戦勝祈願
折角の秘策が役に立たんとは。
ならばどうやって、尼子経久をあの世に送り返すかだが……。
「どうなさいました? 秀頼様」
「うむ、千絵か。銀山を攻め取る策をだな……」
「それでしたら、戦勝祈願に行かれたらどうでしょうか。ちょうど近くに、厳島神社があります」
「そうか! 寺がダメなら神社よ! 神の加護で亡者どもを根絶やしにしてくれる! ふっはっはっはっは!」
厳島神社とは、数多くの戦国武将が戦勝祈願に訪れた由緒正しき神社だ!
「厳島というだけあって船で行くのか、この船に三千人の兵がどうやって乗ったのかも気になるが、確か父上も九州遠征の折りに、参拝して大経堂を建てたと聞く。豊臣家との縁の深い所だな」
「そうなのですか~、海上に立つ大鳥居とか、楽しみです」
「そろそろ見えて来たぞ」
海上に浮かぶ霊験あらたかな小さな島。
しかし、そこで秀頼を待ち受けていたのは一人の若武者だった。
「待ちわびたぞ! 俺の秘剣・燕返しを見るがいい!」
「あれは誰だ? なんか叫んでいるが、とりあえず、スルーだな」
「はい、目を合わせないようにスルーですね」
「待たせだな、小次郎!」
「おい、まさか六三四の知り合いなのか?」
「まぁ、もう地元のお友達が出来ていたのですね」
「我が神速の剣、貴様に見切れまい!」
「愚かな、鞘を捨てるとは、小次郎敗れたり!」
「六三四、先にお参りに行ってるぞ」
「子供にはご祈祷も退屈でしょうから」
踏み込みと同時に小次郎の長剣が振り下ろされる。
たった一撃で間合いを詰めるその速度はまさに神速!
だが、常人には捕らえる事の出来ないその動きも、六三四は見切っていた!
刃が体に触れるか触れないかの寸での見切りで、振り下ろされる刀を掻い潜り、薪が小次郎の頭に襲い掛かる。
しかし、秘剣・燕返しの真髄は二の太刀にあった!
振り下ろされた長剣が一瞬にして跳ね上がり、六三四の足元から斬りつけた!
「まさか! 俺の燕返しを防ぐとは……」
それは、二刀、小次郎の燕返しを防いだのは、六三四の二本目の薪であった。
足元から降り上げられる刀を二本目の薪で防ぎ、さらにその薪を踏み台にして間合いを詰め小次郎の頭を殴りつけたのだ。
「六三四、そろそろ帰るぞ。いやー、実にいい戦勝祈願だった」
「平清盛公が建てた社殿も素晴らしかったですね」
「決闘とは、虚しいものよ……」