気はないんですから、やめてください。あなたのパーティーメンバーに殺される可能性があるんでやめてください。



「すみません、少々話を聞いていて、つい考え事を。」


彼に率直に今の事態を伝えるべきか、それとも、だが、いや、うーん…。


「何か気になっていることでもあるんですか?、なら教えてください!神父様!」


さすがにこうも熱心に思いを伝えられれば、俺も現実を直視する決心をしなければならない。

正直内心では心臓の鼓動ドクドクと音がなり、額から汗が浮き出ている。だが、神父である俺は表情には出さないエキスパートなのだ。



「はぁ、仕方がないですね、ならまずはお顔を拝見させてください。でないと思っている判断が付きません。」


「っ!、わ、わかりました」


そう言った彼は口をキュッと結んで、緊張のせいか体をぎこちなく固めている。なんだかいけないことをしている気分になりながら、そんな彼に俺は目元まで掛かっている髪を下から上に上げようと手を近づけた。ゆっくりと手を上げていくと今まで顔に隠れていたパーツが現れ、顔の全容を把握できるようになった。



「…」


「ど、どうですか。…大丈夫ですか?」


どうやら、彼は目を瞑っているので今の状態を確認できいないようだ。良かった。今、俺の表情は純真無垢な彼に見せてはいけないものになっている。なんとか落ち着くまでもう片方の手を堅く握りしめて、舌を噛む。そして、ようやく落ち着いてきたので、俺は彼の髪に触れていた手を離す。



「…いえ、もう結構ですよ、今ので理解できました。後、いくつか質問させていただいてもよろしいでしょうか」


果たして俺はニッコリと笑えているのだろうか。鏡がなくて良かった。



   $  $  $



俺は彼にあれから質問をいくつかした。冒険者の階級と給料はどのくらいかとか交際経験や好みの幅、さらに子供は好きかなど、シルキーは俺の質問に素直に答えてくれた。


「改めて問いますが、あなたはモテたいのですね、シルキー」


「はい!神父様。僕はあの受付嬢を振り向かせてみせます。」


「よろしい、生半可な覚悟であれば、このままお金を支払ってもらって帰っていただいたところでした。今から伝えるのはあくまでも慎重なアピールです。」


「…そ、それは一体。」


「…」


「…」


ゴクリと生唾を飲む声が聞こえる。沈黙の時間がその間を支配する。それはたった数分だったのだろうが、ひどく、長く感じた。



「それは…、髪を切ることです。」


「えっ、それだけですか。」


「それだけです。ですが、それを行うだけであなたの人生観は変わるでしょう。髪を切ることでシルキー、あなたの自信を取り戻すことにも一役買うでしょう。後はその受付嬢に普段と変わらない態度で接しなさい。さすれば道は開かれるかもしれません。」


「わかりました!、さっそく、試してみます。神父様、ありがとうございました。これお代です。」


「ちょっと、待ってください、後これ、銀貨なんですが…、って行ってしまいましたね。」


シルキーは銀貨1枚を俺に手渡して颯爽と部屋を出ていった。金払いも良し、扉を閉めるときの丁寧なところもよし。彼ならばシルキーならば自らを変えるのは可能だろう。後は周囲がどうなるかだが…、どうしよう、絶対に荒れるだろうなぁ。ちょっと、礼拝して神頼みしておこう。



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