秋(1)
9月1日。それは一年で来てほしくない日ベスト10に入るくらい嫌な日だ。つまり、新学期がはじまる。俺は嫌々制服に着替え、素早く朝御飯を食べ終える。そして、少し早めに家を出て、キノの元へと向かった。一気に丘を駆け上がりキノの所にたどり着くころには、息も絶え絶え。
「よぉ……はぁ……はぁ……」
完全に気持ち悪いおっさんみたいな挨拶になってしまう。
「ゆっくりきてよ。それ、こわい。」
キノも大分ひきぎみで答えた。
「仕方ないだろう。少しでも一緒にいたいんだ。」
「……ありがと。」
彼女が恥ずかしそうにお礼を言う。こんな時間がもっともっと永く永久に続けばいい。しかし、無情にも時は流れ時計の針が8時20分を指した。
「じゃあ、もういくよ。放課後また来る。」
「また後で。」
俺は後ろ髪を引かれる思いでその場を後にし、学校へとダッシュする。その途中、自転車を漕ぐ雪村が目に入った。
「オーーース、朝から元気だな。」
汗だくになりながら走る俺を雪村が揶揄って来る。俺は彼が俺のとなりに並んだ隙に自転車の後ろに飛び乗った。グエッと彼はカエルが踏み潰されたような声を出した。思わず笑う。
「おい、重い。降りろ!!!」
「嫌だね!無駄口叩いてないで漕げよ。」
「はぁー。最悪だ。俺はこんなむさ苦しい男じゃなくて、かわいい女の子を後ろに乗せたい。」
「残念だが諦めろ。お前にかわいい彼女はできない!」
「何の呪いだよ!!!やめろ!!俺の夢を壊すな!!」
こんなバカな会話をしている間に学校に着き、校門へとたどり着いた。
「ったく!!感謝しろよな!!」
雪村がぶつくさ言いながら、自転車を停める。
「はいはい、ユキちゃんありがと❤」
「気色悪ぃ……。」
そんなこんなで教室に着くと、新学期ということもあり、皆楽しそうに久し振りの友との再会を楽しんでいた。奥野も友達と談笑していたが、俺たちが教室に入ってくるのを見ると、こちらの方に嬉しそうな顔をしながらやって来た。
「久し振り!!二人とも元気だった?」
「まあな!」
そう雪村が答え、俺もVサインを奥野に返した。
「そういえばさ、この近くに新しくコンビニが出来たらしいよ!!」
「ほんとか??!!」
「行ってみようぜ!」
そんな田舎トークに花を咲かせていると、担任が教室に入ってきた。
「おーーーい、チャイム聞こえてるかぁ?席につけーーーー。」
わらわらと皆が席につくと、 教師はまたいつものように退屈な日常の始まりを告げた。




